その他

2015年3月 9日 月曜日

SSI(手術部位感染症) 榎本武治先生 大毛宏喜先生

2015年2月25日 横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ
演題「当科における手術部位感染サーベイランスの変遷と結果について」
演者:聖マリアンナ医科大学 消化器・一般外科医長 榎本 武治 先生
演題「周術期をめぐるエビデンスと慣習」
演者:広島大学病院 感染症科 大毛 宏喜 先生
2講演内容のまとめ及び補足「
SSI: Surgical Site Infection:手術部位感染とは、切開部感染と臓器/腔感染のことをさす。「創外感染(手術部位以外の感染)」または「遠隔臓器感染症」とは呼吸器感染、尿路感染、カテーテル感染を含め手術補助療法によって発症してくる感染症を意味する。

術後感染の分類
手術部位感染(Surgical Site Infection)
手術創感染
表層切開創
深部切開創
手術対象臓器/体腔の感染
手術部位以外の感染
呼吸器感染、尿路感染、カテーテル感染、薬剤関連性腸炎など
術後耳下腺炎、術後胆嚢炎

手術創はその清潔度によって以下の四群に分類される。
手術創の分類
classⅠ/清潔:炎症がなく、気道・消化器・生殖器・未感染尿路に到達しない非感染手術創。
classⅡ/準清潔:管理された状態で気道・消化器・生殖器・尿路に達した異常な汚染のない手術創。
classⅢ/不潔:偶発的新鮮開放創。無菌手技に重大な過失のある手術創。あるいは胃・腸管からの著しい腸液の漏れ、内部に非化膿性の急性炎症のある切開創。
classⅣ/汚染-感染:壊死組織が残る古い外傷、感染状態または内臓穿孔のある手術創。

手術部位感染を減少させる方法は術前、術中、術後の抗生剤投与のみばかりでなく、患者の合併症、消毒、手術室環境、医療従事者の消毒・感染管理など手術全体に注意を払う必要がある。

SSIが起こる危険性のうち患者の特性は以下のものが挙げられている。
① 糖尿病:手術後48時間以内の血糖値が200mg/dL以上では、SSI発症リスクが増大する。HbA1cを術前に7%以下に低下させる。
② 喫煙:手術の30日前に禁煙するよう指導する。禁煙直後には咳・痰が増加するため。
③ ステロイド投与:クローン病で術前ステロイド投与患者のSSI発症率が高いとする報告があるが、関係ないとするものもある。
④ 栄養失調:栄養状態の改善はSSIの防止手段だけでなく、術後合併症の減少効果もある。プレアルブミンの測定や(基準値:22~40mg/dL)、小野寺スコアがある。

小野寺スコア:Prognostic Nutritional Index;PNI=10×血清アルブミン値(g/dL)+0.005×末梢リンパ球数(/mm3):45以上:手術可能、40~45:危険があり注意が必要、40未満:切除・吻合禁忌
⑤ 術前の黄色ブドウ球菌の鼻腔内定着:黄色ブドウ球菌の鼻腔保菌とSSI発症との間には顕著な関連がある。
⑥ 周術期の輸血:血液製剤を必要とする手術患者にSSI発症減少の手段として投与を中止する科学的根拠はない。

SSI発症の危険性への患者の影響因子
① 年齢
② 栄養状態
③ 糖尿病
④ 喫煙
⑤ 肥満
⑥ 離れた部位の同時に存在する感染
⑦ 微生物の定着
⑧ 免疫反応の変化
⑨ 手術前入院期間

SSI発症の危険性への手術の影響因子
① 手洗い時間
② 患者の皮膚の消毒
③ 術前の剃毛
④ 術前の皮膚の準備
⑤ 手術時間
⑥ 術後感染発症阻止抗菌薬の投与
⑦ 手術室の換気
⑧ 手術機器の非適切な滅菌
⑨ 手術野の異物
⑩ ドレナージ
⑪ 手術手技

手術前の問題
◆ 除毛:いかなる方法でもSSI発症率増加に結び付くので、除毛を行わない。除毛の必要がある場合には手術直前に専用のクリッパー(バリカン)で行い、カミソリを使わない。
除毛の方法と時期とSSI発症率の関係
      時期  不定直前 前夜 24時間以上前
脱毛剤使用または除毛しない0.6% 
カミソリで剃毛    5.6% 3.1% 7.1%   >20%
電気クリッパー   1.8% 4.0% 

