川村所長のプライベート日記

2015年2月21日 土曜日

M3のオピニオンへの記事の掲載

医療維新

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シリーズ: 指導医の現実
DLBの根底には視覚情報処理の異常か
認知症専門医でも多い誤診、原因は「知識不足」
医療サイトのM3のオピニオンに下記のように形で2月4日の勉強会参加記録の記事が掲載されました。

オピニオン 2015年2月20日(金)配信川村昌嗣(川村内科診療所所長)
2015年2月4日 ヨコハマロイヤルパークホテル
演題「レビー小体型認知症の診断 ―鑑別診断と早期診断-」
演者:順天堂大学医学部精神医学教授 井関 栄三 先生

内容及び補足「
 認知症の原因疾患の割合は報告者により異なるが、おおむねアルツハイマー型認知症が50~55%でレビー小体型認知症が20%とするものが多い。レビー小体型認知症の診断基準は2005年に改訂版が提出された。

 DLBの発見者である小坂先生の連続認知症患者剖検調査結果では、DLBが約20%もあり、認知症専門医でも誤診が多く、その原因は、DLBの知識不足によると講演でおっしゃられていました。DLBを勉強してからは実際そのように感じています。

【レビー小体型認知症(DLB)の頻度(剖検例での検討)】
 必須所見として『正常な社会及び職業活動を妨げる進行性の認知機能低下として定義される認知症。顕著で持続的な記憶障害は病初期には必ずしも起らない場合があるが、通常進行すると明らかになる。』とあるように、病初期、早期診断をする際には、記憶障害が表に出ていない状況での診断となるので、以下の所見が重要となってくる。

 中核的特徴として挙げられている以下のうち二つを満たせば、ほぼ確実で一つを満たせば疑いとなる。
①注意や覚醒レベルの顕著な変動を伴う動揺性の認知機能
②典型的には具体的で詳細な内容の、繰り返し出現する幻視
③自然発生の(誘因の)ないパーキンソニズム

 詳細な内容で繰り返し出現する幻視は、記憶障害が主症状である認知症の症状としては、矛盾するような所見であり、DLBがアルツハイマー型認知症と異なる積極的な証拠となると個人的に考えています。

 次に中核的特徴に示唆的特徴が一つ以上村債する場合はほぼ確実、中核的特徴が無い場合でも、示唆的特徴が一つ以上あれば疑いとする示唆的特徴が以下のものである。
①REM期睡眠行動異常症(RBD)
②顕著な抗精神病薬に対する感受性
③ SPECTあるいはPETイメージングによって示される大脳基底核におけるドパミントランスポータ取り込み低下

 これらの画像検査所見は、認知症患者さんに診られた場合には、DLBと確定診断するのに有力な所見となるものの、認知症症状がない場合には、DLBを積極的に深堕する所見とはならない点に注意が必要です。

 そして参考となるのが支持的特徴で、通常存在するが、診断的特異性が証明されていない所見である。
①繰り返す転倒・失神
②一過性で原因不明の意識障害
③高度の自律神経障害(起立性低血圧、尿失禁など)
④幻視以外の幻覚
⑤系統化された妄想
⑥うつ症状
⑦CT/MRIで内側側頭葉が比較的保たれている
⑧脳血流SPECT/PETで後頭葉に目立つ取り込み低下
⑨MIBG心筋シンチグラフィーで取り込み低下
⑩脳波で徐派化および側頭葉の一過性鋭波

 DLBの主な病態は、個人的な感想としては、記憶障害というよりも、視覚野の神経の障害があるために、目から入った信号を本人の意思とは関係なく、ある一定方式に従って有機的に関連付け、現実世界には存在しない生物や物質の存在をしてとらえてしまう。視覚情報処理の異常が、根底にあるように思えて仕方がありません。

