血液系

2015年5月 7日 木曜日

腎性貧血の診断と治療 白井小百合 先生

2015年4月27日 TKP横浜駅西口カンファレンスセンター
演題「腎性貧血の診断と治療」
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 腎臓・高血圧内科副部長 白井小百合 先生
内容及び補足「
腎臓病の進行に伴い貧血を発症するが、貧血自体も腎機能を進行させる。また、心疾患の進行とともに貧血が認められるようになり、貧血自体も心機能を悪化させる。
Silverbergらは、心臓疾患、腎疾患、貧血の三つの病態を合併している患者が多く、それぞれが双方向性に悪影響を及ぼしていることを報告し、心腎貧血症候群Cardio-renal anemia syndromeという概念を提唱した。

http://www.monolis.com/publics/index/216/
ESKDという見方を入れると下図のような関係となる。

604人の成人男性で慢性腎不全患者の早期合併症を検討した研究で、腎機能の悪化とヘマトクリット値の低下に強い相関が認められた。腎機能低下が軽度の状態では、貧血は認められていないが、腎機能の低下とともに出現した。(Am J Kidney Dis 2001 38 803)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11576884

急性心筋梗塞で入院した患者の予後を見てみると、CKDが存在したり、ヘマトクリット値が低下したりするほど予後が悪かった。


http://www.nature.com/ki/journal/v64/n4/full/4494033a.html
一般住民28000人を対象とした疫学調査で、CKD患者2333例の予後を見てみると、心電図で左室肥大があると1.43倍、ヘマトクリットが女性で36%未満、男性で39%未満の貧血があると1.48倍、両方が重なると4.15倍の危険度となることが示された。

http://jasn.asnjournals.org/content/16/6/1803.full.pdf

腎性貧血の治療薬であるエリスロポイエチンを週一回6000単位、あるいは2週に一回12000単位を皮下注射すると、貧血の改善だけでなく腎不全の進行を抑えられることが分かった。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9346384

エリスロポエチンは、分子量約34000で165個のアミノ酸からできている、赤血球産生を促進するホルモンである。

9:1の割合で腎臓で主に作られ、補助的に肝臓でも作られる。
腎では尿細管間質細胞で合成されている。
エリスロポエチンの産生は、血液中の酸素分圧により調節されており、低酸素応答転写因子であるHIF:hypocia inducible factorにより調節されている。
HIFは酸素濃度が高い時には分解される。低酸素の時には核内に移行して、エリスロポエチン転写を促進する。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%AD%E3%83%9D%E3%82%A8%E3%83%81%E3%83%B3
腎性貧血はエリスロポエチン産生細胞の機能低下ではなく、HIF活性低下であるといわれている。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20939709

4760例のHBの濃度で11g/dL未満、11-13g/dL、13g/dLを超える三群に分けた時、13以下となると腎機能障害症例の頻度は上昇する。

腎機能で語群に分けた際には貧血が存在していても、Creatine Clealanceが60未満の群ではややエリスロポエチン濃度の上昇がみられるが、40未満の群では、もはやエリスロポエチン濃度の上昇は見られなくなる。


エリスロポエチン濃度は個人差が強く、高度腎不全症例では、HB値との相関もないので、エリスロポエチン測定の意義が少なくなってくる。
Cr<40の症例では腎性貧血は、ほぼ必発であり、エリスロポエチン濃度の測定意義も少ないため、腎性貧血治療のために、エリスロポエチン濃度を測定しないで、エリスロポエチン投与を行ってもよいと考えられている。

http://www.nature.com/ki/journal/v66/n3/full/4494731a.html

腎性貧血の治療目標値であるが、2004年のKDOQIガイドラインの目標は2006年に改訂され治療のHb上限値がなくなった(ただし,13g/dL以上に維持することを推奨する根拠はないと記載されている)。
2009年にヘモグロビン値が12以上に増加させることに臨床的意義は少ないとの解析結果が報告された。
http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=415147