◆ 患者皮膚消毒
グルコン酸クロルヘキシジン:血液や血清蛋白で不活化されない。一回の使用で皮膚菌数の減少が顕著。
コードホール:血液や血清蛋白で不活化される。
アルコール:CDCのSSI予防ガイドラインドラフト版2014年で推奨されているが、電気メスなどを使用する際の引火性に注意が必要。アルコールの火は、は無影灯下では、人間の目に見えにくいので、火が出ても気が付きにくい。
◆ 術者の術前の手指衛生:適切な消毒液で肘まで消毒する。爪は短く保ち、付け爪はしない。
◆ 感染・定着のある手術室職員の管理:排膿のある皮膚疾患を有する外科系職員は治癒するまで業務から外す。
◆ 術後感染予防抗菌薬(AMP:antimicrobiral prophylaxis)投与
AMPの目的:宿主の防衛機能が十分機能できる微生物の数まで手術中の汚染微生物を減少させる目的で、抗生剤を投与するものである。
AMPの効果を高めるために次の四原則に従う。
① AMPは臨床試験の結果、SSI発症防止効果が認められた手術全部、または手術後に切開部・臓器/体腔が縫合不全などにより破局的になった場合に使用する。
② もっとも汚染が予測される菌に有効なAMPを選択する。
③ 皮膚切開時にAMPの血中もしくは組織内濃度が殺菌濃度に達するよう、時間を計算し投与する。整形外科領域などで駆血帯を使用する場合は装着前に抗菌薬投与を終了する。帝王切開では臍帯クランプ後に投与するのが一般的である。
④ AMPの治療濃度を手術中及び手術数時間は維持する。
◆ 手術部位による想定される原因菌とAMP選択
① 心臓血管外科、乳腺・甲状腺手術など(清潔手術):グラム陽性菌に強い第一世代セフェム系のセファゾリン(CEZ)、第二世代のセフェム系のセファマンドール(CMD)やセフォチアム(CTM)、セファマイシン系のセフメタゾール(CMZ)、セフォキシチン(CEX)
② 上部消化管手術:黄色ブドウ球菌、腸球菌、グラム陰性桿菌などが対象。第一世代のセファゾリン(CEZ)や、広域ペニシリンのピペラシリン(PIPC)などが第一選択。嫌気性菌への抗菌力を考えて第二世代セフェム系、セファマイシン系も選択肢の一つとなる。
③ 下部消化管手術:嫌気性菌にも有効なセファマイシン系のセフメタゾール(CMZ)やセフォキシチン(CEX)が第一選択。日本ではオキサセフェム系のフロモキセフ(FMOX)もよく使われる。大腸手術においては術前の腸管処置が重要で効果が高い。施設によりさまざまなColon preparationが行われている。代表的なもので、カナマイシン+メトロニダゾール、トブラマイシン+クリンダマイシン、ポリミキシンB+メトロニダゾールなどがある。
④ 腹腔鏡手術:腸液・胆汁の漏れがほとんどない場合は、落下菌や皮膚常在菌も極めて少ないと考え、第一世代セフェム系抗菌薬の一日投与でよい。
⑤ 汚染・感染手術:多くの菌種が存在し、多臓器不全に移行させないためにも初めから強力に細菌数を減らす必要がある。初回より広域スペクトラムを持つ第四世代セフェム系や、カルバペネム系呼応おきん薬を使用する。
βラクタム薬にアレルギーがある場合には、ClassⅠ(清潔手術)では、クリンダマイシンやバンコマイシン、ClassⅡ以上(準清潔、不潔、汚染・感染手術)では、アミノグリコシド系薬またはキノロン薬とクリンダマイシンの併用投与を行う。
◆ 投与開始時期:術野が露出した時に抗菌薬濃度が血中や組織中で高濃度となるように、通常は手術開始0~30分前に投与を開始し、3時間を超える手術では、濃度維持のために追加投与を行う。βラクタム系の抗菌薬の殺菌作用は時間依存性であり、追加投与による濃度維持は特に重要である。バンコマイシンおよびフルオノキノロン投与の場合は、手術開始2時間以内の開始でよい。
◆ 投与開始期間:CDCのSSI予防ガイドライン2014年版では、清潔・準清潔手術ではドレーン留置の有無に関係なく、閉創後の抗菌薬追加投与は、コストベネフィットの観点からするべきではないと記載されているが、日本感染症学会・日本外科感染症学会:感染症治療ガイドライン2011では術後48時間以内の追加投与を推奨しているが、エビデンスに基づいたものではない。
◆ SHEA/IDSAガイドラインでは術後感染予防抗菌薬について、以下の4つの提案による手術感染防止共同計画(Surgical Infection Prevention Collaborative: SIPC)を明らかにし、腹式子宮摘出術、膣式子宮摘出術、股関節置換術、膝関節置換術、心臓手術、血管手術、結腸直腸手術に焦点を絞りこの提案を遵守した病院でSSI発生率が低下したと報告している。
1.  執刀前1時間以内に予防抗菌薬を静脈投与する(バンコマイシンおよびフルオノキノロン投与の場合は2時間以内でよい)
2.  ガイドラインに基づいて抗菌薬を選択する
3.  術後24時間内に予防抗菌薬の投与を中止する(成人で心臓胸部手術を行った場合、中止は48時間以内でも可)
4.  2日以内と比較し、3日以上の予防抗菌薬投与は耐性菌発生リスクになるため、48時間以内投与を推奨する。

