骨格筋

2014.07.05

新たな視点に立った非特異的腰痛 松平 浩 先生

2014年6月29日 東京慈恵会医科大学 中央講堂
演題「新たな視点に立った非特異的腰痛のとらえ方とアプローチ」
演者:関東労災病院 勤労者金・骨格筋系疾患研究センター長 松平 浩 先生
内容及び補足「
世界の疾病負担研究による最近の調査報告の中で、生活に支障を与える疾患の第一位は腰痛であることがLancetに掲載された。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(12)61766-8/fulltext
日本の厚生労働省の調査でも、4日以上の休業を要した職業性疾病のうち6割以上を腰痛が占める。
我々の全国約6万5千人を対象とした調査で、
一生のうちに腰痛を経験する人の割合は83%で、
休職経験者が24.5%、
直近4週以内の休職は1.4%
という結果であった。

プライマリケア医受診時の腰痛の原因としては、椎間板ヘルニア(4~5%)、脊柱管狭窄症(4~5%)、圧迫骨折(4%)、感染性脊椎炎やがんの脊椎転移(1%)などが有名であるが、種々の検査を行っても原因が特定しきれない非特異的腰痛が85%と最多を占めている。
JAMA 268: 760-765, 1992 

この非特異的腰痛が起こる原因として、
① 姿勢や動作に関連する『運動器(脊椎)の不具合(機能的な異常dysfunction)』
② 脳の機能負不具合(中脳辺縁系のドバピン・システムの異常)
に分けて考えるとこができる。
実際には両者の不具合は、しばしば共存し、その共存する割合は、同じ人でも暴露される環境因子(メカニカルおよび心理社会的ストレスの状況)に依存するという立場で腰痛を捉えてみると、予防も治療も円滑に行くことが多い。

2012年に日本の整形外科学会と腰痛学会が『腰痛診療ガイドライン』を作成しました。
今までのいろいろな研究の結果をまとめた、腰痛の対応方法のガイドラインである。
GradeAとして評価されている項目を挙げると、
① 非特異的腰痛の発症と遷延化に心理社会的因子が関与する。
② 急性非特異的腰痛では、痛みに応じた活動性維持が疼痛を軽減し、機能を回復させる。
③ 痛みに応じた活動性維持は作業関連性腰痛においても、より早い痛みの改善、休業期間の短縮と再発予防に効果的である。
という結果が出て確立したものとなっており、以前考えられていた安静臥床が状態を改善するよりも、かえって痛みに対する不安感や恐怖感をつくり、その結果、自らの活動を過剰に制限(回避)してしまう要因になってしまい、脊椎のスムーズな動きが失われたり、脊椎や背筋を含む運動器の硬直化を生み、却って体の痛みを生じたり、腰痛の再発悪化のリスクを高めることになる。

実際にぎっくり腰定量施設を受診された人たちを、安静を指導されたひと(安静群)と、痛みの範囲内での活動を指導されたひと(活動群)で腰痛の再発率を検討してみると、安静群で明らかに高頻度であった。

このように痛みの範囲内の生活を積極的にやってもらってよくなる場合ばかりではないので、安静が必要な腰痛疾患と積極的に体を動かしてよい腰痛をしっかり鑑別診断する必要がある。

腰痛診断は以下のように分類してみると考えやすい。
① Red flag sign:神経症状を伴うもの(症候性の椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症)⇒安静および整形外科的な治療が必要なもの。
 安静にしていても、うずくことがある。楽な姿勢がない(重篤な病気が原因の可能性)
 強い痛みがお尻から膝の下まで広がっている(ヘルニアや狭窄症などによる神経痛の可能性)
 肛門や性器の周囲がしびれたり熱くなったりする、あるいは尿が出づらくなることがある(重い神経症状の可能性)
 足の脱力感がある。たとえば、かかと歩きが片足でしにくい(重い神経症状の可能性)
 転倒、転落など、外傷後の痛みで日常生活に支障が出る(骨折の可能性)

