脳神経系

2014.11.17

不眠症の診断と治療 内田直教授

2014年11月6日 崎陽軒本店
演題「不眠症の診断と治療 ~オレキシン受容体拮抗薬への期待~」
演者:早稲田大学スポーツ科学学術院教授 内田 直先生
内容及び補足「
睡眠は人の生活の約1/3を占める重要な現象である。
睡眠は通常は
① ノンレム睡眠から始まる
② ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に出現し睡眠周期を形成する
③ 睡眠周期は60(90)分から120分くらいの長さであり、3-5周期繰り返すことになる
④ 寝始め(睡眠前半)に徐派睡眠(深い睡眠)が多く出現する
⑤ 明け方(睡眠後半という意味ではなく、周囲が少し明るくなってくる時間帯)にレム睡眠が多い
⑥ 生体リズムであるサーカディアンリズムが周囲の環境により影響を受けて睡眠パターンが形成される
体温の変動やメラトニンやコルチゾール、成長ホルモンの分泌の日内変動も関与している。

この24時間周期のサーカディアンリズムは間脳の視床下部にある視交叉上核に存在する体内時計によって制御されている。

もっと詳しく図示すると下図のようになります。

視交叉上核は視床下部の神経が集まって黒っぽく見える部分で、マウスの視交叉上核を切除すると、昼夜のサイクルとは無関係に活動するようになり、そのマウスに、別のマウスの視交叉上核を移植すると、一日のサイクルを取り戻したことから、この部分に体内時計があることが1980年代初頭に井上愼一氏らにより示された。
ある遺伝子の変異により行動のリズムに影響を与える場合時計遺伝子と言われ、表現型としては、無周期、長周期、短周期のいずれかまたはすべてを示す。

bHLH-PAS型の転写因子であるCLOCKとBMAL1が時計シスエレメントE-Boxに結合して様々な遺伝子の転写を活性化する。ことターゲット遺伝子の一つであるPeriod遺伝子(Per 1、2、3)やCryptochrome遺伝子(Cry 1、2)などの時計遺伝子が転写翻訳される。Period/Cryptochrome複合体蛋白質が核内に移行し、CLOCK-BMAL1複合体に直接結合して、自らの転写を抑制し、E-BoxからCLOCK-BMAL1複合体を解離させる。

http://www.bioportal.jp/ja/link_redirect/column/28/28yogo4.html
転写・翻訳された蛋白質が細胞内で機能するためには、リン酸化、アセチル化、ユビキチン化などの多彩な修飾を受けるが、時計蛋白質のリン酸化は、約24時間というサーカディアンリズムの維持に必須である。Per2蛋白質のリン酸化部位である662番目のアミノ酸がSerからGlyに変異すると家族性睡眠巣全身症候群(familial advanced sleep phase syndrome:PASPS)という、体内時計の周期が短くなり、夕方には眠くて起きていられなくなり、夜明け前に目覚めるという疾患になる。
CLOCK-BMAL1はDNAと結合解離を繰り返すにもかかわらず、蛋白質の量はほとんど変化せず、リン酸化により機能が制御されている。
一日の中でE-Box依存性転写が抑制される時刻においてはCLOCKのリン酸化レベルが上昇している。
現在CLOCKのリン酸化は、DNA結合能を抑制し、核移行能を低下させ、自らの分解を促進すると考えられている。

BMAL1のリン酸化を行っている新規時計キナーゼ活性を阻害するとサーカディアンリズムが長くなる。また、この酵素を特定の時間に活性化することにより、サーカディアンリズムの位相をずらすことができた。

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/event/guidance/2011/images/yoshitane/02-b.jpg

人のサーカディアンリズムの長さは24時間より短い人は少なく、少し長めの人が多い。
人のデータを探せなかったのでアカイエカのサーカディアンリズムの分布を示す。

http://www.c-able.ne.jp/~y-chiba/japanese/treatise.html
この周期のずれを、太陽光を浴びることにより24時間周期に戻している。
体内時計の刻みが進行している暗がりの条件下の時間帯に光刺激を受けると、松果体細胞内の遺伝子に存在する光応答配列が反応しE4bp4と呼ばれるたんぱく質が合成され、体内時計の抑制因子として働き、時計の刻みが停止する。その結果体内時計の夜の時間帯の時計の刻みが短くなる。

