その他

2016年2月15日 月曜日

CIDP

2016年2月5日 
演題「両手の使いづらさと歩行障害、構音障害を呈した74歳 女性」
演者: 聖マリアンナ医科大学病院 内科 貫井咲希 先生
内容及び補足「
2012年9月ごろより、右手の使いづらさを自覚、また話し方が変なことを家族に指摘された。2013年1月初めより両下肢の重い感じが出現し、1月9日某病院を受診した。診察上両側腸腰筋の筋力低下を認めたが、血液検査で異常なく、頭部、頸髄MRI検査では陳旧性脳梗塞所見を認めるのみで、確定診断には至らなかった。その後徐々に症状は進行し、2013年6月頃より、手足の痺れ感、嚥下時の引っかかる感じが出現し、精査目的で同年9月18日当科紹介受診となり、入院となった。
既往歴:高血圧
診察所見では両下肢に知覚過敏、舌にFasciculation、右にTinel's sign陽性であった。

神経疾患診断手順として、SLEチェックリストが有用である。
① System
運動系:錘体路、錐体外路、小脳
感覚系:脊髄視床路、後索、複合
自律神経系
高次脳機能
② Level
脳、脊髄、末梢神経、神経筋接合部、筋肉
③ Etiology
突発性:血管障害(脳塞栓、くも膜下出血)、外傷
急性:感染症、血管障害(脳出血、脳血栓)、中毒
亜急性:炎症、自己免疫
慢性:腫瘍、変性疾患、先天性、老化、代謝
周期性・不定:精神障害、心身症、医原性
本症例においては:運動系+感覚系、末梢神経、亜急性~慢性に該当すると考えられた。

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(Chronic Inflammatory Demyelinating Polyneuropathy)
概念:2ヶ月以上にわたる慢性進行性、あるいは段階性、再発性の左右対称性の四肢の遠位、近位筋の筋力低下・感覚障害を主徴とした原因不明の末梢神経疾患であり、病院は末梢神経ミエリンの構成成分に対する免疫異常により生ずる自己免疫性疾患と考えられているが、詳細は不明である。
原因:末梢神経ミエリン構成成分に対する自己免疫によって発症すると考えられている。多発性硬化症の合併が見られ、末梢神経での類似の発症機序が想定されている。
症状:四肢の運動障害(手足の脱力、筋力低下)、ときに感覚障害(手足の痺れ、痛み)、ときに脳神経障害、自律神経も障害されることもある。2ヶ月から数か月以上の亜急性または慢性に進行する型(慢性進行型)、再発と寛解を繰り返す型(再発寛解型)がある。
四肢の腱反射は低下あるいは消失する。脳脊髄液検査ではたんぱく細胞解離を認める。
治療:ステロイド療法、血液浄化療法、免疫グロブリン静注療法などの免疫療法が有効であるが、根治治療法はない。

<診断基準>
1.主要項目
(1)発症と経過
①2 ヶ月以上の経過の、寛解・増悪を繰り返すか、慢性進行性の経過をとる多発ニューロパチーである。
②当該患者の多発ニューロパチーを説明できる明らかな基礎疾患、薬物使用、毒物への暴露がなく、類似疾 患の遺伝歴がない。
(2)検査所見
①末梢神経伝導検査で、2 本以上の運動神経において、脱髄を示唆する所見を示す。※注1
②脳脊髄液検査で、蛋白増加をみとめ、細胞数は 10/mm3 未満である。
③免疫グロブリン大量療法、副腎皮質ステロイド薬、血液浄化療法、その他の免疫療法などにより改善を示し た病歴がある。
④MRI で神経根あるいは馬尾の肥厚または造影所見がある。
⑤末梢神経生検で脱髄を示唆する所見がある。
2.鑑別診断
(1)全身性疾患等による末梢神経障害 糖尿病、アミロイドーシス、膠原病、血管炎、悪性腫瘍、多発性骨髄腫、中枢神経系脱髄疾患、HIV 感染症、サルコイドーシス
(2)末梢神経障害を起こす薬物への暴露
(3)末梢神経障害を起こす毒物への暴露
(4)末梢神経障害を起こす遺伝性疾患
3.診断の判定
(1)①②ならびに(2)①のすべてを満たし、(2)②から⑤のうちいずれか1つを満たすもの。
注.2 本以上の運動神経で、脱髄を示唆する所見(①伝導速度の低下、②伝導ブロックまたは時間的分散の存在、③遠位潜時の延長、④F 波欠如または最短潜時の延長の少なくともひとつ)がみられることを記載した神経伝導検査レポートまたはそれと同内容の文書の写し(判読医の氏名の記載されたもの)を添付すること
http://www.nanbyou.or.jp/entry/3656

