その他

2017年6月19日 月曜日

ドライマウスの原因と対処法 斎藤 一郎 先生

2017年6月8日 
演題「ドライマウスの原因と対処法」
演者:鶴見大学歯学部教授 斎藤 一郎 先生
場所: ホテル横浜キャメロットジャパン
内容及び補足「
シェーグレン症候群は1933年にスウェーデンの眼科医ヘンリック、シェーグレンの発表した論文にちなんで名づけられた疾患である。
2003年の厚生労働省の調査によると、1年間で日本においてシェーグレン症候群で医療機関を受診した人は7800人と報告され、近年では15000~20000人とされている。潜在的な患者数を含めると、アメリカのデータを当てはめて計算すると10~30万人いると推計されている。

1994年の疫学調査での年齢分布は50歳前後の女性が多く、男女比は1:14と女性に合った圧倒的に多い疾患である。

http://www.ss-info.net/kisotishiki/kisotishiki04.html

鶴見歯科大学にドライマウス外来を開設して15年たち、その間初診患者さんとして7200名の患者さんを診察しました。ドライマウス症状を訴える患者さんの92%は薬剤ン副作用やストレス、更年期障害による症状で、シェーグレン症候群によるものは8%程度でした。

本疾患は主として中年女性に後発する涙腺と唾液腺が主にやられる自己免疫性疾患で、膠原病に合併する二次性シェーグレン症候群と、これらの合併のない、原発性シェーグレン症候群に分類される。
臨床的には、
ドライアイ、口腔乾燥症状の診の患者(約45%)
全身性の自己免疫性疾患に合併するグループ(約50%)
悪性リンパ腫や原発性マクログロブリン血症を合併しているグループ(約5%)
シェーグレン症候群患者調査:斎藤先生は2008年度の報告で講演されましたが、株式会社Q Lifeから2017年4月26日に最新版の報告がありましたのでこちらも合わせて記載します。
自覚症状:
眼の乾燥症状:ドライアイ( 涙が出ない、目がころころする、目がかゆい、目が痛い、目が疲れる、物がよくみえない、まぶしい、目やにがたまる、悲しい時でも涙が出ないなど)
口の乾燥症状:ドライマウス(口が渇く、唾液が出ない、摂食時によく水を飲む、口が渇いて日常会話が続けられない、味がよくわからない、口内が痛む、外出時水筒を持ち歩く・夜間に飲水のために起きる、虫歯が多くなったなど)
鼻腔の乾燥症状:(鼻が渇く、鼻の中にかさぶたが出来る、 鼻出血があるなど。)
その他症状:(唾液腺の腫れと痛み、息切れ、熱が出る、関節痛、毛が抜ける、 肌荒れ、 夜間の頻尿、紫斑、皮疹、レイノー現象、アレルギー、日光過敏、膣乾燥(性交不快感)など、全身症状として:疲労感、記憶力低下、頭痛は特に多い症状、めまい、集中力の低下、気分が移りやすい、うつ傾向などもよくある。)


(おそらく2008年のもの)
http://www.ss-info.net/kisotishiki/kisotishiki05.html

シェーグレン症候群が原因と思われる症状で、初めて医療機関を受診した科はどこですか?
一般内科が26%で最も多く、次いでリウマチ科18%、膠原病内科は16%であった。
2008年では、内科が67%、次いで歯科17.3%、耳鼻科13.6%と異なり、シェーグレン症候群を専門で診る科を受診した患者が増加していることがわかる。

シェーグレン症候群と最終診断されたかについては、膠原病内科が約半数を占めていた。

現在の症状での生活への影響度は、ドライアイ、ドライマウスといった感想症状が9割を超えていた。

「初めて医療機関を受診した時の年齢」-「症状が初めて出た時の年齢」は、平均1.83年で受診までの期間はそれほど長いものではなかった。

「診断された時の年齢」-「初めて医療機関を受診した時の年齢」は平均1.24年で以前よりは短縮されている。

「診断された時の年齢」-「初めて症状が出た時の年齢」は平均3.07年であった。

現在診断されている疾患についての回答は、関節リウマチが23%と最も多く、次いで、高血圧12%、全身性エリテマトーデス(SLE)が9%、脂質異常症7%、糖尿病が2%であった。関節リウマチ患者の約20%にシェーグレン症候群が発症するといわれている。


診断:1999年厚生省班のシェーグレン症状の診断基準
1. 生検病理組織検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
A)口唇腺組織で4mm²あたり1focus(導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤)以上
B)涙腺組織で4mm²あたり1focus(導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤)以上
2. 口腔検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
A)唾液腺造影でStage I(直径1mm未満の小点状陰影)以上の異常所見
B)唾液分泌量低下(ガム試験にて10分間で10mL以下、またはサクソンテストにて2分間で2g以下)があり、かつ唾液腺シンチグラフィーにて機能低下の所見
3. 眼科検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
A)シルマー試験で5分に5mm以下で、かつローズベンガル試験(van Bijsterveldスコア)で3以上
B)シルマー試験で5分に5mm以下で、かつ蛍光色素試験で陽性
4. 血清検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
A)抗Ro/SS-A抗体陽性  
B)抗La/SS-B抗体陽性
【診断基準】
上の4項目のうちいずれかの2項目以上が陽性であれば、シェーグレン症候群と診断する。

