その他

2018年6月28日 木曜日

秘める優しさを持つ剤型とは 倉田なおみ教授

2018625日 

演題「秘める優しさを持つ剤型とは」

演者:昭和大学薬学部社会健康薬学講座社会薬学部門教授 倉田なおみ先生

場所:ホテル、ニューグランド

内容及び補足「

栄養不良の状態があると、栄養サポートを行う必要がある。

栄養サポートを必要とする絶対的な適応は、

1.  中~高度の栄養不良

2.  高度の侵襲に伴うカタボリズム(異化)亢進

3.  経口摂取が長期間出来ない場合

目安としては、

1.  通常体重よりも10%以上減少している場合

2.  カタボリズムの強いやけどや様々な原因で食べることができない場合

がある。

 

栄養法には、

1.  経口投与

2.  経腸栄養法

3.  静脈栄養法

がある。

嚥下困難のグレードとして以下の評価がある。

(藤島一郎,大野友久 他:「摂食・嚥下状況のレベル評価」簡便な摂食・嚥下評価尺度の開発.リハ医学43S249,2006

それぞれの嚥下障害の程度によりいろいろな嚥下調節食が薦められる。

こういった嚥下調節食を取っている際に薦められる投与薬剤の剤型について考えてみる。

取り扱いやすい薬剤剤型としては、粉や水薬よりは錠剤の方が取り扱いやすい。

味やにおいがマスクされている方が飲みやすい。

硬い塊でない剤型が望ましい。

これらの条件を満たす薬剤型としてはOD錠(口腔内崩壊錠)が挙げられる。

実際健常者でカプセル薬を飲み込む状態をレントゲンで透視した際に、いくら水を飲んでも、ノドの下の方にへばり付いて、いくら追加で水を飲んでもらっても落ちていかないことがあった。食事を食べてもらってやっと胃に落ちて行った。水にぬれている指でカプセルを触った際にへばり付いてしまう状況である。これを避けるためには、ゼリーで覆ったり、トロミをつけたりする必要がある。

長期に渡り経管栄養が行われている症例においては、投与薬剤をつぶして投与していることが多い。一般的な薬剤は、塩基性のものが多く、苦いものが多いので、糖衣錠にしたりして、苦みをマスクしている。これをつぶしえしまうと苦みを感じることになるので、原則錠剤をつぶして投与することは避けたほうが良い。

そこでお薦めする薬剤の投与法として簡易懸濁法を考案した。

「つぶし」処方であっても、錠剤をつぶしたり、カプセルを開封したりしないで、投与時に錠剤・カプセル剤をそのまま水に入れて崩壊・懸濁させる方法。

カプセルを溶解させるために、約55℃の温湯に入れて自然放冷する。水に入れて崩壊し内常在の場合には、錠剤表面のフィルムに亀裂を入れて水に懸濁・崩壊しやすくする。

http://www10.showa-u.ac.jp/~biopharm/kurata/kendaku/index.html

カプセルは、水50mlを加え、37℃±2℃に保ちながらしばしば振り動かすと10分以内に溶けると規定されている。10分間放置して37℃以下にならない最低温度が55℃であったのでこの温度を使用することにした。

 

55℃の温湯を作成するのが面倒と思われる方が多いので、55℃の温湯作成方法を示す。

ポットのお湯と水道水を2:1の割合で混ぜると約55℃の温度になる。お湯の出るじゃ口のミズを一番熱くするとほぼ55℃の温度になる。

水剤瓶に一回服用する全部の薬と55℃の温湯20mlを入れてかき混ぜ、約10分間自然放置して投与する。
http://www10.showa-u.ac.jp/~biopharm/kurata/kurata_method/index.html

ただし、薬剤のインタビューフォームの記載で、55℃で安定性に問題のある薬品は簡易懸濁法に適していない。また、経管投与ハンドブックでは原薬が10℃以下で不安定なシクロフォスファミドやカリジノゲナーゼなどの薬剤は簡易懸濁法不適としている。
http://www10.showa-u.ac.jp/~biopharm/kurata/kendaku/problem.html