手術中の問題
◆ 手術の環境
人数制限、室内用圧の保持・粉塵除去、手術機器の滅菌への配慮
◆ 手術時の服装・覆布
手術着・マスク・手袋・ガウン・覆布についての配慮
手袋の交換時期については、一番汚れた時の吻合直後に行う方法と、腹腔内洗浄するときに行う方法が行われている。
◆ 無菌操作及び手術手技
① 無菌操作の徹底、フラッシュ滅菌器の使用は最小限にする
② 手術手技の熟練、十分な止血、縫合糸・炭化組織・壊死片の残留を抑える、組織の損傷を抑える、感染に強いものフィラメントの縫合糸や抗菌吸収糸を選択
③ ドレナージ:手術切開創とは別に作成し、出来るだけ早期に抜去する。基本的に閉鎖式吸引ドレナージを使用

ドレーンの挿入
ドレーンの挿入は予防的ドレナージと治療的ドレナージに分けられる。
ドレーンの使用は、体内に異物を留置することであるから、SSIの危険因子の一つであり、瘻孔形成、周囲組織のびらんの原因にもなる。
CDCのガイドラインでは使用するなら閉鎖性吸引ドレーンの使用し、手術創とは別の部位から入れ、できるだけ早期のドレーン抜去を勧めている。
http://minds.jcqhc.or.jp/n/medical_user_main.php

手袋の交換時期については、一番汚れた時の吻合直後に行う方法と、腹腔内洗浄するときに行う方法が行われている。
予防的抗生剤の使用を行っていない状況下ではSurgical globe perforationはSSIの発生頻度を上昇させる(Arch Surg 2009.144:553)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19528389
ので、二重手袋の使用をコクランでも薦めている。
Microperforationでは気がつかない。
手術時間が長くなるとperforation rateが上昇する。
2-4時間:12.6%、4-6時間:28.6%、6-8時間:33.4%(手術医学26 : 64-67, 2005.)

術中の管理
術中の低体温はSSI発生を助長するので体温を36.5℃以上に保つ(NEJM1996,334:1209)、術中および術後2時間の酸素投与はSSI発生を減少(NEJM 2000,342:161)

手術創管理
術後48時間以内は徹底した滅菌措置が必要。48時間以降の創部の管理については必ずしも消毒・被覆は必要ではない。創部の消毒についてはグルコン酸クロルヘキシジン及びヨードホールを用いる。
ヨードホールは細胞障害が強く、術後早期には手術創面の皮下組織障害の可能性があるので基本的には使用しない。グルコン酸クロルヘキシジンには、それが粘膜などから吸収された場合アナフィラキシーショックを起こす可能性がある。濃度は0.5-1.0%以下にし、高濃度を避ける。どちらも創の内部には使用しない。
手術創創縁の保護のためリトラクターを使用することでSSI予防の報告が1968年に224例に対して使用例で2.4%に対して対照群では15%にSSIが発症し、SSI予防に有効であるという報告がされたが、1977年の140例に使用された報告では10%:9%と有意差を認めなかった。腹水がしみこむことがその理由と考えられている。
創部リトラクターの使用で、創部の乾燥を防ぎ、創の挫滅を防ぐ効果が認められる。

http://leaders.co.jp/product_maker/applied_medical/wound_retractor.html

手術時の手洗い
流水と石鹸による手洗いの後擦式消毒用アルコール製剤を用いたラビング法を基本とする。ブラシは皮膚損傷の恐れがあるため、爪先の汚れを除去するのに用いる程度にとどめる。

手術部位感染(SSI)の定義の規準
表層切開創のSSI
感染は手術後30日以内に発症して、かつ感染は切開部の皮膚または皮下組織に限定され、かつ少なくとも下記の1項に該当するもの:
1.表層切開創からの膿性排液
2.表層切開創から無菌的に採取した液体または組織培養で微生物が分離される。
3.疼痛または圧痛、局所的な腫脹、発赤または発熱のうち、少なくとも1つの感染の徴候または症状があって、しかも外科医が切開部表層を慎重に開放して、切開部の培養が陰性でない場合。
4.外科医または介助の医師が、切開部表層のSSIであると判断した場合。

次のような状況をSSIと報告してはならない。
1.縫合部の膿瘍(炎症は僅かで、排膿は縫合個所に限られる)
2.会陰切開術または新生児の環状切除術部位の感染
3.感染した熱傷
4.筋膜及び筋層まで広がった切開部のSSI(切開部深層SSI参照)
注:会陰切開術、環状切除術部位、及び熱傷の感染の認定については特別な規準を用いる。

深部切開創のSSI
手術手技により手術後30日または90日以内に感染が発生し、切開創の深部軟部組織(筋膜及び筋層など)に及び、かつ下記の少なくとも1項に該当するもの:
1.深部切開創から膿性排液がある
2.深部切開創が自然離開した場合、あるいは手術医によって意図的に開放され培養が陽性か未検、さらに、38℃をこえる発熱、限局した疼痛の感染の徴候や症状が少なくとも1つある場合。培養陰性の場合はこの判定基準を満たさない。
3.深部切開創の関係する膿瘍その他の感染の証拠が、直接的な検査、再手術の際組織病理学的または放射線医学的な検査で見出せる。
4.手術医または主治医による切開部深層のSSIであるとの診断
注:1.切開部位の表層、深層の双方に及ぶ感染は、切開部深層SSIとして報告する。
2.切開部から排膿する臓器/腔SSIは深部切開創SSIとして報告する。