Apple tree appearanceを示す。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsg/25/3/25_3_307/_pdf

症状:
1. 乾燥症状(眼、口腔、気道乾燥、皮膚乾燥、腟乾燥など)
2. 唾液腺・涙腺腫脹
3. 関節症状(関節痛、関節炎)
4. 甲状腺(甲状腺腫、慢性甲状腺炎)
5. 呼吸器症状(間質性肺炎、慢性気管支炎、嗄声など)
6. 肝症状(原発性胆汁性肝硬変症、自己免疫性肝炎)
7. 消化管症状(胃炎)
8. 腎症状(遠位尿細管性アシドーシス、低カリウム血症による四肢麻痺、腎石灰化症)
9. 皮膚症状(環状紅斑、高ガンマグロブリン血症による、下肢の網状皮斑や紫斑)
10. その他(レイノー現象、筋炎、末梢神経炎、血管炎、悪性リンパ腫など)

http://www.kawamoto-dental.com/dry/index.html

ドライマウスの原因
1. ストレスによる唾液分泌量の低下:緊張で瞬間的に唾液分泌が止まる
2. 加齢による唾液分泌量の低下
3. 食生活の変化による咀嚼回数・咀嚼時間の低下(1日30分未満となった)
4. 薬剤に頼る生活(欧米の40倍の服薬量)
5. シェーグレンや自己免疫性疾患としての症状や糖尿病、腎不全などの疾患による影響

唾液の役割
唾液は唾液腺と呼ばれる分泌腺から口腔内に分泌される液体である。左右両側の耳下腺、顎下腺、舌下腺の三種類の大唾液腺から全唾液量の90%が分泌される。

唾液の分泌は自律神経によりコントロールされている。
サラサラ唾液:主に副交感神経により支配され、食事の時に多く分泌され、唾液アミラーゼなど消化を助ける酵素を多く含み、食べ物を湿らせて飲み込みやすくするなど、消化吸収を助ける役割を担っている。
ネバネバ唾液:おもに交感神経に支配されており、緊張した時などによく働き、納豆やオクラに含まれるムチンというネバネバの成分が含まれており、細菌を絡めとし身体への侵入を防ぐほか、口腔内の粘膜を保護したり保湿する体を守る役割を担っている。

https://lidea.today/articles/499

通常健康人で一日1~1.5L程度(安静時唾液で700~800ml程度)分泌され、血液をもとに作られ、99.5%が水分で、残りの半分ずつを無基質と有機質が占めている。
作用ごとに物質を上げると以下のようになる。


http://www.kawamoto-dental.com/dry/index.html

ドライマウスを悪化させる要因
1. 糖尿病
2. シェーグレン症候群
3. 腎不全・透析
4. 更年期障害:Dry Vaginaも伴う、卵巣摘出でDry Mouth出現し、女性ホルモン補充で改善する
5. ストレス
6. 筋力低下
7. 薬剤の副作用
8. 老化
9. 喫煙
10. 飲酒

口渇症状を出す薬剤








J Health Care Dent. 2005;7:46-54

ドライマウスにより派生する症状・悪化する疾患
1. 上部消化管障害
2. 感染症:誤嚥性肺炎など
3. 口臭
4. 摂食障害
5. 口腔内の不快感
6. 口内炎等の粘膜疾患
7. 齲歯・歯周病
8. 舌痛症
9. カンジダ感染
10. 異常乾燥感

治療
生活指導:ガムをかむなどして唾液分泌を促すとともに口腔ケアを行う
人工唾液(サリベート、2%メチルセルロース)
薬剤療法
粘液融解薬:ビソルボン
漢方薬:白虎加人参湯、人参湯、麦門冬湯
M3ムスカリン作動薬:塩酸セビメリン(エポザック、サリグレン)、塩酸ピロカルピン(サラジェン)


https://www.jstage.jst.go.jp/article/stomatopharyngology/24/1/24_1_39/_pdf


参:
シェーグレン症候群情報サイト
日本シェーグレン症候群学会
難病情報センター
ドライマウス研究会

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2017年6月19日 月曜日

ドライアイの診断と治療 藤島 浩 先生

2017年6月8日 
演題「ドライアイの診断と治療」
演者:鶴見大学歯学部眼科教授 藤島 浩 先生
場所: ホテル横浜キャメロットジャパン
内容及び補足「
ドライアイ:涙の量や質に変化が起き、目を守るために必要な涙の量が不足したり、瞬きが検証したりして涙が均等にいきわたらなくなる疾患。高齢化、エアコンの使用、パソコン、スマートフォンの長時間の使用、コンタクトレンズ装着により増加し、現在日本人で2200万人いるといわれている。

https://www.santen.co.jp/ja/healthcare/eye/library/dryeye/

涙は、眼球外上側にある涙腺で作られ、瞬きで目の表面に広がります。大半は、目頭にあるある「涙点」という小さな穴から鼻の奥に排出され、一部は目の表面から蒸発する。

http://www.nichigan.or.jp/public/disease/img/dryeye1.jpg

涙液のダイナミクス:
涙は、涙腺から1~2μl/min分泌され、10%ほどが蒸発する。残りの90%は涙点より排出される。
眼球の上方の結膜嚢に4.5μl、眼球露出部表面に1.1μl、涙液メニスカス(三日月部分)に2.9μl分布しているといわれている。
瞬目は平均14.3回/分行われており、この瞬目により、涙液は眼表面にいきわたる。