経管投与薬時の問題点が下記表のように従来の粉砕法より利点が多い。


また、錠剤粉砕、カプセル開封調剤時の問題点も幾つか解消される。


参:錠剤取り扱いやすさ、飲み込みやすさを考慮して、おおむね重量100500㎎、直径6~15㎜のものが多く、円盤形、レンズ形、竿形など様々なものがある。

用法による分類:

内服用錠剤

口腔用錠剤:嚥下せず口腔内で溶解させて使うもの。口腔粘膜から有効成分を吸収させるバッカル錠や舌下錠、咽頭の消毒などに使うトローチ錠がある。

外用錠剤:ウガイなどの際に溶かして使う溶解錠や膣錠がある。

コーティングによる分類:

素錠(裸錠):成形したままの錠剤

コーティング:錠薬剤の安定化、矯味、矯臭などの目的で裸錠の表面に均一に被膜を施したもの。白糖による糖衣錠、水溶性高分子によるフィルムコーティング錠がある。また、胃酸により影響を受ける有効成分を、酸性では不溶性のコーティング剤で被膜した腸溶錠がある。

特殊錠:

チュアブル錠:服用時噛み砕いて使う錠剤。制酸剤など比較的容量の多い医薬品に使われる

口腔内崩壊錠(OD錠):唾液で崩壊する錠剤で有効成分の吸収は消化管。水なしでも服用できる

     舌下錠、バッカル錠:舌の下または歯茎と頬の間に入れて溶かし、有効成分を口腔粘膜より吸収させる錠剤

持続性錠(徐放性錠):溶解性の異なる基剤などを使い、一定時間持続的に有効成分が放出されるように調整した錠剤

アックスマトリックス錠:体内で徐々に崩壊する徐放化基剤に有効成分を分散させた錠剤

グラデュメット錠:多孔質の不溶性樹脂に有効成分をしみこませた錠剤

多孔性被膜錠:不溶性で微細な穴の開いた被膜を施した錠剤

多層錠: 放出性の異なる複数の層からなる錠剤。速溶錠と徐放錠を単純に重ねたスパンタブ、速溶錠の核に徐放錠を入れたロンタブ、速溶錠の核に腸溶錠を入れたレベタブがある

有核錠:錠剤の中に別の錠剤を埋め込んだもの

スパスタブ:速溶錠の中に徐放性の顆粒を分散させたもの

レジネート:イオン交換樹脂を使った錠剤

これらの特殊坐位は、簡易懸濁法にあまり適していないと考えられる。

タケプロンは、胃酸に出会うと効果がなくなるので7層構造で作られており、簡易懸濁法でも、問題なく薬効が期待できる。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/49/4/49_KJ00010109460/_pdf/-char/ja

 

この簡易懸濁法で問題視される点の一つに、水に溶かしてから飲むまでに薬剤の変化が挙げられる。しかし、従来の粉砕調剤したものは、調剤した時点から薬に酸化などの変化が生じることになるが、簡易懸濁法においては、投与10分前から生じることになり、かなりの時間が短縮されることになる。また、口腔内崩壊錠を利用すると、この時間がより短縮できる。

速崩錠と口腔内崩壊錠の違いは、口の中で吸収されないことが確認されたものが口腔内崩壊錠であり、確認されていないものが速崩錠である点である。

1錠だけOD錠にするメリットはないと考える医師が多いが、OD1剤と通常錠剤1剤の2剤と、通常錠剤2剤の内服を、口に入れて15秒後にそれぞれ飲み込むことをしてもらった研究では、8割以上の人が、OD錠が入っている方が飲み込みやすいと評価してくれた。15秒間でOD錠が崩壊するので、1錠を飲むことと同じ状況になっているためと考えられる。