病型分類
典型的CIDP(typical CIDP) 最も多い
血液神経関門(BNB)は血液脳関門(BBB)と同様に血管内皮のtight junctionによって構成されており、抗体(免疫グロブリン)などの大分子量物質はBNBを通過できないため、典型的CIDPにおいてはBNBの脆弱な部位に好発しそれを反映した神経伝導異常が認められる。
BNBは遠位部神経終末と神経根において生理的に欠如している。運動神経が筋内に入って分枝し神経筋接合部にいたる直前の数mmの神経終末と、神経根部のBBBとBNBの境界部の数mmではバリアが欠如している。この遠位部神経終末と神経根に典型的CIDPの病変は好発する。
典型的CIDPでは近位筋が遠位筋と同様に障害されるという一般の多発ニューロパチーとは異なる特徴的な筋力分布の低下を呈するが、これは脱髄病変がBNB脆弱部である遠位部神経終末と神経根に限局することで説明可能である。すなわち末梢神経の遠位端と近位端に起こる病変は神経長に依存しないからである。
遠位部に病変が限局する場合は免疫治療後に長期完全寛解が得られることがある。遠位部神経終末の評価として重要なのが遠位部刺激によるCMAPである。

MADSAM(multifocal demyekinating sensory and motor neuropathy) 二番目に多く上記と合わせて8割以上を占める
典型的CIDPとは異なり遠位部CMAPが正常であり、本来BNBが機能している神経幹に局所性伝導ブロックが多巣性に生じる一群が存在する。その代表例が非対称性CIDP、すなわちMADSAMと多巣性運動運動ニューロパチーである。両者とも臨床病型が多発単ニューロパチーであることは神経幹の多巣性局所性脱髄病変が起こっていることとよく対応している。MADSAMでは多発性硬化症と同様にまず活性化リンパ球を介してBNBを破綻させる病態が先行することが予想され、細胞性免疫の関与が予想される。また長期経過中にワーラー変性のために遠位部CMAP振幅の低下がみられることがあるがその場合にも遠位型脱髄と異なり遠位潜時の延長や遠位部CMAP持続時間の延長も認められない。日本では1990年に目崎らがLewis-Sumner症候群(LSS)という名称を提唱した影響でLSSと呼ばれることもあるが世界的にはMADSAMが定着している。

DAD(distal acquired demyelinateing symmetric neuropathy)
遠位優位型CIDP、すなわちDADは、症状が遠位優位となることが特徴である。この病型の場合はMAG抗体陽性の脱髄性ニューロパチーが同様の臨床病型をとりやすいため注意が必要である。発症初期においてIgM抗MAG抗体はBNBを全く通過できないため、BNB欠損部である神経終末と神経根にしか作用できないので、臨床病型はDADと同様の経過となることがしられている。抗MAG抗体ニューロパチーは数年以上かけて緩徐に進行するため、経過中に二次性軸索変性を伴うためと考えられている。長期経過中におそらくサイトカインや補体の活性化などによりBNBが破壊されて病変は遠位部から徐々に神経幹におよび、神経伝導速度が低下していると考えられている。
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/cidp/sinkei_cidp_2013_02.pdf#search='CIDP'