涙の機能としては、乾燥防止、洗浄、殺菌、栄養補給、鮮明な画像が結べるように同行の表面を滑らかに保つことなどが挙げられる。
涙の最表面層は油層で乾燥を防ぐ働きがあります。その下にムチンを含んだ液層がありこれらが目の表面の細胞を覆っている。

https://www.santen.co.jp/ja/healthcare/eye/library/dryeye/

ドライアイの定義
2006年のドライアイ研究会による定義
『ドライアイとは、さまざまな要因による涙液および角膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴う。』と定義され、1.自覚症状、2.涙液異常、3.角結膜上皮障害の三つを満たした場合、ドライアイの確定診断としていました。
ドライアイ診断における確定例と疑い例
自覚症状:あり 涙液異常:あり 角結膜上皮障害:あり...ドライアイ確定
自覚症状:あり 涙液異常:あり 角結膜上皮障害:なし...ドライアイ疑い
自覚症状:なし 涙液異常:あり 角結膜上皮障害:あり...ドライアイ疑い
自覚症状:あり 涙液異常:なし 角結膜上皮障害:あり...ドライアイ疑い
であったが、判断が少々込み入っているので、2016年に『BUt5秒以下かつ自覚症状(含不快感、視機能異常)を有する』という定義に変更となった。この為、ドライアイと診断される患者数は増加している。
http://www.dryeye.ne.jp/public_dryeye/teigi/img/definition.png

参:角膜上皮障害の検査
シルマー試験:
専用のろ紙を眼瞼の縁にはさんで、5分間でどのくらいの長さがぬれるかを調べる検査

BUT(Tear Break Up Time)検査:フルオレセインという染色液を少量点眼し、瞬きを止め、眼の乾燥とともに色素が消える時間を測定する検査。10秒以上が正常、5秒以下ならドライアイの可能性が高い。


症状:


ドライアイの危険因子:
(1)年齢:
 加齢による涙の分泌量の量や質の低下。
(2)性別:
 女性のほうが男性よりドライアイになりやすい。
(3)過度のVDT(visual display terminals)作業
 パソコン、スマートフォンなど、モニターを長時間見つめる作業。
(4)乾燥した環境
 冬の乾燥した季節やエアコンの吹き出し口に当たるところなどの環境。
(5)コンタクトレンズ:
 特にソフトコンタクトレンズ装用者で多い。
(6)喫煙
 たばこの煙に曝されると、涙の質が悪くなる。
(7)内服薬
 降圧薬や向精神薬など「抗コリン作用」を持つ薬で、涙の分泌量が減少する。また、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(商品名:ティーエスワン)などの抗癌剤でも涙の分泌量が減少。
(8)点眼薬
 点眼薬の中には、涙の安定性を低下させたり、角膜に障害を与えやすくなる成分が含まれていることがあり、点眼薬の中に含まれる防腐剤などによる障害も起こりやすくなる。
(9)マイボーム腺機能不全(MGD)
 加齢に伴う眼瞼の縁にあるマイボーム腺の詰まりによる、油成分分泌低下。
(10)結膜弛緩症
 加齢に伴う、結膜部分(白目の部分)の弛みのため、眼表面で涙が留めにくくなること、また、弛んだ結膜と眼球の摩擦により眼表面に傷つきやすくなること。
(11)全身の病気に伴うもの
 涙腺、唾液腺に対する自己免疫疾患であるシェーグレン症候群では、強いドライアイを生じることがしばしばみられる。

病態:
涙液層と表層上皮の間に悪循環(コア・メカニズム)が生じること
悪循環には、さまざまな要因(上記危険因子)が関与すること
症状(眼不快感、視機能異常)があること
つまり、リスクファクターがコア・メカニズムをひきおこしてドライアイが生じると考える。
その橋渡しのメカニズムとして、1.涙液減少、2.涙液層の水分蒸発、亢進3.表層上皮の水漏れ性の低下、4.瞬目時の摩擦の亢進、が挙げられる。

