その他

2018年3月20日 火曜日

臨床医のための時間医学を応用した食事指導と腎性貧血への対応

2018年2月22日 
演題「臨床医のための時間医学を応用した食事指導と腎性貧血への対応」
演者:横浜市立市民病院 腎臓内科 岩崎 滋樹 先生
場所:横浜イーストスクエア
内容及び補足「
阿部圭志らは慢性糸球体腎炎で種々の治療にもかかわらず進行し末期腎不全で透析導入まで経過観察できた83例の腎機能の推移を示した。多くの症例が40か月以内に透析になっている。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjnephrol1959/45/1/45_1_1/_pdf/-char/ja

我が国で高率にみられるIgA腎症の予後や考え方は昔から比べ大きく変わってきた。
1993年には日本とフランスから、IgA腎症の予後に関する報告が相次いで発表された。この時点では20年間の予後として38%前後が末期腎不全に陥ると報告された。腎生検時の高血圧、腎機能低下、高度蛋白尿、患者の高年齢などが予後判定因子として認識された。
その後の検討で、本症の症例数が日本においてきわめて多いこと、長期予後が比較的不良であることなどが明らかになってきた。
IgA腎症診療指針―第2版―において、我が国のIgA腎症患者の予後は、眼参議有無細胞増殖と基質増加、糸球体の硬化、半月体の形成、ボウマン嚢との癒着、尿細管・間質病変、血管病変の程度から、
1 予後良好群:透析療法にいたる可能性がほとんどないもの
2 予後比較的良好群:透析療法にいたる可能性が低いもの
3 予後比較的不良群:5年以上20年以内に透析に移行する可能性があるもの
4 予後不良群:5年以内に透析療法に移行する可能性があるもの

IgA腎症診療指針―第3版―

個人のクレアチニン値の変化を追ってみると下図の赤線のように直線的に変化する人はおらず、ほとんど変化しない時間が長く、悪くなり始めたら急激にクレアチニン(Cr)値が上昇する。赤の直線は、2点しか測定できないために直線をひくことになっただけである。


この変化の理由を考えてみよう。蛋白質が代謝されたものを腎臓から排泄している。通常の糸球体数があれば、1日4時間ほど働けば、代謝産物を排泄できる。腎疾患の進行により糸球体数が減少しても、働く時間を延長すれば、身体に代謝産物は蓄積されてこない。働く時間が延長しても代謝産物を排泄できなくなって初めてクレアチニン値が上昇してくるのである。
血清クレアチニン値   1                 2               3                 5
代謝産物                    10個   10個   10個    10個
腎機能                     10人   5人   3人    2人
1人当たりの処理数   1個             2個      3個              5個
ここで食事療法としてタンパク制限食を取って貰うとこの代謝産物の量が減少する。上記表の蛋白負荷が半分に減少したとすると
血清クレアチニン値     1              2               3                5
代謝産物                     10個    5個    5個     5個
腎機能                     10人   5人   3人   2人
1人当たりの処理数   1個             1個    1.6個        2.5個

三大栄養素のなかの炭水化物と脂質は、代謝されると水と二酸化炭素となり、二酸化炭素は肺から排泄されるので、呼吸器疾患がない場合には問題となることは少ない。蛋白質からは窒素化合物が合成され、これは腎臓から排泄するしかない。
従って腎機能が悪化してきた場合には、窒素化合物の合成量を減らすためにタンパク制限が必要となるのである。
自験例ではあるが、初診時の血清クレアチニン値が2.0~3.0mg/dLの糖尿病12例、非糖尿病9例の変化は、それぞれ3年、5年間は血清クレアチニンの上昇は見られなかった。
血清クレアチニン1.5~1.99の糖尿病6例、非糖尿病例35例では、それぞれ5年10年まではあまり上昇は見られなかった。
血清クレアチニン6.0㎎/dL前後の症例に対して、0.7g/㎏/day、0.5g/kg/day、0.3g/kg/dayとタンパク制限食を実施したところ透析導入時期を遅らせることができた。特に0.3g/kg/dayの制限食の症例では60ヶ月でも透析導入者はおらず、80ヶ月で1/3程度とかなり良好な経過であった。
食事療法の原則
1 体重を変えない食事量(太り過ぎは除く)
2 タンパク摂取を減らしているカロリー分を他の栄養素で増やす
3 NaClを控える
4 カリウムに注意
である。

食事療法の指導を行う際の問題点を以下に上げる
1 多くの外来患者さんは、低蛋白食指導の全段階の人が多い

標準量よりも明らかに多く食べているのに、『自分は食べていない』と判断している。こういった人に対してまず行うべき指導は、多い量を食べている人の食事感覚のずれを是正することである。
『腹一杯』食べて初めて『食べた』という感覚になっている。つまり『腹一杯食べていないと物足りない』のである。
余分に食べている量を通常量に戻すだけでも減量ができるのである。

2 太り過ぎでない人がタンパク制限をした際にどんどん痩せてくる
痩せてくるさいに脂肪だけでなく、筋肉が分解されてくるので、運動能力が低下してくるので注意が必要である。
減量の目安としては、月に1㎏でよい。むくみがある場合には、体重減少したさいにむくみの改善がメインである場合があり注意が必要である。
食事指導の実際
1 食事内容を3日間記載してもらい、分析し、蛋白量や塩分量、食事内容の偏りなどの傾向を知る。
2 患者さん特有の食事傾向により個別の対応を栄養士さんに食事指導を行ってもらう。
3 食事内容変化による効果を知ってもらう。

