血液系

2016年9月20日 火曜日

CKDに潜む多発性骨髄腫 岩崎 滋樹 先生

2016年9月1日 
演題「CKDに潜む多発性骨髄腫 -外来で見落とさないコツ-」
演者:横浜市立市民病院腎臓内科 岩崎 滋樹 先生
場所:ホテルプラム
内容及び補足「
白い巨塔1978年6月~1979年1月にかけてフジテレビ系列で放送されたテレビドラマで田宮二郎が財前五郎役を演じ人気を博した。


最近は唐沢寿明が主演のリメイク版が放送された。

田宮二郎が演じた『白い巨塔』の後に1973年7月13日より10月12日まで放送された、渡部淳一の小説『無影燈』を原作としたドラマに『白い影』がある。

https://www.youtube.com/watch?v=ZYNi0__7G34
このドラマも田宮二郎主演で直江庸介役を、山本陽子が志村倫子役を演じ、1973年7月13日より10月12日までTBSで毎週金曜日10時に放送され、高視聴率を取っていた。このドラマも2001年に中井正広と竹内結子でリメイク版が放送され好評を博した。

https://www.youtube.com/watch?v=DsaxphJRFrE
この小説のあらすじは、『町の病院を舞台に、優れた技術を持つ一方、無愛想でどこか謎めいた外科医・直江庸介と、最初は彼を非難していた看護婦の志村倫子が惹かれあっていく物語で、徐々に直江の身体が病に蝕まれていく』というもので、主人公の疾患をなににするかという点で、医師であった渡部淳一が選んだのが、症状や検査異常値があって、すぐに診断がつかない疾患として多発性骨髄腫を選んだのではないかと考えている。
今回、市民病院で多発性骨髄腫に合併した三種類の腎障害症例を経験したので、多発性骨髄腫に合併する腎障害について述べる。

多発性骨髄腫
疫学:
2011年のデーターを図示すると下図のようになる。男女ともに20歳までの発症は見られておらず、40歳代から次第に増加し、5歳刻みで75歳まで倍加して、80歳代で男性10万人中35.3人、女性は22.5人のピークに達する。

年次変化は、50歳未満ではほぼ一定なのに、高齢になるにしたがって増加してきている。

2013年の多発性骨髄腫の死亡者数は、男性で3416人、女性で3444人、合計6860人である。
5年生存率は男性で34%、女性で31.2%、10年生存率は、男性で11.4%、女性で14.3%である。

多発性骨髄腫の罹患率には人種差が認められており、アフリカ系アメリカ人はヨーロッパ系アメリカ人の二倍の頻度有り、日本を含むアジア人の罹患率は、欧米白人よりも低いと推定されている。
近年の大規模調査研究によると、ほとんどの骨髄腫においてmonoclonal gammopathy of undetermined significance (MGUS)が先行していることが報告され、MGUSは骨髄腫の前ガン病変であると考えられている。

予後:
多発性骨髄腫は、現在でも根治不能な悪性腫瘍であるが、近年治療方法として、自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法がおこなわれるようになり、予後は改善しつつある。

プロテアソーム阻害薬ボルテゾミブ、免疫調節薬IMiDs(immunomodulatory drugs)であるレナリドミド、サリドマイドが寛解導入療法に使用されるようになった2005年以降、より顕著になってきたが、高齢者においては予後の改善は認められていない。日本骨髄腫学会の後方視的調査研究でも、全生存率(OS:overall survival)は2001年以降で著しい改善が認められている。

