その他

2016.10.04

ストレスチェック制度の課題と生かし方 渡辺洋一郎 先生

2016年10月1日 
演題「ストレスチェック制度の課題と生かし方 ~有効活用のために~」
演者: 医療法人渡辺クリニック 一般社団法人日本精神科産業医協会 共同代表 渡辺洋一郎 先生
場所:TKP横浜ビジネスセンター
内容及び補足「
ストレスチェック制度の目的は、法律上以下のようにきめられた。
*労働者の心理的な負担の程度を把握するための、医師または保健師による検査の実施を事業者に義務付ける。
*事業者は、検査結果を通知された労働者の希望に応じて医師による面接指導を実施し、その結果、医師の意見を聞いたうえで、必要な場合には、作業の転換、労働時間の短縮その他の適切就業上の措置を講じなければならないこととする。
つまり、労働者のストレス状態のチェックを行うのではなく、ストレス症状のもとになる「ストレス因子=職場環境」のチェックである。
目標は労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止し、職場環境の改善を図るために、定期的にストレスのチェックを実施し、従業員のストレス状況の改善、働きやすい職場の実現を通じて、労働者の精神的健康の増進と生産性の向上、事業上の健全な発展につなげることが目的である。
したがって、ストレスチェックにかかる費用は、経費ではなく、投資であるといえる。

このストレスチェック制度にかかわる医者は、産業医として、ストレスチェックの企画、面接指導、職場環境改善への提言者としての参加と、精神科医としてストレス者に対する治療や、面接指導を行う医師としての参加という二面がある。

ストレスチェックの内容は、仕事のストレス要因、周囲の支援、心身のストレス反応と三項目から評価される。

アメリカ国立労働安全衛生研究所NIOSHの職業性ストレスモデルは下図のように、個人的要因、職場のストレス要因、非職業性ストレス要因、環境要因といった因子の修飾によりストレス反応が生じると捉え、チェックシートの結果を評価し、職員への面接指導や治療の必要性の有無を判断していくことになる。

その個人の対応の他に、チェックシートの結果を集団ごとに集計・分析し、各職場における、仕事の量的負担、仕事のコントロール状況、上司の支援、同僚の支援を評価し、職場環境の改善に役立てることも必要である。

ストレスチェックを実施する際にまず実施できる状況に会社の健康管理体制ができているかどうか、産業医が存在し、その働きを実施できているかという制度の問題の他に、労働者がアンケートに正直に回答できるような体勢や枠組みが確保できているかどうかの検証が必要である。ストレスチェックの実施に関与する人間や組織において個人情報の保護がきちんと行われているかどうかの問題がある。
そして、面接指導を受ける労働者に対して『事業者は医師の意見を聴取し、必要に応じ事後措置を取らねばならない』と法律で定められているが、以下のような問題点がある。

面接指導の前に、労働状況に関する情報が必要であり、疲労蓄積度を受診者本人から聞き出すことも必要であり、抑うつ症状に関する質問票にチェックしてもらうことも必要である。
これらの情報をもとに、面接受診者の症状やストレス状態の確認を行い、医療機関受診の必要性を判断し、その後の経過フォローの計画を立てる。

面接で得られた情報を職場改善に役立てるためには、分析結果を役立てられるかどうか現在の状況文政期をすることも必要であり、その現状を踏まえて、分析結果を職場環境改善に役立てられるための組織改編も必要である。

そのために以下のことを念頭に置き取り組む必要がある。

PDCAサイクル:第二次世界大戦後、ウォルター・シューハート、エドワーズ・デミングらが提唱した非事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法の一つで、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の四段階を繰り返すことにより、業務が継続的に改善される。
https://ja.wikipedia.org/wiki/PDCA%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB

メンタルヘルスチェック体制が社内で完備できない時には、外部機関へ委託することになるが、その場合、以下のような問題点が生じる。

これらの問題点を踏まえて、各社ごとに具体的な課題とそれに対する解決策を講じる必要がある。
一例を下表に上げる。

メンタルヘルス不調の一次予防に対して、個人レベル、職場レベルという視点で考えてみると以下のようになる。

職場環境の問題点を平成24年の労働者健康状況調査で見てみると、職場の人間関係が一番大きなウエイトを占めている。

職場の人間関係改善のためには、コミュニケーションの向上が必要であり、そのためには、管理監督者、組織ごと、職場ごと、セルフケアの研修が必要となる。

研修の内容として、相互理解型のコミュニケーションが必須であるが、通り一遍等の講義では身に付きにくく、ロールプレイが有効な研修となる。

管理監督者研修「ラインケア研修」の例を挙げてみる。

「セルフケア研修」の例を挙げてみる。

『多忙な時、みんな一生懸命に働いたが、不良品が出てしまいその原因は、Aさんが失敗したことだと思われる』場合を、社会原理からその職場環境を考えてみよう。

どちらがよく、どちらが悪いという問題ではないが、それぞれの立場を、河合隼雄先生は、以下のように、それぞれの特徴を表現している。

このような表に記載すると、母性原理に成り立つ従来の日本文化的な依存性は欠点が多く、欧米文化的な自立性に欠けている点が問題のように聞こえるかもしれないが、河合隼雄先生は『自立は依存によって裏付けられている』と考え、両者のバランスが重要であるという点を唱えている。
つまり、人間関係において、適度な依存欲求が満たされると、それは自立へのエネルギーとなる。そして、自立した個人は、他社の依存を受容できるようになり、このような連鎖が、労働や、ひいては組織の成長につながるといえる。
確かに旧来の職場においては、過度な依存性のために個々の社員の成長が阻害されている面が少なからず存在しており、その依存が悪いものと考えられ、近年は自律性が強調され過ぎる強引な成果主義となっている部分が多く見受けられる。
したがって、依存性(母性原理)と自立性(父性原理)の適切なバランスが重要となってきている。

職場メンタルヘルス体制の構築のためには、労働者個人へのアプローチとしては、従来の医療モデルの流用だけでなく、ポジティブなセルフケアが必要であり、職場へのアプローチとしては、休職・復職支援体制づくりばかりでなく、働きやすい職場環境づくりが必要であり、そのためのストレスチェック制度である。

ストレスチェックの結果を入り口として、労働者の気づきと成長を促し、労働者の適性に合った仕事に配置することにより、労働者のパフォーマンスをよりよく発揮できるように対応しつつ、より良いコミュニケーションを摂ること、相互に支援していくことにより働きやすい職場環境を作り、労働者の労働意欲を向上させ、労働者がより少ない不可で、最大限のパフォーマンスを発揮できるようにすることが重要であり、そういった対応の結果、労働者の健康増進と同時に企業の業績向上につながるはずである。

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