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2016年2月15日 月曜日

全身性アミロイドーシス

2015年2月5日 
演題「増悪する息切れと目のかすみを訴える78歳 男性」
演者: 国家公務員共済組合連合会 平塚共済病院 循環器科 山下理子先生
内容及び補足「
2010年に労作時息切れを主訴に他院受診し、心不全と診断され、以降心不全増悪の度に入退院を繰り返していた。2014年視力低下で眼科受診したところ、ブドウ膜炎を指摘され、検査でACE 31.9 U/L
と軽度上昇、造影MRI検査で左室の遅延造影陽性、FDG-PETで左室へのFocal uptake所見を認め、精査・加療目的にて当院紹介となった。
入院時身体所見で、両眼の視力低下、右感音性難聴、心尖部で3音を聴取、脈不整を認めた。血液検査では、BUN 26.2 mg/dl、Cr 1.11 mg/dlと軽度の腎障害を認めた。
心電図では心拍数 86bpm、心房細動、完全右脚ブロック、左軸偏位、V4-6に著明な低電位を認めた。CXPではCTR 68%と心拡大が見られ、心エコー検査では、収縮力は保たれているものの、求心性の著明な差室肥大を認めた。
気管支鏡では気管支血管にNetwork formationを認め、気管支洗浄液中のCD4/CD8比は3.68であった。
これらの所見からサルコイドーシスが疑われていたが、再検したACE値は基準内になっており、心エコー所見がサルコイドーシスとして典型的ではなく、アミロイドーシスも鑑別診断が必要な所見であった。
心筋生検の結果、明らかな肉芽腫性病変を認めず、Congo-red染色陽性となり、追加で行った胃生検、直腸生検でアミロイド沈着をみとめ、全身性アミロイドーシスの診断となった。

全身性アミロイドーシス
概念:線維構造を持つ蛋白質であるアミロイドが全身臓器に沈着することにより機能障害を引き起こす一連の疾患群。
アミロイドは、病理学的にアルカリコンゴ赤染色で橙赤色に染まり、偏光顕微鏡下で緑色の複屈折を示すものである。
病因:31種類のアミロイドーシスが報告されているが、共通するアミロイド線維形成機序は、まずアミロイド原因(前駆体)蛋白質が産生され、プロセッシングを受け、重合、凝集して愛ロイド線維となり、沈着し、臓器・組織障害を引き起こす。

<診断基準>
指定難病の対象となる病型は、免疫グロブリン性アミロイドーシス、家族性アミロイドーシス及び老人性トランスサイレチン型 (TTR)アミロイドーシスに限り、「確実」例、「疑い」例を対象とする。多発性骨髄腫の診断基準に合致するものは除く。

1 免疫グロブリン性、反応性AA及び老人性TTRアミロイドーシス
免疫グロブリン性、反応性AA及び老人性TTRアミロイドーシスは、臨床症状の類似点が多く、それのみでは鑑別することが困難であるので1つの診断基準として作成している。
(1) 概念
免疫グロブリンに由来する免疫グロブリン性アミロイドーシスは、旧分類の原発性アミロイドーシスの大部分と骨髄腫に伴うアミロイドーシスが含まれる。
反応性AAアミロイドーシスは続発性アミロイドーシスの大部分で、関節リウマチ、炎症性腸疾患、気管支拡張症、結核に続発する。
老人性TTRアミロイドーシスは、主として心臓、手関節を代表とする大関節に沈着し、そのアミロイド蛋白は野性型トランスサイレチンである。

(2) 主要事項
まず免疫グロブリン性、反応性AA及び老人性TTRアミロイドーシスの可能性を思いつくこと、症状が多彩であるため念頭にないことが多い。生検のみが生前確診の手段であるので、本症の可能性を考えつつ生検して診断に至るべきである。骨髄腫及び類縁疾患のときはもちろん、長期にわたる難治性炎症性疾患(特に関節リウマチ)では必ず本疾患の可能性を考えてみることが必要である。
① 主要症状及び所見
(a) 全身衰弱・体重減少・貧血・浮腫・呼吸困難・胸痛・紫斑
(b) 心電図における低電位・不整脈・伝導ブロック・QS 型(V1~V3)・低血圧・起立性低血圧・心肥大
(c) 頑固な便秘・下痢を主徴とする胃腸障害、吸収不良症候群
(d) 蛋白尿・腎機能障害
(e) 肝腫大・脾腫・ときにリンパ節腫大
(f) 巨舌
(g) shoulder-pad sign、その他関節腫大
(h) 多発性ニューロパチー
(i) 手根管症候群
(j) 皮膚の強皮症様肥厚、結節
(k) 甲状腺、唾液腺などの硬性腫大
(l) 免疫グロブリン異常:血清中にM蛋白又は尿中にベンス・ジョーンス蛋白をみることがある。