2006年以降新規薬剤(Novel agents)が使用されるようになり、予後が改善している。

しかし患者さんの年齢別効果を見てみると、65-74歳までの人で近年予後の改善が見られてきたが75歳以上においてはその効果は見られていない。

日本における治療効果においても、2001寝に高予後の改善が見られてきており、高齢者においても同様の傾向を認めている。


診断基準:
従来の症候性骨髄腫の診断には骨髄腫診断事象(myeloma-defining events:MDE)である高カルシウム血症(calcium)、腎障害(renal)、貧血(anemia)、溶骨性骨病変(bone)の4症状(CRAB)が必要であった。これは、無症候時期に治療介入を行っても臨床的利益が得られなかったことによるが、検査法の進歩や新規薬剤の導入により、高リスクくすぶりがた骨髄腫(smoldering multiple myeloma:SMM)の一部に治療を行うことによる利益が明らかになってきた。
単クローン性ガンマグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance:MGUS)
MGUSは、Non-IgM-MGUS、IgM-MGUS、light-chain-MGUSの三種類に分類された。
MGUSは血清M蛋白は3g/dL未満、骨髄中の形質細胞が10%未満、臓器障害を認めないもの。
Non-IgM-MGUSは、骨髄腫、孤発性形質細胞腫、免疫グロブリン血症、免疫グロブリン関連アミロイドーシスなどへの進展が1年で1%とされる。
IgM-MGUSはマクロ風呂部リン血症、免疫グロブリン関連アミロイドーシスなどへの進展が1年で1.5%とされる。
Light-chain-MGUSはlight-chain-MM、ALアミロイドーシスへの進展が1年で0.3%とされる。



孤発性形質細胞腫(solitary plasmacytoma)
レントゲン検査で孤発性骨病変を認め、生検や摘出によりクローナルな形質細胞腫と診断された症例で、骨髄に形質細胞の増加を認めない患者を孤発性形質細胞腫、骨髄でクローナルな形質細胞の増加を10%未満認める患者を孤発性形質細胞腫-微小骨髄浸潤と定義した。孤発性形質細胞腫からMMへの進展は3年で10%、孤発性形質細胞腫-微小骨髄浸潤からMMへの進展は3年以内に骨に60%、軟部組織に20%と報告されている。



MMの類縁疾患:POEMS、全身性ALアミロイドーシス
POEMS(polyneuropathy, organomegaly, endocrinopathy, M protein, skin changes)症候群
1956年、Crowらにより末梢神経炎、皮膚色素沈着及び形質細胞腫を伴う2例が報告され、POEMS症候群と呼ばれるようになった。発症年齢は、50~60歳で骨髄腫より約10歳若く、アジアでの発症頻度が高い。血管内皮細胞増殖因子VEGFの上昇が目立ち、血管透過性亢進、血管新生作用により、浮腫、胸腹水、皮膚症状が認められ、IL-1β、TNFα、IL-6などのサイトカンにより神経障害や内分泌異常などの病態が進行する。多発神経炎、モノクローナル形質細胞増殖障害、VEGF上昇の3台症状を認め、かつ硬化性骨病変、Castleman病、臓器腫大のうち一つ以上を認め、他の疾患が否定された場合に確定診断される。


ALアミロイドーシス
異常形質細胞が単クローン性に増殖し、その産物である免疫グロブリン(M蛋白)の軽鎖(L鎖)に由来するアミロイド蛋白FLC(free light chain)が全身の臓器に沈着して臓器障害をきたす疾患。光学顕微鏡で集塊として見られるアミロイド沈着は電子顕微鏡的観察ではアミロイド細線維構成され、これらは特有のβsheet構造を有しており、不要性で通常の蛋白分解酵素では分解されない。ALアミロイドーシスは、多発性骨髄腫などに合併するものと明らかな基礎疾患が見つからない原発性に分類される。
診断基準を下表に上げる。

検査所見
血清電気泳動でM蛋白を認める。

血清免疫固定法、尿免疫固定法で判定を行う。

その他に検査としては、スクリーニング検査、診断確定のための検査、腫瘍量や予後評価のための検査、臓器障害の評価のための検査などに分けられる。


骨病変:
多発性骨髄腫においては、骨髄腫細胞が産生するmacrophage infoammatory protein-1(MIP-1)の作用により破骨前駆細胞の形成が促進される。また、MIP-1は骨髄腫細胞の接着分子であるvery late antigen-4(VLA-4)を活性化し、骨髄間質細胞のvasculat cell adhesion molecule-1(VCAM-1)との接着が高まることによりreceptor activator of nuclear factor-κB Ligand(RANKL)の発現亢進やosteoprotegerin(OPG)の産生抑制が引き起こされ成熟破骨細胞が過剰に誘導される。一方、骨髄腫細胞はsecreted frizzled-related protein-2(sFRP-2)やDickkopf-1などの骨芽細胞阻害因子を産生することにより、骨芽細胞の分化を抑制している。さらに、骨吸収に伴い、骨から放出されたtransforming growth factor-β(TGF-β)やactivin A、sclerostinなどの因子は、骨の石灰化を抑制し、骨形成を阻害する。