睡眠:早い眼球運動を伴う睡眠rapid eye movement:REM睡眠と眼球がほとんど動かない睡眠non REM睡眠に大別される。
一般的な人の睡眠の段階は、レム睡眠と睡眠段階1が大体10~20%、段階2が40~50%、デルタ波(遅い波)が増える段階3~4が15%ぐらいである。
ノンレム期には自律神経活動(交感神経)が休息し、心拍数と呼吸数が減少し、血圧が低下する。
自覚的な睡眠によるリフレッシュ感は、段階2以上の睡眠がある程度持続することにより得られる。
段階1の睡眠だけであると、周囲は寝ていると思っているが、自分自身は全然眠れなかったと感じることが多い。
レム睡眠は、眠りとしては浅く、脳波所見は覚醒しているときに非常に近い状態で癌腔が動き脳も良く働いていて、この時に夢を見ている。夢の内容に応じて体が動くと危険なので、抗重力筋などの筋肉の動きは停止している。ここで目覚めると金縛りにあっていると感じることになる。

加齢とともに睡眠の質が低下する。
1. 深い眠りの減少
2. 中途覚醒の増加
3. 早朝覚醒
などが挙げられる。
年代別の睡眠障害の頻度を見てみると

財団法人健康・体力づくり事業財団:平成8年度健康づくりに関する意識調査、報告書(1997)

多くの場合、寝つきは必ずしも悪くなく、午睡が増えるため、睡眠時間が極端に短くなることも少ない。
原因としては、加齢変化の他に、併存する疾患によるものもある。
睡眠時無呼吸症候群、夜間頻尿、レストレスレッグ症候群、周期性四肢運動障害、レム睡眠行動障害、パーキンソン病、レビー小体病、多系統萎縮症などの疾患の影響も考慮する必要がある。
不眠の治療の際にまず念頭においてほしいことは、不眠治療のゴール:目標をどこに設定するかということである。
精神生理性不眠症という病態がある。
ストレスを感じること受けること自体が脳の強い覚醒刺激となる。
眠れないことが、いろいろな問題を引き起こす可能性があり、その不安から眠れないことに対する不安感が強くなり、恐怖となってしまう状態である。

**精神生理性不眠症**
ICSD-Ⅱの診断基準:
臨床症状は、入眠困難、中途覚醒、熟眠困難の不眠症状と、入眠前後の心室内での身体の緊張、不眠恐怖が特徴。
眠れないことに対する過度の囚われ、不安、焦燥感が強化されたものであり、日中から夜間の不眠について過度の心配・不安を抱いている。
夜間の不眠による日中の倦怠感、注意力の低下、抑うつ期分、意欲の低下を認め、望まれる時刻の入眠は困難であるが、単調な作業中の居眠りなど、意図しない場合には入眠困難を認めず、自宅外での入眠は容易である。
かつては、『神経質症性不眠症』や『神経症性不眠症』とも呼ばれていたもので、『学習不眠』、『条件付け不眠』といった病態でもある。
治療方法としては
① 睡眠衛生教育
② 認知行動療法
③ 精神療法
④ 薬物療法
に分かれる。
① 睡眠衛生教育とは睡眠に関する正しい知識を啓蒙普及することであり以下の睡眠障害対処12の指針が良く利用される。
1:睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
睡眠の長い人、短い人、季節でも変化、8時間にこだわらない
歳をとると必要な睡眠時間は短くなる
2:刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
就床前4時間のカフェイン 摂取、就床前1時間の喫煙は避ける
軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニング
3:眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない
眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ寝つきを悪くする
4:同じ時刻に毎日起床
早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じる
日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる
5:光の利用でよい睡眠
目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン
夜は明るすぎない照明を
6:規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
朝食は心と体の目覚めに重要、夜食はごく軽く
運動習慣は熟睡を促進
7:昼寝をするなら、15時前の20~30分
長い昼寝はかえってぼんやりのもと
夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響
8:眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減る
9:睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
背景に睡眠の病気、専門治療が必要
10:十分眠っても日中の眠気が強い時は専門医に
長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談
車の運転に注意
11:睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となる
12:睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
一定時刻に服用し就床
アルコールとの併用をしない
http://www.suimin.net/data/images/guide/guide.pdf

