その他

2018年7月17日 火曜日

関節リウマチ治療の最新の話題 山田秀裕 先生

2018年7月11日 
演題「関節リウマチ治療の最新の話題」
演者:聖隷横浜病院リウマチ・膠原病センター 山田 秀裕 先生
場所:
内容及び補足「
関節リウマチは、関節の内面を覆っている滑膜に炎症が起き、関節の痛みや腫れ、こわばりなどを起こす自己免疫疾患である。
人口の0.4~0.5%、30歳以上の人口の1%の人がこの病気に罹るといわれ、どの年齢でも発症するが、30~50歳代で発症する人が多く、男性の約3倍女性に多くみられる。日本には70~100万人の患者がいると考えられている。15歳以下で発症する一群は若年性特発性関節炎と言い、成人の関節リウマチと若干異なる特徴がある。
原因はいまだ不明であるが、遺伝的な要因に、出産や喫煙、感染症などの環境要因が重なっておこると考えられている。
ある遺伝子の肩を持っている人が喫煙すると発症リスクが20倍以上になることがわかっている。

リウマチ体質とは?
冠せるリウマチに関与する自己抗体として、シトルリン化ペプチドに対する自己抗体(抗CCP抗体)や抗カルバミルペプチド抗体などがわかってきており、これらの抗体価が高いほど、また自己抗体の認識する抗原エピトープの種類が多彩になればなるほど、リウマチ体質の度合いが高くなると考えられており、リウマチ体質が強くなるほど、関節の微小な外傷などをきっかけに関節リウマチが発症しやすくなると考えられている。
http://www.seirei.or.jp/yokohama/section/clinical-practice/rheumatism/rhe-symptom/index.html


参:最近のリウマチ病因論の進歩 大塚 毅 宗像医師会病院(2007 年、第 8 回博多リウマチセミナー)
内因
1)人種
  北米・北欧 有病率 0.5-1%  発症率 0.02-0.04%
  南欧        0.3-0.6%      0.01-0.02%
  日本        0.3-0.5%      0.04-0.09%
     1960 年以降発症が減少傾向にあるとの報告あり。
2)性:女性>男性
  女性ホルモン
  経口避妊薬の普及で罹患率低下(2)
  閉経期に好発する → ホルモン分泌レベルの変化が関連 ?(3)(4)
  男性ホルモン
  RA 患者ではアンドロゲン濃度が低い(3)
  妊娠(アンドロゲン上昇)で症状軽快、出産後増悪
  エストロゲンは免疫グロブリン産生を増やす(Th2 優位)
  アンドロゲンは炎症性サイトカイン抑制するがTh1 上昇
  RA 発症は閉経前後に多く、妊娠中に軽快する人が多い
  エストロゲンより加齢によるアンドロゲン低下(男女とも)が関与 ?
3)遺伝
 家族集積あるが、それほど強くない(56)。3 親等内に RA 患者がいれば罹患率は 3 倍 → 単一遺伝子疾患ではなく、
多因子疾患
 自己免疫性疾患の一卵性双生児における発症一致率は 15 - 30%。RF 陰性 RA ではより一致率が低いといわれている。RA 患者の第一世代での RA 発症率は 1.7%。一卵性双生児のインスリン依存性糖尿病の一致率 36%と比べて明らかに低いといわれている。遺伝因子は考えられるが、一致率の低さは環境因子の役割も大きいと考えさせる。二卵性双生児の発症一致率は 2 - 5%とさらに低下する。
4)遺伝因子 多因子疾患
 多数の因子の遺伝子多型との相関 : 遺伝子プローブによる多型解析(7):
   第1染色体 D1S214  第 8 染色体 D8S556  X 染色体 DXS1047-DXS1227
   HLA-DRB1 の遺伝子多型(89)
    70 ~ 74 番目のアミノ酸配列の共通性で発症率上昇(shared epitope)(HLA-DR は防御因子としても働く。)
 サイトカインや細胞膜表面抗原などの遺伝子多型
   IL-1、IL-2、IFN-γ、TNFα、TNFαRI、TNFαRII、CD80、CD86、CD40L など
外因:獲得要因 免疫学的要因・組織・構造的要因(気道合併症)
    発症要因 妊娠出産・喫煙・食事・外傷・過重労働・ストレス・感染
 感染
   リウマチ熱と微生物感染、反応性関節炎と細菌感染
   SLE とEB ウイルス、サイトメガロウイルス、パルボB19 ウイルスなど
   シェーグレン症候群とEB ウイルス、C 型肝炎ウイルス
RA では
  EBV:RA 患者末梢血中に EBNA-1 に対する抗体あり(11, 12)
   RA 滑膜の免疫染色によりEBV 蛋白の検出率が高い
   RA 患者末梢血リンパ球は EBV で不死化しやすい
  HTLV-1:HAAP(HTLV-1 associated arthropathy)聖マリアンナ大西岡
     HTLV-1 導入マウスは関節炎発症しやすい
  パルボB19:ウイルス感染後の RA 発症例あり(13, 14)
     RA 滑膜にパルボB19 ウイルスの存在
      パルボB19 ウイルスの一部導入でマウスに関節炎
免疫学的要因
ガンマグロブリン(15)
フィンランド人の関節炎の未経験者 19,072 人に対する調査(1973 - 77)1989 年までに 124 人が RA を発症、そのうち89 人が RF 陽性に。発症前の血清 IgG 値が RF 陽性 RA 発症に関連したが、IgA や IgM は関連なし。他にも、性別・教育・喫煙・アルコール摂取・BMI などとの相関なし。どの IgもRF 陰性 RAと相関なし。
自己抗体(16)
  RF:自覚症状のない RF 陽性者 120 人。1996 年の RA 発症が 7 人(5.8%) 一般集団(0.35%)
    エントリー後 RF 陰性になった 36 人はひとりもRA 発症していない。
    RF のサブタイプ(IgG、IgM、IgA)の陽性が複数になるほど発症率が高い。
  抗 CCP 抗体:抗 CCP 抗体陽性者の 93%に対して陰性者は 25%であった。
    RF 陰性の RA 患者の 34%に抗 CCP 抗体陽性→ RF よりも特異度が高い。
    RF と抗 CCP 抗体の併用で診断確率が向上 (17, 18)。
    RA 患者の 49%は発症 4.5 年前に IgM-RF あるいは抗 CCP 抗体いずれかが陽性であった。
    RA 症状発現 1.5 年前から抗 CCP 抗体陽性である率は多変量解析にて 16.1%(19)。
季節・気候 人種差や国別で発症頻度は基本的に変わらない
妊娠・出産 疫学調査への反論多いが、妊娠・経口避妊薬の予防的役割もコンセンサスはない。
食事・嗜好 喫煙のみが疫学的に明らかな危険因子である(20)
   喫煙により罹患率は一卵性双生児で 12 倍、二卵性双生児では 2.5 倍
   喫煙による免疫系のゆさぶり → 臨床研究や疫学調査。
   喫煙-喫煙をやめてもRF 増加は非可逆的に続く。
      RF 値が高いほど喫煙との関連は高いが、喫煙量や期間には量的相関はない。
      喫煙は RF 陽性 RA の危険因子。RA 家系でない時の危険度が高い(2 - 4 倍)。
      RA の重症度にも影響。IgG の損傷を誘発 ?
   アルコール摂取が発症に関連すると結論した報告はない
外傷・過重労働・ストレス
呼吸器疾患とRA
   IP とRA の同時発症、RA における慢性気道感染症、病巣感染説
   免疫学的変化・組織・構造的変化(気道合併症)
   病理・病態・増悪因子
http://www.hakatara.net/images/no8/8-1.pdf

関節は、骨と骨の連結部で、二つの骨と骨の間のクッションの役割をする軟骨、これらを包む関節包と滑膜などから構成されている。滑膜は薄い膜で、潤滑油の働きをする関節液を分泌し、関節腔をこの関節液でみたしており、滑らかに動かすことができる。

関節リウマチは、この滑膜に炎症が起こり、増殖し、痛みが生じるだけでなく、骨や軟骨、腱が破壊され、関節の変形をきたす疾患である。
進行が速い人では、一年足らずで骨の破壊が見られ、関節が変形してくる。

http://www.akenohp.jp/rheumatism/index/

関節リウマチ患者の生活障害度を評価する問診票の一つにHealth Assessment Questionnaire:HAQ-scoreがある。
MDHAQ日本語版:
https://omimai.fuchu-hp.fuchu.tokyo.jp/wp/wp-content/uploads/2017/09/japanmdhaq2017.pdf

