その他

2014年6月30日 月曜日

成人アトピー性皮膚炎  上出良一先生

2014年6月29日 東京慈恵会医科大学 中央講堂
演題「産業医に必要な皮膚科疾患の基礎知識-成人アトピー性皮膚炎-」
演者:皮膚のクリニック人形町 上出良一先生
内容及び補足「
日本皮膚科学会は「アトピー性皮膚炎の定義、診断基準」で、アトピー性皮膚炎とは、『増悪、寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ』としている。
アトピー素因とは:
(1)家族歴、既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちのいずれか、あるいは複数の疾患)、
(2)IgE抗体を産生し易い素因
のことである。

アトピー性皮膚炎の年齢別受診患者数は、先進国が多いといわれていて、その中でもスウェーデンが18%と最も多く、次いで日本が多いといわれている。

日本においては、乳児期に多く、1歳半で一度低下し、再度上昇し、学生時代に徐々に低下して行く傾向にある。

就職する時期にまた上昇し、以前のように小児期のみの疾患ではなく、大人にも見られる疾患ということもできる状況になっている。

一人の人の経過を見てみると、受験時や就職する際に悪化していることがわかる。精神的なストレスが、病状の悪化にかなり寄与していることがわかる。

アトピー性皮膚炎の皮膚病変は、
ジュクジュクしている急性湿疹
カサカサしているドライスキン
ゴワゴワしている苔癬化、慢性湿疹
ブツブツ状態の痒疹
などいろいろな皮膚の状態を取る。


アトピー性皮膚炎の治療を困難にしているのは、インターネットなどから氾濫する不確かな情報に患者さん自身が惑わされているからである。
病態を理解し、必要な治療をしっかり受けていただくことが、より良い皮膚の状況を保つために必要である。
2006年にSmithらにより、フィラグリンをコードする遺伝子(FLG)の変異が尋常性魚鱗癬の原因であることが明らかにされているが、この尋常性魚鱗癬とアトピー性皮膚炎の合併が多いことはよく知られていたが、FLG遺伝子の異常が検討され、アイルランド人のアトピー性皮膚炎患者の56%にFLG変異が認められ、2009年のメタアナリシスによると、ヨーロッパ人の健常者では7.5%にFLG変異が認められるのに対し、アトピー性皮膚炎患者では21.6%と高率であった。
日本人においてはヨーロッパ人において認められない、日本人特異的な2つのFLG変異が見いだされ、8つの変異が同定された。日本人のアトピー性皮膚炎の27%にFLG変異が認められている。

通常の皮膚においては、角層が外界に対するバリア機能の9割を担っている。この角層がバリアとして機能するためには、
①角質細胞の細胞質がフィラグリンやケラチン、およびそれらの分解産物などにより満たされていること、
②角質細胞のセルエンベロープと呼ばれる細胞膜が丈夫であること、
③角層の細胞間隙が脂質により十分に埋められていること、
が必要である。この三条件が満たされていることにより、内側からの水分蒸発が阻止され、外側からのダニやアレルギー源などの侵入を防いでいる。
フィラグリンは角質細胞の細胞質内を満たす主要な蛋白であり、角層においては、フラグリン分解産物が保湿因子としても働くことから、フィラグリンはバリア機能の形成や水分保持に重要な役割を果たしている。

FLG変異がありフィラグリンが形成されないと、角層バリア機能不全が生じる。通常では侵入してこないアレルゲンが、容易に角層に入り込み,抗原提示細胞により貪食され、提示された抗原により感作が成立し、アトピー性皮膚炎へと進展していく。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3266780/
従って、アトピー性皮膚炎の治療は、皮膚のバリア機能を保つことが重要なこととなってくる。
小児期からの徹底したスキンケア
適正な外用療法の徹底指導・普及(ステロイド外用療法に対する誤った認識の是正)
皮膚病変が嗜癖的掻破により慢性化した成人患者には、心身医学的な介入も行う
触診と数値による病勢判断(腰背部の皮膚の触診が病勢を良く反映している。Thymus and Activation-regulated chemokine:TARCの変動が病勢に応じて変化する)
巷にあふれている脱ステロイド伝説やアトピービジネスを無視してもらう
患者会、教育入院、セミナー、カフェなどを利用し、多彩な手段による対面でのリテラシー向上を図る
マスコミ、インターネットでの適正な情報発信
患者の自己管理
が大事である。
特に外用指導:塗る技法がきちんと指導されていないことが今までの、ステロイド治療の問題点の一つを形成していたと考えられる。
何を:ステロイド、タクロリムス、保湿剤
どれだけ:全身は1.6m2、ステロイドは20g必要。朝夕2回塗るには、20g×2回×7日=280g/週必要となる。
塗る量の目安1FTU:finger tip unit≒0.5g≒手のひら2枚分