蛋白を減らせば減らすほど効果がある。
何を努力したかを聞くだけで効果がある。
患者さん特有の食事傾向を知ることにより無理な目標ではなく実現可能な目標を決定する。
例:お肉、お魚を半分にし、ご飯をその分増やしましょう。
やる気のある患者さんには蓄尿してもらい、尿への排泄蛋白量から推定される具体的なタンパク摂取量を知らせる。
カロリーが十分に摂取できていれば、体重は維持され、タンパク摂取量を減らしても特に問題となることはない。
低蛋白食は苦行のように思われるかもしれないが、
ドイツミュンヘン大学の栄養学者カール・フォン・フォイト教授がドイツ人の食生活調査から得たデータを基づいて作った理論から明治政府が当時の小柄な日本人に応用し栄養所要量を「蛋白質96g、脂肪45g、糖質415g、2450kcal」と定めたが、この時点での日本人の食生活は「蛋白質56g、脂肪6g、糖質394g、1850kcal」であったが、http://sukoyaka-labo.com/health/4207/
明治末期には、米を主食として、野菜、イモ類、穀物を取り、他の品目はごく限られた量しか消費されていなかった。魚介類も漁村以外では、近年の1/10しか消費されておらず、蛋白源は大豆・味噌が重要な食品であった。


http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/0280.html

食事摂取面の比較をしてみると、大正時代に比べると、昭和初年は穀物類、イモ類の消費量の減少と、果実、牛乳、乳製品、肉類、魚介類、油・油脂、砂糖の増加があった。1960年代には各種食品が増加し、1970年代に入り、動物性食品が全体的に急増、果物も野菜も増加し、基準的な栄養素摂取レベルに達した。

http://www.hosp.mie-u.ac.jp/epidemiology/_src/1434/AokiVol3_pc.pdf

こういった栄養学的な変遷とはかかわらず、日本人の栄養失調は戦中・戦後の食事事情の悪化あるものの、江戸時代や明治期の人が体格的には低身長ではあったものの、非健康であったとか、低栄養であった、体力・持久力不足であったかというとそういったことはなく、身体を動かしていない現代の方が、逆に悪化していると考えられる。
最低限の蛋白摂取量が維持され、摂取総カロリーが維持されていれば、筋肉量や菌曲の低下は来ないといえる。
筋肉量が減少する際に筋肉が分解されると、尿素窒素の産物が増加し、腎臓に負担が増えるため、筋肉が分解されない料のタンパク制限と食事摂取カロリーの維持が重要となる。
そこで患者さんにお勧めしている食事指導は、
1. 朝パン食とし、おかずにソーセージやベーコンなどの蛋白質を入れない。
2. 昼食は麺類、とし汁を飲まない。トッピングにも蛋白質がないものを選ぶ。
3. 夜食は良質の肉などの蛋白質50gを目安によく味わって食べる。

3. 塩分を控える
減塩の生活指導で一番問題となるのが、『塩分摂取量は普通』と思っている人が多いこと。
あるアンケート調査によると、塩分摂取量の多い人の半分しか、『自分は多いかも』と思っていない。こういった人への減塩指導は困難であるため、過食を減らすように指導をするだけで、ある程度の減塩が実践できる。逆に痩せている人は、過食ではないので、減塩指導が困難である。
塩分の摂取量は日本においては地域差が著明で、北高南低である。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/eiyogakuzashi1941/38/3/38_3_155/_pdf/-char/ja

NEJMに太っている人ほど、塩分感受性が大きいとされていることも実感される。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJM198908313210905

4. 高K(カリウム)に注意
1. 野菜の摂り過ぎが多い。
2. 『野菜を煮溢せばK摂取量が減る』と誤解している人が多い。煮溢しても、鍋物やスープのようにして煮溢したものを飲んでしまったら意味がないし、細胞が壊れるまでに溢さないと、Kが煮溢される量はごくわずかなので、あまり効果的でないのが実情である。
3. 腎不全期の高カリウム血症は、カリウム摂取量よりも高蛋白食によるアシドーシスとなっている状態の方が問題であり、摂取するリンの量に注目する必要がある。低蛋白食にすると、高カリウム、高リン血症が抑えられる。
4. 腎不全期の高カリウム血症には、重層やカリウム排泄性利尿薬が良く効く。

時間栄養学
細胞分裂は夜間に起こるので、抗がん剤投与は夜に投与するほうがより効果的である。
骨は夜に合成されるので、カルシウムの摂取は夜が良いといったように、一日の時間変化を考えて、食事や薬物投与の効果を高める取り組みである。
体内時計を形作っている数多くの時計遺伝子が発見された。
哺乳類の概日リズムは4つの時計遺伝子およびその転写翻訳産物である時計蛋白質により制御されている。
Clock:Circadian locomotor output cycles kaput
Bmal 1:Brain and muscle arnt-like protein 1
Period:Per
Cryptochrome:Cry
はじめに時計蛋白質Clock、Bmal 1の二量体がCry上流のE-box配列に結合し転車が促進される。この時点(日中)では糖新生は抑制される。
転写の促進及び翻訳により生じた時計蛋白質PerとCryは二量体を形成し、自らの転写を促進していたClock-Bmal 1二量体に結合し、転写促進の抑制を行う。この時点(夜間)で糖新生は促進される。

このClockが障害されると太ることが実験で認められた。
マウスは日中旧足趾、夜間活動する、人間とは逆の行動パターンであるが、Clockミュータントマウス(C)はコントロール(W)に比較し日中(L:light)での活動はやや増加し、夜間(D:dark)の活動がやや減少した。食事の摂取量は日中で著増し、夜間はやや減少。代謝率は、日中で著増し、夜間やや低下した。

通常食でも高脂肪食でも、Clockミュータントマウスでは摂取カロリーは増加し、体重も増加した。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15845877

喫煙習慣がなく、夜間勤務をしていない健康な女子大学生33名(20.5±1.2歳)に対して、同じカロリーの食事を、時間をずらして、朝型(7:00、13:00、19:00)と夜型(13:00、19:00、1:00)の食事摂取にして食事誘発性熱産生DIT(Diet Induced Thermogenesis)を測定した。
1回目の食事と3回目の食事で、朝型の方が明らかにDITは高値を示した。

3食合計のDITを比較すると朝型は0.878Kcal/Kg/9hであるのに対して、夜型は0.654 Kcal/Kg/9hと発熱量は3/4に低下している結果となった。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs/63/3/63_3_101/_pdf/-char/ja
つまり同じ食品を食べても、夜型になるだけで太りやすくなってしまう。
健康な女子大生で、毎食同じ量の塩分を接種してもらっても、ナトリウムと塩素の尿排泄には時間差があり、朝や昼に比べて夕食後に多くなる。

これは、朝に高く夜に低い血中アルドステロンの日周リズムと逆相関している。

アルドステロンは、腎臓でのナトリウム再吸収を促進し、間接的に昇圧作用を示す。グルココルチコイドはアルドステロンの感受性を高め、両ホルモンの血中レベルが高くなる朝は、仕事や活動をするために血圧が高くなりやすい。アルドステロンのリズムが正常であれば、高い朝と昼に食塩を制限し、有が旗比較的制限を緩やかにすることが可能である。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/137/3/137_3_120/_pdf/-char/ja

