消化器系

2014年10月27日 月曜日

新しい時代を迎えたC型慢性肝炎治療 伊藤義人教授

2014年10月18日 新横浜プリンスホテル
演題「新しい時代を迎えたC型慢性肝炎治療」
演者:京都府立医科大学消化器内科学教授 伊藤義人先生
内容及び補足「
C型肝炎ウイルスはフラビウイルス科ヘパシウイルス属に属するRNAウイルスである。


現在までに10種類以上のgenotype(遺伝子型)が発見されており、アメリカでは1a型、ヨーロッパでは1a型と3a型が多く、日本では1b型が70%と多く、次いで2a型20%、2b型が10%の頻度である。

    遺伝子型(genotype)
    1a型 1b型 1c型 2a型 2b型 2c型 3a型 3b型 4型 5a型 6b型
    血清型(serotype):特異抗原に対する抗体によって以下に分類している
        1群(Group1):主に1a型 1b型 1c型
        2群(Group2):主に2a型 2b型 2c型
このウイルスに感染するとほぼ確実に抗体が産生されるので診断上抗体検査は重要である。

2004年のデータであるが、全世界で人の寿命に影響を与えているウイルスの影響度を見てみると、HIV、HBV+HCV、Measles、RSV、Rota、インフルエンザ、デング、HPV、West Nile、SARS、Ebola、Polio、Hanterの順であった。
昨年Ebolaが流行していて、この順位は変化するが、HCVは依然上位に位置している。
我が国のC型肝炎患者数は肝炎症状のないキャリアを含めると150~200万人と推計されており、40歳以上に多くみられる。

われわれ京都府立病院受診の肝疾患患者の内訳は、C型肝炎40%、B型肝炎19%、非アルコール性脂肪肝18%、自己免疫性6%、アルコール性6%、薬剤性1%といった割合であった。
2012年の都道府県別75歳未満ガン年齢調整死亡率を見てみると北海道や東北地方に多い。

肝癌の死亡率においては、逆に西高東低であり、以前は佐賀県が最も多かったのが現在は愛媛県に移動している。

http://ganjoho.jp/data/professional/statistics/backnumber/2013/fig20.pdf#search=%27%E9%83%BD%E9%81%93%E5%BA%9C%E7%9C%8C%E5%88%A5%E7%99%8C%E6%AD%BB%E4%BA%A1%E7%8E%87%27
C型肝炎は日本で非常に多い印象であるが、実際はさほど多くない。
1997年のデータであるが、
この時のデータではエジプトが世界中で最も高頻度で、国民の20%以上が感染しているとされていた。
最近、モンゴル人から、自国でのC型感染率は31%もあり、肝疾患専門医に来てほしいと言われた。
エジプト、ギニア、カメルーン、タンザニア、ボリビアも多い国である。
ついで、中国、タイ、ベトナム、イエメンなどのアジア諸国で多く、ブラジルも多い。
日本は1.4%の抗体陽性率であり、その7割に相当する120万人が持続感染していると推定されている。日本での歴史は短く、江戸時代にトライし、戦後の予防接種の張りの使いまわしで爆発的に広まったと考えられている。
近年では多くの国で抗体検査が導入されたので、輸血での感染は減少したが、麻薬の静脈注射のうち回しが最大の感染源となっている。スイスでは、ディスポーザブルの注射器を希望者に無料で配布している。

http://www.tokumen.co.jp/column/kanzo1/05.html
年齢分布をみてみると、三種類にパターン化できる。日本では、針の使いまわしが禁止されたこと、売血が行われていないこと、献血者のスクリーニング検査が導入されたことで、新規感染者の頻度が激減し、感染率は若年化とともに減少している。
発展途上国では、若年者の感染率がまだ多く対策が急務である。

C型肝炎の炎症が続き、線維化が生じ、その段階が悪化するに従って肝癌の発生リスクが上昇していく。
F0:線維化なし、F1:門脈域の線維性拡大、F2:線維性架橋形成、F3:小葉のひずみを伴う架橋形成、F4:肝硬変に分類され、1年で平均0.1ステージ進行するとShiratoriらは報告した。Ann Intern Med 132:517~24,2000


C型肝炎ウイルスに感染すると、約3割は体から排除されるが、残りの7割が持続感染となる。F1からは0~1%/年、F2からは1~2%/年、F3からは3~5%/年、F4の肝硬変からは5~7%/年の頻度で肝癌を発症すると考えられている。

F1やF2でも肝癌発生頻度が上昇しているのであり、2009年にアメリカでは、肝機能正常者においてもインターフェロン治療をするべきだとの見解を示している。
日本において
2005年時点でのHCV抗体陽性者の年齢割合を見てみると65歳以上の症例が50%を超え、70歳以上でみても30%を超えており、高齢者の対応が問題である。
肝細胞がん患者におけるHCV抗体陽性頻度は68%近くにも上る。

年齢別で見てみると65歳以上では65未満に比べ、累積肝発癌率は2倍ほど高頻度に見られる。

インターフェロン療法を行って6ッ月後にHCV-RNA陰性が持続しているウイルス学的著効(SVR:sustained virological response)の状態にあるかどうかでも累積肝発癌率は異なる。その差は、65歳未満の症例よりも、65歳以上の症例でより顕著である。