臓器/体腔のSSI
手術手技により手術後30日または90日以内に感染が発生し、手術時に開放または操作された部分(皮膚切開創・筋膜・筋層を除く)におよび、かつ下記の少なくとも1項に該当するもの:
1.臓器/体腔に留置されているドレーンからの排膿がある。
2.無菌的に採取したその臓器/体腔からの体液または組織の培養で、微生物が分離される。
3.その臓器/体腔の関係する膿瘍その他の感染の証拠が、直接的な検査、再手術の際組織病理学的または放射線医学的な検査で見出せる。
4.手術医または主治医による臓器/体腔のSSIの診断。

SSIの発生を診断する際のチェックの仕方として以下のものがある。
1. 時期を決めて創部をチェック(術後4-5日目)
2. その部が発赤をした際
3. 発熱や血液データでの変化がみられた際
4. 患者の自覚症状が出てきた際
SSIが発赤や疼痛を伴わない軽い状況で発見するほうが良いので、術後4-5日目に創部を軽く圧迫してみることにしている。他の場所よりも柔らかく軽い圧痛がある場所を探す。見つかったらゾンデを挿入して液を排膿する。

SSI発生時にしてはいけないこととして以下のことがある。
① 圧迫
② 鉗子の挿入
③ タンポンガーゼの挿入:きれいな肉芽ができない

参考サイト
http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~ict/yobousaku/SSImanual.htm
http://www.beppu.hosp.kyushu-u.ac.jp/pdf/nst_sem/nst_sem_02.pdf

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2015年3月 9日 月曜日

狂犬病暴露後免疫と暴露前免疫 高山直秀 先生

2015年3月4日 東京ステーションコンファレンス サピアタワー
演題「狂犬病暴露後免疫と暴露前免疫」
演者:都立駒込病院 前小児科部長 高山直秀 先生
内容及び補足「
狂犬病は毎年約5万人の死者を出している。

病原体はリッサウイルスである。下図が電子顕微鏡像である。

血清型から7型に分類されている。
Genotype 1(狂犬病ウイルス:Rabies virus)
Genotype 2(ラゴスコウモリウイルス:Lagos bat virus)
Genotype 3(モコラウイルス:Mokola virus)
Genotype 4(ドゥベンヘイジウイルス:Duvenhage virus)
Genotype 5(ヨーロッパコウモリリッサウイルス1:European bat lyssavirus type 1; EBL1)
Genotype 6(ヨーロッパコウモリリッサウイルス2:European bat lyssavirus type 2; EBL2)
Genotype 7(オーストラリアコウモリリッサウイルス:Australian bat lyssavirus; ABL)

このうちGenotype 1が狂犬病ウイルスで、3-7は人に狂犬病様の脳炎を起こすとこが知られている。
感染した動物の噛み傷などから唾液とともにウイルスが侵入して感染する場合が多く、傷口やめ、唇などの粘膜部を舐められた場合も危険性がある。
狂犬病ウイルスは人を含むすべての哺乳類に感染し、ヒトへの感染源の多くが犬(95%)であるが、サルや猫(3%)からの感染も報告がある。
人から人への感染は通常認めないが、角膜移植や臓器移植による感染例がある。

潜伏期間は咬傷の部位により大きく異なる。
狂犬病ウイルスは、神経系を介して脳組織に到達して発病するが、移動距離は日に数ミリから数十ミリといわれている。脳に近い場所であれば2週間程度、遠位部では数か月以上かかり、2年という記録もある。

症状:
前駆期には風邪に似た症状と咬傷部位の痒み(掻痒感)、熱感がある。
急性期には、不安感、恐水症状(水などの液体の嚥下によって嚥下筋が痙攣し、強い痛みを感じるため、水を極端に恐れるようになる症状)、強風症状(風の動きに敏感に反応し避けるようなしぐさを示す症状)、興奮性、麻痺、精神錯乱などの神経症状が現れる。
また、腱反射、瞳孔反射の亢進(日光に過敏に反応するため、これを避けるようになる)もみられる。
こういった症状が出現した2-7日後には脳神経や全身の筋肉が麻痺を、起こし昏睡期に至り、呼吸障害によって死亡する。

予後:
ワクチン接種を受けずに発症した場合には、ほとんど確実に死に至る。
2014年に10月以前の記録に残っている生存者はわずか5名のみで、いずれも発症前にワクチン接種を受けていた。
2004年10月アメリカのウィスコンシン州で15歳少女が狂犬病発症後に回復し、ワクチン接種なしでの回復した最初の生存者である。この時行われた治療は、ミルウォーキープロトコルとして他の症例にも利用され、数名の生存者を出したが、生存率は一割程度であり、多くの場合後遺症が残るのが現状である。