蛋白質摂取量が同じでも、三食均等に摂取する場合と夕食に偏って摂取する場合では、筋肉合成量に違いが出てくる。ある一定以上の筋肉の合成ができないために、三食均等に蛋白質を取った方が効果的である。

https://academic.oup.com/jn/article/144/6/876/4589937

腎性貧血:
心かとともに赤血球の産生場所は変わってきた。

エリスロポイエチンは、腎臓の尿細管周囲の線維芽細胞で産生されている。腎不全になるとこの線維芽細胞が変質し、エリスロポイエチンを産生しなくなり、腎性貧血が生じてくる。

http://www.jocmr.org/index.php/JOCMR/article/view/2760/1628
正球性正色素性貧血で、網状赤血球の反応性増加を欠いており、多くは貯蔵鉄フェリチンの増加をともなう。フェリチンが減少している状況下においては、鉄補充の上判断をする。
この状況下においては、貧血を改善しようとして、エリスロポイエチンの産生は亢進しており、エリスロポイエチンの値から腎性貧血かどうかを判断することはできない。
腎不全気においては、鉄、亜鉛、蛋白欠乏性貧血やこれらの利用障害もあるので、これらの疾患を除外する必要がある。
治療はエリスロポイエチンの投与となる。ガイドラインとしては以下のものが挙げられる。

Hb11g/dL未満で投与を検討し、13を超える場合に中止、心不全や呼吸不全がある場合は12g/dLを目安とし、鉄不足に注意し、フェリチンをやや多め100mg/dLを目安とする。

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2017年12月 7日 木曜日

林修の今でしょ!講座29年11月21日

林修 今でしょ!講座
名医100名に調査!「風邪の予防検定」
最新版!かぜの予防法&治し方
かぜは気温変化があり、体調を崩しやすい11月12月に多くかかります。

この番組で紹介されたかぜの予防法、治し方は以下のようなランキングでした。

予防法
1 帰宅後手だけでなく顔も洗う
2 緑茶でうがいをする
3 豚の生姜焼き
4 寝るときにマスク
5 起きてすぐ歯磨き
6 洗濯物の部屋干し
7 朝のホットヨーグルト

治し方
1 風の引き初めに20分のウォーキング
2 体格に合わせた漢方薬
3 おかゆに青ネギを入れる
4 ハッカ飴をなめながら風呂に
5 温めたバナナを食べる

このランキングはこの番組を作成したスタッフがいろいろな医師からのアンケートの結果決定したランキングであり、すべての医師が同じように思っているわけではありません。
かぜの原因ウイルスや患者さんの症状、基礎にある病気などにより、かなり変わってきます。
ただ確実に言えることは、ウイルスが体に侵入しなければ、かぜをひくことはありません。
したがって予防法は、この風邪のウイルスを体に侵入させない方法を取ることにつきます。

帰宅後に、手や顔を洗い、口の中に付着しているウイルスを洗い落とすこと、抵抗力を落とさないように体温を下げないこと、のどの粘膜を痛めないことが大切です。
外出時のマスクは有効ですが、マスクの真ん中(下図の赤丸部分)を触ってしまうと、ブロックしたウイルスを手に付けてしまいます。この汚れた手を口に持っていくと、せっかくブロックしたウイルスを口に入れてしまうことになってしまいます。

片手でマスクを操作しようとすると、無意識にこの赤丸部分を触ってしまいます。両手でマスクの両サイドか上下の端の部分を持ってマスクを動かすようにしましょう。体が覚え込むまで絶えず意識するようにしましょう。

自分もそうですが、慢性の鼻炎がある人は、鼻の粘膜が腫れていて、鼻呼吸をする際に空気抵抗が強く、ついつい口呼吸になってしまいがちです。特に寝ているときに口呼吸をしていると、舌や口の中・ノドの粘膜が乾燥して、ダメージを受けます。粘膜が傷んでしまうと簡単にウイルスに侵入されるようになるので風邪をひきやすくなってしまいます。
そこでお薦めは、寝る時のマスクです。
しかし、寝ている間にマスクが外れてしまったり、マスクのひもが痛くて、寝ている間付けることができない方もいらっしゃいます。
そこでお薦めしているのが、ネックウォーマーです。これだと、乾燥予防だけでなく、首も冷えないので、一石二鳥です。
この内側にマスクをあてておくとより効果的です。
ネックウォーマーがない方やネックウォーマーがあまりお好きでない方にお勧めしているのが、フードつきのパーカーをパジャマの上にきて、フードをかぶり、肌触りの良いタオルを口の上にあて、タオルの両サイドを耳の下に入れ込む方法です。ぜひトライしてみてください。

これらの方法も番組のスタッフに紹介しましたが、メガネをはずして操作をしていた為、スムーズな画像としては収録できませんでした。

川村おすすめの風邪の治療法(薬以外の対応法)
唾液、涙、母乳に含まれるリゾチームやホスホリパーゼA2などの抗菌作用がある酵素や炎症の場面で働くサイトカンの分泌やその後の反応系、外来細胞の表面に攻撃を加える補体系の活性化や好中球やリンパ球、マクロファージの働きにも多数の酵素が関与していて、これらの酵素の働きを上昇させると、風邪が早く治る可能性が高まります。これらの酵素の働きは39度前後が最も強く、これらの免疫機構をより効率的に働かせるために、感染初期に体温が上昇します。インフルエンザのように増殖力が強い場合には、筋肉を震わせて急激な温度上昇を起こして対応しているのです。
寒気を感じた時には、体温を上げて対応する必要がある状況であり、上着を着たり、温かいものを食べたり飲んだりして体温を上昇させる必要があります。
特に、口の中、ノド、首を冷やさないようにすることが大切で、マスク、マフラー、ストール、ネックウォーマーなどで首を冷やさない事、冷たいもの、アルコールを避けること、厚着をして身体全体が冷えないようにすることが重要です。治ってきて、もう高温が必要でないと判断した場合には、汗をかいてあげ過ぎた体温を下げようとしますが、すべての感染の場所が同時に治っているわけではない場合があり、まだ戦いが不利な場所があると、体温低下により、再度相手が有利になり、いわゆる『かぜのぶり返し』の状態になってしまいます。したがってかいた汗で体が冷えないように、汗をまめに拭きながら、ぐっしょり感が出たら、すぐに着替えられるようにパジャマと下着を数着枕元において、身体が冷えないようにすることが早く治すコツといえます。