ERASとNOARの二つのコホート研究で生活障害度の変化を見てみると軽症例では治療によりHAQスコアは改善するものの数年で悪化傾向を認め、重症例では、進行を抑制してはいるが改善を認めていない。

https://ac.els-cdn.com/S0049017214000730/1-s2.0-S0049017214000730-main.pdf?_tid=9b7242ed-6ee3-4b45-a6ae-0ae9f727683c&acdnat=1531626234_99cecdd25668f45ef588dd04279e8654

近年は生物学的製剤が開発され、早期からの積極的治療とタイトコントロールにより、予後が改善されると期待されている。

https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/kogen/about/disease/kanja02_01.html

治療の基本的な考え方として
1. 関節リウマチの治療は、患者とリウマチ医の合意に基づいて行われるべきである。
2. 関節リウマチの主要な治療ゴールは、症状のコントロール、関節破壊などの構造的変化の抑制、身体機能の正常化、社会活動への参加を通じて、患者の長期的 QOLを最大限まで改善することである。
3. 炎症を取り除くことが、治療ゴールを達成するために最も重要である。
4. 疾患活動性の評価とそれに基づく治療の適正化による「目標達成に向けた治療(Treat to Target, T2T)」は、関節リウマチのアウトカム改善に最も効果的である。
が挙げられており、その際以下の点を注意する。
1. 関節リウマチ治療の目標は、まず臨床的寛解を達成することである。
2. 臨床的寛解とは、疾患活動性による臨床症状・徴候が消失した状態と定義する。
3. 寛解を明確な治療目標とすべきであるが、現時点では、進行した患者や長期罹患患者は、低疾患活動性が当面の目標となりうる。
4. 日常診療における治療方針の決定には、関節所見を含む総合的疾患活動性指標を用いて評価する必要がある。
5. 疾患活動性指標の選択や治療目標値の設定には、合併症、患者要因、薬剤関連リスクなどを考慮する。
6. 疾患活動性の評価は、中~高疾患活動性の患者では毎月、低疾患活動性または寛解が維持されている患者では6ヵ月ごとに、定期的に実施し記録しなければならない。
7. 治療方針の決定には、総合的疾患活動性の評価に加えて関節破壊などの構造的変化及び身体機能障害もあわせて考慮すべきである。
8. 治療目標が達成されるまで、薬物治療は少なくとも3ヵ月ごとに見直すべきである。
9. 設定した治療目標は、疾病の全経過を通じて維持すべきである。
10. リウマチ医は、患者の「目標達成に向けた治療(T2T)」の設定に関わるべきである。
https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/kogen/about/disease/kanja02_01.html

生物学的製剤を使用して疾患の活動性指標であるDAS-28は抑制できたが、関節腫脹の進行度を表すRatingenスコアや生活障害度を示すHAQ-DIは経年で悪化している。

file:///C:/Users/PCUser/Downloads/jcm-07-00057.pdf

Ratingen score:関節腫脹の進行(0-190、高いほど悪化)の百分率
Disease activity score 28 (DAS28) 疾患活動性指標
= 0.56×√(圧痛関節数:TJC)+ 0.28×√(腫脹関節数:SJC)
+ 0.70×Ln(ESR)+0.014 × 患者による全般評価(100mmVAS)
(寛解≤2.6, 2.6<低疾患活動性≤3.2, 3.2<中疾患活動性≤5.1, 5.1<高疾患活動性)

炎症がおこった後の変化を見ていくと、炎症の経過によって反応している細胞に変化が出ているのがわかる。
急性炎症が治まった後の第二段階においては、炎症細胞の働きは沈静化しており、線維芽細胞やコラーゲンの合成がメインとなる。低酸素の状態においては、線維芽細胞は増殖するが、コラーゲン繊維は合成しない。

https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20180115150123.pdf?id=ART0001144483

関節リウマチ罹患関節の関節腔内は正常関節に比して、酸素分圧が低い。正常酸素濃度(21%)と低酸素濃度(1%)でRA滑膜線維芽細胞(RSF)を高密度培養した場合、高密度培養によるRSFの増殖抑制効果は、低酸素濃度下では低下していた。サイクリン依存性キナーゼ阻害因子p27Kip1タンパク発現が低下し、増殖の接触阻止を促すN-Cadherin(cad)タンパク発現も低下していた。関節内の低酸素はN-cad発現低下を促し、p27Kip1
発現を低下させてRSFの増殖を促進させ、滑膜増殖を亢進し、関節破壊に関与している可能性がある。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscisho/34/0/34_0_55/_article/-char/ja/

hypoxia-inducible factor (HIF):低酸素誘導因子とは裁縫が低酸素状態に陥った際に誘導されてくる蛋白質。
HIF-αは通常の酸素圧化において細胞内発現量が減少しているが、産生量が低下しているのではなく、ユビキチン-プロテアソーム系を介した蛋白質分解の負の制御によると考えられている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%8E%E9%85%B8%E7%B4%A0%E8%AA%98%E5%B0%8E%E5%9B%A0%E5%AD%90

関節腔が低酸素にさらされるとHIF-αの産生が活性化され種々の炎症性サイトカインが産生され、関節破壊が進行する。

Role of hypoxia-regulated HIF transcription factors in RA. In the context of RA pathogenesis, hypoxia-induced stabilization of HIF-α protein can potentially modulate genes that are involved in angiogenesis (for example, VEGF), matrix degradation, apoptosis (for instance, BNIP-3), cellular metabolism (GLUT-1) and inflammation (cytokines and chemokines), thus perpetuating the destructive cascade of reactions. Furthermore, cytokines relevant to RA (IL-1 and TNF) can themselves modulate HIF levels. A schematic representation of a normal and RA joint is shown. Representative sections (×100 magnification, with bars indicating 20 μm) of RA tissue stained for HIF-1α and HIF-2α are shown, taken from two different RA patients. HIF-1α expression appears to be predominantly vascular associated, in areas of diffuse cellular infiltration, unlike HIF-2α, which was frequently associated with infiltrating cells distant form visible blood vessels. BNIP, BCL2/adenovirus E1B 19 kDa-interacting protein; COX, cyclo-oxygenase; GLUT, glucose transporter; HIF, hypoxia-inducible factor; IL, interleukin; MMP, matrix metalloprotease; RA, rheumatoid arthritis; TNF, tumour necrosis factor; VEGF, vascular endothelial growth factor.
https://arthritis-research.biomedcentral.com/articles/10.1186/ar2568

パンヌス(Pannus)は関節リウマチ患者の関節滑膜細胞が増殖して形成された絨毛状の組織であるが、マトリックスメタロプロテイナーゼなどのたんぱく分解酵素を分泌して軟骨を破壊したり、破骨細胞を活性化して骨破壊をもたらし、関節破壊をきたす。
滑膜細胞を培養するとパンヌス様の組織が形成される。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1002/art.22849

関節リウマチ患者の低酸素により誘発される滑膜細胞の増殖は、Indomethacinの投与では増強するが、prostaglandin E2を投与すると増強しなくなる。
https://link.springer.com/article/10.1007/s10165-012-0794-7

これらのことを合わせて考察すると、関節リウマチ患者のリハビリにおいては、関節の低酸素を回避する必要があるといえる。

関節リウマチが再燃、増悪しやすい原因は?
日常生活やリハビリによる過度の負担も関節の破壊を促進する可能性がある。
人体の粘膜面でのミクロビオームとの共生関係が破綻した例として、慢性副鼻腔炎、再起動病変/気管支拡張症、歯周病、慢性の便秘などがあるが、これらの状態はリウマチ体質を支える自己免疫現症の母体となりえるのであり、関節リウマチの増悪因子でもある。
別の見方をすると加工食品に使われている添加物が、関節リウマチの増悪因子の一つになっている可能性がある。


アメリカの治療ガイドラインを示す。


https://www.rheumatology.org/Portals/0/Files/ACR%202015%20RA%20Guideline.pdf

欧州の治療ガイドラインを示す。

EULAR recommendations for the management of rheumatoid arthritis with synthetic and biological disease-modifying antirheumatic drugs: 2016 update. Smolen JS, et al. Ann Rheum Dis. 2017
http://www.twmu.ac.jp/IOR/diagnosis/ra/medication/recommendation.html

