呼吸器系

2013年9月12日 木曜日

成人喘息 国立相模原病院 谷口正実先生

2013年8月31日 パシフィコ横浜アネックスホール
演題「成人喘息における最新の治療と残された課題」
演者:国立相模原病院臨床研究センター 病態総合研究部長 谷口正実先生
内容「喘息患者さんは増加の一をたどっています。

一方、喘息死の数は1990年代においては6000人前後であったが、吸入ステロイド剤の普及に伴い減少してきて2010年には2000前後に減少してきた。

年齢別に見てみると、

ただし、若年者においては著名な改善をしているが、高齢者においては改善が乏しいことがわかる。
その一つにおいては慢性閉塞性肺疾患(COPD)の併存が考えられる。COPDの方から見た喘息患者さんの割合では3割強を占めている。高齢医者の脂肪率を改善するためには、喘息に合併している疾患や併存している病態を考慮して治療する必要がある。

若年者において喘息死の減少に貢献しているものとしては、ICSが挙げられる。
吸入ステロイド剤(ICS:inhaled corticosteroid)の増加が1995年ごろからみられるが、その後徐々に喘息刊死亡数が減少してきている。

疾患の病態も改善しており、ICSの普及する前と普及してからの比較を大阪と東京でみてみると、平成11年に比べ平成19年の方が、平均発作受診回数も2弱から1にまで減少し、喘息患者さんの発作時の受診率も58%から45-50%に減少している。

平成15年と平成19年のICS処方状況と発作受診率を見てみると、平成15年においては、ICSの処方本数と発作受診回数においてはきれいな正の相関がみられる。ある程度ICSの処方が浸透してくると、軽症の症例において処方されることが浸透してきたためか、治療効果に関しては、平成19年においては、3本未満か以上で二群に分かれている。

また、ICSを早期から使用することにより、医療費も抑制できている。

気管支喘息の発症・増悪のメカニズムは、危険因子の暴露により気道に炎症が生じ、その炎症が繰り返されることにより、①気道のリモデリングが生じること、②気道粘膜の過敏性が高じること、③それらの変化と会いあまって気管支平滑筋の収縮・気道粘膜浮腫・気道粘液の分泌亢進が生じ、それらの結果として気流制限が生じ、喘息発作が生じ、悪化する。

喘息の増悪因子としては、①アレルゲン、②大気汚染、③呼吸器感染症、④運動・過換気、⑤喫煙、⑥気象、⑦食品、⑧薬物、⑨激しい感情表現とストレス、⑩刺激物質(煙、臭気、水蒸気など)、⑪二酸化硫黄、⑫月経、⑬妊娠、⑭肥満、⑮アルコール、⑯過労が挙げられている。http://www.asthma-asthma.com/risk.htm
大気汚染は中国においてはかなり影響が出ているが、日本の疫学研究においては関係ないとの結果となっている。ちなみに、2006年の都道府県別喘息死亡数は鹿児島県が一位で、過去において、大気汚染が問題となっていた、四日市市がある三重県や川崎市がある神奈川県は、死亡数が少ない県となっている。

男女別で喘息難治化因子を見てみると、男女とも高齢と、アスピリン喘息が、女性においては肥満と、非アトピー型が難治化に関与している。

病型別に見てみると、両型において罹患年数と喫煙歴が関与し、アトピー型においてはアスピリン喘息、アレルギー性鼻炎(逆の関係:アレルギー性鼻炎が合えると喘息が軽い)、ABPA(Allergic Bronchopulmonary Aspergillosis:アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)が難治化因子となっている。
どの因子がどのくらい喘息の難治化に関与している下の一つの指標として、多重ロジスティック回帰分析の結果を見てみると、