何時:朝夕2回⇒1週間ほどでよくなれば夕のみ⇒1日おきの夕のみ
どのように:手のひらに広げ、なじませるように(決して摺り込まない:皮膚にダメージを与えることになる)
いつまで:しっとりとした皮膚になるまで続ける

アトピー性皮膚炎の悪化サイクル
バリア機構の破壊があり、刺激物が侵入し、かゆみが生じ、掻くことにより炎症が生じ、よりかゆみが持続し、掻くことによりストレス解消と認識するようになってしまい、嗜癖的掻破が行われることになる。

痒みとは、『掻きたい衝動を引き起こす不快な感覚』と定義されており、生物学的意義としては、病原体、昆虫、植物などの外部からの有害物質に対する生体防御シグナルであると考えられている。痒み誘発物質として有名なヒスタミンの拮抗薬(H1R拮抗薬)、抗ヒスタミンは、アトピー性皮膚炎においては効果が弱く、ヒスタミンの関与は低いと考えらえている。

痒みは、その伝達経路から、末梢性の痒みと中枢性の痒みに分類される。
末梢性の痒みは、表皮真皮境界部に分布するC線維神経終末が機械的、科学的、物理的刺激など外部から刺激を受けて興奮したシグナルを、脊髄、脊髄視床路、視床を経由して大脳皮質感覚野に投射され認識される。
一方中枢性の痒みは、オピオイドペプチドが中枢神経系に存在するオピオイドレセプターに結合することによって制御されている。

アトピー性皮膚炎患者では、通常では痒みを感じないような衣服が皮膚に軽く刷れる程度の些細な機械的刺激によっても痒みが生じる痒みの過敏状態(アロネーシス)や、本来痛みを生じて痒みを制御するような刺激も痒みとして感じる(ハイパーネーシス)が認められる。
健常人においては痒みに対して行う掻破行動は、初め気持ちよく感じるものの、ある時点からは痛みを生じるため、掻破を中止するが、アトピー性皮膚炎患者では、痒みの変調があるため、痒みが増強し、さらなる掻破行動が誘発されることになる。そのため、痒み⇒掻破⇒二次的皮膚病変と悪循環が形成され難治化することになる。
その原因には、
① 表皮内への神経線維の侵入、 

② ヒスタミンH4受容体の関与
③ ヒスタミン以外のケミカルメディエータ―の関与(サブスタンスP、カルシトニン遺伝子関連ペプチドが遊離され神経原生炎症が惹起され、血管透過性の亢進、血管拡張、肥満細胞やケラチノサイトの活性化による炎症の増幅)
④ オピオイドペプチド―オピオイドレセプター系の関与
が考えられている。

http://www.microscopy.or.jp/magazine/46_4/pdf/46-4-233.pdf
参:
アトピー性皮膚炎は二つのタイプがあるといわれており、外因性アトピー性皮膚炎(アレルギー性アトピー性皮膚炎)と内因性アトピー性皮膚炎(非アレルギー性アトピー性皮膚炎)に分けることができる。免疫学的には内因性アトピー性皮膚炎患者ではINF-γ陽性のTh2細胞誘因性ケモカインであるCCL17/TARC濃度が低い。


皮膚の重症度


外用薬の強度別一覧


http://www.allergy.go.jp/Allergy/guideline/03/index.html#06
http://www.dermatol.or.jp/upfile/1372913553_1.pdf
http://www.nihonatopy.join-us.jp/index.html
http://atopinavi.jp/