② 認知行動療法とは眠れないことに対する不安や緊張を軽減するために行う対処法であり、いくつかの方法に分かれる。
1 刺激制御療法:寝室で眠れない時間を過ごすことにより、寝室で眠れないという条件付けが行われている。この方法は、眠りを妨げる条件反射を引き起こす刺激を取り去る方法である。その方法の一つであるブーティン式刺激抑制療法を紹介する。
★ブーティン式刺激抑制療法
・眠気を感じたときだけベッドに入る
・眠りとセックスのためだけにベッドを使う
・20分以内に寝付けなければ、ベッドから出てほかのことをする
・眠気を感じたら、またベッドに戻る(それでも寝付けなければ、また起きる)
・毎日同じ時刻に起きるように目覚ましをセットして、寝過ごさないようにする
・昼寝はしない
2 睡眠制御療法:睡眠時間を意図的に減らすことによりより深い睡眠を得る方法である。
★睡眠制御療法(かなり設定条件が厳しいので一部の人しか実施困難)
・2週間、実際に眠た睡眠時間を記録し、それらの平均値を算出する
・その平均値+15分を睡眠時間と設定し、起床時刻から逆算して就寝時刻を決め、それを守る
・設定した時間の90%以上眠ることができれば時間をさらに15分延ばす
・反対に85%以下であったなら、過去5日間の睡眠時間まで減らす
・このあいだ、日中、昼寝をしたり床に就いたりしない
3 筋弛緩療法:体が無意識の状況下で緊張しているため、眠りが妨げられているときに有効な方法であり、特定の部位の筋肉の緊張を取る方法や、全身の筋肉を順序だって弛緩させるアメリカの心理生理学者ヤコブソンが考案した『漸進的筋弛緩療法』がある。
★漸進的筋弛緩法
1.いすにゆったりと腰掛け、目を閉じる
2.手を固く握りしめ、指先から肩まで腕全体に思いっきり力を入れる
3.力を入れた状態を3秒間ほど継続したら、瞬間的にぱっと力を抜く
4.この操作を首→肩→背中→胸→腹→大腿→下腿の順に繰り返す
4 自律訓練法:自己暗示をかける方法であり、いろいろな方法が多数紹介されている。
5 バイオフィードバック法:自分で感じることができない体の変化を特定の機械を使って音や光など感じることができるものに変換することで体の変化を意識的にとらえ、身体の変化をコントロールしていく方法である。
筋肉の過緊張が多くの患者さんに見られるため、筋電図を使い筋肉の緊張が高い時に高い音、緊張が弱いと低い音が出るようにしたトレーニングが良く行われている。

③ 精神療法:外的要因による不眠が精神面の不安や心配を引き起こし、その精神的な面がより強く影響している状態に推移しているため、メンタル面の改善を図るために行う治療法である。当然、睡眠に対する正しい知識・理解が必要であるので睡眠衛生教育を行いながら精神療法を行っていく必要があり、この点に関しては精神科の医師との連携が重要となってくる。

④ 薬物療法:作用時間の長さで分けた一覧表を示す。
http://anmin-kaimin.net/archives/801/806/009697.html

http://www.eisai.jp/medical/products/lunesta/treatment/pdf/treatment_pdf01.pdf

http://sleep-mental.com/index14.html
ベンゾジアゼピン系薬は、神経細胞の細胞体と樹上突起に分布するγ-アミノ酪酸A(GABAA)受容体(GABAA receptor)に存在するベンゾジアゼピン受容体(benzodiazepine receptor)にアゴニストとして作用する。
GABAA受容体は2個のαサブユニット、2個のβサブユニット、1個のγサブユニットからできており、ベンゾジアゼピン結合部位はαサブユニットとγサブユニットにまたがって存在している。αはα1~6の6種類が存在しており、ベンゾジアゼピン系薬剤は、α1~3、α5を持つGABAA受容体にアゴニストとして作用する。

α1サブユニットは、鎮静作用と抗痙攣作用に、α2サブユニットは抗不安作用と筋弛緩作用に、α3とα5サブユニットは筋弛緩作用に関与することがわかっている。

https://www.jspn.or.jp/journal/symposium/pdf/jspn107/ss146-153.pdf

GABAA受容体はベンゾジアゼピン系薬剤以外にも、バルビツール酸、エタノール、ニューロステロイド、ピクロトキシンなどの結合部位が存在し、これらの薬剤もGABAの作用をアロステリック調節しているが、その他に、直接Cl-の通過性を高める作用があるため、過量摂取時には、生理的限界を超えて作用し、呼吸抑制をもたらす結果致死的となりえる。
しかし、ベンゾジアゼピン系薬剤は、直接的にCl-の通過性には影響せず、内因性のGABAの効果を増強するだけであり、過量服用しても致死的な呼吸抑制をきたすことはほとんどない。