骨病変のスクリーニング検査としては、全身の単純X線検査を行い、溶骨性病変の有無を検討する。主に、頭蓋骨、肋骨、脊椎骨、骨盤、法腕骨、大腿骨の検査が行われる。多発性骨髄腫に特徴的な所見として頭蓋骨の打ち抜き像(punched-out lesion)が知られている。

診断時には約80%において骨病変が認められ、脊椎骨65%、肋骨45%、頭蓋骨40%、肩甲骨40%、骨盤30%の頻度で認められる。
MRIは骨の内部構造の描出に優れており、T1強調像低信号、T2強調像やSTIR像で高信号として見られる。


従来の抗ガン剤治療では骨病変の改善は認められなかったが、プロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブは初回寛解導入療法や再発後のサルベージ療法として広く使用されているが、奏功例では骨病変の改善が認められている。

ビスホスホネート製剤はピロリンさん構造類似体であり、骨組織のリン酸カルシウム結晶に結合する。骨吸収の際に成熟破骨細胞に取り込まれると、メバロン酸経路の阻害により破骨細胞のアポトーシスを誘導する結果、骨吸収が抑制される。

多発性骨髄腫の腎病変
新規発症の多発性骨髄腫の約2~4割に腎障害が認められており、約1割において透析が必要になり、経過中に半数の症例において腎障害CKDを認める。
一番頻度が多く認められ腎病態は円柱腎症で、骨髄腫腎とも呼ばれ急性腎障害で発症する。
遠位尿細管付近で過剰な軽鎖と正常でも存在するTamm-Horsfall蛋白(THP)が結合して円柱が形成され、尿管閉塞をきたし乏尿となる。
また、通常のγグロブリン産生の他に、過剰に産生された遊離軽鎖(free light chain:FLC)自体の腎毒性による直性障害も考えられている。本来血液中のFLCは低分子蛋白であり容易に糸球体から濾過されるが、健常者の場合には近位尿細管細胞で再吸収され、ライソゾームで分解されるためほとんど尿中には検出されない。しかし、多発性骨髄腫では、大量のFLCが糸球体でろ過され、近位尿細管細胞で過剰な再吸収が生じ、その結果酸化ストレスが発生し、NFκBなどを介して炎症サイトカインが産生され、尿細管間質の炎症や線維化、アポトーシスを誘導し、腎障害が進展していく。これにより、近位尿細管の水・電解質、酸塩基の調節が崩れ、尿細管性アシドーシスや腎性糖尿、汎アミノ酸尿を呈するFanconi症候群に進展する。(Fanconi症候群は、M蛋白の沈着や結晶蓄積による尿細管細胞への障害などあらゆる原因で起こりえる。)

その他に、ALアミロイドーシスやmonoclonal immunoglobulin deposition disease(MIDD)のように糸球体が主に障害される場合は蛋白尿がメインで、ときにネフローゼ症候群で発症する。腫瘍細胞から産生されたM蛋白やその一部の断片化した蛋白が沈着したり、結晶を形成し蓄積したりすることで腎障害を起こす。

多発性骨髄腫の腎障害の三タイプを表にまとめてみると以下のようになる。

軽鎖に注目してみると、κ型は円柱腎症タイプ、尿細管間質障害タイプをきたすことが多く、λ型はアミロイド沈着により腎障害が出てくるので血清総蛋白上昇、血清アルブミン低下例が多い。
特殊なタイプの多発性骨髄腫で非分泌型はガンマグロブリンの過剰分泌がないため多発性骨髄腫に特徴的な症状が少なく、骨病変が進行して腰痛や血清カルシウム高値、貧血の進行などで発見されることが多く、これらの症例では血清総蛋白定値、血清アルブミン値は基準値内のことが多い。