高齢者においては、小さい錠剤はつかみにくいのである程度の大きさのものが良い。

OD錠として1315㎜の大きさのものでも口の中で溶けてくるので、飲み込む際に問題となることはなかった。

今までは、大きさの面からOD錠か出来なかった薬剤においても、15㎜の大きさであれば、可能となるものは少なからずあると考えられるので、より一層OD錠かをしてもらえると、薬剤投与、服薬の際のメリットは得られるので、各製薬会社の努力を期待したい。

参:キーワードでわかる臨床栄養
http://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch1-3/

 

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2018年6月25日 月曜日

SLE:全身性エリテマトーデス 佐藤慎二教授

2018年6月17日 
演題「指定難病 SLE」
演者:東海大学医学部内科学系リウマチ内科教授 佐藤慎二先生
場所:
内容及び補足「
全身性エリテマトーデスSystemic Lupus Eryhermatousus:SLE
疫学:
2013年にSLEとして難病の申請をしている人が61528人おりこの2倍の人がSELと推定されている。1:10と女性に圧倒的に多く、10代後半から30歳代に好発しますが、近年高齢で発症する人が多く見られている。人種差があり、有色人種に多い。
50以上の遺伝子が関与していると考えられており、一卵性双生児での頻度は25(~60)%と報告されており(二卵性双生児では10%未満)、遺伝疾患ではないが、SLEの母親からの子供には一般の人の発症頻度よりも高いと考えられている。

誘因・悪化要因:紫外線、風邪などのウイルス感染、怪我、外科手術、妊娠・出産、ある種の薬剤(10%程度)。
診断基準:

上記4項目以上でSLEと分類する。

皮膚病変:80~90%に見られる。急性型30~60%、慢性型15~30%
蝶形紅斑・頬部紅斑:急性期の皮疹 鼻根部から両側頬部にかけて広がる浮腫状の紅斑で日光により誘発される。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%A8%E8%BA%AB%E6%80%A7%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%86%E3%83%9E%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%B9
円板状皮疹:慢性期の皮疹。紅斑で始まり、硬結、角化、瘢痕、萎縮、色素沈着に陥る。頭皮にできると脱毛をきたす。

https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/s2_q05.html
脱毛:全体、特に前頭部がびまん性に抜けてくる。毛髪はもろく通夜がなくなってくる。一般に治療に反応して生えてくるが、円盤状皮疹が頭皮にできた部分では、不可逆的な脱毛となる。
口腔内潰瘍:口腔内や鼻咽頭内に紅斑および無痛性の浅い潰瘍が出現。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/102/10/102_2591/_pdf


凍瘡様皮疹:慢性型皮疹。指背面、手掌足底外側、耳介などに好発し、寒冷により増悪する。夏にシモヤケが見られたらSLEを疑う。血管炎合併例に多い。

皮膚所見の発現頻度は以下のような報告がある。


病理所見:多彩な皮膚症状を対する、ため皮疹の時期により異なるが、共通してみられる所見として、液状変性、血管周囲や付属器周囲への単核球浸潤、ムチン沈着などがある。慢性病変では、角栓形成なども見られる。健常皮膚でも基底膜にIgG、IgM、C3などの沈着を蛍光抗体直説法で認める(ループスバンド)。
ループスバンドテスト:患者非露光部の健常皮膚を蛍光抗体直説法で観察するとIgG(緑色蛍光)が表皮基底膜に線状に沈着している。


骨格筋系病変:
関節炎:60-70%
急~亜急性の移動背板関節炎:自覚症状が強く、一過性、非びらん性で骨破壊がなく、治療に反応する。
Jaccord様関節症:整復可能な手指関節変形で関節包・靭帯・腱の変形で、他動的に動かしてもとの位置関係に直せる。

肺病変:
胸膜炎(胸水貯留):肺病変でもっとも頻度が多い
ループス肺臓炎:発熱、呼吸困難、乾燥性咳嗽、びまん性網状影
間質性肺炎
肺胞出血
肺高血圧症
肺梗塞
縮小肺