ベンゾジアゼピン系薬剤の副作用としては
持ち越し効果:hang over / carry over
翌日まで約紅が持続するため、日中の眠気、ふらつき、脱力、倦怠感、頭痛などの症状が出現する状態。肝機能や腎機能が低下している人や高齢者におきやすい。

薬物依存:使用後最短四週間で形成される。薬をやめることによりrebound phenomenon反跳現象やwithdrawal syndrome退薬症候(離脱症状)がみられる。
反跳現象は薬剤によって抑えられていた症状が薬剤の中止によりより強く現れるもので、不安、尚早、不眠といった症状が多い。
知覚障害や知覚過敏、味覚異常、身体動揺感がみられることもある。

認知機能障害:cognitive function disorder
服用後の前向性健忘(anterograde amnesia)がみられることがある。
また、精神運動性の遂行能力低下、実行速度の低下も見られるため注意が必要である。

奇異反応:paradoxical reaction
ごくまれに、ベンゾジアゼピン系薬剤の投与により、不安、緊張が高まり、興奮性や攻撃性が増強することがある。高容量を用いた場合におきやすいが、報告例では若年者に多い。脱抑制(disinhibition)が生じ、興奮や過活動が生じることもある。アルコールとの併用により起きやすくなる。

その他の薬物療法
セロトニン1A受容体部分作動薬:ベンゾジアゼピン系のように全身に作用せず、不安や抑うつに関与する大脳辺影系のセロトニン5-HT1A受容体を刺激して、cAMP合成を抑制しG蛋白質共役K+イオンチャンネルを刺激することで抗不安作用を発揮するが、効果発現に2週間近くかかることと、効果が弱いことが欠点である。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬:selective serotonin reuptake inhibitor SSRI
セロトニンの再取り込を阻害することにより、セロトニンの濃度の減少を抑制することで、効果を発揮する。
SSRI:フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、エスシタロプラム
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込阻害薬):ミルナシプラン、デュロキセチン
ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬:ミルタザピン
などの薬も使用できるようになってきた。

新規生理活性ペプチドの一つで摂食行動を制御する神経ペプチドとして注目されたオレキシンであるが、オレキシン神経細胞欠損マウスでナルコレプシーが生じたことから、時差ボケ改善や不眠症治療に役立つと考えられ開発された薬剤がオレキシン受容体拮抗薬『ベルソムラ』が開発された。

ナルコレプシー症状を起こすオレキシン神経細胞欠損マウス(左)。右は正常マウス。
参:ナルコレプシ-
イギリス人医師トーマス・ウィリスより初めて報告され1880年フランス医師のジャン=バティスト=エドゥアール・ジェリノー (Jean-Baptiste-Édouard Gélineau) によってNarco=眠り+Lepsie=発作と名付けられた。
15歳前後の発症が多く、40歳以上はまれで、米国では2000人に1人、日本では600人に1人の割合と考えられている。特に精査は見られない。
症状としては以下のものがみられる。
① 睡眠発作:日中の突然の耐え難い眠気に襲われる。
② 情動脱力発作(カタプレキシー):笑い、喜び、あるいは自尊心がくすぐられるなどの感情が高ぶった時に、突然抗重力筋が脱力する。全身の筋肉の脱力が起これば、突然の転倒となり、部分的な発作の場合は膝の力が抜けたり、呂律が回らなくなるといった症状となる。
③ 入眠時幻覚:入眠時に現実感の強い幻覚を見ること。入眠直後にレム睡眠状態になるために非常に現実感を伴った夢を見ている状態と考えられていて、ヒトによりこの状態を幽霊を見たといった心霊現象と認識していることもある。
④ 睡眠麻痺:いわゆる金縛り。開眼し、意識はあるものの、随意筋を動かすことができない状態。
以上4大症状と呼ばれているもので、以下のものはREM睡眠と密接に関連している症状である。
⑤ 自動症:眠った感覚がないにもかかわらず、直前に行った行為の記憶がない状態で、無意識に寝てしまい、寝ながらその直前の行為を続けている状態と考えられている。
⑥ 中途覚醒、熟眠困難:夜間就寝中に頻回に目が覚め、幻覚や睡眠麻痺を自覚するため、熟眠が困難となる。