京都府医大誌 122(8)、549-558.2013

治療
ドライアイの理想的な治療は、この橋渡しのメカニズムを想定しながら、リスクファクターを見つけ、それぞれにたいして治療を行うことである。

涙液層は開瞼後に眼表面に形成されるが、その過程は大きく二つに分けられる。
1つ目は、開瞼時の角膜表面への涙液の水分の塗り付け過程であり、2つ目は、開瞼後の油層の情報進展によってもたらされる角膜上方への水分移動に基づく涙液層の形成過程である。
この二つの過程は、BUT検査では測定できないものであるが、これらの過程を考えながら、涙液層の破壊を観察することは重要である。
京都府立医科大学の横井らは、涙液層の破壊パターンが4つに分類可能であると提唱している。
Spot break(下図左上):開瞼直後に見られる特徴的な類円形の涙液破壊であり、角膜上皮の水漏れ性低下が原因と考えられる。
Area break(下図右上):涙液の水分が極端に少ないために油層の上方伸展が得られない場合に、油層の上方伸展でもたらされるはずの水分の上方移動が得られず、角膜の広い範囲にわたって開瞼直後から涙液層の形成が得られないもの。
Line break(重度-下図左下、軽度-下図右下):油層の上方伸展によってもたらされる水分の上方移動の途中で、角膜下方に見られる線状の涙液層の破壊である。軽症~中等症の涙液の水分減少がそのメカニズムとして考えられる。

シェーグレン症候群の角膜上皮障害に対する3%軸あほソルナトリウム点眼効果(左:点眼全、右:3か月点眼後)人口涙液の頻回点眼では、改善のない角膜障害が著明に改善している。

難治性の糸状角膜炎に対する2%レバミピド点眼液の効果(左:点眼全、右:1ヵ月点眼後)。人口涙液の頻回点眼および低力価ステロイド点眼液では、全く改善が得られなかった角膜糸状物が、レバミピド点眼により消失しているのがわかる。

点眼液で効果が得られない場合には、涙点閉鎖による治療を行う。涙の排出口である涙点を閉鎖して、涙の流出を抑え、眼の表面に涙をためる治療である。シリコンや合成樹脂性ン涙点プラグを挿入する。

https://www.santen.co.jp/ja/healthcare/eye/library/dryeye/


シェーグレンの口腔内乾燥症治療薬のサラジェンなどの投与でも、ドライアイの改善がみられる。

参考サイト
ドライアイ研究会
日本眼科学会
Santen:A Clear Vision For Life

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2017年6月12日 月曜日

開業医も知っておきたい輸入感染症 天野 皓昭 先生

 2017年6月3日 
演題「開業医も知っておきたい輸入感染症」
演者: 湘和会 湘南記念病院 在宅診療部長 天野皓昭 先生
場所:保険医協会
内容及び補足「
島国である日本であるから使われている言葉であり、世界的には輸入感染症という言葉はない。
内容で考えると以下のような表現となる。
Infectious disease originating overseas entering the country through an infected traveler or goods.
国立感染症研究所は『すべてが、あるいは主に海外で感染して国内に持ち込まれる感染症』としている。
独協医科大学の春木先生はその特徴を
1. 日本にはなく、海外で流行している感染症が国内に持ち込まれる場合
2. 日本にもある感染症が海外から持ち込まれる場合
3. 日本にも存在する病原体(細菌)が多剤耐性化したものが国内に持ち込まれる場合
4. 食品や動物など輸入品に付着した感染症が国内に持ち込まれる場合
に分類している。

これとは少し立ち位置が異なるが、『新興、再興感染症』という分類がある。
新興感染症:『かつて知られていなかった新しく認識された感染症で局地的、あるいは国際的に公衆衛生上問題となる感染症』で
SARS(重症急性呼吸器症候群)、鳥インフルエンザ、ウエストナイル熱、エボラ出血熱、MERS(中東呼吸器症候群)、クリプトスポリジウム症、クリミア・コンゴ出血熱、HIV(後天性免疫不全症候群)、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)、腸管出血性大腸菌感染症、二パウイルス感染症、日本紅斑熱、VRSA(バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌)感染症、マールブルグ病、ラッサ熱
があるが、HIVはすでに新興感染症の範疇では考えられていない。
再興感染症:『既知の感染症ですでに公衆衛生上問題とならない程度までに患者数が減少していた感染症のうち、再び流行し始め患者数が増加したもの』で
狂犬病、デング熱、自家熱、マラリア、ペスト、ジフテリア、結核、サルモネラ感染症、これら、黄熱、リーシュマニア症、エキノコックス症
がある。
2001年の沖縄サミットで国際機関が協力して『The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria』を設立し、三大感染症に取り組むことを宣伝した。
この時点でHIV/AIDSの患者数3330万人、死亡者数180万人、結核年間発生数940万人、死亡者数170万人、マラリア年間発生数2億2500万人、死亡者数78万人であった。
NTDs:Neglected Tropical Disease
しかし、これら以外の感染性疾患は多数あり、WHOは顧みられない熱帯病(NTDs:Neglected Tropical Disease)も提唱した。
NTDsとは、WHOが「人類の中で制圧しなければならない熱帯病」と定義している17の疾患群の。こと
世界149の国と地域で蔓延し、感染者数は約10億人にも上り、深刻な社会問題となっており、この内100の国と地域では2種類のNTDsが蔓延し、30の国と地域では、6種類以上ものNTDsが蔓延しているといわれている。
NTDsは主に貧困による劣悪な衛生環境などが主な原因となって蔓延しており、このことがまた労働力や生産性の低下を招き、貧困から脱出できない原因にもなっている。これらの疾患にかかると、重度の身体障害が残る場合もあり、経済活動や社会生活を送る上での大きな足かせとなっている。また最悪の場合には死に至ることもある。開発途上国や新興国では,NTDsの蔓延が経済成長の妨げともなっており、国が抱える重大な課題の一つになっている。
NTDsは三大感染症と比べて、世界からあまり関心が向けられておらず、十分な対策が取られてこなかった。2008年のG8北海道洞爺湖サミット首脳宣言を契機として、焦点が荒れられるようになってきた。