いずれの関節リウマチの治療ガイドラインは、リハビリについて記載されていない。
日本においては、下記のようにリハビリテーションは推奨されているも、エビデンスは確立されていない。


https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/10/104_2110/_pdf

関節リウマチに影響する因子について以下のものが挙げられる。
Genetic Aspects
Enviromental factors:Cigarette smoking、Occupational and atmospheric agents
Diet
Microbiota and infections
Innate immune responeses
The adaptive immune system
https://www.clinexprheumatol.org/article.asp?a=12889

以下には約リウマチの状態になっているかを知ることは非常に重要でありその一つの検査としてanti-citrullinated peptide(anti-CCP)が挙げられる。

関節リウマチに至る病態として以下のように考える。
Pre-RA
a. Genetic risk factors for RA
b. Environmental risk factors for RA Asymptomatic
c. Systemic autoimmunity associated with RA
d. Symptoms without clinical evidence of arthritis
e. Early undifferentiated arthritis. Symptomatic
RA: rheumatoid arthritis
関節リウマチにならないため、悪化させないための方対策として以下のものが挙げられる。
Modifying risk factors to prevent rheumatoid arthritis
Avoid/Quit smoking
Good dental hygiene: Treat periodontitis early
Balanced diet containing fish oil, antioxidants, and vitamin D
Avoid excess coffee and food with high salt content
Optimizing body weight
Prevent infection

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5473457/

腸管粘膜の破綻からくる免疫応答が関節リウマチを引き起こす機序の仮説

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4033623/

腸管粘膜の破綻をきたす食品として、ファーストフード食品やレトルト食品、食品添加物などが挙げられている。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1568997215000245

現在われわれが考えている関節リウマチに影響する病態及び対策として以下のものが挙げられる。
腸管:便秘、過敏性腸症候群→腸内環境整備、食品添加物制限
口腔内:歯周病→口腔ケア
下気道:細気管支炎、間質性肺炎→少量マクロライド治療
副鼻腔:慢性副鼻腔炎→少量マクロライド治療
皮膚:毛嚢炎
会陰部:尿道炎、付属器炎
これらのことをより充実して行うためには、多職種による連携の取れた包括的ケアが必要である。

参考サイト:
聖隷横浜病院 リウマチ・膠原病内科 関節リウマチ
リウマチ情報センター
慶應義塾大学医学部リウマチ・膠原病内科外部リンク 関節リウマチ

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2018年7月17日 火曜日

自己炎症性症候群 伊藤 宏 先生

2018年7月11日 
演題「紹介いただいた症例の経過報告」
演者:聖隷横浜病院リウマチ・膠原病センター 伊藤 宏 先生
場所:
内容及び補足「
紹介患者さんの経過報告の中で自己炎症性疾患という概念の提示があり、そのことについて調べたことを以下に記載する。

自己炎症性疾患(自己炎症性症候群)は原発性免疫不全症の中の一つに分類され、発熱と眼、関節、皮膚、漿膜などに及ぶ全身の炎症のエピソードが特徴の疾患で、原因として感染症や自己免疫疾患が無いもの。

自己炎症:1999年McDermottらによりTRAPS(TNF receptor-associated periodic syndrome)という遺伝性疾患がきっかけで提唱された。
自己炎症性疾患の病態は主に自立的な自然免疫系の活性化によるもので、好中球や単球/マクロファージからのIL-1βやTNF-αなどの炎症性サイトカインの過剰分泌やシグナルを介して引き起こされる全身性の慢性炎症とされている。一部の疾患は遺伝素因が原因として明らかとなっている。

原発性免疫不全症の国際分類
細胞性および液性免疫に影響する免疫不全症
関連もしくは症候を有する特徴を伴う複合免疫不全
抗体産生不全症
免疫調節不全症
食細胞の数・機能の先天的欠損症
内因性および自然免疫の不全症
自己炎症性疾患
補体欠損症
原発性免疫不全症の表現型模写
自己炎症性疾患の病態分類
インフラマソームに影響を与える異常
家族性地中海熱
高IgD症候群
Muckle-Wells症候群
家族性寒冷自己炎症症候群
慢性乳児神経皮膚関節炎症候群(Chronic infantile neurological cutaneous and articular syndrome: CINCA症候群) / 新生児発症多臓器炎症性疾患(Neonatal onset multisystem inflammatory disease: NOMID)
NLRC4-MAS
PLAID (PLCγ2 associated antibody deficiency and immune dysregulation)
APLAID (autoinflammation and PLCγ2 associated antibody deficiency and immune dysregulation)
インフラマソームに関連しない病態
TRAPS (TNF Receptor-Associated Periodic Syndrome)
Pyogenic sterile arthritis, pyoderma gangrenosum, acne (PAPA症候群)
Blau症候群
ADAM17 欠失
Chronic recurrent multifocal osteomyelitis and congenital dyserythropoietic anemia (Majeed症候群)
DIRA (Deficiency of the Interleukin 1 Receptor Antagonist)
DITRA (Deficiency of IL-36 receptor antagonist)
SLC29A3変異
CAMPS (CARD14 mediated psoriasis)
ケルビム症
CANDLE (chronic atypical neutrophilic dermatitis with lipodystrophy)
COPA(Coatamer protein complex, subunit alpha)欠損
Journal of Clinical Immunology.35(8):696-726,2015

TRAPS(TNF receptor-associated periodic syndrome:トラップス)
TNF-α受容体をコードするTNFR1遺伝子の異常によって引き起こされる症候群。発熱発作を繰り返す周期性発熱症候群。1982年にアイルランド/スコットランド系の家系で最初に報告され、Familial Hibernian Fever(FHF)とも呼ばれたが、1999年にTNFR1の遺伝子TNFRSF1Aの異常であることが判明し、TRAPSと呼ばれるようになった。常染色体優性遺伝で、これまでに200例の報告があり、ヨーロッパ人種で多く、日本では約30例の報告がある。生後2週から53歳と幅があるが多くは幼児期に発症し、中央値は3歳である。
主な症状は、発熱で、3日~数週間持続し(通常は1週間以上)、発熱の周期を5~6週間おきにくりかえす。皮膚所見の頻度も高く、全身に、痛みや熱感を伴う皮疹が出現する。数日程度(平均13日)持続し、数分~数日で移動することもある。筋肉痛も見られ、皮膚症状が筋肉痛の部位に一致して移動することが多い。結膜炎や目の周りのむくみ、腹痛、関節痛、吐き気などの症状も見られる。
血液検査では、白血球数の増加、炎症反応高値、補体化や免疫グロブリン値の上昇がある。長期間にわたり炎症が持続すると、アミロイドーシスを合併することがあり(約10%)、腎臓、肝臓、副腎などの臓器をチェックする必要がある。
遺伝子解析により確定診断となる。

HullらのTRAPS診断基準案
1. 6ヶ月以上にわたって繰り返す炎症兆候の存在(いくつかの兆候は同時にみられることがある)
1. 発熱
2. 腹痛
3. 筋肉痛(移動性)
4. 皮疹(筋肉痛を伴う紅斑様皮疹)
5. 結膜炎 / 眼周囲の浮腫
6. 胸痛
7. 関節痛または単関節の滑膜炎
2. 平均5日以上続く症状
3. ステロイドが有効だが、コルヒチンが無効
4. 家族歴あり(いつも家族歴があるわけではない)
5. どの人種、民族でも起こるかもしれない
Medicine (Baltimore).81(5):349-68,2002

治療:確立されたものはないがNSAIDSが発熱、疼痛緩和に有効。コルヒチン、アザチオプリン(イムラン)、シクロスポリン(ネオラール)、エタネルセプト(エンブレル:TNF阻害薬)、アナキンラ(IL-1阻害薬)などの使用報告がある。

家族性地中海熱 (Familial Mediterranean Fever:FMF)
12~72時間の周期的な発熱と漿膜炎をきたす遺伝性周期性発熱症候群。
遺伝形式と疫学
比較的稀な疾患で、自己炎症性症候群の中で最も頻度が高い疾患。常染色体性劣性遺伝。1997 年にMEFVという遺伝子の異常によって起こることが明らかとなり、地中海沿岸地域に多く、全世界で 1万人を超える。日本では約500名、大部分は小児期に発症するが、20歳に近い年齢での発症報告もある。