日本内科学会雑誌 2016;105:1199-1260
日本血液学会、造血器腫瘍診療ガイドライン 第三章 骨髄腫

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2015年5月 7日 木曜日

腎性貧血の診断と治療 白井小百合 先生

2015年4月27日 TKP横浜駅西口カンファレンスセンター
演題「腎性貧血の診断と治療」
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 腎臓・高血圧内科副部長 白井小百合 先生
内容及び補足「
腎臓病の進行に伴い貧血を発症するが、貧血自体も腎機能を進行させる。また、心疾患の進行とともに貧血が認められるようになり、貧血自体も心機能を悪化させる。
Silverbergらは、心臓疾患、腎疾患、貧血の三つの病態を合併している患者が多く、それぞれが双方向性に悪影響を及ぼしていることを報告し、心腎貧血症候群Cardio-renal anemia syndromeという概念を提唱した。

http://www.monolis.com/publics/index/216/
ESKDという見方を入れると下図のような関係となる。

604人の成人男性で慢性腎不全患者の早期合併症を検討した研究で、腎機能の悪化とヘマトクリット値の低下に強い相関が認められた。腎機能低下が軽度の状態では、貧血は認められていないが、腎機能の低下とともに出現した。(Am J Kidney Dis 2001 38 803)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11576884

急性心筋梗塞で入院した患者の予後を見てみると、CKDが存在したり、ヘマトクリット値が低下したりするほど予後が悪かった。


http://www.nature.com/ki/journal/v64/n4/full/4494033a.html
一般住民28000人を対象とした疫学調査で、CKD患者2333例の予後を見てみると、心電図で左室肥大があると1.43倍、ヘマトクリットが女性で36%未満、男性で39%未満の貧血があると1.48倍、両方が重なると4.15倍の危険度となることが示された。

http://jasn.asnjournals.org/content/16/6/1803.full.pdf

腎性貧血の治療薬であるエリスロポイエチンを週一回6000単位、あるいは2週に一回12000単位を皮下注射すると、貧血の改善だけでなく腎不全の進行を抑えられることが分かった。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9346384

エリスロポエチンは、分子量約34000で165個のアミノ酸からできている、赤血球産生を促進するホルモンである。

9:1の割合で腎臓で主に作られ、補助的に肝臓でも作られる。
腎では尿細管間質細胞で合成されている。
エリスロポエチンの産生は、血液中の酸素分圧により調節されており、低酸素応答転写因子であるHIF:hypocia inducible factorにより調節されている。
HIFは酸素濃度が高い時には分解される。低酸素の時には核内に移行して、エリスロポエチン転写を促進する。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%AD%E3%83%9D%E3%82%A8%E3%83%81%E3%83%B3
腎性貧血はエリスロポエチン産生細胞の機能低下ではなく、HIF活性低下であるといわれている。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20939709

4760例のHBの濃度で11g/dL未満、11-13g/dL、13g/dLを超える三群に分けた時、13以下となると腎機能障害症例の頻度は上昇する。

腎機能で語群に分けた際には貧血が存在していても、Creatine Clealanceが60未満の群ではややエリスロポエチン濃度の上昇がみられるが、40未満の群では、もはやエリスロポエチン濃度の上昇は見られなくなる。


エリスロポエチン濃度は個人差が強く、高度腎不全症例では、HB値との相関もないので、エリスロポエチン測定の意義が少なくなってくる。
Cr<40の症例では腎性貧血は、ほぼ必発であり、エリスロポエチン濃度の測定意義も少ないため、腎性貧血治療のために、エリスロポエチン濃度を測定しないで、エリスロポエチン投与を行ってもよいと考えられている。

http://www.nature.com/ki/journal/v66/n3/full/4494731a.html

腎性貧血の治療目標値であるが、2004年のKDOQIガイドラインの目標は2006年に改訂され治療のHb上限値がなくなった(ただし,13g/dL以上に維持することを推奨する根拠はないと記載されている)。
2009年にヘモグロビン値が12以上に増加させることに臨床的意義は少ないとの解析結果が報告された。
http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=415147

