その他

2018年3月20日 火曜日

臨床医のための時間医学を応用した食事指導と腎性貧血への対応

2018年2月22日 
演題「臨床医のための時間医学を応用した食事指導と腎性貧血への対応」
演者:横浜市立市民病院 腎臓内科 岩崎 滋樹 先生
場所:横浜イーストスクエア
内容及び補足「
阿部圭志らは慢性糸球体腎炎で種々の治療にもかかわらず進行し末期腎不全で透析導入まで経過観察できた83例の腎機能の推移を示した。多くの症例が40か月以内に透析になっている。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjnephrol1959/45/1/45_1_1/_pdf/-char/ja

我が国で高率にみられるIgA腎症の予後や考え方は昔から比べ大きく変わってきた。
1993年には日本とフランスから、IgA腎症の予後に関する報告が相次いで発表された。この時点では20年間の予後として38%前後が末期腎不全に陥ると報告された。腎生検時の高血圧、腎機能低下、高度蛋白尿、患者の高年齢などが予後判定因子として認識された。
その後の検討で、本症の症例数が日本においてきわめて多いこと、長期予後が比較的不良であることなどが明らかになってきた。
IgA腎症診療指針―第2版―において、我が国のIgA腎症患者の予後は、眼参議有無細胞増殖と基質増加、糸球体の硬化、半月体の形成、ボウマン嚢との癒着、尿細管・間質病変、血管病変の程度から、
1 予後良好群:透析療法にいたる可能性がほとんどないもの
2 予後比較的良好群:透析療法にいたる可能性が低いもの
3 予後比較的不良群:5年以上20年以内に透析に移行する可能性があるもの
4 予後不良群:5年以内に透析療法に移行する可能性があるもの

IgA腎症診療指針―第3版―

個人のクレアチニン値の変化を追ってみると下図の赤線のように直線的に変化する人はおらず、ほとんど変化しない時間が長く、悪くなり始めたら急激にクレアチニン(Cr)値が上昇する。赤の直線は、2点しか測定できないために直線をひくことになっただけである。


この変化の理由を考えてみよう。蛋白質が代謝されたものを腎臓から排泄している。通常の糸球体数があれば、1日4時間ほど働けば、代謝産物を排泄できる。腎疾患の進行により糸球体数が減少しても、働く時間を延長すれば、身体に代謝産物は蓄積されてこない。働く時間が延長しても代謝産物を排泄できなくなって初めてクレアチニン値が上昇してくるのである。
血清クレアチニン値   1                 2               3                 5
代謝産物                    10個   10個   10個    10個
腎機能                     10人   5人   3人    2人
1人当たりの処理数   1個             2個      3個              5個
ここで食事療法としてタンパク制限食を取って貰うとこの代謝産物の量が減少する。上記表の蛋白負荷が半分に減少したとすると
血清クレアチニン値     1              2               3                5
代謝産物                     10個    5個    5個     5個
腎機能                     10人   5人   3人   2人
1人当たりの処理数   1個             1個    1.6個        2.5個

三大栄養素のなかの炭水化物と脂質は、代謝されると水と二酸化炭素となり、二酸化炭素は肺から排泄されるので、呼吸器疾患がない場合には問題となることは少ない。蛋白質からは窒素化合物が合成され、これは腎臓から排泄するしかない。
従って腎機能が悪化してきた場合には、窒素化合物の合成量を減らすためにタンパク制限が必要となるのである。
自験例ではあるが、初診時の血清クレアチニン値が2.0~3.0mg/dLの糖尿病12例、非糖尿病9例の変化は、それぞれ3年、5年間は血清クレアチニンの上昇は見られなかった。
血清クレアチニン1.5~1.99の糖尿病6例、非糖尿病例35例では、それぞれ5年10年まではあまり上昇は見られなかった。
血清クレアチニン6.0㎎/dL前後の症例に対して、0.7g/㎏/day、0.5g/kg/day、0.3g/kg/dayとタンパク制限食を実施したところ透析導入時期を遅らせることができた。特に0.3g/kg/dayの制限食の症例では60ヶ月でも透析導入者はおらず、80ヶ月で1/3程度とかなり良好な経過であった。
食事療法の原則
1 体重を変えない食事量(太り過ぎは除く)
2 タンパク摂取を減らしているカロリー分を他の栄養素で増やす
3 NaClを控える
4 カリウムに注意
である。

食事療法の指導を行う際の問題点を以下に上げる
1 多くの外来患者さんは、低蛋白食指導の全段階の人が多い

標準量よりも明らかに多く食べているのに、『自分は食べていない』と判断している。こういった人に対してまず行うべき指導は、多い量を食べている人の食事感覚のずれを是正することである。
『腹一杯』食べて初めて『食べた』という感覚になっている。つまり『腹一杯食べていないと物足りない』のである。
余分に食べている量を通常量に戻すだけでも減量ができるのである。