臨床症状と検査所見
周期性発熱が高頻度にみられ、発熱の期間は1~3日と短く、自然に軽快。発熱時には炎症反応が上昇し、発熱発作の間隔は不安定で、個人差がある。ストレス、手術や月経などに誘発されてることが多いが、誘因が見られない事もある。発熱に伴い関節炎・皮疹などの症状があり、胸膜炎による背部痛や、腹膜炎による腹痛などの漿膜炎を伴うことがある。足や膝の関節などの下肢の大関節に少数関節炎として起こることが多く、急性で、関節痛、熱感、発赤を伴う。心外膜炎や無菌性髄膜炎がみられることもある。血液検査では発作時に白血球増加、CRP高値がみられる。またTRAPS同様に長期に及ぶ全身の炎症によりアミロイドーシスの合併がみられることがある。

診断
家族性地中海熱の診断基準(難病情報センター「家族性地中海熱)
必須項目
12 時間から 72 時間続く 38 度以上の発熱を 3 回以上繰り返す。発熱時には、CRP や血清アミロイド A(SAA)などの炎症検査所見の著明な上昇を認める。発作間歇期にはこれらが消失する。
補助項目
i) 発熱時の随伴症状として、以下のいずれかを認める。
  a 非限局性の腹膜炎による腹痛
  b 胸膜炎による胸背部痛
  c 関節炎(股関節、膝関節、足関節)
  d 心膜炎
  e 髄膜炎による頭痛
  f 髄膜炎による頭痛
ii) コルヒチンの予防内服によって発作が消失あるいは軽減する。
必須項目と、補助項目のいずれか1項目以上を認める症例を臨床的にFMF典型例と診断する。
感染症、自己免疫疾患、腫瘍などがないこと。MEFV遺伝子解析も有用。コルヒチン投与による治療反応性も参考に診断する。

治療
コルヒチン。発作予防や症状の改善を促し、アミロイドーシスの予防も可能。コルヒチン無効例にはIL-1阻害薬、TNF阻害薬、IL-6阻害薬の効果が報告されている。
参考サイト:慶應義塾大学医学部リウマチ・膠原病内科外部リンク
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000736.html

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2018年7月 6日 金曜日

指定難病 皮膚筋炎 佐藤慎二教授

2018617日 

演題「指定難病 皮膚筋炎」

演者:東海大学医学部内科学系リウマチ内科教授 佐藤慎二先生

場所:

内容及び補足「

疫学:皮膚筋炎は2009年度の厚生労働省特定疾患治療研究事業における臨床調査個人票の解析では、罹患患者数は約17000名と推定されている。毎年10002000人が新規に発症していると推定されており、現在では20000人以上と推定される。

男女比は1:3で女性に多く、514歳に小さなピークがあり、4556歳に多くみられる。

 

疾患概念・病態:主に大腿や上腕などの四肢近位筋、さらに体幹や頚部の筋肉を中心とした横紋筋に持続的な炎症を引き起こし、同部位の筋肉痛や筋力低下を来す疾患。

患者血清からは抗Jo-1抗体をはじめとした多彩な自己抗体が検出され、その病態形成に免疫機能の異常が大きく関与することが推定されており、膠原病に群類されている。

臨床的には、筋症状のみ呈する場合をPMpolymyositis 多発性筋炎、多発筋炎)、ゴットロン徴候やヘリオトロープ疹、関節伸側の落屑性紅斑など、特徴的な皮膚症状を伴う場合をDM(dermatomyositis 皮膚筋炎)としている。

PM/DMは筋肉や皮膚症状以外に、悪性腫瘍や間質性肺炎の合併が高率であり、これらの合併症は生命予後を左右する。特にDMにおいて、その傾向が強くみられるため、注意を要する。

筋症状が典型的な症例では、血液検査において、血清クレアチンキナーゼ(CK)やクレアチン、ミオグロビン、アルドラーゼ(Ald)などの筋原酵素が上昇を示すことがほとんどであるが、amyopathic DMなど、皮膚症状や肺病変が著明で筋症状に乏しく、筋原酵素の上昇がみられない症例も存在する。

Jo-1抗体はPM/DMに特異性が高い自己抗体であるが、陽性率は20%前後と高くない。近年では多数の筋炎特異的自己抗体(myositis-specific autoantibodiesMSAs)が同定されている。

 

診断基準:

1975年にBohan & Peterの診断基準が臨床の場で多く用いられてきた。

Bohan & Peterの診断基準

    ①四肢近位筋、頚部屈筋の対称性筋力低下

    ②筋原性酵素の上昇

    ③筋電図で筋原性の変化

    ④筋生検で筋線維の壊死や変性、萎縮所見、炎症細胞の浸潤

    ⑤ヘリオトロープ疹やゴットロン徴候、関節伸側の落屑性紅斑など

 

本邦においては1992年厚労省自己免疫新患調査研究班によりPM/DMの診断基準が提唱され、2015年に改訂された。

厚労省自己免疫疾患に関する調査研究班の改訂診断基準(2015年)

<主要項目>

    皮膚症状:

        ヘリオトロープ疹:両側又は片側の眼瞼部の紫紅色浮腫性紅斑

        ゴットロン徴候:手指関節背面の角質増殖や皮膚萎縮を伴う紫紅色紅斑

        四肢伸側の紅斑:肘、膝関節などの背面の軽度隆起性の紫紅色紅斑

    上肢又は下肢の近位筋の筋力低下

    筋肉の自発痛又は把握痛

    血清中筋原性酵素(クレアチンキナーゼ又はアルドラーゼ)の上昇

    筋電図の筋原性変

    骨破壊を伴わない関節炎又は関節痛

    全身性炎症所見(発熱、CRP上昇、又は赤沈促進)

    Jo-1抗体陽性

    筋生検で筋炎の病理所見:筋線維の変性及び細胞浸潤

<診断基準>

    皮膚筋炎:1.皮膚症状aからc1項目以上を満たし、かつ経過中に2から9の項目中4項目以上を満たすもの

    多発性筋炎:2から9の項目中4項目以上を満たすもの

<鑑別除外を要する疾患>

    感染性による筋炎

    薬剤誘発性ミオパチー

    内分泌異常に基づくミオパチー

    筋ジストロフィーその他の先天性筋疾患

 

<重症度分類>

以下のいずれかに該当する症例を重症とし、医療費助成の対象とする。

1)原疾患に由来する筋力低下がある。

体幹・四肢近位筋群(頸部屈筋、三角筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、腸腰筋、大腿四頭筋、大腿屈筋群)の徒手筋力テスト平均が5段階評価で4+ 10段階評価で9) 以下

又は、同筋群のいずれか一つのMMTが4(10段階評価で8)以下

2)原疾患に由来するCK値もしくはアルドラーゼ値上昇がある。

3)活動性の皮疹(皮膚筋炎に特徴的な丘疹、浮腫性あるいは角化性の紅斑、脂肪織炎*が複数部位に認められるもの)がある。 *新生または増大する石灰沈着を含む

4)活動性の間質性肺炎を合併している(その治療中を含む。)。

 

症状:

全身症状:発熱、全身倦怠感、易疲労感、食欲低下、体重減少

筋症状:緩徐に発症して進行する体幹、四肢近位筋群、頸筋、咽頭筋の筋力低下が多くみられる。嚥下にかかわる筋力の低下は、誤嚥や窒息死の原因となる。進行例では筋萎縮を伴う。

皮膚症状:以下の皮膚所見がみられる

上眼瞼の浮腫性紅斑(ヘリオトロープ疹):上眼県の浮腫性かつ紫紅色の紅斑

手指の関節背面の角化性紅斑(ゴットロン丘疹):手指関節背側面の角質増殖、落屑や皮膚萎縮を伴う紫紅色の角化性紅斑

爪上皮の延長と点状出血を伴う爪囲紅斑

多形皮膚萎縮(Poikiloderma):色素沈着、脱失、萎縮が混在した局面を呈する皮膚所見

機械工の手(メカニックの手)母指の尺側面および第25指の橈側面から時に掌側に達する裂溝を伴う角質化(間質性肺炎合併と相関)

 

皮膚科Q&A

https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/s2_q07.html

Vネック徴候:前胸部紅斑

http://sogahifuka.com/blog/wp-content/uploads/d9bc714408e1fc4bcf435a810ccdfc29.jpg

