その他

2017年9月14日 木曜日

帯状疱疹 浅田秀夫教授

2017年9月7日 
演題「帯状疱疹の病態、診断、治療、予防について」
演者: 奈良県立医科大学医学部皮膚科学 浅田秀夫教授
場所:横浜ベイホテル東急
内容及び補足「
帯状疱疹(Herpes Zoster)と水痘症は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV:Varicella-zoster virus)による感染症である。


ヘルペスウイルスは長さ150kbp(15万塩基対)、全量180nmのDNAウイルスである。

ヒトヘルペスウイルスは、現在までに9種類が見つかっている。


初めてVZVに感染した時には、水痘症として発症し、水痘症治癒後も神経節に潜伏し、加齢やストレス、過労、基礎疾患の悪化により細胞性免疫力が低下すると、VZVが再活性化し、神経説を伝わって皮膚に到達し、帯状疱疹として発症する。したがって、水痘症の患者から水痘症が、帯状疱疹の患者から水痘症にかかったことない乳幼児に水痘症がうつるということはあるが、水痘症を発症した人から帯状疱疹が発症することも、帯状疱疹の患者から帯状疱疹がうつることはない。


帯状疱疹の活性化時期には体液中にVZVウイルスが存在している可能性があり、口腔内から検出されることもあり、体液(の接触による)感染や飛沫感染、物品を介しての感染、皮膚と皮膚の接触感染の可能性がある。
妊娠中に帯状疱疹を発症しても非妊娠時と経過は変わらないが、妊娠初期の8~20週頃までの感染の際には、先天性水痘症候群(CVS:Congenital Varicella Syndrome)を2%程度発症することがある。
症状としては、子宮内発育遅延、低体重出生、四肢形成不全、帯状疱疹に伴う皮膚瘢痕、小頭症、小眼球症や白内障および網脈絡膜炎のほか眼球の異常や発達障害などがみられる。また妊娠20週~分娩前21日の感染では、乳児早期の帯状疱疹が出現する。分娩前21日~分娩前6日の罹患では、生後0~4日に発症した場合には、母親から免疫の移行効果が残存しており軽症で済むが、分娩前5日~分娩後2日の弛緩では30~40%の児に出生後5~10日に水痘症を発症し重症化することがあり、死亡率は30%との報告もある。このため、この期間に罹患した母親から出生した児に対しては出生直後に静注用ガンマグロブリン投与と発症した場合にはアシクロビル投与がすすめられる。
http://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/1/13268/20160527200301364382/120_219.pdf

発症年齢は、60歳代を中心に高齢者に多くみられる疾患であるが、若年者においても発症する。


1997年から2011年の間宮崎県皮膚科学会に所属する皮膚科46施設を受診した帯状疱疹初診患者75789人(男性31,565人、女性44,224人)の検討をした宮崎スタディの結果では、宮崎県の人口は117万6000人から113万1000人と3.8%減少したが、帯状疱疹患者数は4232人から5654人と33.3%増加している。発症率は年間1000人当たり3.61人から5.00人と38.5%上昇し、15年間の平均発症率は4.38人であった。

発症数、発症率とも50歳以上で急激に上昇した。

この傾向は15年間同様であり、特に60歳以上で経年変化の増加が大きくなっている。

性差は40歳未満では小さいが、40~60歳台では女性の発症率は男性よりも優位に多かった。全体では年間1000人当たりの発症率は男性で3.87人、女性で4.82人であった。
帯状疱疹の発症は夏に多く、冬に少なかった(冬の1.22倍)が、これは水痘症の発症頻度とは逆の関係にある。子供に水痘症が発症している冬場は、子供からのVZVによるブースター効果があるために発症が少ないとする説もある。

日臨皮会誌 2012;29:799-804、J Med Virol 2009;81:2053-8

主な発症部位は、潜伏感染していた神経節の支配領域である身体の片側に帯状に水泡を伴う皮疹が出現する。胸から背中にかけて最も多く見られ、6割の人が上半身に発症する。


皮膚症状およびその経過
神経支配領域に帯状にやや盛り上がった赤い斑点が出現し、その後、水泡が出現する。大きさは粟粒大~小豆大でウイルスが原因となる水泡の特徴である中央部の窪みがみられる。
皮膚と神経の両方でウイルスが増殖して炎症が起こるため、皮膚症状だけでなく強い痛みが生じる。
   


合併症:
発熱や頭痛がみられることが多く、顔面の帯状疱疹では、角膜炎や結膜炎を合併し、失明のリスクも生じる。稀に耳鳴りや、難聴、顔面神経麻痺などが生じるハント症候群になることもある。

Ramsay Hunt Syndrome:VZVによって生ずる顔面神経麻痺を主張とする疾患。1907年にJames Ramsay Huntが自験例をまとめて報告したことに由来する。小児期に罹患した水痘の口腔粘膜疹からVZVが逆行性に、あるいはウイルス血症によって顔面神経の膝神経節に到着後潜伏し、後年それが再活性化することで神経炎が生じ、腫脹した神経が骨性顔面神経管の中で自己絞扼を生じ顔面神経麻痺(顔面半側の表情筋運動障害)が発症する。症状は周囲の脳神経にも波及し、耳介の発赤・水疱形成、耳痛、難聴、めまいなどを合併する。稀に下位脳神経炎や脳炎をきたし重篤化することもある。

https://www.niid.go.jp/niid/images/iasr/34/404/graph/df404a1.gif

後遺症
急性の炎症による神経損傷が強い場合に帯状疱疹後神経痛を生じることがある。

ZAP(Zoster-Associated Pain):臨床試験において痛みを評価する際の指標として、帯状疱疹に伴う痛みを、急性期、亜急性気、慢性期と連続的にとらえた概念である。