 そして、存在するとレビー小体型認知症ではないと考えるDLBの診断を支持しない特徴として
①局所性神経徴候や画像上明らかな脳血管障害の存在
② 臨床像の一部あるいは全体を説明できる他の身体的あるいは脳疾患の存在
③ 高度の認知症の段階になって初めてパーキンソニズムが出現する場合
である。

 臨床経過としては、認知症にパーキンソンニズムが同時あるいは遅れて出てきた場合には、レビー小体型認知症(DLB)と診断する。その期間は、一年以内の場合とする『一年ルール』を推奨されている。

 DLBの認知機能障害は、初期においては記憶の再生障害が中心で、遂行機能障害、注意障害、視空間障害、構成障害が目立つ。多幸的な感じではなく、不安と困惑が強いが、進行するとアルツハイマー型認知症との鑑別が困難となるが、多くは認知機能障害は高度とはならない。

 認知機能の動揺性については、初期に目立ち、注意・覚醒レベルの変動が数分~数時間、数日~数週の周期で訪れ、日中の傾眠傾向があり、その覚醒時や起床時、夕刻に目立つ。

 時間帯により、光の強弱や方向性の違いがあるために、視覚情報処理の状況が異なるために、認知機能の動揺があるのかもしれません。

 幻視については、多くは、人物幻視と小動物幻視であるが、非生物幻視もある。人物や小動物が家の中に入ってくるといったもので、すぐに消失するが繰り返す。幻視の内容を覚えており、詳細に語ることができる。幻視の自覚がなく、不安を伴う。

参:DLBの精神症状の症候学的分類
因子1(妄想性誤認症候群):人物の誤認、Capgras症状、幻の同居人、人物の重複記憶錯誤、場所の重複記憶錯誤 両側前頭弁蓋部、左島皮質、左海馬、左側坐核の血流低下と関連
Capgras症状:ソジーの錯覚『あなたの両親や恋人は、実は何者かに送り込まれた本物そっくりなにせものかもしれない。さらには、あなた自身さえもが、自分でも気づかないうちににせものにすりかえられているのかもしれない。』といった錯覚
因子2:人物の重複記憶錯誤、「亡くなった身内が生きている」症状、「今いない身内が家にいる」症状
因子3:人物の原始と実体意識性 両側頭頂葉及び左後頭葉腹側の血流低下と関連
因子4:動物や虫の幻視と非生物の幻視

幻視のテスト:パレイドリア・テスト
 パレイドリア【pareidolia】:精神医学の用語。空の雲が大入道の顔に見えたり、壁のシミが動物に見えたりするように、対象が実際とは違って知覚されることをいう。意識が明瞭ないしはほとんど障害されていない状態で起きるもので、判断力は保たれ、それが本当は雲であり、シミであるとわかっているが、一度そう感じるとなかなかその知覚から逃れられない。熱性疾患の時にしばしば体験されるが、せん妄状態の時や薬物名提示にも出現する。

 DLBで認められる幻視とパレイドリアの間には明らかな減少額的類似性があり、東北大学の西尾らはパレイドリア・テストを用いて、パレイドリアを誘発・定量化することに成功した。

 アルツハイマー型認知症患者や健康高齢者に比して、DLB患者で多くのパレイドリア反応を認めたこと、ドネぺジルの投与によって幻視の改善のみならず、パレイドリア反応数の減少も認められたことからパレイドリア・テストの鑑別診断や治療反応の評価における有用性が示唆されている。

 DLBのパレイドリアは一般の人がシミや汚れから人の顔を連想するようなものとは異なり、通常の人が見た場合には、そのシミや汚れからは想像困難なものがあたかも存在するように感じるものであり、必ず同じものとして認識されているものといえます。