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2017年11月27日 月曜日

症例から学ぶ 輸入感染症ABC 忽那賢志先生

2017年11月26日 
演題「症例から学ぶ 輸入感染症ABC ~東京オリンピックに備えよう~」
演者:東国立国際医療研究センター 国際感染症センター 忽那 賢志 くつなさとし先生
場所:横浜国際ホテル
内容及び補足「
現在世界旅行者の数は増え続けており、年間10億人を超えている。

日本人の海外旅行者数は年間1700万人前後で、2016年も1711.6万人であるが、日本を訪れる海外旅行者数は徐々に増加し2012年835.8万人、2013年1036.3万人、2014年1341.3万人、2015年1973.7万人となり、2016年には2403.9万人と2000万を軽く突破し、阿部首相も2020年の訪日外国人誘致目標数を4000万人に変更することになった。
https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/marketingdata_outbound.pdf



マスギャザリング(Mass gathering:一定期間、限定された地域において、同一目的で集合した多人数の集団)においては、感染症のアウトブレイクが起こる危険度が増加する。
特に、蚊を媒介とする感染症、髄膜炎菌、麻疹、風疹、おたふく、水痘、インフルエンザ、ノロウイルスやサルモネラ、O157といった感染性腸炎、結核といった感染症が問題となる。
髄膜炎菌は、保菌率が低く、風習、習慣的に集団生活する機会が少なく、蔓延している遺伝子系がそれほど侵襲性ではない所に、保菌率が高い環境から参加者が来て、侵襲性の高い遺伝子型が存在しているとアウトブレイクすることになる。
メッカ巡礼Hajjに関連した流行が2001年に起こり、イギリスで41例のW群による流行で27名の死亡者が出た(8例が巡礼者、19例が濃厚接触者:致命率27%)。

第23回世界スカウトジャンボリーが2015年7月28日~8月8日の12日間山口市阿知須きらら浜他で行われ、世界162か国から約3万人が集まり大会2週間ほど前から、日本各地でホームステイをしながら滞在した。会場では平地に20m×25mごとに杭打ちをしたテントを張り、炊事、トイレ、シャワーを共用していた。
帰国後にスコットランド隊、スウェーデン隊6名が侵襲性髄膜炎菌感染症を発症した。

症例を提示して、これらの問題を考えていこう。

Case 1:27歳日本人男性
2日前から39度の発熱を認め、頭痛、下痢、関節痛を認め来院。血圧102/64、脈拍115/分、39.2°で当直医は、細菌性の腸炎と考え、クラビット投与で返した。
数日後に背中に真っ赤な皮疹が出現し、再受診となった。
海外渡航歴を聞いてみるとフィリピンとマニラに8月12日~15日まで旅行し、現地で蚊に刺され、8月17日朝より熱が出たという経過であった。 
確定診断はデング熱であった。

発熱に下痢を合併している場合海外旅行後ではないかと疑おう。
渡航後のDisease Control and Prevention Center(DCC)受診者の主訴を見てみると、
発熱、下痢が圧倒的に多い。

Geo Sentinelサーベイランスでの熱帯、亜熱帯から帰国後に病院を受診する患者の主訴でも、発熱、下痢が多い。

輸入感染症の各疾患において下痢を認める頻度は以下のような報告がある。
熱帯熱マラリア:5-38%
デング熱:37%
レプトスピラ:58%
リケッチア:19-45%
SARS(Severe acute respiratory syndrome):38-74%
エボラ出血熱:86-96%

Case 2:33歳日本人男性
2日前から発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛があり来院。インド、ジャイプールに1か月前から1週間前までいた。咳や、下痢や尿路症状はないがグッタリしている。血圧102/76、脈拍113/分、体温39.2℃、感染フォーカスを探すために全身の診察を行うも、明らかなフォーカスは認めなかった。
フォーカスのない全身発熱症候群としては以下の疾患が挙げられる。
血流感染症:感染性心内膜炎、カテーテル関連疾患
胆管炎、肝膿瘍
腎盂腎炎、前立腺炎
キャンピロバクター腸炎
マラリア・デング熱・チクングニア熱などの蚊媒介疾患
腸チフス
などである。本例においては血液培養で腸チフスと診断され阿知須炉邁進1g/24hr5日間の投与で解熱し退院となった。

Case 3:31歳日本人男性
4年前からウガンダに滞在し、10日前に帰国。6日前から発熱、全身倦怠感、筋肉痛出現。近位受信し、肝障害、腎機能障害、血小板減少を認め照会入院。義務坐染色ではマラリア陰性であった。ウガンダにいた時には、ネズミはいたるところにいる環境で、受診時には眼球結膜の充血も認めていた。
以上の経過からワイル病を疑いセフトリアキソンの投与が開始されたが、念のために当院で行ったギムザ染色で、赤血球中にリング状の虫体を認め、熱帯熱マラリアと確定診断となった。

マラリアの可能性を考えたら、3回検査を行って陰性でない限り否定すべきではない。


レプトスピラ症:
スピロヘータ目レプトスピラ科に属するグラム陰性細菌で、病レプトスピラは通常6~20μm、直径0.1μmのらせん状の最近で、両端あるいはその一端がフック状にまがっている。微好気若しくは好気的な環境で生育し、中性あるいは弱アルカリ性の淡水中、湿った土壌中で数か月生存するとされている。

病原性レプトスピラは保菌動物の腎臓に保菌され、尿中に排菌される。保菌動物としては、齧歯類をはじめ多くの野生動物や家畜(牛、馬、豚など)、ペット(猫、犬など)が挙げられる。この保菌動物の尿で汚染されえた水や土壌、あるいは尿との直接的な接触によって経皮的に、また、汚染された水や食物の飲食による経口的に感染する。
臨床症状:感冒様症状のみで警戒する軽症型から、黄疸、出血、腎障害を伴う重症型(ワイル病)まで多彩な症状を示す。5~14日間の潜伏期間を経て、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、腹痛、結膜充血などが生じ、第4~6病日に黄疸が出現したり、出血傾向を認める。

治療・予防:軽~中等度のレプトスピラ症の場合には、土岐氏鎖育林の服用がすすめられ、重症の場合にはペニシリンによる治療が行われる。
流行地域を以下に示す。


https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/531-leptospirosis.html