② 参考事項
[皮膚症状からみた全身性アミロイドーシス診断基準]
全身性アミロイドーシスの中で、原発性アミロイドーシスと多発性骨髄腫に合併するアミロイドーシスの半数以上に皮膚症状がみられ、診断の手がかりになる。アミロイドの沈着しやすい眼瞼、頸、頭、外陰及び肛門周囲に、沈着量に応じて米粒大位の丘疹から大きな腫瘤まで生じる。硬く、黄色調を帯び、しばしば紫斑を伴う。強皮症様に硬くなることもある。
(3) 生検
皮膚・腎などで疑わしい病変があれば生検する。そのような部位がなければ内視鏡下の胃・十二指腸生検、直腸生検が望ましい。胃生検は胃前庭部で粘膜筋板以下まで深めにとることが重要であり、十二指腸では球部後壁から採取する。また、従来行われている直腸生検では浣腸後(通常はグリセリン浣腸液 120ml でよい)、直腸後壁から粘膜下組織を含む小片をとる。また近年、腹壁の脂肪吸引生検(abdominal fat aspiration biopsy)が広く行われている。臍周囲部の腹壁を局麻後、18ゲージの注射針で脂肪層を強く吸引して脂肪滴を得て、スライドガラス上に脂肪滴を数個載せて2枚のスライドガラスで押しつぶすようにして塗抹標本を作製し、乾燥後に検討を行う。生検組織はヘマトキシリン・エオシン染色のほかにアルカリコンゴ-赤染色をし、またその標本を偏光顕微鏡下で観察する。偏光観察には簡単に普通顕微鏡に装着できる偏光板が安価で市販されている。アミロイドは緑色の強く輝く複屈折を呈する。免疫組織化学的染色でAL、AA、トランスサイレチンを証明することができる(もし、不可能ならば専門家に連絡することが望ましい)。電子顕微鏡観察も有用であり、それが不可能ならば小片を 2%グルタールアルデヒドで固定し、4℃に保存して、専門家に連絡することが望ましい。

(4) 免疫グロブリン性、反応性AA及び老人性TTRアミロイドーシスの疑いのある患者で避けるべき検査
① 肝生検
出血の危険がある。
② 多量のベンス・ジョーンス蛋白尿があるときは IVP(経静脈腎孟撮影)で無尿を誘発する危険がある。

(5) 診断の基準
① 確実
生検で陽性。
② 疑い
主要症状及び所見のうち(a)~(k)の1つ以上を認め、かつ(l)が陽性の場合は免疫グロブリン性(原発性)アミロイドーシスが疑われる。
③ 可能性を考慮
主要症状及び所見のうち(a)、(b)の1つ以上が存在する場合は一応免疫グロブリン性、反応性AAあるいは老人性TTRアミロイドーシスの可能性を考慮してみる。

2 家族性アミロイドニューロパチー
(1) 概念
初期には末梢神経と自律神経に高度のアミロイド沈着が起こり、進行期には、心臓、消化管、腎臓も障害される。主要病像は多発性ニューロパチーと自律神経機能不全である。沈着するアミロイド蛋白質はⅠとⅡ型では変異トランスサイレチン、Ⅲ型は変異アポリポ蛋白AⅠ、Ⅳ型では変異ゲルソリンである。 また新たに変異型β2ミクログロブリンもアミロイド原蛋白質として報告されている。

(2) 主要事項
① 主要症状
(a) 感覚障害
左右対称性に、下肢又は上肢末端から始まる。温度覚、痛覚が早く、かつ強く侵され(解離性感覚障害)、振動覚、位置覚は進行期に侵される。手根管症候群で発症する場合もある。
(b) 運動障害
感覚障害より数年遅れて出現し、筋萎縮、筋力低下が下肢又は上肢末端から始まる。
(c) 自律神経系の障害
1 陰萎(男性)
2 胃腸症状(激しい嘔気・嘔吐発作、ひどい便秘と下痢の交代、不定な腹痛、腹部重圧感)
3 起立性低血圧(立ちくらみ、失神)
4 膀胱障害(排尿障害、尿失禁など)
5 皮膚症状(皮膚栄養障害、発汗異常、難治性潰瘍)
6 心障害(心伝導障害による不整脈、心不全)
② 発病は緩徐で、経過は漸次進行性である。
③ 遺伝様式
常染色体優性(問診のみでは遺伝歴が不明なことがある)
④ 組織所見
末梢神経、胃・直腸、皮膚、腹壁脂肪の吸引生検でアミロイド沈着を認める。