日本においては、2004年のガイドライン発行以前の目標Hb値は10g/dL前後であった。
その後、2008年の日本透析医学会が出した『慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン』によると
HD患者:ESA療法の目標値は、週初め(前透析中2日後)のHD前の仰臥位採血による値で① Hb値10~11g/dLを推奨する(12g/dLを超える場合には、減量・休薬基準とする)。
② ESAの投与開始基準は、腎性貧血と診断され、複数回の検査でHb値10g/dL未満となった時点とする。
③ 活動性の高い比較的若年者では目標Hb値11~12g/dLを推奨する(13g/dLを超える場合には、減量・休薬基準とする)。また、ESAの投与開始基準は、複数回の検査でHb値11g/dL未満となった時点とする。
PD患者およびND患者:
①  PD患者及びND患者に対するESA療法の目標Hb値11g/dL以上を推奨する(13g/dLを超える場合には、減量・休薬基準とする)。
② ESAの投与開始基準は、腎性貧血と診断され、複数回の検査でHb値11g/dL未満となった時点とする。
②  ただし、重篤な心・血管系疾患の既往や合併のある患者、あるいは医学的に必要のある患者には12g/dLを超える場合に、減量・休薬を考慮する)。
となっている。
(透析会誌41(10):661〜716,2008)

2015年の『新しい腎性貧血治療ガイドラインを目指して』6月20日から25日にかけて福岡市国際センターで日本透析医学会学術集会・総会が開催され、いろいろなことが検討される。
http://www.igaku.co.jp/pdf/1311_tonyobyo-2.pdf

2007年に大規模試験であるCHOIR(correction of hemoglobin and outcomes in renal insufficiency)試験とCREATE(cardiovascular risk reduction by early anemia treatment with epoetin beta)試験の結果が報告された。
CHOIR試験では、脂肪、心筋梗塞、心不全による入院、脳卒中の複合endpoint発生率が、目標Hb高値群で有意に高く、中間解析で両群間の差が見られたために試験が早期終了となった。
CREATE試験ではLVMIの変化率において両群間に差を認めず、CVD発症率にも差がなく、CVD抑制に関するHb正常化のメリットは見られなかった。

http://www.nmckk.jp/pdf.php?mode=puball&category=JJCD&vol=24&no=1&d1=4&d2=.
27の臨床試験のデータをメタ解析した2010年の報告では、治療目標が高値の群で、脳卒中が1.51倍、高血圧が1.67倍、vascular access thrombosisが1.33倍と有意に高値であった。

http://annals.org/article.aspx?articleid=745861

(透析会誌41(10):661〜716,2008)
赤血球造血刺激因子製剤ESAには、人体内で産生されるエリスロポエチンと若干の糖鎖が異なるのみのほぼ同じ構造のものであるEPO製剤(エポエチンα:エスポーとエポエチンβ:エポジン)と、エリスロポエチンレセプターに作用して赤血球造血刺激を行うESA(erythropoiesis stimulating agent)製剤(エポエチンβペルゴ:ミルセラとダルポエチンα:ネスプ)がある。
EPO製剤(エスポー、エポジン):αとβでは、糖鎖の違いのみで効果に差はなく、エポエチンβは天然のエリスロポエチンと同じ構造である。
半減期が7~9時間と短く、透析後に毎回投与される。
副作用として、高血圧、脳梗塞、肝機能障害、アナフィラキシーショック、心筋梗塞などがあり、Hb値が高くなり過ぎないように気をつける必要がある。
ダルボポエチンα(ネスプ):エポエチンαのアミノ酸の一部を変更し、活性に重要な役割を果たす新たな糖鎖を負荷させたものがダルボポエチンαで、血中半減期が25時間と延長され、透析患者への投与が週一回となった。
エポエチンβペゴル(ミルセラ):エポエチンβの直鎖メトキシポリエチレングリコール分子を負荷したことにより、血中半減期が168~217時間と延長し2~4週間に一回投与で済むようになった。
http://cetaka.com/epo/