2013年8月13日に公布されたC型肝炎治療ガイドライン(第1.1版)において、ALT 30 U/Lを超える症例、あるいは血小板数が15万/μL未満のC型慢性肝炎患者は、原則として全例抗ウイルス療法の対象としている。
ALT 30 U/L以内でかつ血小板数15万/μL以上の症例においては、肝発癌リスクが低いことを考慮に入れて抗ウイルス療法の適応を決める。
高齢者や線維化進展例に抗ウイルス療法を導入する場合には、副作用や耐性変異ウイルスの出現を防ぐため早期に見極める治療中止基準を考慮しながら治療を行う必要がある。
と提唱された。
http://www.jsh.or.jp/doc/guidelines/HVCGLVer1.1_Aug7.pdf
C型肝炎治療は1992年に著効率14%のインターフェロンの治療が導入され、2001年にはリバビリンとの併用、2002年にはインターフェロンの長期投与が、2003年にはペグインターフェロンが使用可能となり、翌年にはペグインターフェロンとリバビリンの併用陶窯が可能となり、著効率も上昇してきた。
2011年にはプロテアーゼ阻害薬であるテラプレビルとペグインターフェロン、リバビリンの併用投与が可能となり、著効率は70%を超える時代となってきた。
2013年には、第二世代のプロテアーゼそば医薬が使用できるようになり、副作用の減少と著効率のアップが認められた。
2014年の9月からは、インターフェロンを用いない治療もおこなえるようになった。


Direct-acting antivairal agents(直接作用型抗ウイルス薬:DAAs)はC型肝炎ウイルスゲノムのウイルス増殖に重要な役割を果たしているHCV遺伝子日構造蛋白であるNS3-4AプロテアーゼやNS5Bポリメラーゼを阻害することによりウイルス増殖を強力に阻害する。

テラプレビルの併用投与により著効率が49%から73%に飛躍的に上昇した。

しかし、この薬剤で問題となる点は薬剤耐性ウイルスの問題である。
HCV変異を見てみるとV36MやT54Aの抵抗性はそれほどではないが、R155K/T/Q(自然界では0%)とA156S /T(に変異があると強い薬剤耐性を示す。


遺伝子多型をちょっと見てみよう。
ゲノム塩基配列中に一塩基が変異した多様性がみられることがあり、その変異が集団内で1%以上の頻度でみられるときに一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism:SNP)と呼ぶ。対立遺伝子頻度がこれより低い時には突然変異と呼ばれる。
通常はある一つの塩基が別の塩基に置換されて起きるため、一つのSNPには置換前と置換後の二種類の対立遺伝子しか見つからないことが多いが、まれに3~4個の対立遺伝子があるSNPもありSNPs(スニップス)と呼ばれる。
ヒトの染色体には、およそ30億の塩基対があり、その配列は個人間で異なっている。その量は1000塩基に一つ程度である。

インターフェロンの効果は染色体19番にあるIL28Bという遺伝子のある一つのDNAがTかGかで、遺伝子としてはTTかTGかGGかで決まってしまう。
頻度としてはTTが74%、TGが24%、GG2%と考えられている。

Genotype1b高ウイルス量のPEG/RBV治療効果を見てみても、TT型の効果が有意に高い。

実際にウイルス量の測定をしてみると、TTにおいて明らかにウイルス量がより減少している。

このインターフェロンが効きにくいIL28B TG/GG症例においても、一度インターフェロンが効いた症例である残治療再燃例を見てみると、PegIFN/RBV+テラプレビル三剤併用治療では90%以上の治療効果が期待できる。

この三剤併用療法において問題となる副作用が皮膚障害であり、85.8%と高頻度に認められている。
重篤な皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)薬剤性過敏症症候群は1%未満であるが、掻痒などの軽度の皮膚障害は80%以上に見られる。その特徴としては、以下のものが挙げられている。
① 重症度が比較的高い
② 発現時期が早い
③ 罹患面積が広い
④ 発熱やリンパ節腫脹などの全身症状を伴う
⑤ 標的病変、紫斑および膿疱を伴う事象が認められる
⑥ 粘膜病変や皮膚剥離を伴う重症薬疹が認められる

その他に腎機能障害や易感染性も注意しておくべき副作用である。

現在使用可能、治験中のHCV特異的抗ウイルス薬には、以下のものがある。

インターフェロンを用いないNS5A阻害薬であるDaclatasvirとプロテアーゼ阻害薬であるAsunaprevirの併用療法が可能となった。

ジェノタイプ1bの222例に対してイダクルインザ60㎎とスンベプラ100㎎を24週間併用投与したものである。
2週間後にはHCVウイルス量は激減して、24週目まで持続している。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/hep.27113/pdf

治療効果を背景因子別に見ても、特に差がなくSVR24は80以上で達成されている。

アメリカやヨーロッパで使用可能な薬剤が日本で使えない現状があるが、いろいろな有効な薬剤が開発され使用可能となってきており、C型肝炎は今後著減することが推測されている。
薬剤耐性ウイルスが少ない数であるが自然界に存在しているので、事前に耐性ウイルスがいるかどうかを検査し、適切な薬剤をえらび、より早期から治療することが大切である。
肝癌発生リスクの高い症例、特に高齢者においては、積極的な治療が必要と考えられる。
副作用の少ない、患者さんに適した治療法を考え、積極的に治療していくため、これらの新しい知見を踏まえ2014年9月にC型肝炎治療ガイドラインの第3版が改定された。




http://www.jsh.or.jp/doc/guidelines/HCV_GL_ver3_Sep01_final.pdf

参考サイト
http://www.kanen.ncgm.go.jp/study_download/20120317_04.pdf


投稿者 川村内科診療所

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