(3) 参考事項
① 発病年齢は通常 20~40歳代であるが、集積地以外の家系は50歳以後の高齢発症である。
② 初発症状は四肢末端のしびれと自律神経障害
③ 感覚障害が体幹に及ぶと、胸腹部に島状の感覚低下領域を認める。
④ 心障害、腎障害は遅れて出現し、次第に心不全、尿路感染症、尿毒症を合併し、悪液質となる。
⑤ 瞳孔の不整、対光反射の消失を認めることがある。
⑥ 硝子体混濁を初発症状とすることがある。
⑦ 末梢神経、皮膚、胃・直腸などの臓器生検でアミロイド沈着を認める。
⑧ 検査所見
(a) 心電図:伝導障害と心筋障害
(b) 心エコー:心筋の肥厚とエコー輝度の増強
(c) Technetium-99m-Pyrophosphate(Tc-99m-PYP)心筋シンチグラフィー:陽性画像
(d) 末梢神経伝導速度の低下
⑨ Mass spectrometory やラジオイムノアッセイ法による血清中の変異トランスサイレチンの検出
⑩ トランスサイレチン、ゲルソリン等の遺伝子診断
(4) 臨床診断の基準
① 確実
主要事項①の中の(a)~(c)の2つ以上とアミロイド前駆蛋白の遺伝子異常を認める場合
② 疑い
家系内に確実者があり、主要事項①の中の(a)~(c)の1つ以上を認める場合

難病情報センター
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会

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2016年2月15日 月曜日

POEMS症候群 Crow-深瀬症候群

2016年2月5日 
演題「両下肢の浮腫、シビレ感、歩行障害を呈した64歳 女性」
演者: 厚生中央病院 総合内科 田島彬子 先生
内容及び補足「
68歳女性。X-4年2月に両下肢のシビレ感、浮腫、歩行障害のため受診。神経学的には両下肢近位筋の筋力低下、両膝以下の知覚低下、感覚性失調、腱反射消失を認めた。
神経伝導検査では腓腹神経の感覚神経伝導速度は正常だったが、腓骨神経は運動神経伝導速度、振幅ともに低下しCMAPの多相化が見られた。また図胃液検査では細胞解離を認めたためCIDPと診断し、γグロブリン大量静注(IvIg)、免疫吸着療法を行ったが効果見られず、2クール目のIvIgにてやや歩行は改善した。抗ガングリオシド抗体を含め、自己抗体は陰性であった。
血液中のVEGF 736 pg/dlと高値であり、POEMS症候群(Crow-深瀬症候群)と診断し、PLS投与による治療で改善した。
POEMS症候群(Crow-深瀬症候群)
1965年Crowは多発性骨髄腫に末梢神経障害を合併した2例を報告し、本邦では1968年に深瀬らにより「多発性神経炎および内分泌異常を惹起した孤立性骨髄腫」として報告され、その後、多発神経炎、内分泌異常、Plasma cell dyscrasiaは一つの症候群として把握すべきものとして、Crow-Fukase症候群、POEMS症候群、高月病、PEP症候群などと呼ばれるようになった。
1997年に本症候群の血清中に血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)が異常高値となっていることが報告されて以来、VEGFが多彩な症状を惹起していることが推定されている。
1983年厚生省神経疾患研究委託費による全国調査が行われ、我が国における102例の臨床的解析が報告された。
高月は上記の102例に1991年までに報告された56例を加え臨床像を検討した。
男女比は1.5:120歳代から80歳だと発症年齢は広く分布しているが平均発症年齢は、男女とも48歳で、多発性骨髄腫よりも10歳若かった。
2004年の報告では340名とされており、王税よりも頻度の高い疾患と考えられている。