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2015年5月 7日 木曜日

貧血データをどう読むか 奈良典子 先生

2015年4月27日 TKP横浜駅西口カンファレンスセンター
演題「貧血データをどう読むか ~貧血の鑑別診断~」
演者:横浜市立大学附属市民総合医療センター 総合診療科 奈良典子 先生
内容及び補足「
貧血に関連する因子の基礎情報
鉄:成人の体内鉄量3~4g。そのうち2/3がヘム鉄(ヘモグロビン鉄2.3g+ミオグロビン鉄0.14g)、残りの1gが貯蔵鉄(フェリチン0.5g+ヘモジデリン0.5g)。

Fe2+は水溶性、Fe3+は難溶性なので、Fe2+の方が吸収されやすい。ヘム鉄やアミノ酸鉄などのキレート状の鉄は吸収が容易。
鉄は摂取量の10%程度しか吸収されない。小腸の上皮中ではフェリチンと結合して鉄が存在し、血清中のトランスフェリンに鉄を受け渡すが、トランスフェリンが飽和するとそれ以上の受け渡しができなくなる。受け渡しができなくなった結果として鉄が飽和した状態の腸上皮は脱落し、過剰な鉄の吸収がされないように制御されている。
ビタミンCは鉄の吸収を促進し、肉に含まれるヘム鉄は食物中の向き鉄よりも効率よく吸収される。
アルコールやフルクトースは鉄の吸収を促進するが、カルシウムは鉄の吸収を阻害する。
http://meddic.jp/%E3%82%A2%E3%83%9D%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%83%81%E3%83%B3

トランスフェリン:トランフェリンは鉄イオンと結合し輸送を担う血漿タンパクで、掃除した二つのドメインからなる糖蛋白質で、それぞれに三価の鉄イオン結合部位が一個ずつある。通常は、血漿中の鉄分の三倍量を結合しうる量が存在し、血漿中の鉄のほとんどはトランスフェリンに結合しているが、体内全鉄量の0.1%であり、鉄貯蔵の役割はない。
各細胞の表面にトランスフェリン受容体があり、トランスフェリンが結合するとエンドサイトーシスにより、被覆小胞に包まれ細胞内に輸送される。細胞のH+-ATPaseによって小胞内のpHが低下すると、トランスフェリンの鉄親和性が低下し、鉄イオンを放出する。
鉄を放出した後、トランスフェリンと受容体は結合したまま細胞表面に再輸送され、エクソサイトーシスにより、次の鉄の取り込みに備えることになる。
トランスフェリンは鉄イオンを非常に強く結合するため、遊離の鉄分を吸収することで細菌に対して抗菌作用を示す。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%83%B3

フェリチン:血清フェリチンはFe3+とアポフェリチンが結合した可溶性鉄貯蔵蛋白である。
生体内において鉄はフリーラジカルの産生を促進するため有害であり、即座に無害化して貯蔵しようと反応するその主要物質である。アポフェリチンは鉄の解毒代謝にかかわるH鎖と鉄貯蔵にかかわるL鎖からなる24この座部ユニットで構成されている、内部に鉄を貯蔵できる中空部分を持つ巨大分子である。

ウマ脾臓由来アポフェリチンの結晶。 無機結晶と同様に、駆動力に伴って骸晶化し、デンドライト状にも変化する。右上はアポフェリチン分子24量体の立体構造。右下は干渉計による蛋白質結晶成長時の濃度変化計測。(PDBデータ1AEW)
アポフェチリンとは体内で鉄を貯蔵するタンパク質の代表的 なもの。腸粘膜、肝臓、脾臓、骨髄、網内系細胞などに存在する。鉄と結合したものがフェリチンという。腸粘膜のアポフェリチンは鉄の吸収に関与するとされている。
http://www.isas.jaxa.jp/j/forefront/2004/yoda/index.shtml
血清フェリチン値1ng/mlは貯蔵鉄8㎎に相当する。

