呼吸器系

2018年10月 9日 火曜日

肺癌を見落とさないための読影 関順彦先生

2018年10月6日 
演題「肺癌を見落とさないための胸部X線の読影力とは!? ~意識改革から系統読影法の習得まで~」
演者: 帝京大学医学部附属病院 内科学講座 腫瘍内科教授 関順彦先生
内容及び補足「
お断り:関先生の素晴らしい講演内容を再現するためのレントゲン写真が手元にありませんので、講義の趣旨をできるだけ表現できるような似た画像を用いて、講演内容を再現しようと試みましたが、不十分である点ご了解ください。本記載の中で使用した写真のほとんどがhttp://nagasawanorio.cocolog-nifty.com/blog/
によっています。レントゲンの読影の理解において素晴らしいサイトですので、時間があるときにぜひ精読してください。

もう一歩上級を目指す胸部X線診断は腫瘤影を探してみても見えない肺癌を読み取ることであり、腫瘤影の存在を探すのではなく、腫瘤が存在することによる付属所見を見つけることである。漫然と見ていても、自然と目に入ってくる所見ではなく、こちらから存在することが異常であるとの認識で付属所見を探しに行くことが必要である。
当然のことであるが、系統的読影法を身に付けておく必要がある。
そして変化部位を探すことが必要で、そのためには、比較読影が必要である。
いつも見慣れているビールのラベルでも、過去からは変化している。その変化を今見ているビールのラベルで想像することは困難であるが、過去のものと比較すると指摘することは容易である。例えば、1998年のものと比べると内側の輪状に書かれている時が赤から変わっていることがわかる。


レントゲンでも同様であるが、以前の写真があれば、その比較が簡単にできるが、以前の写真がない場合には、比較ができない。そのため、自分の頭の中に比較のための受け皿を作っておく必要がある。
正常構造と異常構造の区別が必要であり、正常のバリエーションを見極めることが、読影診断までの余分な時間を省くためにも必要となる。
その判断根拠は、言葉で説明できない。
下の写真を見て日本人女性はどの写真家を判断してみてほしい。


5段目の左から3番目の写真である。そういわれると、日本人だと納得できる。
逆に上の段の写真を見て、日本人だと思われることはないはずだ。
なぜと言われても、言葉では説明できないが、日本人女性を絶えず見てきていると、瞬時に判断することができるはずである。
レントゲン写真も同じである。
 
そのためには正常とCTで診断された百枚のレントゲンを細かく所見を見ていき、単純写真で異常所見かもと疑った部位をCT画像で確認し、どうして異常所見と判断したかを確認していけば、正常のバリエーションか異常かの判断ができるようになると信じている。

高速でレントゲン写真の異常を見つけるためには、どうすればよいか?
1. 既存構造の認識をもとにした比較読影が必要
2. 既存構造が元画像であり、自分の脳に受け皿を作る必要がある
3. 自分なりの比較読影を行い修練の結果として頭が意識せずとも梗塞で行ってくれる状態

既存構造を習得する必要がある。
そのためには、『この部位は通常はこうであるべきであり、こうではいけない』という認識を持って種々の部位を確認していくことが必要。
肺はどこまで広がっているのか?
肺の広がりの端に線状構造がレントゲンで観察される。
レントゲンみられる成城の線条陰影には以下のものがある。
1. 右傍気管支線
2. 後接合線(後縦隔線)
3. 前接合線(前縦隔線)
4. 傍大動脈線
5. 奇静脈食道線
これらの線の連続性を確認することが重要である。途切れている場合には、辺縁が確認できない何かの陰影が重なっていると考える。上下を二本の指でかくして上から下に移動しながら、指の間に線が連続して存在しているかを確かめる方法をおすすめする。