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2014年6月17日 火曜日

未病・エニグマ症例検討会

第22回未病・エニグマ症例検討会
平成26年6月13日 サンケイプラザ
症例1「筋力トレーニング中に筋肉の付きづらさを自覚した39歳男」
横浜市立大学附属病院 研修医 新井正法先生
症例は39歳男性。既往歴として不安神経症以外に特記事項はなかった。
自覚症状として、プロテインを飲みながら精力的に筋力トレーニングを行っているが、同じ程度の負荷をかけているほかの人と比べて、ここ1年ほど腓腹筋の成長が遅いと感じていた。また、立位を取っているときの疲れやすさを自覚していた。
毎年受けている健診で初めて経度肝機能障害を指摘されたため、近位を受診。
腹部エコーで脂肪肝を認めたため、翌月腹部造影CTを施行したところ臓器以上を認めたため、精査加療目的に当科紹介受診し、入院となった。
入院時身体所見は身長161.4cm、体重58.8㎏、BMI 22.5、買たるサイン、身体所見に異常所見はなかった。
決算、生化学に異常を認めなかった。
Subclincal Cushing Syndrome (SCS)は副腎腫瘍からのコルチゾールの自立性分泌を認めるが、満月様顔貌、中心性肥満などの典型的なCushing徴候を欠く疾患で、我が国の全国調査では副腎偶発腫瘍の10.5%にコルチゾール産生を認めている。SCSからCushing 症候群への移行はまれであり、表現型はメタボリック症候群であり、2型糖尿病や高血圧、骨粗鬆症として治療されている可能性もある。診断に関しては以下のようになされている。

http://www.ishiyaku.co.jp/magazines/ayumi/AyumiArticleDetail.aspx?BC=923209&AC=9010
http://square.umin.ac.jp/kasuitai/doctor/guidance/sub-clinical-cushing.pdf
SCSとMild Cuchigを比較したものがある。
多くは副腎の腺腫であり、本症例も腹部CT検査で両側に多発結節を認めていた。

治療においてのストラテジーを示す。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2265.2011.04253.x/full

症例2「約40年にわたる多発関節痛と腹痛を繰り返す69歳女性」
JCHO埼玉メディカルセンター 内科 西村幸治先生
症例は69歳女性。20歳代から多発関節痛の増悪寛解を繰り返していました。抗核抗体80倍、CRP1-2㎎/dlで推移しており、30歳代に大学病院で精査したが原因不明だったようです。以降、疼痛時にはNSAID屯用で生活していました。
2009年、健康診断で便潜血陽性を指摘され、4月26日当院で下部消化管内視鏡検を実施されました。その結果、盲腸から盲結腸の粘膜にびらんが散在しており、生検では血管周囲に無構造物が沈着している所見が得られました。ところが内視鏡検査後に腹痛が出現。徐々に増悪し、6月4日に入院となりました。絶食安静に手腹痛は改善しました。腹部レントゲンおよびCT検査を撮影したところ、ある特徴的な所見が得られました。そこでよくよく問診したところ、あるものを長年にわたって摂取していたことがわかりました。
特発性腸間膜静脈硬化症は比較的まれな疾患であるが、平均年齢60歳代でやや女性に多く、日本を中心としたアジア人のみが罹患している。病変は回盲部から横行結腸までが最も多い。腹部単純X線写真で右側腹部に線状石灰化像、CT検査にて長官へ来および腸間膜に一致して石灰化像を認めるのが典型的である。
最近では吉永らが多くの症例をまとめているが、これまでの報告を合わせると139例になる。
平均年齢は61.8歳、2:3でやや女性に多く、回盲部から横行結腸までの症例が多いが、S状結腸や直腸まで病変が広がっている症例もある。
症状は腹痛が多く、下痢、嘔吐、イレウス、下血、血便などがある。
病態としては、静脈の硬化に伴う血管拡張が出現し、うっ血が進み青銅色調を呈し、その後にびらんや潰瘍が出現すると考察されている。
鑑別をすべき疾患としてはMyoinitimal Hyperplasia of Mesenteric Veins(MIHMV)、Enterocolic Lymphocytic Phlebitis(ELP)、アミロイドーシスの三疾患があげられる。
*MIHMV:腸間膜から腸壁を貫く静脈の内膜飛行をきたすことにより区域性の虚血性病変を引き起こすまれな疾患で、①若年男性に発症する傾向、②全例がS状結腸から直腸に病変があり、③内視鏡的にはinflammatory bowel disease(IBM)の所見を呈するが生検組織はIBMのしょけんとはことなり、腸壁の虚血性壊死、腸間膜から壁内を貫く静脈の内膜飛行による内腔閉塞をしめす。
*ELP:静脈炎に気胃炎する虚血性腸病変で、腸壁内の細・小静脈から行間膜の大静脈まですべての大きさの静脈における静脈炎を認めるが、動脈は侵されない。
*腸管アミロイドーシス:原発性アミロイドーシスや多発性骨髄腫に見られるAL型と慢性関節リウマチなどに続発するAA型アミロイドーシスが主なものである。AAがたアミロイドの小血管周囲への沈着像はIMPの血管変化に類似しているが、IMPで特徴的な間質への膠原線維の沈着はアミロイドーシスでは認めない。アミロイドーシスの確定診断には、Congo RedあるいはDylon染色および免疫染色をする必要があるが、IMPにおける血管および間質への膠原線維の沈着を確認するために、同時にマッソン・トリクローム染色なども併用することが推奨されている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/54/3/54_3_415/_pdf