暴露後の治療:
咬傷傷口を石鹸水でよく洗い、消毒液やエタノールで消毒する(狂犬病ウイルスは弱いため、これで大半のウイルスは死滅する)。
すぐにワクチン接種を開始する。
今までワクチン接種を行っていない人:欧米製ワクチン5回(当日、3、7、14、28日後)接種、日本製ワクチン6回(当日、3、7、14、30、90日後)接種
事前にワクチン接種を行っている人:米国では暴露前ワクチン接種の時期と関係なく2回(当日、3日後)接種、日本では、暴露前ワクチン接種が一年以内であれば、2回(当日、3日後)接種、1-5年前であれば、3回8当日、3日、7日後)、5年以上であれば暴露前ワクチン接種を行わなかった時同様のやり方を行う。
WHOでは初回接種時に狂犬病免疫グロブリンの併用を推奨しているが、一部の地域を除き、多くの場合入手困難である。

参考サイト:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k03/k03_18/k03_18.html

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2015年3月 7日 土曜日

ワクチン接種に必要な基礎知識 渡辺 博 先生

2015年3月4日 東京ステーションコンファレンス サピアタワー
演題「ワクチン接種に必要な基礎知識」
演者:帝京大学医学部付属溝口病院小児科 渡辺 博 先生
内容及び補足「
ワクチンの効果
アメリカで1980年以前に認可・推奨されたワクチンが予防する感染症による罹患数、死亡数の比較を見てみると下図のように、ジフテリア、麻痺性ポリオ、天然痘は、数万人いた患者数が2006年にはゼロになり、死亡数で見れば上記疾患に加え麻疹、おたふくかぜ、風疹、先天性風疹症候群も、2004年時点で死亡数がゼロになっている。
破傷風やおたふくかぜは患者数が10分の1以下に、死亡数でも100分の1以下に低下している、百日咳は依然として患者数は多いものの10分の1以下に減少しており死亡数も200分の1以下に低下しており、予防接種は非常に意義のあるものであることがわかる。

アメリカで1980年から2005年に認可・推奨されたワクチンが予防する感染症による罹患数、死亡数の比較を見てみると、侵襲性肺炎球菌感染症を除き、10分の1以下に減少している。
侵襲性肺炎球菌感染症の減少率は低いが、患者数は2万例死亡数でも2000人以上の減少を認めている。

Hibワクチンが開始される前と後で、米国の細菌性髄膜炎患者数は、1~23ヵ月齢児で顕著に減少しており、2~18歳でも有意に減少しており、その多くがヘモフィルスインフルエンザ菌bによる髄膜炎の減少と考えられている。

イスラエルの五歳未満小児の血清型別侵襲性肺炎球菌感染症の罹患率変化を見てみると、PCV7の定期接種化前に比べPCV7でカバーされる菌株(左の図)は顕著に減少し、PCV13に変更されても、変化は乏しい。
しかし、PCV13に変更後はPCV7ではカバーされないがPCV13でカバーされる菌株(真ん中の図)はPCV13導入後顕著に減少している。
一方、PCV13でもカバーできない菌株は徐々に増加してきている。


アメリカにおいて、PCV7定期接種導入前後の、年齢別平均肺炎入院率の変化を見てみると、定期接種開始以前の青い線からオレンジ、緑と年代が変化するにしたがって、2歳未満児の感染が減少しているばかりでなく、ワクチン接種をしていない75歳以上の高齢者、特に85歳以上の高齢者の肺炎入院率の低下が大きく、肺炎球菌ワクチン接種には、集団免疫効果があることが推察される。

ワクチンの二つの効果として
① 個人防衛効果:接種を受けた本人が感染から守られる。
② 集団免疫効果(Herd Immunity):
◆接種を受けた人から排泄されるワクチン株病原体が周囲の人に入り込み、ワクチン接種と同等の効果を発揮する(経口生ワクチン)。
◆接種率が上昇すると感染症の流行が沈静化する。

ワクチンは生ワクチンと不活化ワクチンに分けられる。
1 生ワクチン(感染して働くワクチン):人に対する病原体が弱い牛などの他の動物の病原体を利用するもの。
ヒトの病原体を他の動物細胞中で継代培養すると人に対しての病原性が低下する。
2 不活化ワクチン(感染なしで働くワクチン):病原体の成分を使用。

日本で使用されているワクチンで生ワクチンはBCG、麻疹・風疹、水痘、おたふくかぜ、ロタウイルスのみで、それ以外は不活化ワクチンである。


生ワクチンは体内で増殖し、軽い全身の感染症を起こすが、不活化ワクチンは注射局所に留まる。


ワクチンの違いにより、摂取方法や副作用が異なる。病原性は生ワクチンの方が強いので接種回数は2回でよく、一回目接種後より効果が出てくるが、不活化ワクチンは複数回の摂取が必要であり、効果が出てくるのには、2日目接種後以降である。