日本においては、2004年のガイドライン発行以前の目標Hb値は10g/dL前後であった。
その後、2008年の日本透析医学会が出した『慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン』によると
HD患者:ESA療法の目標値は、週初め(前透析中2日後)のHD前の仰臥位採血による値で① Hb値10~11g/dLを推奨する(12g/dLを超える場合には、減量・休薬基準とする)。
② ESAの投与開始基準は、腎性貧血と診断され、複数回の検査でHb値10g/dL未満となった時点とする。
③ 活動性の高い比較的若年者では目標Hb値11~12g/dLを推奨する(13g/dLを超える場合には、減量・休薬基準とする)。また、ESAの投与開始基準は、複数回の検査でHb値11g/dL未満となった時点とする。
PD患者およびND患者:
①  PD患者及びND患者に対するESA療法の目標Hb値11g/dL以上を推奨する(13g/dLを超える場合には、減量・休薬基準とする)。
② ESAの投与開始基準は、腎性貧血と診断され、複数回の検査でHb値11g/dL未満となった時点とする。
②  ただし、重篤な心・血管系疾患の既往や合併のある患者、あるいは医学的に必要のある患者には12g/dLを超える場合に、減量・休薬を考慮する)。
となっている。
(透析会誌41(10):661〜716,2008)

2015年の『新しい腎性貧血治療ガイドラインを目指して』6月20日から25日にかけて福岡市国際センターで日本透析医学会学術集会・総会が開催され、いろいろなことが検討される。
http://www.igaku.co.jp/pdf/1311_tonyobyo-2.pdf

2007年に大規模試験であるCHOIR(correction of hemoglobin and outcomes in renal insufficiency)試験とCREATE(cardiovascular risk reduction by early anemia treatment with epoetin beta)試験の結果が報告された。
CHOIR試験では、脂肪、心筋梗塞、心不全による入院、脳卒中の複合endpoint発生率が、目標Hb高値群で有意に高く、中間解析で両群間の差が見られたために試験が早期終了となった。
CREATE試験ではLVMIの変化率において両群間に差を認めず、CVD発症率にも差がなく、CVD抑制に関するHb正常化のメリットは見られなかった。

http://www.nmckk.jp/pdf.php?mode=puball&category=JJCD&vol=24&no=1&d1=4&d2=.
27の臨床試験のデータをメタ解析した2010年の報告では、治療目標が高値の群で、脳卒中が1.51倍、高血圧が1.67倍、vascular access thrombosisが1.33倍と有意に高値であった。

http://annals.org/article.aspx?articleid=745861

(透析会誌41(10):661〜716,2008)
赤血球造血刺激因子製剤ESAには、人体内で産生されるエリスロポエチンと若干の糖鎖が異なるのみのほぼ同じ構造のものであるEPO製剤(エポエチンα:エスポーとエポエチンβ:エポジン)と、エリスロポエチンレセプターに作用して赤血球造血刺激を行うESA(erythropoiesis stimulating agent)製剤(エポエチンβペルゴ:ミルセラとダルポエチンα:ネスプ)がある。
EPO製剤(エスポー、エポジン):αとβでは、糖鎖の違いのみで効果に差はなく、エポエチンβは天然のエリスロポエチンと同じ構造である。
半減期が7~9時間と短く、透析後に毎回投与される。
副作用として、高血圧、脳梗塞、肝機能障害、アナフィラキシーショック、心筋梗塞などがあり、Hb値が高くなり過ぎないように気をつける必要がある。
ダルボポエチンα(ネスプ):エポエチンαのアミノ酸の一部を変更し、活性に重要な役割を果たす新たな糖鎖を負荷させたものがダルボポエチンαで、血中半減期が25時間と延長され、透析患者への投与が週一回となった。
エポエチンβペゴル(ミルセラ):エポエチンβの直鎖メトキシポリエチレングリコール分子を負荷したことにより、血中半減期が168~217時間と延長し2~4週間に一回投与で済むようになった。
http://cetaka.com/epo/

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2015年5月 7日 木曜日

貧血データをどう読むか 奈良典子 先生

2015年4月27日 TKP横浜駅西口カンファレンスセンター
演題「貧血データをどう読むか ~貧血の鑑別診断~」
演者:横浜市立大学附属市民総合医療センター 総合診療科 奈良典子 先生
内容及び補足「
貧血に関連する因子の基礎情報
鉄:成人の体内鉄量3~4g。そのうち2/3がヘム鉄(ヘモグロビン鉄2.3g+ミオグロビン鉄0.14g)、残りの1gが貯蔵鉄(フェリチン0.5g+ヘモジデリン0.5g)。