画像所見:腹部単純X線写真では腹部に点状〜線状の石灰化が多数みられる。USでは上行〜横行結腸の壁肥厚および壁内に高エコーが多数みられる。CTでは右半結腸の壁肥厚と壁内のびまん性に石灰化だけではなく、腸間膜静脈にも石灰化がみられる。注腸X線検査では上行〜横行結腸の伸展性は不良で、粘膜も粗造。拇指圧痕像もみられる。

http://www.teramoto.or.jp/teramoto_hp/kousin/sinryou/gazoushindan/case/case186/index.html
アジア人にしか見られないといわれている原因の一つとして、漢方薬の成分の山梔子(サンシシ)が腸内細菌により代謝され、ゲニポシドとなり、5年以上の長期服薬しているうちに腸管静脈壁の石灰化を引き起こし、腹痛、下痢、便秘、腹部膨満感、嘔気・嘔吐などの症状が繰り返し現れるようになると考えられている。
山梔子が含まれている漢方で腸間膜静脈硬化症の報告がある主なものを以下に記載する。
No.15 黄連解毒湯
No.24 加味逍遥散
No.58 清上防風湯
No.62 防風通聖散
No.104 辛夷清肺湯
No.135 茵蔯蒿湯
http://www.hosp.yamanashi.ac.jp/yakuzaibu/di_box/files/dibox0709.pdf

症例3「長期間にわたり息苦しさが持続する文字の読み書きの不自由な77歳女性」
江東病院 内科 阿部祐美先生 小幡賢一先生
症例は77歳女性。主訴は呼吸困難で、喫煙歴なし。母親は患者が生まれる前から喘息といわれ常に咳・痰が出現していた。患者も、乳児期から頻回に咳・喘鳴を認めていたが継続的な治療はされていなかった。幼児期以降も呼吸困難のため外で遊ぶことはなく学校も欠席がちであった。二十歳過ぎたころから呼吸困難が消失しないまでも徐々に軽減し、長時間の外出が可能となった。上京して仕事を探したが、文字の読み書きができないため、鉄工所で溶接工として働きながら結婚・出産(一回)、定年まで勤め上げた。その間、じん肺が疑われ、経過観察されていた。退職後10年程経過してから、再び労作時の呼吸困難が増悪。当院初診一年前に、心臓超音波で大動脈弁狭窄症を指摘されたこともあり、近位で在宅酸素療法(酸素2L)を導入されていた。今回咳・痰が増悪し、胸部Xpで両側リン上映を認めたため精査加療目的で入院となった。

Dyslexia(ディスレクシア):知的遅れはないが、読んだり書いたりすることが苦手な人たちのことを言い、「文字とその文字が表わす音が一致・対応し難く、勝手読みや飛ばし読みが多い」、「音読作業と意味理解作業が同時にできないために読み書きに時間がかかる」、「読みができないと文字を書くことはより困難になる」などの特徴がある。英語圏では10~20%の頻度でみられるとされているが、日本の割合は4.5%程度と考えられている。
日本障碍者リハビリテーション協会ではDAISY(Digital Accessible Information SYstem)やそれを使った教材の普及に努めている。
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/glossary/Dyslexia.html
http://ondyslexia.blogspot.jp/2013/06/davis.html