http://www.city.fukuoka.med.or.jp/kensa/ensinbunri/enshin_5_x.pdf

鉄の動態:積極的な鉄の排泄機構はなく、体内で繰り返し再利用される。
骨髄で摂家球の産生に必要な鉄を末梢血から取り込む。赤血球は通常120日で老化し、肝臓や脾臓のもう内径マクロファージに補足貪食される。貪食した赤血球中の鉄をマクロファージはヘモグロビンからフェリチンに移行させ貯蔵する。また、貯蔵した鉄をマクロファージは末梢血に提供し続け、赤血球合成に利用される。
通常は網内系マクロファージが主な鉄の供給源であり、肝臓は鉄欠乏の状態の際に供給している。その際フェロポーティンという缶細胞膜に存在するたんぱく質を介して末梢血に供給される。
鉄が過剰に存在する場合や、持続性の炎症が存在する場合、エリスロポイエチン欠乏などにより骨髄機能が低下している場合に、肝臓でヘプシジンが産生される。
ヘプシジンはフェロポーティンと結合する。この複合体は、エンドサイトーシスにより細胞内に移動し、ライソゾームで分解され、鉄の供給が低下することになる。

http://202.216.128.227/%93%A7%90%CD%95S%89%C8/03.01.htm

慢性炎症があると、IL-6の作用でヘプシジンが合成され、肝臓からの鉄の供給が低下し、小腸からの鉄の吸収を抑制し、脾臓からのマクロファージを通じての鉄供給も抑制する。

http://www.breath-design.com/?eid=1621188
鉄補給の目安としてフェリチン値とTSAT、ヘマトクリット値で考えることが一般的である。
TSAT:トランスフェリン鉄飽和率=血清鉄÷TIBC×100(%)

https://www.takamatsu.jrc.or.jp/archives/010/201311/EPO%E6%8A%B5%E6%8A%97%E6%80%A7%E8%B2%A7%E8%A1%80%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%9B%A0%E3%81%A8%E5%AF%BE%E7%AD%96.pdf


内因子:胃壁細胞によって作られる糖蛋白質で回腸末端部におけるビタミンB12の吸収に必要不可欠なものと考えられていた。
萎縮性胃炎で内因子の産生が低下り、以前的で内因子の産生がなくなると、ビタミンB12の欠乏が生じ、悪性貧血である巨赤芽球性貧血が生じる。
食餌中のビタミンB12は蛋白質と結合しており、胃酸により蛋白質が分解され、遊離する。胃内で遊離したビタミンB12は、唾液腺から分泌されたハプトコリンと結合し胃酸による分解を防いでいる。ビタミンB12とハプトコリンの結合体は、十二指腸で膵液によりハプトコリンが消化され、ビタミンB12が遊離する。これに胃で分泌された内因子と結合し、回腸末端部の腸上皮細胞に吸収される。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%85%E5%9B%A0%E5%AD%90

ビタミンB12:ビタミンB12は、身体のすべての細胞代謝に関与しており、特にDNA合成と調整に加え脂肪酸の合成とエネルギー産生に関与している。
体内のビタミンB12が葉酸(ビタミンB9)の再生産に利用されているため、多くのビタミンB12の機能は十分な量の葉酸によって代替えされる。
チミンやプリン体の合成のための十分な量の葉酸が体内に存在しない場合にはDNA合成障害を引き起こし、その葉酸欠乏症状は悪性貧血症状や巨赤芽球性貧血を引き起こすため、ほとんどのビタミンB12欠乏症状は実際には葉酸欠乏症状である。 十分な量の葉酸が利用できる場合には、メチルマロン酸(MMA)を代謝するビタミンB12依存酵素であるメチルマロニルCoAムターゼ(MUT)やホモシステインを基質としてメチオニンを合成する酵素として知られている5-メチルテトラヒドロ葉酸-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ(MTR)を助けることになり、ビタミンB12欠乏症として知られるほとんどの症状は正常化される。