Fe2+は水溶性、Fe3+は難溶性なので、Fe2+の方が吸収されやすい。ヘム鉄やアミノ酸鉄などのキレート状の鉄は吸収が容易。
鉄は摂取量の10%程度しか吸収されない。小腸の上皮中ではフェリチンと結合して鉄が存在し、血清中のトランスフェリンに鉄を受け渡すが、トランスフェリンが飽和するとそれ以上の受け渡しができなくなる。受け渡しができなくなった結果として鉄が飽和した状態の腸上皮は脱落し、過剰な鉄の吸収がされないように制御されている。
ビタミンCは鉄の吸収を促進し、肉に含まれるヘム鉄は食物中の向き鉄よりも効率よく吸収される。
アルコールやフルクトースは鉄の吸収を促進するが、カルシウムは鉄の吸収を阻害する。
http://meddic.jp/%E3%82%A2%E3%83%9D%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%83%81%E3%83%B3

トランスフェリン:トランフェリンは鉄イオンと結合し輸送を担う血漿タンパクで、掃除した二つのドメインからなる糖蛋白質で、それぞれに三価の鉄イオン結合部位が一個ずつある。通常は、血漿中の鉄分の三倍量を結合しうる量が存在し、血漿中の鉄のほとんどはトランスフェリンに結合しているが、体内全鉄量の0.1%であり、鉄貯蔵の役割はない。
各細胞の表面にトランスフェリン受容体があり、トランスフェリンが結合するとエンドサイトーシスにより、被覆小胞に包まれ細胞内に輸送される。細胞のH+-ATPaseによって小胞内のpHが低下すると、トランスフェリンの鉄親和性が低下し、鉄イオンを放出する。
鉄を放出した後、トランスフェリンと受容体は結合したまま細胞表面に再輸送され、エクソサイトーシスにより、次の鉄の取り込みに備えることになる。
トランスフェリンは鉄イオンを非常に強く結合するため、遊離の鉄分を吸収することで細菌に対して抗菌作用を示す。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%83%B3

フェリチン:血清フェリチンはFe3+とアポフェリチンが結合した可溶性鉄貯蔵蛋白である。
生体内において鉄はフリーラジカルの産生を促進するため有害であり、即座に無害化して貯蔵しようと反応するその主要物質である。アポフェリチンは鉄の解毒代謝にかかわるH鎖と鉄貯蔵にかかわるL鎖からなる24この座部ユニットで構成されている、内部に鉄を貯蔵できる中空部分を持つ巨大分子である。

ウマ脾臓由来アポフェリチンの結晶。 無機結晶と同様に、駆動力に伴って骸晶化し、デンドライト状にも変化する。右上はアポフェリチン分子24量体の立体構造。右下は干渉計による蛋白質結晶成長時の濃度変化計測。(PDBデータ1AEW)
アポフェチリンとは体内で鉄を貯蔵するタンパク質の代表的 なもの。腸粘膜、肝臓、脾臓、骨髄、網内系細胞などに存在する。鉄と結合したものがフェリチンという。腸粘膜のアポフェリチンは鉄の吸収に関与するとされている。
http://www.isas.jaxa.jp/j/forefront/2004/yoda/index.shtml
血清フェリチン値1ng/mlは貯蔵鉄8㎎に相当する。

http://www.city.fukuoka.med.or.jp/kensa/ensinbunri/enshin_5_x.pdf

鉄の動態:積極的な鉄の排泄機構はなく、体内で繰り返し再利用される。
骨髄で摂家球の産生に必要な鉄を末梢血から取り込む。赤血球は通常120日で老化し、肝臓や脾臓のもう内径マクロファージに補足貪食される。貪食した赤血球中の鉄をマクロファージはヘモグロビンからフェリチンに移行させ貯蔵する。また、貯蔵した鉄をマクロファージは末梢血に提供し続け、赤血球合成に利用される。
通常は網内系マクロファージが主な鉄の供給源であり、肝臓は鉄欠乏の状態の際に供給している。その際フェロポーティンという缶細胞膜に存在するたんぱく質を介して末梢血に供給される。
鉄が過剰に存在する場合や、持続性の炎症が存在する場合、エリスロポイエチン欠乏などにより骨髄機能が低下している場合に、肝臓でヘプシジンが産生される。
ヘプシジンはフェロポーティンと結合する。この複合体は、エンドサイトーシスにより細胞内に移動し、ライソゾームで分解され、鉄の供給が低下することになる。