Williams Campbell症候群:気管支軟骨形成不全による先天性の気管支拡張症で、気管支軟骨の欠損のため広汎な気管支拡張症を生じ、通常生後1年以内に呼吸器症状により発見される。成人に達する場合もあり、その場合は身体の発育が阻害されることが多い。家族発生例の報告もある。
気管軟骨のうち第4~11分岐までは軟骨が非全周性に存在している。

この軟骨の形成不全のため、吸気には気管支が開いているが、呼気に気管支が閉塞してしまう。

呼気に小葉気管支が閉塞してしまうために、細気管支より末梢にAir trappingが生じてしまうことになる。したがって、レントゲンやCT上で拡張している部分は細気管支レベルである。確定診断は組織像で気管軟骨の形成不全・欠損を証明する必要があるが、臨床上困難であるので、CT検査で吸気と呼気での比較で、小葉気管支の閉塞機転を証明する方法がとられている。
(下の写真は本症例のモノではありません)


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3265990/#!po=27.7778

症例4「両肺浸潤影の経過観察中に目のカスミが出現した48歳女性」
神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科 松尾規和先生
幼少期から汗の量が少ないと感じていた。2009年頃に眼のカスミが出現し眼科受診するも、特に異常所見の指摘なく、経過観察で改善した。2012年3月、健診で両肺に浸潤影を指摘され当科受診した。
気管支鏡下の肺生検では、類上皮細胞肉芽腫と多核巨細胞が散見されたが、血管炎専門病理医に再建してもらったところ、肉芽腫性血管炎Granulomatosis with polyangitis(GPA)の所見とされた。
心電図ではV3-6にST低下、陰性T波を認め、心エコーで肥大型心筋症と診断された。
2013年右同側半盲出現したが、頭部MRI上は脳梗塞は否定的であった。

GPAは以前Wegener肉芽腫症と呼ばれていた、①鼻、耳、眼、上気道(E)および肺(L)の壊死性肉芽腫性血管炎、②腎(K)の巣状分節性壊死性糸球体腎炎、③全身の中・小動脈の壊死性血管炎の3つで特徴づけられる全身性血管炎症候群で発症機序にC-ANCA(PR3-ANCA)が効率に関与する疾患である。2010年医療受給者交付条件からみたGPA患者数は1671人でこの15年間で2..5倍に増加している。30~50歳に後発し男女比はほぼ同数である。E症状は約90%に、L症状は約80%、K症状は全経過を通じて70~80%に見られる。
主要組織所見は、①上気道、肺、腎の巨細胞を伴う壊死性肉芽腫性血管炎、②免疫グロブリン沈着を伴わない壊死性半月体形成性糸球体腎炎、③小・細動脈の壊死性肉芽腫性血管炎である。
http://www.anca-aav.com/contents/hp0020/index.php?No=12&CNo=20
本症例の肺病変はこの疾患と考えられるが、眼のカスミや汗が少ないこと、肥大型心筋症の合併はこの病態のみでは説明できない。

Fabry病の臨床症状の経年変化を示す。古典型のFabry病などでは多く、亜型においても、本症例のように発汗の減少を呈する症例もいる。

Fabry病は、X連鎖性劣性遺伝するαガラクトシダーゼ活性の低下または欠損によりグロボロリアオシルセラミド(GL-3)が蓄積されることにより発症するため、以前男性のみに見られると考えられていた。特に近年女性の場合ふたつあるX遺伝子の発現の仕方が組織により異なることがわかってきた。ヘテロ接合体である女性患者も年齢が進むにつれ、組織にGL-3が蓄積して症状が出現してくると考えられる。
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000647.html
診断はGLA活性の低下であるが、女性でみられるヘテロ接合体患者半数以上はカットオフ値を超える活性があるため、カットオフ値以上の活性があっても否定できない。