ショール徴候:頸部から肩・上腕にかけての紅斑

http://sogahifuka.com/blog/wp-content/uploads/23b753522b3e4677e15b08c022f0a6b6.jpg

レイノー現象:約30%の症例に見られるが、強皮症のように皮膚潰瘍や手指壊疽に進行することは少ない。

 

肺炎:4050%に間質性肺炎を伴う。PM/DMに合併する慢性型と急性型に分かれる。慢性型間質性肺炎の合併例は抗Jo-1抗体などの抗ARS抗体が高頻度に検出される。慢性型間質性肺炎の組織像はNSIPを呈し、PSL反応性も良好なことが多い。急速進行性肺炎に対して、PSLとシクロスポリンの併用療法が有効との報告もある。3割程度の患者で筋症状よりも呼吸症状が先行するとされている。

PM例では抗Jo-1抗体陽性例が多く予後が良い。亜急性の経過をたどる例も器質化肺(OP)やNSIPが大部分でステロイドによる改善が期待できる。DMに合併する間質性肺炎の20%は急速進行性で、治療抵抗性で予後不良である。抗ARS抗体が陰性で筋症状やCKの上昇も軽度でヘリオトロープ疹やゴットロン徴候などの典型的な皮疹がある筋症状を伴わない皮膚筋炎(Amyopathic Dermatomyositis)では急速進行性の間質性肺炎を合併しやすい。組織学的所見としてはDADを呈し、ステロイドに抵抗性で予後が不良である。

ことがあり、生命予後を左右する。

悪性腫瘍の合併:一般人口と比較し、DMで約3倍、PMでは2倍弱合併しやすい。皮膚筋炎で悪性腫瘍を発症する場合と、悪性腫瘍の随伴症候群として皮膚筋炎を発症する場合がある。原因悪性腫瘍としては、日本では、胃癌が多く、欧米では大腸癌が多い。

155/140抗体(抗TIF1-γ:transcriptional intermediary factor 1-gamma抗体):DM以外の膠原病ではほとんど検出されず、悪性腫瘍合併のDMにおいては50%以上で陽性となる。

 

検査:筋症状が顕著である症例では筋原酵素である血清CKやクレアチン、ミオグロビン、アルドラーゼの上昇がみられる。ASTALTも筋原酵素であるため、肝機能障害を除外することも必要である。

自己抗体:PM/DMに特異的に検出されるJo-1抗体の陽性率は20%前後である。本抗体はアミノアシルtRNA合成酵素(ARS)の一つであるヒスチジルtRNA合成酵素である。

近年他のARSに対する複数の子自己抗体が同定されさまざまな検討が行われている。これらの抗体陽性群は、陰性例に比べ、関節炎やIP、皮膚病変などにおいて臨床的な特徴がみられ、抗ARS抗体症候群として分類されている。

難治性症例で抗SRP抗体、clinically amyopathic dermatomyositisCADM)で特異的にみられる抗CADM-140抗体、shawl signとの関連が報告されている抗Mi-2区小田井、強皮症とのオーバラップ症例で検出されやすい抗PM-Scl抗体や抗Ku抗体などが知られている。

http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000065.html

臨床リウマチ.25:149-158,2013から引用

 

筋電図では、安静時に線維性攣縮、positive sawtoothed potentialを示し、随意収縮ではcomplex polyphasic short durationを認める。機械的な刺激を加えると、pseudomyotonic potentialsなど筋原生変化を主とした所見を認める。

MRIの選択的脂肪抑制法であるSTIR法で、筋肉の炎症部位に一致して高信号を呈する。

筋生検でPMでは、炎症部位の筋線維の壊死所見とCD8陽性T細胞の浸潤がみられる。DMでは、筋束周囲の壊死像と血管周囲へのCD4陽性T細胞の浸潤がみられることが多いとされているが、組織所見のみでPMDMを区別することは不可能である。

 

治療:基本的にはステロイド(体重あたり0.51.0㎎)を中心として免疫抑制剤を組み合わせて投与する。

 

予後:

肺病変や悪性腫瘍などの合併症の有無により予後は大きく左右される。

全症例の5年生存率は、約80%前後とされる。悪性腫瘍の合併がなければ、5年生存率は90%、10年生存率は80%。本症の再発率が6割とする報告もあるので、再発や病態の維持に留意しつつ、肺病変や悪性腫瘍の合併に警戒して診察・検査を行っていく必要がある。

 

指定難病 皮膚筋炎/多発性筋炎

http://www.nanbyou.or.jp/entry/4079

順天堂大学医学部付属順天堂医院膠原病・リウマチ内科

https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/kogen/about/disease/kanja02_10.html

ウィキペディア:皮膚筋炎

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%AD%8B%E7%82%8E

 

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2018年7月 5日 木曜日

災害医療 阪上 学 先生

2018625日 

演題「災害医療:私たちが知っておくべきこと・できること」

演者:独立情勢法人国立病院機構金沢医療センター 臨床研究部長・災害対策室長 阪上学 先生

場所:ホテル、ニューグランド

内容及び補足「 

駿河湾から遠州灘、熊野灘、紀伊半島の南側の海域及び土佐湾を経て日向灘沖のフィリピン海プレート及びユーラシアプレートが接する海底の溝状の地形を形成する区域を南海トラフという。

この南海トラフ沿いのプレート境界では、①海側のプレート(フィリピン海プレート)が陸側のプレート(ユーラシアプレート)の下に1年あたり数cmの速度で沈み込む。②その際、プレートの境界が強く固着して、陸側のプレートが地下に引きずり込まれ、ひずみが蓄積される。③陸側のプレートが引きずり込みに耐えられなくなり、限界に達して跳ね上がることで発生する地震が「南海トラフ地震」である。①→②→③の状態が繰り返されるため、南海トラフ地震は繰り返し発生する。

https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/nteq/nteq.html

南海トラフ巨大地震が発生すると、静岡県から宮崎県にかけての一部では震度7となる可能性があり、10mを超える大津波の来襲が想定されている。

https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/nteq/assumption.html

関東地方の活断層分布

http://www.imart.co.jp/4.20-katu-dansou-kantou.png

http://www.imart.co.jp/katu-dansou-japan.html#kantou

首都直下地震モデル検討会の報告書からみてみると、下図のような断層帯がある。

それぞれの断層帯での地震の規模と発生確率は以下のようになる。

http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/senmon/shutochokkajishinmodel/pdf/dansoumodel_02.pdf

しかし、ここで気をつけてほしいのは、30年以内に発生する地震の確率は、発生予想期間をその断層帯の平均活動間隔で割ったものであり、地震が発生予想の確率ではない点である。実際、熊本地震や大阪北部地震の確率はそれぞれ06%、00.02%の予測値であった。

CSCATTT(スキャット)
災害時の医療救護活動を行うための基本はCSCATTT7項目に集約される。

Command and Control:指揮、統制

医療活動が一つの組織として機能するためには、指揮命令系統の確立が不可欠である。医療現場責任者(メディカルコマンダー)の指揮命令下において医療救護活動を組織的に実行することが大切であり、これは活動全体の秩序だった縦の連携を構築することを意味する。また、統制は関係機関の横の連携を意味する。

Safety:安全

災害対応における安全は、1.自分自身(Self)、2.現場(Scene)、3.生存者(Survivor)で、医療従事者は、自分と現場の安全を確認して初めて、生存者の安全を考慮できる。

Communication:情報伝達

県、市町村、医療機関などそれぞれの組織間の横の情報伝達が大切である。特にEMISを通じた被災状況の発信が極めて重要となる。

Assessment:評価

災害現場の評価として、負傷者の数と疾病の種類、緊急度・重症度を把握する。一度決めた方針に固執するのではなく、評価を継続的に実施し、その情報に基づいて災害現場での医療活動が決定される。

Triage:トリアージ

一時トリアージは現場で短時間内に判断するSTART法、二次トリアージは生理学的特徴、解剖学的特徴から重症者を選別するPAT法などが多く用いられている。

傷病者の重症度を正しく判断し(Right patient)、適切な場所へ(Right place)、適切な時間内に(Right time)、篩分け(Sieve)、選別(sort)する。

Treatment:治療

災害時の医療活動の目的は、平時の救急治療とは異なり、「できる限り多くの傷病者に最善を尽くす」ことである。災害現場での治療の目的は、傷病者を医療機関まで搬送しても良い状態を維持できるようにすることである。