 パーキンソニズム:臨床面ではDLBに伴うパーキンソンニズムはパーキンソン病と比較して安静時振戦や左右差が少ないといわれてきたが、近年は、DLBとパーキンソン病は同一疾患の表現型のバリエーションとして理解しされるようになってきた。病理学的にはリン酸化αシヌクレイン凝集物を主成分とするレビー小体を広範囲に認める。長期かつ高度のパーキンソン症状を認めるパーキンソン病は黒質等の脳幹病変とそれに対応するドパミン系神経細胞の障害が高度であるが、より高度の認知症症状を有するDLBでは大脳病変が高度でアミロイドβタンパク沈着を随伴しやすい傾向がある。

抑うつ:DLBに伴う抑うつの特徴として以下のものがある。
①GDSを用いるとDLBの抑うつはアルツハイマー型認知症に比べて有意に高い
②認知機能・年齢・自律神経機能といった指標とは独立している
③質問紙法の回答では抑うつにより特異的な症状が前景に立っている
④妄想・焦燥・現実感の消失など他の精神症状の合併がない陰性の抑うつに比べて多い
⑤これらの特徴にもかかわらず、臨床場面では抑うつと判断されることは少なく、質問紙法における主観的解糖と周囲からの客観的観察の間にかい離がある

 治療に関しては、アセチルコリン活性低下がみられるため、抗コリン作用の強い薬物の投与は好ましくないと考えられているが、明らかな系統系な研究結果はなく、サン関係抗うつ薬であるノルトリプチリン(トリプタノール)やデシプラミンの方がSSRIであるパロキセチン(パキシル)やシタロプラム(セレクサ)よりも有効であったとする報告がある。

 最近興奮、幻覚妄想を伴う鬱状態にミルタザピン(レメロン、リフレックス)が奏功したDLB例の報告がある(老年精神医学雑誌,22; 84-90,2011)。

 自験例DLB78例の臨床症状の検討では症状の出現頻度と診断年月日との差を見てみると。
便秘 78% -8.2±11.5年
嗅覚障害 46% -7.0±10.0年
抑うつ症状 26% -5.0±11.9年
レム睡眠行動障害 64% -3.6±8.5年
立ちくらみ 35% 0.2±3.2年
失神 17% 1.0±4.0年
失禁28% 3.3±3.2年
幻視 87% 1.5±2.7年
パーキンソニズム 86% 1.5±2.7年
であった。

 DLBにおいては早期に認められる症状としてレム睡眠行動障害が有用であり、認知機能障害が生じた後に立ちくらみや、失神、幻視、パーキンソニズムを認めた際には積極的にDLBを疑うべきである。

 嗅覚障害はアルツハイマー病でも認められるので、判断材料にはなりませんが、立ちくらみ、失神、抑うつ症状が認知症状に伴った場合には、DLBを強く疑い、レム睡眠行動障害を認めたら、DLBとしてもよさそうです。

SPECT画像のアルツハイマー型認知症(AD)とDLBとピック病(前頭側頭型認知症:FTD)の比較
AD:側頭葉から頭頂葉と後帯状回の血流低下
DLB:後頭葉の血流低下
FTD:前頭葉の血流低下
 SPECTでの血流低下の部位で、ある程度はこの3型に分けることができます。

ドパミントランスポーターシンチグラフィ(ダットスキャン)
 ドパミントランスポーターは脳の線条体内に存在する黒質線条体ドパミン神経の終末部に高発現しており、パーキンソン病やDLBで低下しているため、ドパミントランスポーーターに高い親和性を持つ123I-ioflupaneを用いたSPECTで取り込み低下がみられる。

MIBGシンキンシンチグラフィ

交感神経の機能検査である123I-MIBG心筋シンチグラフィでは交感神経後線維の障害を伴うDLBでは低下を伴う。認知症を主張とする神経疾患ではDLBに特異的と考えてよく、早期診断の補助検査として有効と考えられている。

海外ではあまり行われていない検査ですが、認知症患者さんにこの所見があれば、DLBと診断してもよいと考えられます。

※本記事は、2015年2月12日のブログ『川村所長の勉強会参加記録』で発表した内容を、編集部でタイトルとレイアウトのみ変更したものです。
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投稿者 川村内科診療所

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