生ワクチンは長期の免疫効果が得られるが、不活化ワクチンの場合には6か月後以降の追加接種が必要である。

免疫応答は抗原の種類や量によって異なり、多価抗原は樹状細胞により多くの抗原が提示され、B細胞レセプター集積の増加が起こり、ヘルパーT細胞との共存時間が増加し、免疫効果の持続は長期となるが、破傷風トキソイドのように単価抗原の場合にはB細胞レセプターの集積がなく、ヘルパーT細胞との共存時間が短く、免疫効果の持続は中期~長期に留まる。
ニューモバックスのように多価非蛋白抗原の場合にはヘルパーT細胞との相互作用がなく、免疫記憶が生じないため、免疫効果の持続は短期間となる。


不活化ワクチンの接種間隔
不活化ワクチンの場合には、複数回のワクチン接種が必要となるが、初回免疫と2回目の間隔は、免疫応答の強さを考えると4週間以上あける必要があり、追加免疫との間隔は6ヶ月以上が望ましい。
感染が流行しているような状況下では、短期間に免疫応答が生じる必要があるため、初回との間隔はDPT-IPVワクチンでは3週間、日本脳炎ワクチンでは1週間、追加免疫との間隔は最低4か月としているのが現状である。


もし間違って、短期間で摂取した場合には、接種のやり直しをする必要がある。

スケジュール通りの間隔よりも間が空いた場合には、気が付いた時点から通常通りのスケジュール間隔で接種を再開する。

疾患の発生状況や衛生状態が異なるため、ワクチンの接種開始時期や間隔は国によって異なっている。

日本においてのワクチン接種開始月齢・年齢は以下のようになっている。


ワクチンの接種場所と効果・副反応
ワクチンの種類や国によってうつ場所は異なっている。

生ワクチンを接種した場合には、感染が成立した状況となる。
したがって、接種後ウイルスが生成し、本来の感染臓器に移動するため、非下でも筋肉内でも接種は良いが、感染効率の高い場所が良いため、通常は皮下が選ばれる。
腸管内や鼻腔内に接種した場合には、粘膜免疫が誘導される。粘膜免疫が誘導された場合には粘膜から感染する病原体の感染防御にも有効であり、筋肉内注射や皮下注射では得られない効果が得られる。

不活化ワクチンの場合には、接種された場所で免疫応答が起こる。
皮下は血流が乏しく、食細胞や樹状細胞は少なく、リンパ球やマクロファージが届きにくいため、抗原処理効率が悪く免疫反応効率は悪いが、貯留傾向があるため、異物としての刺激が持続するため、局所反応が強く出やすい。

幾つかの報告があるがいずれも、筋肉内接種に比べ皮下接種の方で局所反応が強い。

アメリカでのワクチンの接種部位を見てみると、3歳児以降に上腕に接種する頻度が増えている。

三角筋に接種する場合には、安全に摂取するために解剖学的な知識を念頭において行う必要がある。

HPVワクチン接種の3回目に肩峰下関節包内に接種したために強い滑液胞炎を起こした症例報告がある。


ワクチンの同時接種
乳児期の予防接種スケジュール過密である。

同時接種を行うことは、接種率を著明にあげることができ、同時に接種したワクチンにより免疫原性が強くなる可能性がある。
大部分のワクチンを同時に接種しても安全で効果にも問題はなかった。

しかし、MMRVワクチンの初回接種は、MMRワクチンと水痘ワクチンを同時に接種した時よりも別々に接種したほうが、発熱と熱性けいれんの頻度が少なかった。
CSL社製のインフルエンザワクチンとプレベナー13の同時接種後にけいれん発作を起こす危険性が高くなることが報告されているが、他の社のインフルエンザワクチンでは問題はない。

同時接種のする場合、注射器と接種部位は別々にしなければならない。局所反応を鑑別するために少なくとも2.5㎝以上は離して接種すべきである。
不活化ワクチンとヒト免疫グロブリン製剤を同時に接種する場合は、別々の解剖学的部位に接種するべきである。
岡部信彦監訳:最新感染症ガイドR-Book 2012:33-34

最近100年間のワクチンに含まれる抗原蛋白と多糖体の数の一覧を下記に上げる。
以前に比べて、アジュバンドの開発が進んだこともあり、抗弁蛋白と多糖体の数が少なくなっていることがわかる。

ワクチンスケジュールの過密化、ワクチン同時接種経験の蓄積により、同時接種を行うアメリカの開業医>研修医師数が増加している。

アメリカにおいては、同時接種の回数の推奨数を徐々に増やしている。

その効果もあって、同時接種する医師数ばかりでなく、本数も増加してきている。

同時接種を躊躇する理由としては以下のものがあるので、十分な情報を親に提供する必要がある。

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2015年3月 2日 月曜日

日常診療に潜むCKDの増悪因子 安田隆 先生

2015年2月26日 横浜国際ホテル
演題「日常診療に潜むCKDの増悪因子―症例から学ぶ―」
演者:聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 腎臓・高血圧内科 透析療法部部長 安田隆 先生
内容及び補足「
症例1:67歳 男性
高血圧で近医通院中のADLが自立している男性。
3年前まで年一回の健診で血圧高値以外に異常の指摘なし。
1年半前の健診で初めて腎機能障害を指摘され、その後も徐々に悪化し、2013年6月17日には血清Cr4.57mg/dlと上昇したため紹介受診となった。