2012年のロンドン宣言で表明された10のNTDsの患者数であるが、統計の取り方により、実際の疫学を反映しているとは言えないものの、おおよその広がり具合がわかる。
特に土壌伝播寄生虫の回虫症としての数は、どのような視点から計算されているかは不明である。土壌伝播寄生虫は、靴を履く習慣を広めることにより感染者は激減している。
生活習慣が、これらの感染症の分布にも影響しており、糞尿を農業の肥やしとしていない、アフリカにおいて回虫症はほとんど見られず、東南アジアでよくみられる感染症となっている。

輸入感染症の重要性とその変化
日本からの海外旅行者数は1997年以降大きな変化はないが、日本への外国人旅行者数はここ10年で3倍に増加している。

また外国人労働者及びその家族の増加が顕著である。

 
これらの人たちが住んでいた環境で感染した慢性疾患の知識も必要となることがある。
出身国別で見てみると、韓国・朝鮮からの人は減少し、ブラジル人は頭打ちとなり、中国やフィリピンからの人が増加している。
ブラジル人であれば、シャーガス病による特発性心筋症や巨大結腸症、中国人であれば、有鉤条虫による嚢虫症からくる痙攣や麻痺があり、基礎疾患としての寄生虫疾患を念頭に置く必要がある。

その他に生鮮輸入食品の増加や交通システムのスピード化・国際便の増加がこういった感染症の拡大に拍車をかけている。
しかし、日常診療においてこれらの疾患の絶対数が少なく、関心も少ないため、医師の知識が不足していることが問題であるばかりでなく、容易に相談・対応できる医療機関・専門家が少ないことも問題である。
これらの疾患の多くは、根本的な治療薬が存在せず、あったとしても入手困難なものが多く、適切・迅速な治療が困難な状況にある。
また、迅速な感染拡大防止対策が困難であり、現在行われている、国際空港における水際作戦(体温の上昇を調べ対象者を絞り込む)の有効性に疑問がある。
海外から一日に700機来ている。30000人ほどになる人対象に行って年300件ほど検出されているという。デング熱など不顕性感染(感染しているけれど発熱していない)場合には検出不可能であり、サーモグラフィーによる検出には疑問が呈されている。

そこで重要になってくるのが、旅行歴・暴露に関する問診である。国立感染症センターの笏那先生は以下の問診を進めている。
1. 渡航の出発日と帰国日
2. 渡航先と経由国
3. 田舎か都市部か
4. 現地の気候、季節
5. 咬傷の有無;蚊、ダニ
6. 動物暴露
7. Sick contact
8. 現地での性交渉
9. 食事や水の摂取
10. ワクチン接種歴
11. 旅行の種類:ツアー、ビジネス、バックパック
12. 外傷歴
症状が出るまでの潜伏期間も重要な情報となる。


デング熱 Dengue Fever
デングウイルスはフラビウイルス化フラビウイルス族のRNAウイルスである。

デングウイルスゲノムは約11000の塩基からなっており、血清型でDENV-1~4の四つのウイルス型に分類される。ある血清型に感染するとその血清型に対する終生免疫を獲得するが、他の血清型に対する防御は短期間に留まる。また、二度目の感染が他の血清型の場合に重篤化することが報告されている。この機序がデング出血熱のおきる機序として唱えられているが、小児では初回感染でも出血熱の発症があり、強毒株がデングウイルスの中に存在し、その感染によって発症すると唱えている人もいる。


WHO地域事務所別に見たデング熱患者数は以下のようになっている。

しかし、アフリカ各国の集計データがないので、正確な感染者数を反映しているものではない。2016年デング熱の流行があったところは下記のようにしめされている。

デング熱はネッタイシマカやヒトスジシマカにより媒介される。

ネッタイシマカ

したがってこれらの過の生息地域がデング熱のリスクのある地域になる。

http://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name33.html

地球の温暖化に伴いヒトスジシマカの分布地域が北へ拡大することが予測されている。


デング熱の臨床像
デングウイルスに感染しても8割は無症状で、それ以外でも軽症が多い。しかし、5%の感染者では重症にまで発展し、さらに極一部で生命を脅かすこともある。

潜伏期間は、3~14日であるが、ほとんどの場合4~7日である。帰国後14日以上経過した後で発症する可能性は極めて低い。子供の場合、風邪や胃腸炎(嘔吐や下痢)とよく似た症状がたびたびあらわれ、症状は大人よりも軽いが、ときに重度の合併症をきたす。
症状は、突然の発熱、頭痛(目の奥の痛みと表現されることが多い)、筋肉や関節の痛み、発疹である。