Case 4:28歳日本人男性
3か月前まで半年間スーダンに滞在していた。5日前より発熱、下痢を認め、3日前に救急外来受診。マラリアを疑いギムザ染色するも陰性で、いったん帰宅し経過観察となった。2日前から解熱しがら、再び発熱を認めたたら、本日受診となった。
2回目のギムザ染色でバナナコーンのような虫体を認め4日熱マラリアと診断された。


Case 5:40歳日本人男性
3日前に呕吐・下痢を認め腸炎と診断された。その後具合が悪いため、他の病院を受診し、肺炎と診断され、紹介入院となった。問診情報から、ドバイ旅行のオプショナルツアーでラクダに乗り、ラクダミルクを飲み、ラクダバーガーを食べていたため、MRASが疑われたが、A群溶連菌性肺炎だった。

Case 6:40歳代ソロモン諸島出身の男性
1か月前から3週間ソロモン諸島にいて、3日前に日本に来日。眼球結膜充血し、口腔内に白いザラザラした白斑があり、紅斑を全身に認めた。
(下の写真は小児のものであるが、このような写真で皮膚の基調はもう少し黒かった)
 

Case 7:70歳日本人男性
世界一周のクルーズ旅行中に細菌性肺炎を発症し、インドのムンバイに入院。挿管され、人工呼吸管理まで行った4か月の入院後に帰国した。NDM-1産生のスーパー耐性菌であった。



Case 8:27歳日本人女性
14日~7日前までインドンネシアに滞在。夏熱、関節痛、咽頭痛、咳嗽を主訴に来院。
咽頭所見としてインフルエンザ濾胞を認め、迅速キットにてインフルエンザAと診断した。

海外旅行後に受診した発熱患者のうち約1/3は輸入感染症とは関係ない疾患出会った。

輸入感染症を考える際のポイントを、症例を見ながら考えてみよう。
40代男性
11月17日朝から両側ふくらはぎが攣る感じがして、だるさがあった。18日には38の発熱を認め、夜になると全身に皮疹が出現し来院。11月10日~16日までベトナムホーチミンに滞在していた。
両側眼球結膜は充血しているが眼脂は認めない。

まず着目すべきことは、1.渡航地、2.潜伏期間、3.暴露歴である。
渡航地:
DDC受診症例で比較してみると、東南アジアではデング熱、南アジアでは腸チフス、アフリカにおいてはマラリアが過半数を占める。

地域の流行に関する情報源として以下のものがあるので活用してほしい。
CDC Traveler's Health:
WHO:
Fit for travel:
FORTH厚生労働省検疫所:
国立感染症研究所 感染症情報センター:

潜伏期間:


暴露歴:


その他にも以下のような情報も参考になるので、問診で忘れないようにする必要がある。


疾患を考える際にCriticalとCommonな物から考えて除外していく。

本症例の確定診断はジカ熱であった。

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2017年9月14日 木曜日

帯状疱疹 浅田秀夫教授

2017年9月7日 
演題「帯状疱疹の病態、診断、治療、予防について」
演者: 奈良県立医科大学医学部皮膚科学 浅田秀夫教授
場所:横浜ベイホテル東急
内容及び補足「
帯状疱疹(Herpes Zoster)と水痘症は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV:Varicella-zoster virus)による感染症である。


ヘルペスウイルスは長さ150kbp(15万塩基対)、全量180nmのDNAウイルスである。

ヒトヘルペスウイルスは、現在までに9種類が見つかっている。


初めてVZVに感染した時には、水痘症として発症し、水痘症治癒後も神経節に潜伏し、加齢やストレス、過労、基礎疾患の悪化により細胞性免疫力が低下すると、VZVが再活性化し、神経説を伝わって皮膚に到達し、帯状疱疹として発症する。したがって、水痘症の患者から水痘症が、帯状疱疹の患者から水痘症にかかったことない乳幼児に水痘症がうつるということはあるが、水痘症を発症した人から帯状疱疹が発症することも、帯状疱疹の患者から帯状疱疹がうつることはない。


帯状疱疹の活性化時期には体液中にVZVウイルスが存在している可能性があり、口腔内から検出されることもあり、体液(の接触による)感染や飛沫感染、物品を介しての感染、皮膚と皮膚の接触感染の可能性がある。
妊娠中に帯状疱疹を発症しても非妊娠時と経過は変わらないが、妊娠初期の8~20週頃までの感染の際には、先天性水痘症候群(CVS:Congenital Varicella Syndrome)を2%程度発症することがある。
症状としては、子宮内発育遅延、低体重出生、四肢形成不全、帯状疱疹に伴う皮膚瘢痕、小頭症、小眼球症や白内障および網脈絡膜炎のほか眼球の異常や発達障害などがみられる。また妊娠20週~分娩前21日の感染では、乳児早期の帯状疱疹が出現する。分娩前21日~分娩前6日の罹患では、生後0~4日に発症した場合には、母親から免疫の移行効果が残存しており軽症で済むが、分娩前5日~分娩後2日の弛緩では30~40%の児に出生後5~10日に水痘症を発症し重症化することがあり、死亡率は30%との報告もある。このため、この期間に罹患した母親から出生した児に対しては出生直後に静注用ガンマグロブリン投与と発症した場合にはアシクロビル投与がすすめられる。
http://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/1/13268/20160527200301364382/120_219.pdf

発症年齢は、60歳代を中心に高齢者に多くみられる疾患であるが、若年者においても発症する。


1997年から2011年の間宮崎県皮膚科学会に所属する皮膚科46施設を受診した帯状疱疹初診患者75789人(男性31,565人、女性44,224人)の検討をした宮崎スタディの結果では、宮崎県の人口は117万6000人から113万1000人と3.8%減少したが、帯状疱疹患者数は4232人から5654人と33.3%増加している。発症率は年間1000人当たり3.61人から5.00人と38.5%上昇し、15年間の平均発症率は4.38人であった。

発症数、発症率とも50歳以上で急激に上昇した。

この傾向は15年間同様であり、特に60歳以上で経年変化の増加が大きくなっている。

性差は40歳未満では小さいが、40~60歳台では女性の発症率は男性よりも優位に多かった。全体では年間1000人当たりの発症率は男性で3.87人、女性で4.82人であった。
帯状疱疹の発症は夏に多く、冬に少なかった(冬の1.22倍)が、これは水痘症の発症頻度とは逆の関係にある。子供に水痘症が発症している冬場は、子供からのVZVによるブースター効果があるために発症が少ないとする説もある。