既往歴は高血圧(家庭血圧140-150/90)、逆流性食道炎、前立腺肥大症(8-10回/日うち夜間は3-4回)
服用薬のレザルタスHD(オルメサルタン20㎎+アゼルニジピン16㎎)は紹介一週間前から服用中止となっていた。
身体所見:170㎝、68.2㎏、36.5℃、168/90 脈拍数82/分・整、呼吸数12/分、両側CVATで鈍い思い感覚あり。
検査所見は、以下の通りで、軽度の貧血、腎機能障害、尿酸高値、タンパク尿を認めた。

急性腎機能障害の概念として急性腎不全ARFと急性腎障害AKIがある。
ARF(Acute Reanl failure):短期間(数時間~数週間)における腎機能(糸球体濾過量:GFR)低下の進行により、体液恒常性維持機能が破綻し、尿毒症や電解質異常などが出現する症候群
AKI(Acute Kidney Injury):種々の原因による障害によって腎臓の機能的または構造的な変化が起こり、急激に腎機能障害をきたした下記の定義のいずれかを満たすもの。
◆血清クレアチニン値の上昇:48時間以内に0.3mg/dl以上
◆血清クレアチニン値の増加度:7日以内に1.5倍以上
◆尿量減少:6時間以上にわたり0.5ml/㎏/時間未満
KDIGO clinical practice guidline for acute kidney injuray 2012
原因により分類すると以下のようになる。

本症例の身体所見を取り直してみると下腹部膨満があり、前立腺肥大の病歴もあり、腎後性腎機能障害と考え腹部単純CT検査を施行したところ、下図のように、膀胱・尿管・腎盂の拡張、左腎皮質の萎縮を認めた。

前立腺肥大からの尿閉による急性腎不全と診断し、尿道カテーテル挿入を行った。
その後の腎機能は下図のように変化し、改善がいまいちであったが、慢性の変化による機能障害が存在している場合には、改善が緩やかであるので7月2日に退院とした。


症例2:86歳男性
高血圧、発作性心房細動で当院循環器内科通院中。3日前より尿が出にくいため受診し、血清Cr10.95mg/dlと急激に上昇したため、当科依頼となる。
身体所見としては、著名な下腹部膨満を認める。

単純CT検査で膀胱、尿管、腎盂の拡張を認め、尿閉による腎後性腎不全と診断した。

カテーテル挿入に伴い速やかに血清Crの低下を認め退院となった。


血清クレアチニンの上昇よりも下降の方が速いことについて考えてみよう。
体内でのクレアチニン産生量が1000㎎/day
体液量が60㎏×60%=36L=360dL
全く排泄されなくなると考えると1000㎎/360dL=28㎎/dLの上昇となる。

糸球体濾過量(GFR)は一日:水=150L、クレアチニン=血清濃度×GFR(Pcr×GFR)=0.7mg/dL×1500dL=1000㎎
が一日の尿中排泄量:水=1.4L、クレアチニン=一日の尿量×尿中濃度(UV×Ucr)=1000㎎となり、以下の式が成り立つ。
Pcr×GFR=UV×Ucr
GFR=UV×Ucr/Pcr=CcrつまりGFRはクレアチニンクリアランスと等しいことになる。

クリアランスについて考えてみよう。
血液に溶けている物質を尿へ排泄しているが一日の排泄量は一日の尿量に尿中濃度をかけたものになる。

血漿中のこの物質は、尿へ排泄された分だけ減少する。
血漿濃度×きれいにされた血漿量(図では青い三個分のマス)=尿中排泄量(図では黄色マス)
つまり、きれいにされた血漿量=尿中排泄量/血漿濃度 となる


クリアランスとは、短時間値にきれいにできる血漿の量ということになる。
血中濃度が低い時には、少ない量(図では上の黄色いマス)、血中濃度の高い時には、多くの量(図では下の黄色いマス)となる。


GFRの回復が充分である場合(上の青い3マス)と不充分な場合(下の青い1マス)を考えてみよう。
GFRの回復が充分である場合には、3マス分の排泄ができ(上の黄色いマス)、不充分な場合には、僅かしか排泄できない(下の黄色いマス)。