40度以上の発熱となることがよくあり、全身の痛みや頭痛を伴う。このような症状が2~7日持続し、この時期に50~80%の人に発疹が認められる。1~2日目に紅斑が現れるか、4~7日の頃にはしかに似た発疹が現れる。また、点状出血や毛細血管の破綻が現れることもある。口や鼻の粘膜から軽度の出血を認めることもある。1~2日で急に熱が上がって下がるという二相性を示す。
デング出血熱:感染者の中には重篤化する人もいる。高熱から回復した後に悪化する。
毛細血管の透過性が増、し水分の漏れが増加し、胸腔や腹腔に多量の水分貯留を認め、循環血液量の減少により、循環性ショックが生じることがある。この段階で、臓器障害や大量出血が消化器系で起きることがある。
デングショック症候群と呼ばれる循環性ショックやデング出血熱が発症する割合は5%未満である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%B3%E3%82%B0%E7%86%B1


デング熱の国内報告者数の推移を見てみると、2014年代々木公園で国内感染拡大があったがそれ以外はほとんどが輸入例である。

海外感染者が代々木公園イベント参加した人から広がったと一部で報道されたが、発症直前にインドネシア舞踏団の講演があり、その人たちからの感染の可能性を指摘している人もいる。

デング熱ワクチンが開発されている。違う方の再感染の際に重篤化するので開発が困難と思われていたが、四種類同時にワクチンを接種することにより、重篤化を避けられるとの発想で作成された。60%以上に予防効果が認められ、第三相試験まで進んでおり、2015年からメキシコ、2016年からフィリピンなど10か国で9歳以上に使用が開始されている。

マラリア

マラリアは世界90か国以上の国々で公衆衛生上大きな問題であり、これらの地域は世界人口の40%24億人がその感染症と向き合っている。WHOの最新データによると毎年3~5億の人が罹患し(その90%はサハラ以南のアフリカの人々)、年間の死亡者数は100万人を超えている。

マラリアはマラリア原虫が人体に寄生することによって引き起こされる。

ピンク色の丸い形のものが赤血球、矢印で示した輪状(左図)または鎌状(右図)のものが赤血球に感染したマラリア原虫
媒介動物はハマダラカである。


細胞内寄生の原虫で、ヒトの体内では無性生殖、媒介蚊であるハマダラカの体内で有性生殖で増殖する、人に寄生するマラリア原虫は以下の四種類で、下記の潜伏期間である。
1. 熱帯熱マラリア原虫:Plasmodium falciparum 7~14日
2. 三日熱マラリア原虫:Plasmodium vivax 12~17日あるいはそれ以上
3. 卵形マラリア原虫:Plasmodium ovale 11~18日あるいはそれ以上
4. 四日熱マラリア原虫:Plasmodium malariae 18~40日あるいはそれ以上
注意すべき点は、熱帯熱マラリア以外のマラリアの場合、潜伏期が長期化する例が少なくないことであり、抗マラリア薬を内服していた場合はさらに長期化する例がある。海外寄りの帰国時には全然症状がなく、その後に発熱が出現するという経過をたどることが多い。流行地に滞在しなくても、熱帯地より航空機とともに運ばれてきたハマダラカに刺され発症する場合もあり、空港マラリアと呼ばれている。輸血や針刺し事故による伝播や経胎盤感染も稀にある。

マラリアの生活史と形態:
マラリア原虫はハマダラかによって媒介され、吸血時に蚊の唾液腺から感染型のスポロゾイトが人の血液中に注入される。スポロゾイトは数分以内に肝細胞に侵入し、そこで分裂を繰り返す。肝細胞内で増殖を終えると、寄生細胞を破壊し、メロゾイトを放出する。メロゾイトは数十秒以内に次の赤血球に侵入し、ヘモグロビンを摂取して成長する。侵入48時間後には20~30個のメロゾイトが形成され、このメロゾイトは赤血球を破壊して、次の赤血球に侵入する。なお、三日熱マラリア原虫と卵形マラリア原虫では、一部の肝細胞内原虫が休眠型(ヒプノゾイト)を取り、数か月~数年後に増殖し、マラリア再発の原因となる。
マラリア原虫はヒトの体内での発育のほとんどを細胞内で過ごすので、免疫が容易には成立しない。
赤血球内の虫体の一部は雌雄のガメトサイト(生殖母体)に分化する。ガメトサイトはハマダラ化の吸血によって蚊に移ると、その中腸で雌雄の生殖体(ガメート)になり、受精して接合体を形成する。接合体(ザイゴート)はオーキネートになって中腸壁に侵入し、そこでオーシストを形成する。その中で虫体は分裂を繰り返し、多くのスポロゾイトを形成する。スポロゾイトは唾液腺に移行して成熟し、次の感染の機会を待つ。なお、ゲノムが2倍体になるのは接合体の時期だけで、その後すぐに減数分裂が起こり1倍体となる。ヒト体内でのマラリア原虫の全発育期は核相は1倍体である。ヒトでは1倍体の時期は精子と卵子の時期なので、発育史におけるゲノムの倍数性はヒトとはかなり異なる。

http://www.biken.osaka-u.ac.jp/biken/BioScience/page22/index_22.html#04
発育を繰り返すうちに一部は雄性と雌性の生殖母体となる。生殖母体は蚊に吸われることで有性生殖するが、人体内では死滅する。三日熱および卵形マラリアでは、肝細胞内で休止期に入ったヒプノゾイトが、数か月後に分裂を開始し、再発する。一方、熱帯熱および四日熱マラリアはヒプノゾイトが存在しないため再発しない。