2 太り過ぎでない人がタンパク制限をした際にどんどん痩せてくる
痩せてくるさいに脂肪だけでなく、筋肉が分解されてくるので、運動能力が低下してくるので注意が必要である。
減量の目安としては、月に1㎏でよい。むくみがある場合には、体重減少したさいにむくみの改善がメインである場合があり注意が必要である。
食事指導の実際
1 食事内容を3日間記載してもらい、分析し、蛋白量や塩分量、食事内容の偏りなどの傾向を知る。
2 患者さん特有の食事傾向により個別の対応を栄養士さんに食事指導を行ってもらう。
3 食事内容変化による効果を知ってもらう。

蛋白を減らせば減らすほど効果がある。
何を努力したかを聞くだけで効果がある。
患者さん特有の食事傾向を知ることにより無理な目標ではなく実現可能な目標を決定する。
例:お肉、お魚を半分にし、ご飯をその分増やしましょう。
やる気のある患者さんには蓄尿してもらい、尿への排泄蛋白量から推定される具体的なタンパク摂取量を知らせる。
カロリーが十分に摂取できていれば、体重は維持され、タンパク摂取量を減らしても特に問題となることはない。
低蛋白食は苦行のように思われるかもしれないが、
ドイツミュンヘン大学の栄養学者カール・フォン・フォイト教授がドイツ人の食生活調査から得たデータを基づいて作った理論から明治政府が当時の小柄な日本人に応用し栄養所要量を「蛋白質96g、脂肪45g、糖質415g、2450kcal」と定めたが、この時点での日本人の食生活は「蛋白質56g、脂肪6g、糖質394g、1850kcal」であったが、http://sukoyaka-labo.com/health/4207/
明治末期には、米を主食として、野菜、イモ類、穀物を取り、他の品目はごく限られた量しか消費されていなかった。魚介類も漁村以外では、近年の1/10しか消費されておらず、蛋白源は大豆・味噌が重要な食品であった。


http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/0280.html

食事摂取面の比較をしてみると、大正時代に比べると、昭和初年は穀物類、イモ類の消費量の減少と、果実、牛乳、乳製品、肉類、魚介類、油・油脂、砂糖の増加があった。1960年代には各種食品が増加し、1970年代に入り、動物性食品が全体的に急増、果物も野菜も増加し、基準的な栄養素摂取レベルに達した。

http://www.hosp.mie-u.ac.jp/epidemiology/_src/1434/AokiVol3_pc.pdf

こういった栄養学的な変遷とはかかわらず、日本人の栄養失調は戦中・戦後の食事事情の悪化あるものの、江戸時代や明治期の人が体格的には低身長ではあったものの、非健康であったとか、低栄養であった、体力・持久力不足であったかというとそういったことはなく、身体を動かしていない現代の方が、逆に悪化していると考えられる。
最低限の蛋白摂取量が維持され、摂取総カロリーが維持されていれば、筋肉量や菌曲の低下は来ないといえる。
筋肉量が減少する際に筋肉が分解されると、尿素窒素の産物が増加し、腎臓に負担が増えるため、筋肉が分解されない料のタンパク制限と食事摂取カロリーの維持が重要となる。
そこで患者さんにお勧めしている食事指導は、
1. 朝パン食とし、おかずにソーセージやベーコンなどの蛋白質を入れない。
2. 昼食は麺類、とし汁を飲まない。トッピングにも蛋白質がないものを選ぶ。
3. 夜食は良質の肉などの蛋白質50gを目安によく味わって食べる。

3. 塩分を控える
減塩の生活指導で一番問題となるのが、『塩分摂取量は普通』と思っている人が多いこと。
あるアンケート調査によると、塩分摂取量の多い人の半分しか、『自分は多いかも』と思っていない。こういった人への減塩指導は困難であるため、過食を減らすように指導をするだけで、ある程度の減塩が実践できる。逆に痩せている人は、過食ではないので、減塩指導が困難である。
塩分の摂取量は日本においては地域差が著明で、北高南低である。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/eiyogakuzashi1941/38/3/38_3_155/_pdf/-char/ja

NEJMに太っている人ほど、塩分感受性が大きいとされていることも実感される。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJM198908313210905

4. 高K(カリウム)に注意
1. 野菜の摂り過ぎが多い。
2. 『野菜を煮溢せばK摂取量が減る』と誤解している人が多い。煮溢しても、鍋物やスープのようにして煮溢したものを飲んでしまったら意味がないし、細胞が壊れるまでに溢さないと、Kが煮溢される量はごくわずかなので、あまり効果的でないのが実情である。
3. 腎不全期の高カリウム血症は、カリウム摂取量よりも高蛋白食によるアシドーシスとなっている状態の方が問題であり、摂取するリンの量に注目する必要がある。低蛋白食にすると、高カリウム、高リン血症が抑えられる。
4. 腎不全期の高カリウム血症には、重層やカリウム排泄性利尿薬が良く効く。