Transport:搬送

搬送の目的は、傷病者を適切な時間内に適切な場所に運ぶことである。

http://www.union-kamiina.jp/iryo/04manyuaru/manyuarugenkou/1manyuaru1.pdf

https://plaza.umin.ac.jp/GHDNet/circle/16/A9233.pdf

阪神淡路大震災の際、神戸大学病院においては366名の患者に対して112人の医師がいたが、地元のK病院においては1033名の患者に7名の医師で対応する状況となっていた。こういった状況を打開するために構築されたのが、広域災害救急医療情報システム(EMISEmergency Medical Information System)である。

EMIS:広域災害救急医療情報システム(EMIS:Emergency Medical Information System)

https://www.wds.emis.go.jp/

災害時に被災した都道府県を超えて医療機関の稼働状況などを災害医療にかかわる情報を共有し、被災地域での迅速かつ適切な医療・救護にかかわる各種情報を集約・提供することを目的としている。

・各都道府県システムにおける全国共通の災害医療情報の収集

・医療機関の災害医療情報を収集、災害時の患者搬送などの医療体制の確保

・東西2センターによる信頼性の高いネットワーク構成

・平常時、災害時を問わず、災害救急医療のポータルサイトの役割

EMISの活用

「病院選定」

災害は平時のキャパシティー(病院の受け入れ可能患者数)を超えた事態になっており、平時のキャパシティー内での病院選定は非合理的。

災害時は分散搬送が基本となり、キャパシティーに対し等しく負荷(災害時に受け入れた患者数)がかかるように分散するのが理想である。

「病院支援」

DMATによる初期、病院支援の方法として、継時的な受け入れ患者数や要点総患者数などの詳細情報の入力更新体制確立を目的として支援する。

重症患者を一か所にまとめ、一覧表を作成し、継時的に把握できるよう支援(搬送トリアージ体制の確立)、重症患者が集められるよう、院内の導線の整理(病院における受け入れ態勢の確率)を行う。

震災による各医療機関被害状況をEMISに入力する。

患者受け入れが可能な際には、水色で表示され、受け入れ困難な際には赤色で表示される。入力が無い場合には茶色で表示される。茶色の表示のままの場合は、その医療機関が被災にあっており、入力不可能となっている状況を想定する必要がある。

災害初期において必要な情報は以下のものである。

METHANE report

My call-sign or name:自分の名前

Exact location:正確な場所

Type of incident:災害の種類

Hazards, present or potential:災害がすでに発生しているのか発生の可能性があるだけか

Access to scene:場所への交通

Number and severity of casualties:負傷者の数と重症度

Emergency services, present and required:救急車が到着しているか救急車が必要か

 

災害時の診療録の有り方についても今までの災害時にトラブルが生じ、日本救急医学会は、日本診療情報管理学会、日本病院会、日本医師会、日本集団災害医学会の5団体で協力し「災害時の診療録の有り方に関する合同委員会」を設置し、「災害時標準診療録」を完成させた。

一般診療用のA3サイズのものを二つ折りにし、必要に応じて外傷用のA4サイズのものを挟み込む方式とした。

 



http://www.jaam.jp/html/info/2015/pdf/info-20150602.pdf

この診療録を使うことによって、その症例の問題点がすぐに解り、裏側の記載で処置の内容を確認できる。

J-SPEED(日本版災害時診療概況報告システム)は、災害医療コーディネーターなどが被災地の医療概況をリアルタイムに把握するために必要な情報を迅速に集計する仕組みである。収集した医療情報は後に災害事例の検証・分析するための災害疫学としても有益に活用される。

標準化された災害診療記録として、初診時J-SPEEDレポーティング・フォームの項目に記載していく。医療救護チームが、診療した被災者の年齢や性別の他、発熱や傷、ストレス症状の有無など26項目をチェックし(追加症候群は記述)、報告要旨はその日のうちに対策本部に集められる。熊本震災で初めて試験導入され、電子災害診療記録システムでも26項目を容易にチェックしていくことで、当日のデータを順次に集計・報告できる仕組みを組み込んでいる。


http://www.jaam.jp/html/info/2015/pdf/info-20150602.pdf

熊本地震の際には緊急のメンタルニーズが把握でき自殺企図に対応することもでき、ノロウイルスの発生を早期にチェックでき、撤収の時期を的確に判断でき、J=SPEEDの活用は、有効であった。今回の大阪北部地震でも稼働している。

朝と晩に情報を収集し、Assessmentをきちんと行い、TTTTriageTreatmentTransport)に結び付けることが必要である。

トリアージ:Triage 患者の重症度に基づいて、治療の優先度を決定して選別を行うこと。救急事故現場において、患者の治療順位、救急搬送の順位、搬送先施設の決定などにおいて用いられる識別救急とも称する。

一次トリアージ(避難所トリアージ)はふるい分けの為、START法で迅速に決定し、二次トリアージ(院内トリアージ)は救命救急部門においてトリアージナースや訓練を受けたパラメディック、軍事医療従事者によってなされる。

 

トリアージの実施基準:

赤色:最優先治療群(重症群) 生命を救うため、直ちに処置を必要とするもの。窒息、大量の出血、ショックの危険のあるもの。

具体的事例:気道閉塞、呼吸困難、意識障害、多発外傷、ショック、大量の外出血、血気胸、胸部開放創、腹腔内出血、腹膜炎、広範囲熱傷、気道熱傷、クラッシュシンドローム、多発骨折、など

黄色:待機的治療群(中等症群) 多少治療の時間が遅れても生命に危険がないもの。基本的には、バイタルサインが安定しているもの。

具体的事例:全身状態が比較的安定しているが、入院を要する以下の傷病者:脊髄損傷、四肢長管骨骨折、脱臼、中等度熱傷、など

緑色:保留群(軽症群) 上記以外の軽易な傷病でほとんど専門医の治療を必要としないもの。

具体的事例:外来処置が可能な以下の傷病者:四肢骨折、脱臼、打撲、捻挫、擦過傷、小さな切創及び挫創、軽度熱傷、過換気症候群、など

黒色:無呼吸群、死亡群 気道確保しても呼吸がないもの。すでに死亡しているもの、または明らかに即死状態であり、心肺蘇生を施しても蘇生の可能性のないもの。

具体的事例:圧迫、窒息、高度脳損傷、高位頚髄損傷、心大血管損傷、心臓破裂等により心肺停止状態の傷病者

東京都福祉保健局「トリアージハンドブック(平成2511月発行)」による

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/kyuukyuu/saigai/triage.files/toriagehandbook20161104.pdf

 

STARRT法:歩けるか、呼吸をしているか、呼吸数はどうか、循環状態はどうか、意識レベルはどうかで判断する。

 

基本的には、30秒程度で判断する。

先ず、歩ける人を連れて、移動し緑の人たちを移動させる。そして歩けない人たちの中から赤色の人たちを選別していく。この時、オバートリアージは許容される。

気道確保や動脈出血に対する圧迫止血以外の処置はしない。

生理学的・解剖学的評価法

 

救護所等におけるトリアージカテゴリーは災害現場と、緊急医療救護所・医療救護所においては以下のように対応する。



判断者1名と記録者2名のチームでトリアージタッグを記載し、原則として被災者の右手首につけていく。この部分が負傷していたり、切断されている場合には、左手首、右足首、左足首、首の順で突ける部位を変える。決して衣類や靴などに付けない。

追加・修正にそなえ記載の際には枠内のスペースを残し上に詰めて記載する。

裏面は、災害現場や収容医療機関等で医療従事者などが、搬送・治療上特に留意すべき事項、あるいは、応急処置の内容などを記載する。

 

東京都災害医療協議会において、災害医療体制の在り方について検討し、発災からの時間により想定される状況を以下の6フェーズ区分に分けて東京都地域防災計画を修正した。

トリアージハンドブック 東京都福祉保健局

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/kyuukyuu/saigai/triage.files/toriagehandbook20161104.pdf

地震関連死:

大災害時には、直後の物理的・化学的な身体障害に対する救急・救命医療、急性期においては、生命維持に必須な医療手段の確保や災害・避難によるストレスに関連した慢性疾患の急性増悪と急性イベント発症、さらに慢性期にも、災害体験や生活環境の悪化による身体的、精神的障害が年余にわたって継続することが少なくない。これらの障害の種類、重症度や継続期間は、災害の大きさと居住地の災害の中心からの距離、体験した人的、物的損害の甚大さ・悲惨さ、避難生活と災害後の居住環境などにより左右される。