したがってGFRの回復が充分であった症例2では血清Cr値の低下が急で、GFRの回復が不充分な症例1の場合には、血清Cr 値の低下がゆっくりであることになる。

実際においては、物質の排泄量が一定になっているのでGFRが1/3になっているときには、血中濃度が3倍になっていることになる。

上図の式にあるように、GFRと血清クレアチニン値Pcrは逆相関の関係にある。


症例2のPcrとGFRの推移は下図のようになる。

ただし、最初に見たように血清Cr値の上昇は最大2.8㎎/dLと限界があり、GFRの変化のように鋭敏には測定できない。


尿閉について考えてみよう。
症例2のような急性のものと、症例1のような慢性のものがある。
症状の出方や尿量の変化に違いがみられ、血圧上昇の機序も異なる。

診察所見で原因疾患をある程度推察することが可能である。
上からみた際には、隆起の性状が分かり難いが、横から観察するとわかりやすい。

拡張した膀胱の診察として膀胱の聴打診がある。
恥骨上縁に聴診器を当て3方向から膀胱の方に打診をずらしていく。

8㎝ほどの差があれば膀胱の拡張があるといえる。


症例3:78歳女性
高血圧、腎機能障害、貧血で近医通院治療中であった。最近、食欲低下、体重減少、腎機能の悪化がみられたため紹介となった。

既往歴としては:H2年右大腿骨骨折、H10年腹部腫瘤摘出、平成12年非定型抗酸菌症、H25年左大腿骨骨折
服用薬としては、ディオバン40㎎、ノルバスク5㎎、インデラル30㎎、ユリノーム50㎎、フェロミア50㎎、マグミット750㎎、レンドルミン0.25㎎
身体所見としては、152㎝、40㎏(半年前は46㎏)、36.2℃、179/81、69/分・整、呼吸数12/分、眼瞼結膜に貧血あり。
検査所見では軽度の貧血、腎機能障害、タンパク尿、カルシウム高値を認めた。

入院後服薬内容を再度確認するとアルファロール1.0μgの内服もあった。
高Ca血症の鑑別診断としては以下のものが挙げられる。

高カルシウム血症による腎機能の悪化、食欲不振と診断した。原因としては、ビタミンD内服およびカルシウムの(過剰)摂取であった。
入院後、ビタミンDおよびカルシウム製剤の摂取中止により、下図のように軽快した。

高Ca血症の鑑別診断として
① 悪性腫瘍(HHM、LOH) 頻度1位
② 原発性副甲状腺機能亢進症 頻度2位
③ ビタミンD・Ca過剰摂取+腎機能低下(Milk-Alkali症候群) 頻度3位
④ サルコイドーシス、結核
⑤ 薬剤
⑥ 長期臥床
⑦ 家族性低Ca尿性高Ca血症
⑧ 甲状腺機能亢進症
がある。

Milk-Alkali症候群:胃・十二指腸潰瘍の有効な薬が開発される以前は、治療のためにミルクや多量のCa(卵、生クリームなど)の服用を行っていたが、これらの症例のうち、高カルシウム血症、代謝性アルカローシス、腎機能不全の三兆を認める症例が多くMilk-Alkali症候群と呼ばれるようになった。
現代では、治療薬の進歩によりこういった症例はほとんど見られなくなったが、代わりに骨粗鬆症の予防・治療のためのビタミンD製剤やCa製剤の内服による発症が増加し、Calcium-Alkali症候群と呼ばれるようになった。
Calcium-Alkali症候群のRisk Factor:高齢、女性、ビタミンD/Ca製剤(1g/日以上)の摂取、骨粗鬆症、サイアザイド服用、CKD、鎮痛薬内服、妊娠女性、心臓移植レシピエント、過食症、維持透析患者
特徴としては、急性腎不全、高Ca血症、代謝性アルカローシスがある。

病態は高Ca血症による腎濃縮力の低下により、腎性尿崩症の状態となり脱水の状況となる。そのためGFRが低下し、腎血管の収縮が起こる。さらに、脱水によって、代謝性アルカローシスの状態となり、ヘンレループや遠位尿細管からCaの再吸収が増加し、より高Ca症が悪化していく。

ビタミンDは紫外線でビタミンD3となり二か所を水酸基を持ち活性型となる。

ビタミンD3製剤は、通常骨芽細胞上のVDRに結合してRANKLの発現を促し、骨吸収を促進するほか、腸管からのCa、リンの吸収を亢進させるとともに、PTH遺伝子の転写を抑制してCa濃度上昇に対してフィードバックをかける。
PTHはビタミンD3の産生を促してCaの上昇とリンの上昇に関与する一方で、腎臓に働きかけCa濃度の上昇と深濃度の低下に関与する。
このうちエディロールにのみCa吸収促進に加えて、破骨細胞の形成抑制作用がある。

副作用としては、高尿酸血症が1.5%、尿路結石が0.9%あり、急性腎不全も起こることが記されている。

エルデカルシトール薬剤情報
http://database.japic.or.jp/pdf/newPINS/00059337.pdf
AKIの治療後のGFRの変化は、eGFRの値によって分類するとその予後が異なる。腎機能の状態が悪いと予後が悪い。

急性悪化時の頻度によっても生命予後が異なる。

AKIのリスク因子としては障害因子として敗血症、重篤な疾患、ショック、火傷、外傷などがあるが尿閉もその因子として考えておく必要がある。

薬剤性腎障害には
① 腎実質性尿細管細胞障害:抗菌薬、高悪性腫瘍薬など
② 腎前性(還流圧の低下):NSAIDs、H2-blocker、アロプリノールなど
③ 腎後性(尿細管内の閉塞性障害):メトトレキサート、サルファ剤など
があるが、それに加えてビタミンD製剤+Ca製剤によるものもある。



骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

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