POEMS:症候群=多発性神経炎(Polyneuropathy)、臓器腫大(Organomegaly)、内分泌障害(Endocrinopathy)、M蛋白血症(M-protein)、皮膚異常(Skin changes)の頭文字から取られた疾患。
多発性神経炎: 手足の痺れ、震え、麻痺、脱力 が発生する症状です。POEMS症候群の患者に多く見られる症状です。
臓器腫大: 肝臓や脾臓などの臓器が大きくなったり腫れたりします。合わせて「肝脾腫」とも呼ばれます。
内分泌障害 :男性の胸が膨らむ女性化乳房、血液中の血糖を正常化する働きが弱くなる「耐糖能異常」、甲状腺の機能低下などがおきる場合があります。
皮膚異常: 体毛が増えたり、濃くなったりする「剛毛」、皮膚の色が赤黒くなる「色素沈着」、皮膚の表面などに現れる血管の固まり(いぼ)のような「血管腫」などがみられることがあります。
浮腫、胸腹水 体の浮腫み:(特に両足)胸やお腹に水がたまる症状です。
M蛋白血症: 腫瘍化した形質細胞によってM蛋白という物質が作られます。これが血液中に流れ、腎臓などの臓器に付着することで、その臓器の働きを鈍くするなどの影響があります。血液検査、尿検査で調べられますが、POEMS症候群の患者では、M蛋白の量はあまり多くない傾向です。
骨硬化性病変: 手足、腰などで、骨の組織の生成が多く行われ固くなることがあります。これにより、疼くような痛みを感じるなどの症状が現れることがあります。
乳頭浮腫 :目の奥、視神経の出口付近に乳頭と呼ばれる部分があります。この部分に浮腫みが生じることで、目の視界がぼやける、ちらつき、複視、見えにくくなることがあります。
血清VEGF高値: 形質細胞が増えることで、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)という特殊なタンパク質が多く生成されます。新しい血管を作るために作用するものですが、血管内の水分を体内に透過させやすくする性質があり、胸腹水・浮腫をはじめ、POEMS症候群の様々な症状の直接的な原因になっていると考えられています。
腎機能障害: 腎臓も血液中の老廃物をろ過する糸球体という部分が腫れることで、尿蛋白や血尿がでるなど腎炎・腎機能の低下などの症状が現れることがあります。

病因:増殖した形質細胞から分泌されるVEGFが多彩な臨床症状を惹起していることが実証されつつある。VEGFの血管透過性亢進および血管新生作用から浮腫、胸・腹水、皮膚血管腫、臓器腫大が説明されるが、多発神経障害の機序はまだ不明であり、IgGやIgAのM蛋白が神経障害を惹起する可能性は否定的である。末梢神経構成蛋白、糖蛋白やガングリオシドに対する抗体は陰性であり、神経生検組織像でも明らかなリンパ球やT、B細胞浸潤像はない。基本的な病理学的変化は脱髄であるが、下肢遠位部では軸索変性が認められる。

治療:孤発性の形質細胞腫が存在する場合は、腫瘍に対する外科的切除や局所的な放射線療法が選択される。明らかな形質細胞腫の存在が不明な場合や多発性骨病変が存在する場合には全身投与の化学療法を行う。
メルファラン大量間歇療法、自己末梢血幹細胞移植を伴う大量化学療法、サリドマイド療法、ベバシズマブ(抗VEGFモノクローナル抗体)療法がおこなわれている。
副腎ステロイド単独の治療は、一時的に症状を改善させるが、減量により再発した際に効果が見られないことが多く推奨されないとされている。

予後:副腎皮質ステロイド療法主体であった1980年代までは、平均生存期間は約3年であった。
メルファラン療法が中心であった1990年代には、平均生存期間は5~10年と改善が見られたが、心不全、心嚢液貯留による心タンポナーデ、胸水による呼吸不全、感染、血管内凝固症候群、血栓塞栓症などで死亡していた。
自己末梢血幹細胞移植を伴う大量化学療法の中期予後は良く、長期寛解が期待されていたが、再発例の報告があり、今後の検討が必要である。
サリドマイド療法については、短期的には有効である可能性が高いが今後の証明が必要であり、長期予後は不明である。
http://www.nanbyou.or.jp/entry/241