日臨皮会誌 2012;29:799-804、J Med Virol 2009;81:2053-8

主な発症部位は、潜伏感染していた神経節の支配領域である身体の片側に帯状に水泡を伴う皮疹が出現する。胸から背中にかけて最も多く見られ、6割の人が上半身に発症する。


皮膚症状およびその経過
神経支配領域に帯状にやや盛り上がった赤い斑点が出現し、その後、水泡が出現する。大きさは粟粒大~小豆大でウイルスが原因となる水泡の特徴である中央部の窪みがみられる。
皮膚と神経の両方でウイルスが増殖して炎症が起こるため、皮膚症状だけでなく強い痛みが生じる。
   


合併症:
発熱や頭痛がみられることが多く、顔面の帯状疱疹では、角膜炎や結膜炎を合併し、失明のリスクも生じる。稀に耳鳴りや、難聴、顔面神経麻痺などが生じるハント症候群になることもある。

Ramsay Hunt Syndrome:VZVによって生ずる顔面神経麻痺を主張とする疾患。1907年にJames Ramsay Huntが自験例をまとめて報告したことに由来する。小児期に罹患した水痘の口腔粘膜疹からVZVが逆行性に、あるいはウイルス血症によって顔面神経の膝神経節に到着後潜伏し、後年それが再活性化することで神経炎が生じ、腫脹した神経が骨性顔面神経管の中で自己絞扼を生じ顔面神経麻痺(顔面半側の表情筋運動障害)が発症する。症状は周囲の脳神経にも波及し、耳介の発赤・水疱形成、耳痛、難聴、めまいなどを合併する。稀に下位脳神経炎や脳炎をきたし重篤化することもある。

https://www.niid.go.jp/niid/images/iasr/34/404/graph/df404a1.gif

後遺症
急性の炎症による神経損傷が強い場合に帯状疱疹後神経痛を生じることがある。

ZAP(Zoster-Associated Pain):臨床試験において痛みを評価する際の指標として、帯状疱疹に伴う痛みを、急性期、亜急性気、慢性期と連続的にとらえた概念である。


帯状疱疹後神経痛PHN:postherpetic neuralgia):帯状疱疹の皮疹が消失し、帯状疱疹が治癒した後も続く痛みのことで、帯状疱疹の合併症としてはもっとも頻度が多く、3ヶ月後で7~25%、6ヶ月後で5~13%に見られるという報告もある。
持続的に焼けるような痛み、一定の時間で刺すような痛みを繰り返す、ひりひり、チカチカ、ずきずき、締めつけられる、電気が走るなどと表現される。感覚が鈍くなる状態(hyperalgesia)や、触るだけで痛みを感じるアロディニアもよくみられる。

小豆島スタディ
小豆島(人口約3万人、面積153.30km2)在住の50歳以上の住民を対象に2008年12月~2009年11月に登録し、3年間12,522人の住民を対象に疫学調査を行った。
臨床所見から帯状疱疹の発症が疑われた症例は438人、そのうちウイルス学的検査により帯状疱疹と診断された患者は401名(DNA検出者396人、抗体価の上昇のみ5人)で検討を行った。
女性は男性と比較して1.5倍帯状疱疹になりやすく、70歳以上の者は50~69歳のものと比較して1.4倍帯状疱疹になりやすい結果となった。年齢層別の年間発症率は、50~59歳で0.93%、60~69歳で0.89%、70歳以上で1.23%であった。

水痘発症が少ない7~9月に帯状疱疹の発症が最も多い。


帯状疱疹の発症:
VZV特異的細胞性免疫を調べるために、水痘抗原を用いた皮内反応を5683人に施行した。
加齢に伴い反応が低下している。

水痘皮内反応が強い人ほど帯状疱疹発症率は低かった。

紅斑長径が10㎜以上と未満ではリスク比0.27という結果になった。


帯状疱疹発症後一日以内のVZV抗体値(=発症して抗体価が上がる前の抗体値)と帯状疱疹発症との間に差は認めなかった。つまり帯状疱疹発症には、細胞性免疫は密接に関与しているが、液性免疫は影響していない。


皮疹の大きさ:
帯状疱疹発症者の皮疹の大きさと発症以前の水痘皮内反応の紅斑長径との間には負の相関がみられる(皮内反応が大きいほど、帯状疱疹の皮疹が小さい)。


急性期の疼痛の強さ:
急性期・亜急性期の疼痛重症度と水痘皮内反応の紅斑長径との関係を見てみると、皮内反応の紅斑長径が5㎜以上と未満で有意な差が見られた(皮内反応が強いほど痛みが軽い)。


PHNの発症頻度:
水痘皮内反応長径が5㎜以上だったり、皮内反応で浮腫が認められた症例においてはPHNの発症が少ないことが分かった。

帯状疱疹発症後1日以内のVZV抗体価はPHN発症者とそうでない人の間には有意な差を認めなかった。

以上のことをまとめると、帯状疱疹の液性免疫は効果がなく(抗体価が高くても予防効果はない)、細胞性免疫が重要であり、ワクチン作成においてはこのことを重視する必要がある。

予防:
過労や加齢、体力低下などでリンパ球数が減少すると、ヘルペスウイルスが活性化し、神経の炎症と神経に沿って支配領域の皮膚に皮疹を作る。


38546人の60歳以上を対象とした3年間追跡調査で957名の帯状疱疹が発症したが、Oka株をもとに作成されたZOSTAVAXを使用したワクチンを接種した群では51.3%、PHNは66.5%抑制することができた。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa051016#t=article

ZOSTAVAX接種後の発症阻止効果の持続性については、接種後4~7年間では、帯状疱疹発症とPHN発症が、それぞれ39.6%、60.1%減少し、疾病による死亡や損失した生活の質を示す疾病負荷は50.01%減少することが明らかにされた。また、接種後7~11年間では、帯状疱疹とPHN発症が、それぞれ21.1%、35.4%減少し、疾病負荷が37.3%減少したと報告されている。さらに、60歳以上の176,078人を対象とした研究では、ワクチン接種後1年以内の帯状疱疹発症阻止効果はワクチン非接種者と比較して68.7%で、接種8年目ではその効果は4.2%であったと報告されている。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000151542.pdf

治療:
現在帯状疱疹に対して用いられる経口薬はアシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルの核酸類似体のみであったが、2017年7月3日ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬であるアメナビルの製造販売が承認された。