過去の大震災による死因の比較を見てみると、震災の発生時間帯が昼食前後の関東大震災では火災による死亡が圧倒的に多く、阪神・淡路大震災においては、建物の倒壊に起因する脂肪が多く、東日本大震災においては津波による溺死が圧倒的に多かった。大震災直後はその震災の特徴により、死因は大きく変動する。

しかし、時間経過とともに、震災の復興が進んでくると避難所での生活環境やストレスにより、疾患の発生状況は異なり、どの震災においてもDVTや慢性疾患の管理やPTSDなどのメンタルケアが重要となってくる。

阪神淡路・新潟中越などの大震災では、外傷による超急性期の医療対応後には、肺炎を主とする呼吸器疾患が増加し、次いで急性ストレス関連疾患である巨大出血正解世を含む消化性胃潰瘍、穀血圧や糖尿病や慢性閉塞性肺疾患の増加、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベント発症の増加、心的外傷後ストレス障害(Posttraumatic stress disorder:PTSD)の発症が報告されている。

震災時の循環器疾患増加の機序:

東日本大震災後24時間以内に心肺停止、次いで急性冠症候群が一過性に増加し、その後に心不全や肺炎が増加し、6週間程度遷延した。震災後に増加する震災関連死亡は高齢者や心血管リスクの高い患者を中心に、被害状況やストレスの強さに比例して増加する。その機序として、災害時の強い恐怖に伴う心理的ストレスから、交感神経系、視床下部・下垂体・副腎系およびレニン・アンギオテンシン系を活性化させ、糖代謝障害、炎症反応、血液凝固・線溶系亢進、血管内皮細胞障害などとともに、急性の血圧上昇の関与が大きいと考えられている。

災害時に増加する心血管病として以下のものが挙げられる。

心不全

急性冠症候群

突然死

タコつぼ型心筋症

不整脈

クラッシュ症候群

脳卒中

高血圧(災害高血圧Disaster hypertension:災害後に生じる高血圧)

下肢深部静脈血栓症・肺塞栓症

http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2014_shimokawa_d.pdf

41回内科学の展望:東日本大震災から学ぶ内科学

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/103/3/103_561/_pdf

 

深部静脈血栓症(Deep Vein ThrombosisDVT

平成161023日に発生した新潟中越地震で深部静脈血栓症の検査を行ってきた経過を見てみると、震災直後は30%以上あったが、1ヶ月後にはいったん10%程度に低下したが、5か月後には20%以上に再上昇した。震災復旧が一段落し、被災者の精神的緊張が低下する事、先行する不安などから鬱傾向になったためと考えられた。その後も定期的にDVTの検査が継続して行われた。車中泊の人のみならず避難所生活の被災者にも多数のDVTを認め、被災から6年後においても5%以下にはなっておらず、一般住民の2%よりも高値であった。

http://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/hinanzyokakuho/wg_situ/pdf/dai4kaisiryo1.pdf

https://pharma-navi.bayer.jp/scripts/components/omrSync/pdf.php/161018_XAR-15-0444.pdf%3Fid%3D1063d93e6f9573e0edf04c87f1a24a60d

高血圧既往及び健診時に収縮期血圧が146mmHg以上の高血圧群において有意にオッズ比1.86DVTを多く認めた(P<0.005)。

アンケート検査結果から、DVT保有者で震災後に脳梗塞が多く発生しており(オッズ比6.0,年齢と性を層別化したMantel-Haenszel検定でオッズ比5.93)と有意な脳梗塞発症増加を認めた。

旅行中のDVT発症のリスクとしては以下のものがある

40歳以上

体動の低下

最近の手術歴・外傷歴

ホルモン療法や経口避妊薬服用中の女性、妊婦

悪性腫瘍やDVT/PEの既往

BMI>30の肥満

下肢静脈瘤、遺伝的血栓傾向、凝固因子2や8の上昇

 

災害時DVT発症の誘因

水分の供給不足、感染症での下痢などによる脱水

避難所の混雑による長時間坐位

下肢外傷や車中泊による体動低下

ストレス・不眠による交感神経及び凝固系の亢進

VTEVenous Thromboembolism:静脈血栓塞栓症)の主な危険因子

http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_ito_h.pdf

DVT予防には、簡易ベッド設置、薬物投与、弾性ストッキング装着である。

http://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-seireihamamatsu-160729.pdf

薬物投与は、震災時においては、水分が不足気味であり、OD錠があるリクシアナがより有効であると考えられる。しかも低用量で、出血の合併症の発症が少ないことも確認されており、検査ができない震災時においてはより有用であると言える。

第二次世界大戦中、ロンドン空襲で地下鉄構内避難者に深部静脈血栓症が多発したため、避難民の睡眠環境を改善する目的で簡易型ベッドを使用するようにしたところその発生頻度が低下したという報告がLancetにある(Volume 236, No. 6120, p744, 14 December 1940)。

震災における深部静脈血栓症を調査する意義=深部静脈血栓症による第二の被災者を出さないことである。

 これまでの中部、中越沖、能登半島地震による震災後静脈血栓症発症頻度、および東日本大震災の各地での調査結果 、福島県における自然+人的災害(複合災害)のデータを総合すると、

1)静脈血栓症予防啓蒙活動を行うことは重要である。しかし、完全ではない。

2)震災後および避難行為により静脈血栓症は必ず発生する。

3)単純に避難しても710%程度、津波被害は1030%程度で発生があると予想すべき。併発する致死的肺塞栓症を予防することが重要。

4)弾性ストッキングは、ある程度の予防効果が日常臨床で証明されているものの、震 災時の特殊状況下での長期の装着は望めない。装着指導とともに、その他の予防措置を十分説明することが重要。

5)避難所設備および環境の優劣が静脈血栓症発生に影響する。

6)静脈血栓症を早期発見、予防するためには医療チームによる震災早期からの介入が必要。

7)災害専門チームも静脈血栓症診断技術と避難所環境改善への助言を積極的に行う事が重要。

8)震災直後のみならず長期にわたり静脈血栓発生頻度は高率を維持する。

9)静脈血栓陽性者に対しては高血圧管理、脳梗塞や心筋梗塞などの発生予防を長期にわたり行う必要がある。

10)DVT治療チームとしての参加だとしてもDVTだけではなく、被災者の健康状況全てを把握し、適切な対応が出来る総合的な知識・技量を常日頃蓄積しておくことが重要。

http://www.bousaihaku-smart.com/dptopics/876/

避難所における就寝形態は、『敷布団』が当然と認識されているが、床にそのまま布団色素の上で生活する環境は、衛生面でも、睡眠環境においても決して推奨できるものではない。

http://www.shigerubanarchitects.com/works/2016_kumamoto/1.jpg

欧米並みの折り畳み式簡易ベッドの導入は検討に値する。

https://www.sankei.com/images/news/160425/afr1604250052-p1.jpg

こういった避難者グループごとの区画を確保することは避難者を入れてから行うことは困難であり、避難者を導入する前から行っておく必要がある。

https://www.nikkei.com/content/pic/20160424/96958A9F889DE2E2E2E1E7EAEAE2E0E6E2E6E0E2E3E49BE2E2E2E2E2-DSXMZO0003575024042016I00002-PB1-12.jpg

また、避難所設備及び環境の優劣について考えると、電気や水道や食事はある程度我慢できるが、トイレはそうはいかない。トイレの環境が避難時のストレスを左右するし、トレの衛生環境が、震災後の感染症の発生規模を左右する。

肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2017年改訂版)http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_ito_h.pdf

 

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2018年7月 5日 木曜日

指定難病 強皮症 佐藤慎二教授

2018年6月17日 
演題「指定難病 強皮症」
演者:東海大学医学部内科学系リウマチ内科教授 佐藤慎二先生
場所:
内容及び補足「
全身性強皮症(Systemic Sclerosis:SS):皮膚や内臓の効果を特徴とし、慢性に経過する疾患。5~6年で進行する典型的な症状を示す『びまん性皮膚硬化型全身性強皮症』と進行はないか、緩徐に進行する軽症型の『限局皮膚硬化型全身性強皮症』に分けられる。
疫学:2005年の登録数は33014人で0.5~2人/1万人。男女比は1:10で女性に多く、30~60歳代に好発する。