オレキシン:
ヒトの二種類のオーファンGタンパク質共役受容体に対すリガンドとして同定した蛋白質をオレキシンAおよびBと櫻井たちは命名した。
いずれもプレオレキシンから生成される直鎖上のペプチドである。
OX1受容体に対する親和性はオレキシンAの方がBよりも50倍ほど高いが、OX2受容体に対する親和性はほぼ同等である。

摂食行動に関連の深い視床下部の弓状核(Arc)や腹内側核(ventrolateral hypothalamus:VMH)、外側野(lateral hypothalamic area:LHA)ではOX2受容体が発現している。
OX1受容体はノルアドレナリン神経の起始核である青斑核(locus coeruleus:LC)に、OX2受容体は視床下部後部に位置するヒスタミン神経の起始核である結節乳頭体核(tuberomammillary nucleus:TMN)に多くみられる。
また、REM 睡眠の制御に関わる脳幹のアセチルコリン神経(外背側被蓋核laterodorsal tegmental nucleus: LDT と橋脚被蓋核 pedunculopontine tegmental nucleus: PPT)にも OX2受容体の発現が見られる。


オレキシンの薬理活性として、摂食量の増加が当初報告されたが、動物の脳室内に投与することにより、自発運動量の亢進、常同行動の亢進、飲水量の増加、覚醒時間の延長、交感神経系の活性化がみられ、血中コルチコステロン濃度の上昇、プロラクチン濃度の低下などのホルモン系への作用も観察されている。
オレキシンを持続的に異所性に発現させたCAG/orexinマウスとオレキシン神経欠損ナルコレプシーマウスorexin/ataxin-3マウスを掛け合わせたダブルトランスジェニックマウスで覚醒層におけるカタレプキシー様の脱力発作の消失と長時間隔世の維持ができるようになり、ナルコレプシー症状の消失が認められたこと、脳室内へのオレキシン投与でもナルコレプシー用症状の消失が認められたことより、ナルコレプシーン治療薬としてオレキシンが使える可能性がある。
しかし、持続的にオレキシン遺伝子を発現させたマウスでは、休眠相である明期において、長期のnon-REM睡眠が維持できないことから、オレキシン神経は、覚醒時には、活性化、睡眠時には抑制されるといった適切な活性調節により脳幹のモノアミン・アセチルコリン神経の活性を統合・制御し、睡眠・覚醒の各相を維持する機能を果たしていると考えられる。
縫線核(Raphe nuclei)や青斑核(LC:Locus ceruleus)、視床下部結節乳頭核(tuberomammillary nucleus:TMN)に存在するセロトニン、ノルアドレナリン、ヒスタミン神経などのモノアミン神経は、覚醒時には高い活性を示し、睡眠時に低下する。
視索前野のGABA作動性神経は睡眠時に活性が高く、この二つの系は相互に抑制しあって、睡眠と覚醒の相転移がスピーディーに起こるような”flip-flop”のシステムが作られていると考えられる。
しかし、この機構はこれだけだと容易に睡眠相と覚醒相が移り変わるため、オレキシンが介在して覚醒相におけるモノアミン系神経細胞の活性を強め持続していると思われる。

ventrolateral preoptic area VLPO:腹外側視索前野、limbic system:大脳辺縁系、Supraoptic nucleus SCN:視索上核
オレキシン産生神経に影響を及ぼす細胞外因子としてセロトニン、ノルアドレナリンは G-protein-gated inwardly rectifying potassium channels (GIRK)の活性化を介して,
すべてのオレキシン産生神経を強力に抑制し、 アセチルコリンは約三割のオレキシン神経を活性化する。コレシストキニン、グレリン、バソプレッシン、ニューロテンシンといったペプチドもオレキシン神経を活性化する。レプチンや細胞外グルコース濃度の上昇によってオレキシン神経は抑制される。

大脳辺縁系からの情動を惹起するような刺激(報酬を得られるような興味)、不安や恐怖に伴う刺激、レプチンの減少や、血糖値の減少(空腹)の状況下では覚醒状態を維持する必要があり、オレキシン神経はonの状態になり、脳幹のモノアミン神経系に働いて、覚醒を維持するとともに、視床下部の弓状核に働いて摂食亢進系を刺激する。

http://www.md.tsukuba.ac.jp/basic-med/pharmacology/orexin.pdf

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