DNAポリメラーゼ阻害薬は、ウイルスDNAポリメラーゼの基質の1つであるデオキシグアノシン3リン酸化体(dGTP)と競合拮抗し、DNAポリメラーゼの働きを阻害する。DNAポリメラーゼ阻害薬はヘルペスウイルス感染細胞内でウイルス由来チミジンキナーゼによってリン酸化される必要があるため、ヘルペスウイルスに非感染細胞には影響を与えにくい。
ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬はDNA複製開始の際に、二重らせん構造をほぐす際に働くヘリカーゼ・プライマーゼ複合体を阻害することで、2本鎖DNAの開裂を防ぎ、DNA複製を開始させるRNAプライマーの合成を抑え、ヘルペスウイルスのDNA複製を阻害する。

参考:
マルホ製薬 帯状疱疹
帯状疱疹ワクチン ファクトシート 平成29年2月10日 国立感染症研究所
帯状疱疹・水痘 予防時代の診療戦略 Medical Tribune 2016年12月15日発行

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2017年7月29日 土曜日

高齢者の心と睡眠 山口隆之先生

2017年7月14日 
演題「高齢者の心と睡眠」
演者:あしがらクリニック 院長 山口隆之 先生
場所: ホテルモントレ横浜
内容及び補足「
睡眠障害の現状:日本人の1/5が睡眠障害を経験し、1/20が睡眠薬を服用しているといわれている。
生理的(正常)な睡眠
朝起きて夜寝るサーカディアンリズムがあり、このリズムを作っているものの一つにメラトニンというホルモンがある。
メラトニン:光刺激により分泌が抑制され、暗くなると分泌が促進される。
 
メラトニンの分泌は、日中、光を浴びている時間帯は抑制され、起床後約14~16時間後にあたる睡眠時間帯に上昇を開始し、深夜にピークを迎えるので下図のような血中濃度の変化となる。

メラトニンは脈拍、体温、血圧などを低下させることで睡眠に導く作用があり、抗酸化作用もあり、生殖細胞の保護・活性化作用、ホルモンバランス改善作用もあるといわれており、不妊治療にも有効であるとの報告があるが、性腺刺激ホルモン抑制作用もあり、メラトニン過剰摂取により月経が止まったり、メラトニンの減少により思春期早発をきたす可能性も指摘されている。また、免疫系に対する効果から発癌を抑制する効果も確認されている。
メラトニンは、トリプトファン→セロトニンを経由して合成されるので、トリプトファンを多く含む肉、魚、マネ、種子、ナッツ、豆乳などの摂取を心がけるとよい。
メラトニンの分泌を減らすもの、強い光、ブルーライト(スマホ、パソコン、テレビなどから出る)、一部のLED、交感神経系の興奮、ストレス、自律神経系の乱れ、などがある。
メラトニンの副作用:悪夢、血圧低下、吐き気、腹痛、睡眠障害

体温と睡眠の関係:
深部体温が下がるときに、非とは眠くなり、上昇するときには眠れません。一般的には体温が正午過ぎと、起床してから15~16時間後に低下してくるので眠くなる時間となる。昼食後に眠くなる理由の一つが正午過ぎの体温低下なのである。
逆にいつも寝る時間の3~4時間前は体温が高く眠ることが困難な時間帯なので、この時間帯に寝ようとする努力を続けると、無駄な努力をすることになるし、布団の中が眠れない場所だという習慣をつけることにもなりかねない。


睡眠時間と睡眠の深さの関係:
通常の睡眠のパターンでは、睡眠について最初の3時間ほどの間にステージ3~4の深いノンレム睡眠に移行する。

この睡眠の深さは年齢とともに変わってくる。

高齢になると睡眠の浅いところがより浅くなってくるので、ちょっとした物音などで目覚めやすくなってくる。これは加齢に伴う変化であり、『中途覚醒による不眠』とは異なるものである。したがってこの時点での目覚めに対して、持続時間の長い眠剤に変更してしまうと、起床時の目覚めが悪くなり、朝のフラツキの原因になる。目覚めた後すぐに寝つければ問題なく、もし寝つきが少し悪いのであれば、超短時間作用型の睡眠導入剤をこの目覚めた時に飲むという方法もある。
睡眠の質は睡眠時間と睡眠の深さの積:「睡眠の質」=「睡眠時間」×「睡眠の深さ」であり、加齢に伴ってこの両者は短く、浅くなる。つまり睡眠の質は加齢とともに悪化してくる。
ここまでのまとめ:
生理的な睡眠の特徴
睡眠のほとんどは最初の3時間で十分
眠りの質が最も良いのは20歳。後は下降線。
高齢者の中途覚醒は当たり前、再入眠できるか否かがポイント

良質な眠りを得る方法:太陽光によってメラトニンの分泌リズムを規則正しくし、適度な運動で深部体温を上げること
朝決まった時間に布団から出る
午前中の早い時間帯に日光浴をする
午後から夕方にかけて適度な運動をする
夜は明るいところで過ごさない

手術室の明るい光の下よりも、曇りがちの外の方が、光の量は多い。
 

睡眠障害
入眠困難:寝つきが悪い
中途覚醒:途中で何度も目が覚めてしまう
早朝覚醒:通常の起床時間よりも早く目覚める
熟眠障害:寝た感じがしない
⇒いずれの症状も「眠れない」と訴えることが少なくない。

睡眠障害の原因
【身体的要因】
 ・痛み   → 疼痛コントロール
 ・夜間頻尿 → 糖尿病、前立腺肥大症
 ・かゆみ  → 掻痒症状への治療
 ・ムズムズ → レストレスレッグ症候群
【精神的要因】
 ・不安   → 不安障害など
 ・抑うつ  → うつ病など
 ・神経過敏 → 統合失調症など

不眠症:俗に言う「不眠症」とは、身体的要因、一部の精神的要因が除外されてもなお、何らかの睡眠障害が持続することで、さらに日中の集中力低下や強い眠気などが問題となって日常生活や社会生活に著しい支障をきたしてしまう病気。

問診のポイント
睡眠障害の診療を行う上では、ただ単に夜間の睡眠障害だけに注目してはいけない。
人間の生理的な睡眠、良質な睡眠は一日の生活を通して得られるものであり、「眠れない」という患者の訴えに対して、身体的要因、精神的要因を除外した上で、一日の生活について問診する必要がある。