病態:原因はまだ十分に解明されていないが、免疫異常、線維化、血管障害が関与していると考えられている。線維芽細胞でのコラーゲン合成が高まっている。約90%の症例に抗核抗体が検出される。また、ほとんどの症例にレイノー現象がみられ、血管内皮細胞を傷害する因子が存在する。
ビニルクロライド、エポキシ樹脂などの化学工場に長年勤務し、これらの物質に接触している人に強皮症が多くみられる。乳房形成術や隆鼻術でシリコンやパラフィンを体内に注入した10~20年後に強皮症を発症する人がいる。抗癌剤のブレオマイシンを使用した人や骨髄移植を受けた人に強皮症類似の皮膚硬化が見られることがある。
http://derma.w3.kanazawa-u.ac.jp/SSc/ssc/index.html

症状:
レイノー症状(98%):
寒冷刺激で手指が蒼白~紫色になる症状で、初発症状として最も多い。

https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/img/s2_q06_01.jpg

皮膚硬化(100%):手指腫脹から始まり、手背、前腕、上腕、体幹とからだの中心部分へと進行する。全例でdiffuse型のように皮膚硬化が体幹まで進行するわけではなく、limited型では体幹までの効果は稀である。

http://www.ishiyaku.co.jp/magazines/ayumi/images/article/12113_02.jpg

その他の皮膚症状:毛細血管拡張(64%)、色素沈着(56%)、色素脱失(27%)、皮膚の石灰沈着(25%)、爪上皮(爪のあま皮)の黒色出血点、指尖部虫喰状瘢痕、指尖部潰瘍などがみられる。

http://sogahifuka.com/blog/wp-content/uploads/cb4aa4545e78d262aedc03a334242436.jpg


http://www.h.u-tokyo.ac.jp/der/_src/sc300/NFB.jpg

https://www.torii.co.jp/hifu/gakujutsu/clinical_derma/images/clinicalderma_vol19_no2.pdf

逆流性食道炎(58%):食道下部の硬化が生じ、食道蠕動低下により生じる。
肺線維症(55%):もっとも重要な臓器合併症。悪化により空是木や呼吸困難が生じ、酸素吸入が必要となる事もある。Diffuse型で比較的よくみられる。
口腔症状:舌小帯短縮or肥厚(44%)、開口障害(26%)

http://www.linkclub.or.jp/~entkasai/zetutan-preope2.jpg
強皮症腎クリーゼ(5%):腎血管の傷害により、腎血管性高血圧が生じ、急激な経過で腎不全に至ることがある。血清学的にMPO-ANCAが陽性例で見られることがある。非高血圧性腎クリーゼと呼ばれる。
その他の症状:手指の屈曲拘縮(37%)、関節炎(29%)、心電図異常(23%)、、ミオパチー(19%)、吸収不良(8%)、肺高血圧症(5%)、心外膜炎(3%)、偽性イレウス(3%)、便秘、下痢、右心不全などが起こる。

診断基準 2010年
大基準
手指あるいは足趾を越える皮膚硬化*
小基準
1)手指あるいは足趾に限局する皮膚硬化
2)手指尖端の陥凹性瘢痕、あるいは指腹の萎縮**
3)両側性肺基底部の線維症
4)抗Scl-70 (トポイソメラーゼI)抗体、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性

診断のカテゴリー
大基準、あるいは小基準1)かつ2)~4)の1項目以上を満たせば全身性強皮症と診断 
* 限局性強皮症(いわゆるモルフィア)を除外する。
  * * 手指の循環障害によるもので、外傷などによるものを除く。
二段階つまみ法による皮膚硬化スコア(modified Rodnan TSS


本法における皮膚硬化における重症度分類(全身性強皮症診療ガイドライン)



2013年分類基準(米国/欧州リウマチ学会)

* 手指硬化のない場合、類似する疾患(腎性全身性線維症、全身性斑状強皮症、好酸球性筋膜炎、糖尿病性浮腫性硬化症、硬化性粘液水腫、紅痛症、ポルフィリン症、硬化性苔癬、移植片対宿主病、糖尿病性手関節症など)には適応しない
* 合計9点以上で全身性硬化症と分類する
(Arthritis Rheum. 65:2737-47, 2013 / Ann Rheum Dis. 72:1747-55, 2013)

全身性強皮症の病型

検査:
1. 抗核抗体:抗核抗体は大多数の例で陽性となる。抗Scl-70抗体、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体が疾患特異抗体であり、臨床的病型と密接に相関する。これらの抗核抗体は、症状に先立って出現し、1人の患者では通常1種類の抗体のみ陽性になる。また経過中に陰性化したり、他の抗体が新たに出現したりすることは少ないため、出現する症状や予後の予測に有用である。一方、力価が変動することも少ないため、疾患活動性の指標とはならない。
2. その他の血液検査:KL-6やSP-Dは間質性肺炎の、BNP、NT pro-BNPは肺高血圧のスクリーニングに有用である。
3. キャピラロスコピー(毛細血管顕微鏡):より早期に診断・治療する目的で、爪郭部の毛細血管に特徴的な形態学的異常を観察する。また血管障害の重症度や活動性の評価にも有用である。
4. 胸部X線・CT、呼吸機能検査、心臓超音波検査:間質性肺炎や肺高血圧症のスクリーニングや評価に有用である。胸部X線・CTでは下肺野の間質性変化、呼吸機能検査では拘束性障害と拡散能の低下を認める。
5. 食道造影:抗コリン薬を用いない食道造影で造影剤の停滞がみられる。
6. スキンスコア(TSS: modified Rodnan total skin thickness score) :母指と示指の指先で小さくつまんだ感じ(small pinch)と、末節指腹で大きくつまみ上げた感じ(large pinch)を、手指はPIPとMCP関節の間をつまむ。一つの部位で硬化に違いがある場合は最大のスコアを採用する。0-3点、採点17カ所は、手指、手背、前腕、上腕、大腿、下腿、足背(ここまで左右)と顔、前胸部、腹部17カ所で採点(最大51点)する。
治療:
皮膚:手指潰瘍、壊死に対してPGE1、リポPGE1、ベラプロスト、ボセンタン、ニフェジピン徐放剤などが用いられる。
消化器病変:逆流性食道炎や潰瘍に対してはPPI、H2Blocker、モサプリド、ドンペリドンが、下痢、イレウス、吸収不良症候群に対しては、モサプリド、ジメチコン、六君子湯などが用いられる
血管病変:強皮症の血管病変進行の阻止と、血管のリモデリングを指向して、エンドセリン受容体拮抗薬、プロスタグランジン製剤、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、アンジオテンシン2受容体拮抗薬、抗酸化薬としてニコチン酸トコフェロール、抗血小板薬が用いられる。
線維化病変:線維化病変の進行を阻止する目的でいろいろな薬剤が試みられているが、確立された治療法はない。繊維かは不可逆的な病変であるので早期治療が重要。Diffuse型では発症から3年以内、diffuse型で皮膚硬化が進行性(数か月から1年以内に進行)、活動性の肺線維症を認め、肺機能が保たれている場合(%VC>60%)であれば、ステロイドやシクロフォスファミド、タクロリムス、メトトレキサート、シクロスポリンAなどを用いて治療を行う。
肺高血圧症:PDE5阻害薬、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤、エンドセリン受容体拮抗薬、プロスタグランジン製剤が用いられる。
強皮症腎:ACE阻害薬、アンジオテンシン2受容体拮抗薬が用いられる。
異所性石灰化:ジルチアゼム、コルヒチン、エチドロン酸2ナトリウムが用いられる。
予後:
皮膚症状主体で臓器病変が進行しない限り予後は良好。Limited型の予後は10年生存率70%程度とされる。
生命予後を規定する重篤な病態・臓器病変として以下のものがある。
急性/亜急性に進行する間質性肺炎
肺高血圧症
強皮症腎
MPO-ANCA関連血管炎
TMA(thrombotic microangiopathy:血栓整備小血管障害症)
心外膜の石灰化による心不全
心嚢液大量貯留による心タンポナーデ
重症不整脈
極度の末梢循環不全による四肢切断
消化管の偽性閉塞ないし吸収不全による低栄養

参考サイト:
難病センター 強皮症
順天堂大学医学負付属順天堂医院
全身性強皮症診療ガイドライン
強皮症研究会議

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