         輪状体 アメーバ体 分裂体 生殖母体(雌) 生殖母体(雄)
熱帯熱マラリア  
三日熱マラリア         
四日熱マラリア         
卵形マラリア         
http://www.idimsut.jp/didai/kansensho_09.html

マラリアの三大主徴は、特有の熱発作、貧血、脾腫であるが、これらの症状が認めらえるときは病状がかなり進行している状況にあり、一刻を争って適切な治療を行わないと救命が困難な場合がある。
悪寒期:不定の前駆症状の後に悪寒、戦慄、体温上昇が出現、1~2時間持続する。
灼熱期:悪寒は消失し、つぎは熱感を感じ、頭痛、顔面紅潮、結膜充血、関節痛、悪心、嘔吐を伴う高熱が4~5時間持続し、この間、うわごとや意識障害を呈することもある。
無熱期:大量の発汗とともに解熱、臨床症状も軽快し気分爽快となる。
熱発作のパターンは初期には不規則であるが、熱帯熱マラリア以外は、次第に以下の表のような規則的な熱型になる(熱発作の周期は分裂体の破裂する周期に一致する)。熱帯熱マラリアでは、毎日もしくは1日に2~3回不規則に発熱する。
熱帯熱マラリア:不規則、三日熱マラリアおよび卵形マラリア:48時間、四日熱マラリア:72時間
マラリアの経過は、熱帯熱マラリアとそれ以外とで大きく異なる。熱帯熱マラリアの場合は、発熱に伴う症状が強く、不規則に発熱し、解熱時も健康感がない。早期に治療を開始しないと血中の原虫数は急激に増加し、脳性マラリア、ARDS、急性腎不全、代謝性アシドーシス、重症貧血を併発し死亡する。そのほかのマラリアは比較的ゆっくりとした経過を摂り、一般的に良性マラリアともいわれる。

日本における輸入マラリア患者数の変遷は、平成14年以降は下げ止まりの感があり、年間70-80人程度罹患している。

平成18年から26年までの輸入マラリアの特徴を以下に上げる。
男性76%、女性24%で男性に多く、
年齢は20代が34%、30代が31%と若年者に多く、職業は学生15%、会社員13%、国際協力関係の人が7%、教育研究職の人が6%でした。
出身地は、日本国籍が183例、外国籍の人が132例で死亡例は1例の診でした。
熱帯熱マラリア58%、三日熱マラリア30%、卵形マラリア4%、四日熱マラリア2%不明が6%。
症状は、発熱99%、悪寒58%、頭痛57%、関節痛26%、脾腫23%、貧血17%。
感染地域は、アフリカが63%、アジア27%、オセアニア6%、南米2%であった。

下記のような急激な症例があり、3回目の発熱時においてはどんな治療も無効であり、感染が疑われる地域に旅行し、蚊に刺された事実があって、発熱、悪寒などの症状が認められた際には、マラリアを疑うべきであり、その可能性が少しでも強く考えられる場合には、集中して治療できる施設、この近くであれば、横浜市民病院への相談・診察依頼を考えるべきである。

マラリアが中等度から高度に流行している地域では、その人の免疫が感染に関して重要な要素となる。長年、マラリアに暴露されていると部分的に免疫がでる。完全に感染を防ぐことはできないが、重症化するリスクを下げることができ、アフリカではマラリアによる死亡者は、ほとんどが免疫を持っていない子供で、大人は重症化を防げている。

しかし、マラリア撲滅に対しては、この抵抗性を有していることが足かせになっているのも事実。ナイジェリアの症状のない普通に登校している学生の血液検査でマラリアの保有率を見たものが下の表です。約1/4の人はマラリア感染がありながら、無症状で生活している。症状があれば、病院受診し治療が行われるが、症状がないので普通に生活をしており、これらの人を刺した蚊から他の人へ、マラリア感染が広がっていく。

実は現地の医療水準も、マラリア感染撲滅の足かせになっている。ケニアで現地の医師によりマラリアと診断された患者の血液標本を作成してみた結果、マラリア原虫の感染した赤血球は一例も見つからなかった。血液標本でマラリア虫を検出して臨床診断をしているので、この事実は無視できない問題点である。

マラリアの治療
治療の選択は、合併症のない熱帯熱マラリア、重症マラリア、非熱帯熱マラリアに分けて考える。
1975年クロロキン、2010年ファンシダールが発売中止になっており、2013年12月現在わが国で使用できる抗マラリア薬は塩酸キニーネ末、メフロキン塩酸錠、アトバコン・プログアニル配合錠の三種類である。国外で標準治療薬とされている、クロロキン、アーテミシニン配合錠(ACT)、プリマキン及び注射薬(アーテスネート及びキニーネ)の入手が困難なことからこれらのギャップをうめるため,アーテメター・ルメファントリン配合錠,グルコン酸キニーネ注射薬,アーテスネート座薬,リン酸クロロキン錠,塩酸プリマキン錠が必要時に速やかに使用できる体制が厚生労働科学研究費補助金(熱帯病治療薬研究班)によりとられている.なお,これらの未承認薬の使用は臨床研究として行われており,対象となる患者は,1)承認薬の禁忌に該当する場合,2)経口薬が使用できない場合,3)重症マラリアに相当する場合,に原則限られる.
日本寄生虫学会 マラリア情報:マラリア治療の手引き(2014年版)
http://jsp.tm.nagasaki-u.ac.jp/wp-content/uploads/2015/12/tebiki_2014ver82.pdf