1、 前接合線
胸骨後部の両側肺が接する部位で胸骨柄直下のレベルから始まり、通常はほぼ正中からやや左下方に走行し4~5cm連続した線状影として見られる。この線の異常な拡大、変形は前縦隔の異常(胸腺腫など)を示唆する所見だが、むしろ左右に不対称な突出像が異常を示すことの方が多い
2、後接合線
胸椎の直前で両側肺後部が接することによって作られる線状影(通常気管と重なるので気管の透亮像のほぼ中央に走行する)で、胸郭入り口近傍の高さから始まり、奇静脈弓及び大動脈弓部の上部までの間。後部縦隔に発生する神経原性腫瘍、リンパ節腫大の場合は偏位、変形
3、右気管傍線
鎖骨の高さから右上葉気管支上縁の高さまで(奇静脈が上大静脈へ流入する部位より上方)の気管右壁が線状影として描出される。右肺がこの部分で気管右壁に接するためである。  この白い線条が消失して認められない時に、気管傍リンパ節腫大や縦隔腫瘍、胸膜病変、肺腫瘍などを疑う。
4、右食道傍線・奇静脈食道線 
気管分岐部から左下方にやや斜めに走る線で、上端は奇静脈弓に達する。奇静脈食道陥凹部(気管分岐部より下方では右上葉の一部が、心臓後方と椎体前方を椎体を乗り越えるように入り込んでいる)の左端は奇静脈と食道右壁または後方の縦隔に接しているから。    この線の異常は同部のリンパ節腫大や、肺病変、食道腫瘤病変に見られる。
 5、大動脈肺動脈窓
縦隔の一部分で上縁が大動脈弓下縁、下縁は左肺動脈上縁、内側は左気管支および気管、外側は縦隔胸膜で囲まれた部位。このA-Pwindow内には動脈管索、左反回神経、大動脈下(ボタロー)リンパ節、上行大動脈リンパ節などが脂肪に包まれて存在する。
 6、大動脈肺動脈線
大動脈弓部からやや外側に斜走する辺縁で、肺縦隔境界面を表す。A―Pwindowのやや前方で上行大動脈の外側縁を表す線状影。この肺縦隔境界線の膨隆は、肺動脈円錐の拡大や上行大動脈リンパ節の腫大などを示唆する。
 7、傍大動脈線
下行大動脈の左縁と左下葉が接して形成される線。動脈瘤や神経原性腫瘍でシルエットが消失する。
 8、左脊椎傍線
下行大動脈の後方で、肺が胸椎の椎体側縁に接して生ずる線。(胸椎と下行大動脈の間に脂肪組織が存在するため形成される)胸椎撮影では全例に描出され、臨床的に重要である。リンパ節腫大や後部縦隔発生の腫瘍の存在診断に役立つ。

http://etrt.sakura.ne.jp/02ikc.htm

異常を疑ったら、CTでその疑いの部分の陰影を確認し、自分には異状と思われた理由を確認していくとレントゲンの読影力は格段に上達する。

肺癌の進展様式を念頭において読影することも大切である。末梢型と中枢型で異なる。
末梢型
1. 肺胞上皮置換型:細気管支肺胞上皮癌、非常に淡い限局性:スリガラス様Grand Glass Opacity:GGO
2. 肺胞虚脱線維化型:胸膜陥入像(末梢性収束:Tumor Track Sign)あり・・・下肺野の血管末梢の濃度上昇はおかしい、高分化腺癌、一部の扁平上皮癌
3. 肺胞上皮非置換型:二次性無気肺、低分化腺癌、気管支・血管の圧排、扁平上皮癌、大細胞間、小細胞癌

中枢型
1. 表層浸潤型:結節浸潤影、肺炎、無気肺が見られないと診断困難。
2. 無気肺:癌による無気肺は肺のVolume現症がみられる
3. 腫瘤
しかしこれらの陰影が肺門陰影と重なると腫瘍の辺縁が確認困難となる。
陰影の所見としては、
直接所見
1. 葉間の変位
2. 気管支・血管の収束
間接所見
1. 肺の透過性低下
2. 残存肺の代償性過膨張
3. 横隔膜の拳上
4. 縦隔影の患側変位
5. 肺門の変位
6. 肋間の狭小化
7. 脊椎側弯
8. 肺尖の低下
9. 気管支分岐の変位(主気管支からの分岐:右気管支20度左気管支40度)

これらの知識を念頭に置き系統読影法を行っていく。
以下の各線状影を念頭において読影する。

自分(関先生)の読影の仕方としては、関心のない領域からみることにしている。したがって肺野の所見は、出来るだけ最初の方では見ないようにしている。所見があっても無視して、いつもの読影順番でチェックをするように心がけている。
1. 胸膜や横隔膜の辺縁を追いかけていく。