時間栄養学
細胞分裂は夜間に起こるので、抗がん剤投与は夜に投与するほうがより効果的である。
骨は夜に合成されるので、カルシウムの摂取は夜が良いといったように、一日の時間変化を考えて、食事や薬物投与の効果を高める取り組みである。
体内時計を形作っている数多くの時計遺伝子が発見された。
哺乳類の概日リズムは4つの時計遺伝子およびその転写翻訳産物である時計蛋白質により制御されている。
Clock:Circadian locomotor output cycles kaput
Bmal 1:Brain and muscle arnt-like protein 1
Period:Per
Cryptochrome:Cry
はじめに時計蛋白質Clock、Bmal 1の二量体がCry上流のE-box配列に結合し転車が促進される。この時点(日中)では糖新生は抑制される。
転写の促進及び翻訳により生じた時計蛋白質PerとCryは二量体を形成し、自らの転写を促進していたClock-Bmal 1二量体に結合し、転写促進の抑制を行う。この時点(夜間)で糖新生は促進される。

このClockが障害されると太ることが実験で認められた。
マウスは日中旧足趾、夜間活動する、人間とは逆の行動パターンであるが、Clockミュータントマウス(C)はコントロール(W)に比較し日中(L:light)での活動はやや増加し、夜間(D:dark)の活動がやや減少した。食事の摂取量は日中で著増し、夜間はやや減少。代謝率は、日中で著増し、夜間やや低下した。

通常食でも高脂肪食でも、Clockミュータントマウスでは摂取カロリーは増加し、体重も増加した。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15845877

喫煙習慣がなく、夜間勤務をしていない健康な女子大学生33名(20.5±1.2歳)に対して、同じカロリーの食事を、時間をずらして、朝型(7:00、13:00、19:00)と夜型(13:00、19:00、1:00)の食事摂取にして食事誘発性熱産生DIT(Diet Induced Thermogenesis)を測定した。
1回目の食事と3回目の食事で、朝型の方が明らかにDITは高値を示した。

3食合計のDITを比較すると朝型は0.878Kcal/Kg/9hであるのに対して、夜型は0.654 Kcal/Kg/9hと発熱量は3/4に低下している結果となった。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs/63/3/63_3_101/_pdf/-char/ja
つまり同じ食品を食べても、夜型になるだけで太りやすくなってしまう。
健康な女子大生で、毎食同じ量の塩分を接種してもらっても、ナトリウムと塩素の尿排泄には時間差があり、朝や昼に比べて夕食後に多くなる。

これは、朝に高く夜に低い血中アルドステロンの日周リズムと逆相関している。

アルドステロンは、腎臓でのナトリウム再吸収を促進し、間接的に昇圧作用を示す。グルココルチコイドはアルドステロンの感受性を高め、両ホルモンの血中レベルが高くなる朝は、仕事や活動をするために血圧が高くなりやすい。アルドステロンのリズムが正常であれば、高い朝と昼に食塩を制限し、有が旗比較的制限を緩やかにすることが可能である。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/137/3/137_3_120/_pdf/-char/ja

蛋白質摂取量が同じでも、三食均等に摂取する場合と夕食に偏って摂取する場合では、筋肉合成量に違いが出てくる。ある一定以上の筋肉の合成ができないために、三食均等に蛋白質を取った方が効果的である。

https://academic.oup.com/jn/article/144/6/876/4589937

腎性貧血:
心かとともに赤血球の産生場所は変わってきた。

エリスロポイエチンは、腎臓の尿細管周囲の線維芽細胞で産生されている。腎不全になるとこの線維芽細胞が変質し、エリスロポイエチンを産生しなくなり、腎性貧血が生じてくる。

http://www.jocmr.org/index.php/JOCMR/article/view/2760/1628
正球性正色素性貧血で、網状赤血球の反応性増加を欠いており、多くは貯蔵鉄フェリチンの増加をともなう。フェリチンが減少している状況下においては、鉄補充の上判断をする。
この状況下においては、貧血を改善しようとして、エリスロポイエチンの産生は亢進しており、エリスロポイエチンの値から腎性貧血かどうかを判断することはできない。
腎不全気においては、鉄、亜鉛、蛋白欠乏性貧血やこれらの利用障害もあるので、これらの疾患を除外する必要がある。
治療はエリスロポイエチンの投与となる。ガイドラインとしては以下のものが挙げられる。

Hb11g/dL未満で投与を検討し、13を超える場合に中止、心不全や呼吸不全がある場合は12g/dLを目安とし、鉄不足に注意し、フェリチンをやや多め100mg/dLを目安とする。

投稿者 川村内科診療所

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