http://202.216.128.227/%93%A7%90%CD%95S%89%C8/03.01.htm

慢性炎症があると、IL-6の作用でヘプシジンが合成され、肝臓からの鉄の供給が低下し、小腸からの鉄の吸収を抑制し、脾臓からのマクロファージを通じての鉄供給も抑制する。

http://www.breath-design.com/?eid=1621188
鉄補給の目安としてフェリチン値とTSAT、ヘマトクリット値で考えることが一般的である。
TSAT:トランスフェリン鉄飽和率=血清鉄÷TIBC×100(%)

https://www.takamatsu.jrc.or.jp/archives/010/201311/EPO%E6%8A%B5%E6%8A%97%E6%80%A7%E8%B2%A7%E8%A1%80%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%9B%A0%E3%81%A8%E5%AF%BE%E7%AD%96.pdf


内因子:胃壁細胞によって作られる糖蛋白質で回腸末端部におけるビタミンB12の吸収に必要不可欠なものと考えられていた。
萎縮性胃炎で内因子の産生が低下り、以前的で内因子の産生がなくなると、ビタミンB12の欠乏が生じ、悪性貧血である巨赤芽球性貧血が生じる。
食餌中のビタミンB12は蛋白質と結合しており、胃酸により蛋白質が分解され、遊離する。胃内で遊離したビタミンB12は、唾液腺から分泌されたハプトコリンと結合し胃酸による分解を防いでいる。ビタミンB12とハプトコリンの結合体は、十二指腸で膵液によりハプトコリンが消化され、ビタミンB12が遊離する。これに胃で分泌された内因子と結合し、回腸末端部の腸上皮細胞に吸収される。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%85%E5%9B%A0%E5%AD%90

ビタミンB12:ビタミンB12は、身体のすべての細胞代謝に関与しており、特にDNA合成と調整に加え脂肪酸の合成とエネルギー産生に関与している。
体内のビタミンB12が葉酸(ビタミンB9)の再生産に利用されているため、多くのビタミンB12の機能は十分な量の葉酸によって代替えされる。
チミンやプリン体の合成のための十分な量の葉酸が体内に存在しない場合にはDNA合成障害を引き起こし、その葉酸欠乏症状は悪性貧血症状や巨赤芽球性貧血を引き起こすため、ほとんどのビタミンB12欠乏症状は実際には葉酸欠乏症状である。 十分な量の葉酸が利用できる場合には、メチルマロン酸(MMA)を代謝するビタミンB12依存酵素であるメチルマロニルCoAムターゼ(MUT)やホモシステインを基質としてメチオニンを合成する酵素として知られている5-メチルテトラヒドロ葉酸-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ(MTR)を助けることになり、ビタミンB12欠乏症として知られるほとんどの症状は正常化される。

テトラヒドロ葉酸(THF)による代謝とビタミンB12によるTHFの再生産、Folsäure=葉酸、DHF=ジヒドロ葉酸、THF=テトラヒドロ葉酸、Vit.B12=ビタミンB12、Methyl-Vit.B12=メチルコバラミン、Methionin=メチオニン、Methionin Syntase=5-メチルテトラヒドロ葉酸-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ、Homocystein=ホモシステイン、N5-Methyl-THF=5-メチルテトラヒドロ葉酸、N5,N10-Methylene-THF=5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸、N10-Formyl-THF=10-ホルミルテトラヒドロ葉酸、dUMP=デオキシウリジン一リン酸、NADPH、DNA
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%8E%E3%82%B3%E3%83%90%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%B3
Vitamin B12は唾液腺から分泌されるハプトコリンと結合することにより胃酸による分解を防ぎ、十二指腸で膵液によりハプトコリンが分解された後に内因子と結合して回腸終末部の絨毛から吸収される。
正常の胃機能の状態で食餌中のVitamin B12の吸収率は50%程度といわれている。
以前は内因しがないとVitamin B12は吸収されないと考えられていたが、内因子を介さない能動輸送が1%程度あり、大量のVitamin B12を内服すれば、Vitamin B12は欠乏による大球性貧血は治療可能である。