② Yellow flag sing:慢性難治性、休職、長期の活動性低下へ移行する可能性がある、心理社会的要因(Psychosocial risk factor)が強く関与しているもの⇒積極的な心理社会的なアプローチが必要なもの。
 心的ストレス(不安、不快、負担感など)が高まると痛みが出やすくなる。身体的な原因がはっきりしない次のような症状を1つ以上伴う。睡眠障害、抑うつ的、頭痛、めまい・耳鳴り、肩こり、息苦しさ、動悸、胃の不調・吐き気・下痢

③ Grren light:非特異的腰痛、神経学的異常や器質的異常のない心配のない腰痛⇒痛みを悪化させない程度で、これだけ体操や、腰痛予防体操を行う。
 腰痛と姿勢、動作の関係が明確で、一貫性がある。楽な姿勢が必ずある(脊椎の不具合:髄核のずれなど)

心理社会的なアプローチとして次のような考え方が現在基本となっている。
Summary of common recommendation for treatment of non‐specific low back pain
患者を安心させる
活動を維持するよう助言する
安静臥床は薦めない
Acute or Subacute Pain Chronic Pain
物理療法は薦めない
薬物療法/徒手的療法 は短期間に限る
エクササイズを薦める
認知行動療法、集学的治療がよい
Koes BW, et al. An updated overview of clinical guidelines for management of non-specific low back pain in primary care. Euro Spine J 19: 2075-94, 2010

腰痛治療の目標は
一次予防 現在腰痛がない人に対して、再発も含め腰痛を新たに起こさせない対策
二次予防 軽い腰痛の人に対して、重症化させない対策
三次予防 すでに支障度の高い人にはコントロール可能なレベルに戻しかつ支障度の高い腰痛の再発を予防する対策ポピュレーションアプローチ (Geoffrey R, 1985)
「腰へかかる負担に関わる問題」 「心理・社会的問題」への対策を包括的、具体的かつ理解しやすい形で提案することが必要!
ということになる。
具体的にできる簡単な腰痛(予防)対策としては、いすの座り方を変えることも有効である。猫背にならないように、少しそらしたり、背中に充てものをしたりするだけでも有効である。

忙しい合間の腰痛予防の『これだけ体操』を提案している。
・移乗など前屈みでの作業後、重い物を持った後、しばらく座りっぱなしだった後(特に腰に違和感を感じた時)には、必ずすぐに腰をしっかり反らしましょう!
反る体操
脚を軽く開き、膝を伸ばしたまま上体をゆっくり3秒間、息を吐きながら最大限反らす。
これを2-3回繰り返す。
立ちっぱなしで痛くなったら…
ただし、立ちっぱなしや歩きっぱなしでいて痛くなったり違和感を感じた場合にのみ、いすに座って腰をゆっくり丸める。
いすで屈める体操
両方の足を開き、息を吐きながらゆっくり床を見る。これも3秒間、2-3回行う。

このもとになっている体操は、マッケンジー法で、ずれた髄核を、圧迫することにより元の位置に戻す体操で、痛い方向で少し痛みを感じる程度に固定して、ずれた髄核をもとの位置に戻すイメージで体を動かす。

http://www.research12.jp/22_kin/docs/komado29.pdf
http://www.research12.jp/22_kin/t03.html
http://www.jmedj.co.jp/fileview.php?field=reading_pdf&id=471&type=book
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000023wrx-att/2r98520000023x67.pdf
http://minds.jcqhc.or.jp/n/medical_user_main.php
http://www.med.or.jp/cme/jjma/newmag/14301s/pdf/14301s001.pdf

http://www.research12.jp/22_kin/docs/manual_2012.pdf
http://www.research12.jp/22_kin/docs/manual.pdf
http://www.research12.jp/22_kin/docs/manual_final.pdf
http://www.research12.jp/22_kin/docs/menu.pdf
http://www.research12.jp/22_kin/docs/manual_kyotsui.pdf

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