2016年12月19日ノバルティス・ファーマ―から抗マラリア薬「リアメット配合錠」製造販売認可が取れたとプレスリリースされた。
これは漢方薬の一種でヨモギ属植物(artemisia annua)の抽出化合物であるアルテミシニン誘導体とそれとは作用機序の異なる薬剤を組み合わせた併用療法(artemisinin-based combination therapy:ACT)の配合剤で、作用機序は明確にはなっていないが、赤血球内に侵入したマラリア原虫に対して作用していると考えられている。

マラリアの薬剤耐性は非常に問題となっており、クロロキンやスルファドキシン-ピリメサミンに対する耐性熱帯熱マラリアが1970年代と1980年代に広がった。
したがってクロロキンなどの耐性マラリア感染危険地域に行かれる場合の予防内服に疑問視している医師もいる。
アルテミシニン耐性原虫が近年、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムの五か国から報告されているが、ACTの場合は他剤も使用しているのでほとんどの患者が治癒しているが、問題である。
蚊対策
マラリア撲滅対策のもう一つの方法として、マラリア感染を広めている蚊に対する対策も進められている。
現在使用されている殺虫剤は主にピレスロイドが使われており、近年このピレスロイド耐性蚊が増加している。
住友化学株式外社がポリエチレンにピレスロイドを織り込んだ蚊帳:オリセット・ネットを開発しUNICEF(国連児童基金)などを通じて80以上の国々に供給している。
https://www.sumitomo-chem.co.jp/csr/olysetnet/initiative.html


狂犬病Rabies:ラブドウイルス科リッサウイルス属の狂犬病ウイルス(Rabies virus)を病原体とするウイルス性の人獣共通感染症。水を恐れるようになる特徴があるため、恐水病、恐水症と呼ばれることもある(水以外にも、音や風など感覚器に刺激が与えられると痙攣を起こす)。
毎年世界中で約5万人の死者を出しており、その95%以上はアフリカとアジアである。
感染した動物に噛まれた人の40%は15歳未満の子供である。人から人への伝播はなく大流行になる恐れはないが、ワクチン接種を受けずに発症するとほとんどが死亡し、有効な治療法がない疾患である。
感染:一般には感染した動物の咬み傷から唾液とともにウイするが伝染する場合が多いが、傷口や目・唇などの粘膜部を舐められた場合も危険性が高い。犬の他に、猫や蝙蝠などの動物も感染源となっている。ヒトからヒトへの感染はないが、角膜移植や臓器移植による感染報告例がある。
潜伏期間:咬傷の部位や大きさによって異なる。咬傷から侵入した狂犬病ウイルスは、神経組織に到達し、日に数~数十ミリ移動し、脳組織に到達し発症する。早ければ2週間で、場合によっては数か月以上かかり、二年という報告例もある。
前駆症状:風邪に似た症状の他、咬傷部位の皮膚の治癒後の「痒み」、「チカチカ」などの違和感、熱感がみられる。
症状:急性期には、不安感、恐水症状(水などの液体の嚥下によって嚥下筋が痙攣し、強い痛みを感じるため、水を極端に恐れるようになる症状)、恐風症(風の動きに過敏に反応し避けるようなしぐさを示す症状)、興奮性、麻痺、精神錯乱などの神経症状があらわれるが、脳細胞は破壊されていないので意識は明瞭である。腱反射、瞳孔反射の亢進も見られる。その2~7日後には脳神経や全身の筋肉が麻痺を起こし、昏睡期に到り、呼吸障害によって死亡する。
症例によっては、典型的な恐水症状や脳炎症状がなく、最初から麻痺状態に移行する場合もあり、この場合には、ウイルス性脳炎やギランバレー症候群との鑑別が困難である。
予防:有効な治療法がないため、感染前のワクチン接種が有効である。
暴露前接種:初回接種を0日とすると0-28-180の三回接種が一般的である。
暴露後接種:感染の機会があった場合にもその発症を予防する目的でワクチンを接種する。
WHOでは、0-3-7-14-28日(必要に応じて90日)の摂取を勧めている。そのほかにもいくつかの方法が提唱されている。

流行地は多く、逆に狂犬病清浄地は、日本、イギリス、アイルランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、ハワイ、グァム、フィジー、オーストリア、ニュージーランドと非常に少ない。
 


参考サイト:
検疫所で探知された湯集感染症の現状:成田航空検疫所検疫化検疫医療専門職 磯田貴義
東京大学医学研究所 附属病院・感染免疫内科

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

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