培養繊維芽細胞の免疫細胞科学的解析を行う必要がある。

http://www.my-pharm.ac.jp/genetics/activities.html

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2014年6月14日 土曜日

診療に役立つ腹部エコー検査の使い方 金田智先生

2014年6月11日 けいゆう病院 大会議室
演題「診療に役立つ腹部エコー検査の使い方」
演者:東京都済生会中央病院 放射線科部長 金田智先生
内容及び補足「
超音波検査のメリット
胆嚢:胆石はCT検査では2/3ぐらいしか描出できない。石灰成分がないと映らない。胆嚢癌エコーで疑われる症例でも、CTでは、異常所見が写らず、MRIで腺筋症が疑われる所見しか描出できない症例もある。
肝臓:DM患者のScreening目的で行われたエコー検査で3㎝大の辺縁隊がある腫瘤が描出されHCCが強く疑われる症例でも、単純CTでは病変が描出できず、造影CT検査でも、肝血管腫が疑われる像としてとらえられることもある。この症例においては、動脈相が撮られていれば、肝癌疑いという所見として認識できるので、ただ単に造影CTをやったから見落としがないと考えないで、どういった疾患を疑って検査しているかを、放射線医師伝え、適切な撮影法を行う必要がある。
膵臓:膵臓も単純CTでは膵頭部の2.5㎝大の腫瘤性病変の描出ができないこともあり、慢性膵炎との診断となることもある。MRCPで膵臓を詳しく見ることも可能ではあるが、MRIは石灰化が描出できないため、膵管拡張の像しか描出できず、CTやエコーで膵石を確認することが必要となることもある。
とはいってもエコー検査にも弱点はある。
エコーでは、見落としやすい場所=描出しづらい場所がある。
いくつかの方法でその欠点を最小限にすることができる。
一つは呼吸による調節で、呼吸運動によりそれぞれの臓器の位置が変動することを利用する。
体位変換も有効な方法である。臓器が移動すること、消化管ガスが移動すること、病変の可動性がわかる利点がある。
* 肝臓では、右葉、左葉の端っこが描出しづらい→仰臥位で心窩部の水平断、左季肋部操作、心窩部の矢状断、右季肋部操作、肋間操作を行い、左下側臥位にして、右季肋部操作、肋間操作を行うと、死角の範囲が減るとともに、描出しづらい病変が、はっきり映ることも少なくない。
* 胆嚢では、深部にある頚部だけでなく浅部にある胆嚢底部も皮下脂肪が多いと多重反射エコーのように見えて病変が見づらくなる。胆嚢を長軸像で観察するだけでなく、短軸増で観察することにより、病変がよりはっきり描出できることが少なくない。また、胆石でもAcoustic shadowを伴わないものが少なくなく、体位変換を行い、移動するかどうかの確認はするべきである。
* 膵臓は体部のみしか描出できないと考えられがちであるが、尾部に関しては右下側臥位にし、脾臓を通して観察することも有用である。
早期がんを発見するためには、腎臓では2㎝以下、胆嚢は2㎝以下の隆起型、膵臓は1㎝以下で病変を描出する必要がある。
胃内ガスを移動させて、膵臓体部や鈎部を描出させるためには、身体の移動の仕方も重要である。仰臥位から左下側臥位にし、右下側臥位にすると良い。

在宅エコー検査も有用な検査である。
心嚢液貯留、胸水貯留、腹水貯留があっても高齢者の場合、身体をあまり動かさないので無症状であることが少なくない。
その際問題とすべき基礎疾患としては、以下のような病態がある。
汎発性腹膜炎
がん性腹膜炎
腹腔内出血
内部エコーのある腹水(点状エコーがあれば腹腔内出血の可能性大)
腸管癒着のある腹水(がん性腹膜炎)

急性胆のう炎の場合は、胆嚢の腫大があり、プローベで押すと痛がることが参考になる。

両側性水腎症は前立腺肥大がひどくなるとしばしば見かけるが、がん性腹膜炎も念頭に置く必要がある。

腸閉塞の場合には、小腸のみか、大腸も拡張しているかどうか、絞扼性か非絞扼性かの鑑別が重要である。
絞扼性イレウスの場合には、内容物は移動せず、大量の腹水を伴うことが多く、腸管壁が、崩れた像などのが危険信号である。

腹腔内遊離ガスは、左下側臥位にして、腹壁と間の間にガスをためると描出しやすくなるが、空気の量が多くなると、エコーでは画像として描出しづらくなるので、肝臓の像がきれいに映らない時には、単純写真で腹腔内ガスを確認する方が良い。

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

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