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2016年2月12日 金曜日

シトステロール血症

2016年2月5日 大手町サンケイプラザ
演題「突然の共通で搬送された25歳 女性」
演者: 東京都保健医療公社 豊島病院内科 平野秀典先生
内容及び補足「
25歳女性 既往歴:脂質異常症、神経性食思不振症 家族歴:冠動脈疾患・突然死なし
2012年の健康診断でLDL-C 300mg/dlの高脂血症を指摘されていたが、精査はされなかった。2013年12月、めまいで他院受診中に突然胸痛を訴えた。心電図で異常を指摘され、当院へ転送。血圧87/50mmHg、脈拍67/分・整、BMI 14.8であった。
心電図で下壁誘導にST上昇を認め、緊急冠動脈造影検査を施行され、右冠動脈中間部に完全閉塞を認め、PCIへ移行となり、血栓吸引、バルーン拡張術後、ベアメタルステント留置となった。Max CPKは2727 IU/L。入院中に硝酸剤が著効する安静時胸痛を認め、後日アセチルコリン負荷試験施行し、冠攣縮性狭心症と診断した。
アキレス腱は両側Ⅰ3㎜程度の肥厚を認め、家族性高コレステロール血症が疑われたが、家人には、LDL高値のFHに該当する人はいなかった。LDL受容体遺伝子検査では病原性変異は認められなかった。
捨てロールさん分画でカンペステロール 47.0μg/ml(基準値10μg/ml以下)、シトステロール45.0μg/ml(基準値3μg/ml以下)、と高値であり、ABCG8遺伝子でミスセンス変異を認め、シトステロール血漿と確定診断にいたり、rosubastatin 20mgでLDL-C 120㎎/dl と低下不良であったが、Ezemaibe 10㎎の併用投与でLDL-C 40㎎/dlと著明に改善した。

シトステロール血症
概念:常染色体劣性遺伝を摂る遺伝性脂質代謝異常の疾患であり、果物や野菜に含まれる植物ステロールの一種であるシトステロール排泄低下により、血中または組織にシトステロールが蓄積し、黄色腫や早発性冠動脈疾患を発症する疾患である。

病態:ATP結合カセットトランスポータ(ABC)G5/8の遺伝子変異が病態に関与している。
食物中に含まれるステロール類は、小腸のステロール輸送蛋白NPC1L1により吸収される。小腸上皮内でコレステロールはエステル化され、カイロミクロン形成の材料となるが、利用されない植物ステロールはABCG5/8を介して腸管内へと排泄される。
この排泄経路が障害されることにより体内に蓄積した食物ステロール(多くはシトステロール)は皮膚や腱などの組織に沈着し黄色腫を形成、また血管壁に蓄積して動脈硬化プラークを形成する。

http://www.phmd.pl/fulltxthtml.php?ICID=584606

症状:皮膚黄色腫、腱黄色腫、早発性冠動脈疾患を呈する。異常赤血球、溶血発作、血小板減少、関節炎などがみられることもある。

治療:
食事療法:食物ステロールを多く含む食品:植物性オイル、マーガリン、ナッツ、アボカド、チョコレートなどや貝類を極力避ける。
薬物療法:Ezebimibe、Colestimideの投与
外科的治療法:部分回腸バイパス術
それ以外:プラズマフェレーシス

診断基準:
A症状
皮膚黄色腫または腱黄色腫の存在
早発性冠動脈疾患(男性45歳未満、女性55歳未満)
B検査所見
血液・生化学的検査所見
血清シトステロール濃度  1mg/dL 以上 (本症患者では通常 10~65mg/dL)
C鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。
家族性高コレステロール血症、脳腱黄色腫症
D遺伝学的検査
ABCG5/8遺伝子の変異
<診断のカテゴリー>
Definite:A-1およびB-1を満たしCの鑑別すべき疾患を除外し、Dを満たすもの。
Probable:A-1およびB-1を満たしCの鑑別すべき疾患を除外したもの。
Possible:A-1、2およびB-1を満たすもの。

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

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■住所
〒220-0073
神奈川県横浜市西区岡野2-5-18

■診療時間
9:00~12:30 / 14:30~18:30
※土曜は13:00まで診療となります。
休診日は水曜、金曜午後、土曜午後
日曜、祝祭日となります。

■電話番号
045-313-5055

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