葉酸:ビタミンM、ビタミンB9、プテロイルグルタミン酸とも呼ばれ、水溶性ビタミンに分類される生理活性物質である。

葉酸は体内で還元され、ジヒドロ葉酸を経てテトラヒドロ葉酸に変換される。
テトラヒドロ葉酸、ホルミル基(-CHO)、ホルモイミノ基(-CH2NH-)、メチレン基(>CH2)、メチル基(-CH3)などの木をドナー分子から受け取り、アミノ酸や核酸合成の中間体へ渡し、アミノ酸および核酸の合成に用いられる。
葉酸の不足によりDNA合成に支障をきたし、赤血球障害や悪性貧血を生じる。
大量の飲酒により葉酸の吸収および代謝が障害される。妊娠や授乳による要求量の増加、小腸病変、リウマチ治療薬のメトトレキサートの投与により葉酸不足が生じる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%89%E9%85%B8

症例提示
Case 1:(少し遅れて参加したため情報の一部がありません)
HB 4.0、MCV 133.9、ret 20%、網状赤血球絶対量1.78万、WBC 2500、Plt 7.9万、LDH 1727、フェリチン117
大球性貧血で、網状赤血球の割合は増加しているが、絶対数が少なく、白血球数も血小板数も低下し、LDHも高く無効造血の状態である。Vitamin B12は測定感度以下で、葉酸は4.6ng/mlであった。Vitamin B12欠乏症と診断し、赤血球4パック輸血後、メチコバール1500μg内服で、WBC 5300、Plt 14.9万、MCV 104、LDH 217に改善した。
回復の反応を見るポイントとして、白血球分画のmonocyteが有用である。実際、入院当初2.0%であったものが、薬剤投与5日目に10.0%と急激に上昇し、無効造血が改善していることが確認できた。
当院でVitamin B12の内服治療を行った5例の一か月のデータの変化を下記に記載する。

注意すべき点が一点あり、Vitamin B12の補充により、潜在している鉄欠乏状態が前面に出てくることがあり、鉄の量をチェックし不足してきたら鉄の補充を補う必要がある。

Case 2:2週間前から労作時の息切れを訴え受診された72歳女性。
MCV 117、HB 6.1、RBC 147万、reti 172.2‰、絶対数25.3万、LDH 928、血沈>140mm/hr、クームス反応陽性
網状赤血球の増多を伴う大球性貧血は、急性貧血と溶血を疑う。

http://www.igaku.co.jp/pdf/resident0906-3.pdf
本症例の場合は、血沈亢進、LDH上昇、クームス反応陽性であり、自己免疫性溶血性貧血であった。

Case 3:15歳男性。最近食欲なく受診。特に運動習慣もない。
HB 6.3、MCV 57.5、フェリチン<4、血清鉄 12、上部消化管内視鏡検査で萎縮性胃炎あり。
ピロリ菌の除菌と鉄剤投与により、HBと網状赤血球数は、6.3の7.5‰が18日目には、7.3と22.4‰に、40日目には10.4と6.1‰に改善した。
若年者においても、萎縮性胃炎が原因の鉄欠乏性貧血となりうるので注意が必要である。

Case 4:81歳男性。全身痛と貧血で受診。
HB 9.7、Plt 44万、MCV 86.9、フェリチン382.0、Fe 13、CRP 11.3、血沈108mm/hr、MMP-3 718
本症例の場合には正球性の慢性炎症に伴う貧血であり、検査の結果原因疾患は、リウマチ性多発筋痛症であった。
 

http://www.igaku.co.jp/pdf/resident0906-3.pdf

Case 5:52歳男性。潰瘍性大腸炎に伴う貧血と慢性肝炎があり、謀院外来で定期的に、メチコバール、ネオミノファーゲンC、フェジンの点滴投与が行われていた。3年経過し腹囲の増加を認め、4年目に糖尿病の発症を認めた。
来院時、HB 12.5、MCV 95.1、AST 52、ALT 62、フェリチン19680と異常高値を認めた。
画像検査で下垂体や膵臓に鉄の沈着を認め、鉄のキレート剤の皮下注射を行うことになった。
鉄は体外に排出する手段がないため、漫然と投与することは非常に危険である。最近慢性肝炎の食事療法でも、肝癌の発症を危惧するため、鉄フリーの食事となっている所が多くなっている。

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2014年1月 8日 水曜日

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