難治化因子としては、高齢者、罹病期間が長い群、アスピリン喘息が挙げられ、アレルギー性鼻炎は、逆の関係がみられている。
アスピリン喘息は、成人喘息の10%に見られ、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の使用により、使用直後から1時間くらいの間に喘息発作を起こすことがあり、「アスピリン喘息」と言われている。アラキドン酸シクロオキシゲナーゼの阻害作用を持つ酸性NSAIDsにより引き起こされ、発作の前兆として、鼻水・鼻閉があり、尿中ロイコトリエンE4(LTE4)が数倍増加している。プロスタグランジンE2を事前に吸入することにより、アスピリン吸入による気道の炎症が抑えられるばかりでなく、吸入による尿中のLTE4の増加反応も見られなくなる。病因としてプロスタグランジンE2の減少や、15-hydrozyeicosatentraenic acid(15-HETE)の過剰産生やリポキシンA4産生低下、血小板活性の亢進、ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子異常、COX-2遺伝子異常の関与が報告されている。小児期発症はまれであるが、思春期以降に増加し、多くは30-40歳代に発症し、慢性鼻炎、慢性副鼻腔炎、鼻茸(ポリープ)を合併することが多い。鼻茸の手術的な摘出により、LTE4の過剰産生が改善する症例も多い。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)は1952年にHinsonによって法刻苦された疾患で、多くは嚢胞性線維症の10-20%に合併が見られるが、日本では比較的まれで、喘息の1-2%を占めていると言われている。ABPAの原因疾患としては Aspergillus Fumigatusは30~45℃で発育しやすいため、通常の人間の体内で発育しやすく、頻度が多いが、それ以外のアスペルギルス族や他の真菌でも発症が報告されている。症状としては喘鳴であるが、多くは喘息発作としては軽症であり、無症状の人も多い。検査データとしては、末梢血の好酸球の増加、胸部レントゲンでの移動する浸潤影、アスペルギルスを含む粘液栓であり、進行してくると、中枢性の気管支拡張、肺の線維化を伴い、進行性かつ破壊性の疾患である。
Eosinophilic granulomatosis with polyangitis(EGPA)は以前Churg-Strauss症候群と言われていた疾患で、結節性動脈周囲炎で腎障害が少なく、喘息、好酸球増多を伴った疾ANCA(Anti-Neutrophil Cytoplasmic Antibody)陽性の患群である。30-60歳に多く他の血管炎症例よりも若年発症であり、4:6で女性に多く、喘息発作、紫斑、末梢神経炎、筋肉・関節痛、腹痛が多く見られ、脳出血・脳梗塞、心筋梗塞、心外膜炎、腸穿孔もみられる。
肥満との関係においてみると女性において、難治性喘息の割合が増加する。

非喫煙者においては、その傾向がより強くなる。

このことは逆に考えると、減量することにより、換気空間(呼吸できるスペース)が増加するだけでなく、ぜんそく治療に対する反応性が改善することが期待できる。脂肪間質多く存在するマクロファージとマスト細胞の活性化、マスト細胞顆粒内豊富に含まれている酵素Tryptaseの活性増加が関与していると考えられている。
Webを利用した調査結果から、喘息の悪化と高脂肪食、ファーストフードの頻回摂取、牛肉の頻回摂取との関連が指摘されている。
スタチンの投与で喀痰中の好酸球数の低下が認められてとの報告や喘息発作での受診回数や入院回数、ステロイド投与量の減少を認めた報告があるが、肺機能には影響がないようである。
ビタミンD不足は小児において喘息難治例が多く、ビタミンD投与によりアトピーの改善、ウイルス感染の減少、肺機能の改善、ステロイドに配する治療反応性の向上が報告されており、注目されている。
30-40歳以下の大発作症例を見てみると、ICS未使用者(78%)、喫煙者(67%)、ペットを飼っていること(67%)、妊娠によるステロイドの中止例が多くみられる。

ステロイドとβ2刺激剤が配合された合剤の吸入が主流であるが、2004年に22の臨床試験をまとめて解析した論文が発表され、β2刺激剤の1~6週間の定期的な使用がβ2刺激剤の気管支拡張効果が表れにくくなり、気道炎症を増大させ、喘息コントロールを悪化させる可能性が強く示唆されており、増悪時においての吸入においても、ステロイド配合剤の方が望ましい。
β刺激剤を1週間以上連用すると①気管支拡張効果の減少、②気道過敏性の上昇、③気道炎症の悪化、④発作入院、喘息死の増加みられるとの報告があり、ステロイド剤との併用が必須である。逆にβブロッカーの使用により気道過敏性が改善したとの報告があり、今後の治療役の一つとしての可能性が考えられている。
喘息発作がコントロールされた後、ステロイド剤のみの吸入への変更が、アメリカなどのガイドラインに推奨されているが、合剤の方が良いと考えられる。
以上難治化因子の関係をまとめてみると下図のようになる。


投稿者 川村内科診療所

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