帯状疱疹後神経痛PHN:postherpetic neuralgia):帯状疱疹の皮疹が消失し、帯状疱疹が治癒した後も続く痛みのことで、帯状疱疹の合併症としてはもっとも頻度が多く、3ヶ月後で7~25%、6ヶ月後で5~13%に見られるという報告もある。
持続的に焼けるような痛み、一定の時間で刺すような痛みを繰り返す、ひりひり、チカチカ、ずきずき、締めつけられる、電気が走るなどと表現される。感覚が鈍くなる状態(hyperalgesia)や、触るだけで痛みを感じるアロディニアもよくみられる。

小豆島スタディ
小豆島(人口約3万人、面積153.30km2)在住の50歳以上の住民を対象に2008年12月~2009年11月に登録し、3年間12,522人の住民を対象に疫学調査を行った。
臨床所見から帯状疱疹の発症が疑われた症例は438人、そのうちウイルス学的検査により帯状疱疹と診断された患者は401名(DNA検出者396人、抗体価の上昇のみ5人)で検討を行った。
女性は男性と比較して1.5倍帯状疱疹になりやすく、70歳以上の者は50~69歳のものと比較して1.4倍帯状疱疹になりやすい結果となった。年齢層別の年間発症率は、50~59歳で0.93%、60~69歳で0.89%、70歳以上で1.23%であった。

水痘発症が少ない7~9月に帯状疱疹の発症が最も多い。


帯状疱疹の発症:
VZV特異的細胞性免疫を調べるために、水痘抗原を用いた皮内反応を5683人に施行した。
加齢に伴い反応が低下している。

水痘皮内反応が強い人ほど帯状疱疹発症率は低かった。

紅斑長径が10㎜以上と未満ではリスク比0.27という結果になった。


帯状疱疹発症後一日以内のVZV抗体値(=発症して抗体価が上がる前の抗体値)と帯状疱疹発症との間に差は認めなかった。つまり帯状疱疹発症には、細胞性免疫は密接に関与しているが、液性免疫は影響していない。


皮疹の大きさ:
帯状疱疹発症者の皮疹の大きさと発症以前の水痘皮内反応の紅斑長径との間には負の相関がみられる(皮内反応が大きいほど、帯状疱疹の皮疹が小さい)。


急性期の疼痛の強さ:
急性期・亜急性期の疼痛重症度と水痘皮内反応の紅斑長径との関係を見てみると、皮内反応の紅斑長径が5㎜以上と未満で有意な差が見られた(皮内反応が強いほど痛みが軽い)。


PHNの発症頻度:
水痘皮内反応長径が5㎜以上だったり、皮内反応で浮腫が認められた症例においてはPHNの発症が少ないことが分かった。

帯状疱疹発症後1日以内のVZV抗体価はPHN発症者とそうでない人の間には有意な差を認めなかった。

以上のことをまとめると、帯状疱疹の液性免疫は効果がなく(抗体価が高くても予防効果はない)、細胞性免疫が重要であり、ワクチン作成においてはこのことを重視する必要がある。

予防:
過労や加齢、体力低下などでリンパ球数が減少すると、ヘルペスウイルスが活性化し、神経の炎症と神経に沿って支配領域の皮膚に皮疹を作る。


38546人の60歳以上を対象とした3年観音追跡調査で957名の帯状疱疹が発症したが、Oka株をもとに作成されたZOSTAVAXを使用したワクチンを接種した群では51.3%、PHNは66.5%抑制することができた。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa051016#t=article

ZOSTAVAX接種後の発症阻止効果の持続性については、接種後4~7年間では、帯状疱疹発症とPHN発症が、それぞれ39.6%、60.1%減少し、疾病による死亡や損失した生活の質を示す疾病負荷は50.01%減少することが明らかにされた。また、接種後7~11年間では、帯状疱疹とPHN発症が、それぞれ21.1%、35.4%減少し、疾病負荷が37.3%減少したと報告されている。さらに、60歳以上の176,078人を対象とした研究では、ワクチン接種後1年以内の帯状疱疹発症阻止効果はワクチン非接種者と比較して68.7%で、接種8年目ではその効果は4.2%であったと報告されている。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000151542.pdf

治療:
現在帯状疱疹に対して用いられる経口薬はアシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルの核酸類似体のみであったが、2017年7月3日ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬であるアメナビルの製造販売が承認された。

DNAポリメラーゼ阻害薬は、ウイルスDNAポリメラーゼの基質の1つであるデオキシグアノシン3リン酸化体(dGTP)と競合拮抗し、DNAポリメラーゼの働きを阻害する。DNAポリメラーゼ阻害薬はヘルペスウイルス感染細胞内でウイルス由来チミジンキナーゼによってリン酸化される必要があるため、ヘルペスウイルスに非感染細胞には影響を与えにくい。
ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬はDNA複製開始の際に、二重らせん構造をほぐす際に働くヘリカーゼ・プライマーゼ複合体を阻害することで、2本鎖DNAの開裂を防ぎ、DNA複製を開始させるRNAプライマーの合成を抑え、ヘルペスウイルスのDNA複製を阻害する。

参考:
マルホ製薬 帯状疱疹
帯状疱疹ワクチン ファクトシート 平成29年2月10日 国立感染症研究所
帯状疱疹・水痘 予防時代の診療戦略 Medical Tribune 2016年12月15日発行

投稿者 川村内科診療所

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