心血管病変:
心外膜炎(心嚢液貯留)
心筋炎:抗U1-RNP抗体陽性例での出現率が高い
冠動脈病変
弁膜症:Libman-Sacks 免疫複合体の関与により弁膜付着部で心筋壁に移行する部位に疣贅を生ずる。僧房弁が最も多いが、ときに大動脈弁、三尖弁も侵される。数mm以下の疣贅が複数個集簇して発生する。
ECG異常
心筋梗塞
血栓性静脈炎
抗リン脂質抗体症候群

ループス腎炎
約50%に出現。30%が腎不全に移行する。
紫色に染まる顆粒成分を含む顆粒円柱、ロウ様円柱などのいろいろな所見があるテレスコープ沈渣が見られ、糸球体腎炎の像が多い。以下の6型に分類される。

Ⅰ:微小メサンギウムループス腎炎
組織はほぼ正常であるが、蛍光抗体法でメサンギウムに免疫沈着物が認められる。

Ⅱ:メサンギウム増殖性ループス腎炎
メサンギウムに限局した細胞増多もしくはメサンギウム基質の拡大が認められ、メサンギ ウムに免疫沈着物がある。

Ⅲ:巣状ループス腎炎
全糸球体の50%未満に病変が存在

Ⅳ:びまん性ループス腎炎
全糸球体の50%以上に病変が存在
病変を有する糸球体の50%以上が分節性秒異変を示すびまん性分節性(Ⅳ-S)ループス腎炎と、病変を有する糸球体の50%以上が全節性病変を示すびまん性全節性(Ⅳ-G)ループス腎炎に分けられる。分節性とは糸球体病変が糸球体係蹄の半分未満を侵すものと定義される。

Ⅴ:膜性ループス腎炎
上皮下免疫沈着物を認める。

Ⅵ:進行した硬化性ループス腎炎
90%以上の糸球体が全節性硬化を示し、すでに活動性はない。

CNSループス
20~50%に見られる。
器質性の神経症状と機能性の精神症状に分類できる。
器質性:無菌性髄膜炎、脳血管障害、脱髄性症候群、頭痛、不随運動、脊椎症、痙攣など
機能性:急性混迷、不安神経症、認知障害、感情障害、症候性精神病など
また、末梢神経系として急性全身性脱髄性多発根症がみられる。

SLE患者の主な臓器障害とその頻度

https://www.healthgsk.jp/disease-info/sle/disease-activity.html#

診断の手順

血液学的異常:溶血性貧血、白血球数の減少、リンパ球数の減少、血小板数の減少、貧血、ESR上昇、補体の低下、免疫グロブリン高値
自己抗体:dsDNA抗体(ループス腎炎)、抗ヒストン抗体(ループス腎炎)、抗Sm抗体(疾患活動期に相関、神経症状、ループス腎炎)、抗SS-A抗体(乾燥症状、高γグロブリン血症)、抗SS-B抗体、抗U1RNP抗体(レイノー現象、心筋炎、肺高血圧症)、抗PCNA抗体(血小板減少)、抗リボソームP抗体(CNSループス)、抗リン脂質抗体、LE細胞(拡散に対する抗体が壊れた細胞と反応し、それに補体が結合したLE小体を好中球が貪食したもの)


疾患の活動性:
Safety of Estrogens in Lupus Erythematosus National Assessment SLE Diesease Activity Indes : SELENA ALEDAI 2005年ジョンズ・ホプキンス大学のグループにより提唱されたSLEの疾患活動性の評価方法。8の臓器系に関する臨床所見24項目を点数化し、10日以内に認められた所見項目により合計0~105のスコアが算出される。

NEJM 353:2550-2558, 2005

治療:ステロイド、免疫抑制剤、血液浄化療法、ヒドロキシクロロキン(プラケニル)
予後:10年生存率80~90%
死因:感染症、腎不全

参考文献:
全身性自己免疫疾患における難病清病帯の診療ガイドライン

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

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