問診の手順
・なぜ眠れないんですか?
 痛みや頻尿、痒みやムズムズなどの身体的 要因の有無を確認する。
 また不安や抑うつ、神経過敏などの精神的 要因の有無を確認する。
身体的要因や精神的要因が除外されれば、次は一日の生活について確認する。
・朝は何時に起きていますか? ⇒起床時間が一定か確認する。
・午前中はどのようにして過ごしていますか? ⇒日光浴の習慣や機会があるか確認する。
・昼間の眠気はないですか? ⇒昼間に耐えがたい眠気がなければ睡眠時間は足りている可能性が高い。
・昼寝をしますか? ⇒長時間の昼寝や夕方の睡眠は不眠の元。
・運動する習慣はありますか? ⇒午後の適度な運動は睡眠の質を高める。
・お酒は飲みますか? たばこは吸いますか? ⇒飲酒と喫煙は睡眠の質を落とす。また緑茶や紅茶、コーヒーなどのカフェイン類も睡眠の質を落とす。
・寝る前はどのようにして過ごしていますか? ⇒寝る直前までテレビを見ていたり、寝る前に熱いお風呂に入ると寝つきが悪くなる。
・床に就いてから寝つくまでどれくらい時間がかかりますか? ⇒床に就いてから1時間以上寝つけないような人は入眠困難が疑われるが、眠くないのに布団に入っても眠れない。就床時間や睡眠時間にこだわる必要はなく、眠くなったら布団に入れば良く、朝決まった時間に起きるようにしよう。
・寝た後に途中で目が覚めますか? 
・目が覚めた後にまた眠ることはできますか? ⇒中途覚醒の中には生理的なものがある。途中で目が覚めることが問題なのではなく、その後に全く眠れなくなることが問題なのであり、特に高齢者は中途覚醒するのが当たり前という部分もある。
・朝早く目が覚めますか?
・その時の目覚めはどうですか? ⇒朝早く目が覚めても、すっきりとしたお目覚めであれば特に問題ない。睡眠相が前倒しになっているだけの可能性もあるので、それを修正したければ定時までは布団で過ごし、そこから規則正しい生活を送るようにする。

治療
「眠れない」という言葉に対して安易に睡眠薬を処方していると、依存や耐性、認知機能障害など様々な有害事象を生み出すことになる。精神科医のみならず、一般診療科の医師も安易に睡眠薬を処方しすぎない啓蒙が必要である。
①  非薬物療法
 生理的な睡眠についてきちんと説明する。
 生活指導を行うだけでも睡眠障害が改善したり、薬物療法の効果を高める効果がある。
②  薬物療法
 生活指導だけでは睡眠障害が改善しない場合、薬物療法を検討する。

非薬物療法:
<生活指導のポイント>
・朝は決まった時間に布団から出ましょう。
・午前に30分日光浴をしましょう。
・午後に30分早歩きをしましょう。
・昼寝は午後3時まで30分以内にしましょう。
・規則正しい食生活を心掛けましょう。
・お風呂はぬるま湯にゆっくりつかりましょう。
・寝酒、寝る前の一服は避けましょう。
・夜はリラックスできる方法を見つけましょう。
・眠くなったら布団に入りましょう。
・枕の高さは自分に合ったものにしましょう。

適切な枕の高さ
仰向けでも横向きでも自然な姿勢になるものが最適な枕の高さと言われている。
まず仰向けに寝てみて、次に寝がえりを打ってみて首が上下しない高さに調節する。
ちなみに枕の幅は、寝返りをうつので、頭3個分は必要である。
  
枕が低いときは、の下にタオルを敷き、枕が高いときは、肩の下にタオルを敷く。

  

薬物療法:
・バルビツール酸系: 基本的には使用禁止!
・ベンゾジアゼピン系: 依存、耐性、せん妄(特に高齢者)に注意
・非ベンゾジアゼピン系: 筋弛緩作用が少なく、高齢者に使いやすい
・メラトニン受容体作動薬: メラトニンに作用して自然な睡眠
・オレキシン受容体拮抗薬: 覚醒に関与する神経系を遮断する

ベンゾジアゼピン系睡眠薬
ほとんどの睡眠薬がベンゾジアゼピン系である。
依存する薬だとか耐性ができて効かなくなるとか、認知機能が低下するなどと心配しているが、ベンゾジアゼピン系薬剤はとても安全性に優れた薬である(バルビツール酸系に比べれば)。
【身体依存】薬剤への耐性から服用量の増量、乱用などの問題を生じ、離脱症状が出現する。
【精神依存(常用量依存)】常用量の服用であっても、薬剤中止や不眠の再燃に対する不安などから睡眠薬の減量や中止ができなくなる。
【認知機能障害】(≠認知症)長期の服用で認知機能は低下する。
これらの副作用は、処方の仕方、薬の説明の仕方が悪い医原性であることが少なくない。
薬剤の効果を実感しやすい薬の場合、効果が切れた感じを実感しやすく、依存性が高くなりやすい。
処方に注意する薬剤:ハルシオン、ナックス、デパス、セルシン
処方の際の注意点:
・高齢者ではFirst choiceにしない
・長時間作用型は基本的に使わない
・特に一般診療科の医師には超短時間作用型、短時間作用型だけを使ってほしい
・依存性、耐性、認知機能障害に注意する
・睡眠時無呼吸症候群を見逃さない!!

睡眠時無呼吸症候群を見抜くポイント
・いびき、朝の口の渇き、昼間の眠気
・寝つきは良いが中途覚醒、熟眠障害がある、中途覚醒に対してベンゾジアゼピン系睡眠薬を投与すると悪化する。
・上気道が狭い


服薬指導:
就前というあいまいな時間帯で処方するのではなく、普段寝る時間の30分前に服用を指導するようにする。
私の薦める睡眠薬(非精神科医向け):
非ベンゾジアゼピン系(超短時間型):マイスリー、アモバン、ルネスタ
ベンゾジアゼピン系 (短時間型):レンドルミン、エバミール、リスミー
メラトニン受容体作動薬: ロゼレム(早い時間の服用で睡眠相の前方移動、遅い時間の服用で睡眠相の後方移動)
オレキシン受容体拮抗薬:ベルソムラ

睡眠障害に呕下使い分けの私見

まとめ
・睡眠薬は睡眠補助薬と心得ましょう!
・医原性の依存症を作ってはいけません!
・とりあえず薬で解決しようとせずに、生活指導なども行いましょう!

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

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