2. 鎖骨、胸骨、肋骨の辺縁を確認し、肋骨に左右差がないかを確認していく。

読影が終わった後目をつむって下図のような肋骨の像が頭に浮かんだら、キチンと読影できたと判断している。

3. 縦隔影をチェクする。右の1、2弓、左の1、2、3、4弓のラインが確認できるかどうか、位置としての異常がないかどうか、心胸比の拡大がないかどうか、心陰影に重なっているものがないかどうか、心臓の変異がないかどうかを確認する。

4. 気管・気管支、大動脈、肺動脈や縦隔線を確認していく。この際シルエットサインにも注意して診ていく。

5. そしてやっと肺や陰影を見ていくことになる。

6. 最後に、全体的に見落としがないかを再度確認しながら診なおす。この際、左右の比較をすることも大事であるが、ろっ骨と重なっている場所と重なっていない場所での濃度差にも注意して診ていく。

当然撮影条件や患者の状態を確認しておくことも必要である。横隔膜の直下の胃泡と左下肺野の境界の陰影は5mm以内であり、それよりも厚い場合には、何かの陰影が追加されていると考えるべきである。
読影上見落としやすいレントゲン部位は、正常構造で重なりがある部分であり、そういう場、異常があるものだと思って読影することも必要である。

佐藤雅史先生が提唱している『小三J読影法』もおすすめである。


佐藤功先生の集団検診の見落とし例49例の検討では以下のような部位で認められており右55%、左45%であった。また、既存構造との重なりが82%であった。


栗山啓子先生は見落としやすい肺癌存在部位を以下のように指摘している。


河野通雄先生は、肺癌読影が困難となった病変の重なっている構造を検討し、肋骨が29%、血管22%、肺門16%、肋軟骨14%、他の肺病変14%、撮影不良6%としている。(臨床放射線30: 945- 949, 1985.)

つまり病変が既存構造と重なると、極端に病変の輪郭は見えにくくなるので、病変の輪郭は探してはいけない。
病変に付随する所見を探し、本体の圧排を想像して読影する。
1. 今日壁側、縦隔足の変化を探そう
2. 肋骨の濃淡、左右差を探そう
3. 縦隔、大動脈、心陰影の線の途絶を探そう
4. 気管・気管支、肺門部の濃淡、葉間線の変化を探そう。葉間胸膜は上に凸であり、一部下に陥凹していれば、何かに引き込まれているはずである。

コニカミノルタの新胸部CAD処理としてBone Suppression画像処理ができるようになった。
Bone Suppression処理:CRおよびFPDで取得した画像に対して、前方肋骨、後方肋骨、および鎖骨の信号を減弱する。特殊な機器や撮影は必要なく、従来通り撮影した画像に対して画像処理技術により、骨の減弱像を生成することができる。
本処理は、解剖学的な情報・知識を利用した高度なアルゴリズムにより、肋骨上に位置する淡い病変を肋骨と誤認識せず、肋骨に起因する信号変化のみを減弱する。肋骨に重なる異常陰影や血管などの微細構造の信号は、オリジナル画像の情報をそのまま残すことで、病変の視認性を改善することができる。本処理は結節の読影や間質性肺疾患の読影、気胸の確認等、幅広く利用することができ胸部読影の診断を強力にサポートできる技術である。


http://www.innervision.co.jp/sp/expo/products/konicaminolta_xray_bone-suppression

参:胸部X線写真の表現用語集 
 


胸部単純レントゲン上の所見として、孤立陰影の性状は以下のような所見となる。

個々の病型ごとに病変の進展形式を加味して所見を見てみると下記のようになる。


肺結核腫と肺癌のレントゲンは以下のように映り方に差がわかることもある。

左:結核腫 vs 右:肺がん

肺野の肺がんの特徴をまとめると以下のようになる。

参:肺結核病巣の経時的変化

参:実際の読影http://nagasawanorio.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-b52f.html

まずは大まかなチェックポイントは以下の点である。

読影する際に、さらに詳細に読影していくことになる。

最低限の読影項目とされているものを掻き出すと下のようになる。

http://nagasawanorio.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-b52f.html

投稿者 川村内科診療所

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