テトラヒドロ葉酸(THF)による代謝とビタミンB12によるTHFの再生産、Folsäure=葉酸、DHF=ジヒドロ葉酸、THF=テトラヒドロ葉酸、Vit.B12=ビタミンB12、Methyl-Vit.B12=メチルコバラミン、Methionin=メチオニン、Methionin Syntase=5-メチルテトラヒドロ葉酸-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ、Homocystein=ホモシステイン、N5-Methyl-THF=5-メチルテトラヒドロ葉酸、N5,N10-Methylene-THF=5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸、N10-Formyl-THF=10-ホルミルテトラヒドロ葉酸、dUMP=デオキシウリジン一リン酸、NADPH、DNA
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%8E%E3%82%B3%E3%83%90%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%B3
Vitamin B12は唾液腺から分泌されるハプトコリンと結合することにより胃酸による分解を防ぎ、十二指腸で膵液によりハプトコリンが分解された後に内因子と結合して回腸終末部の絨毛から吸収される。
正常の胃機能の状態で食餌中のVitamin B12の吸収率は50%程度といわれている。
以前は内因しがないとVitamin B12は吸収されないと考えられていたが、内因子を介さない能動輸送が1%程度あり、大量のVitamin B12を内服すれば、Vitamin B12は欠乏による大球性貧血は治療可能である。

葉酸:ビタミンM、ビタミンB9、プテロイルグルタミン酸とも呼ばれ、水溶性ビタミンに分類される生理活性物質である。

葉酸は体内で還元され、ジヒドロ葉酸を経てテトラヒドロ葉酸に変換される。
テトラヒドロ葉酸、ホルミル基(-CHO)、ホルモイミノ基(-CH2NH-)、メチレン基(>CH2)、メチル基(-CH3)などの木をドナー分子から受け取り、アミノ酸や核酸合成の中間体へ渡し、アミノ酸および核酸の合成に用いられる。
葉酸の不足によりDNA合成に支障をきたし、赤血球障害や悪性貧血を生じる。
大量の飲酒により葉酸の吸収および代謝が障害される。妊娠や授乳による要求量の増加、小腸病変、リウマチ治療薬のメトトレキサートの投与により葉酸不足が生じる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%89%E9%85%B8

症例提示
Case 1:(少し遅れて参加したため情報の一部がありません)
HB 4.0、MCV 133.9、ret 20%、網状赤血球絶対量1.78万、WBC 2500、Plt 7.9万、LDH 1727、フェリチン117
大球性貧血で、網状赤血球の割合は増加しているが、絶対数が少なく、白血球数も血小板数も低下し、LDHも高く無効造血の状態である。Vitamin B12は測定感度以下で、葉酸は4.6ng/mlであった。Vitamin B12欠乏症と診断し、赤血球4パック輸血後、メチコバール1500μg内服で、WBC 5300、Plt 14.9万、MCV 104、LDH 217に改善した。
回復の反応を見るポイントとして、白血球分画のmonocyteが有用である。実際、入院当初2.0%であったものが、薬剤投与5日目に10.0%と急激に上昇し、無効造血が改善していることが確認できた。
当院でVitamin B12の内服治療を行った5例の一か月のデータの変化を下記に記載する。

注意すべき点が一点あり、Vitamin B12の補充により、潜在している鉄欠乏状態が前面に出てくることがあり、鉄の量をチェックし不足してきたら鉄の補充を補う必要がある。

Case 2:2週間前から労作時の息切れを訴え受診された72歳女性。
MCV 117、HB 6.1、RBC 147万、reti 172.2‰、絶対数25.3万、LDH 928、血沈>140mm/hr、クームス反応陽性
網状赤血球の増多を伴う大球性貧血は、急性貧血と溶血を疑う。

http://www.igaku.co.jp/pdf/resident0906-3.pdf
本症例の場合は、血沈亢進、LDH上昇、クームス反応陽性であり、自己免疫性溶血性貧血であった。

Case 3:15歳男性。最近食欲なく受診。特に運動習慣もない。
HB 6.3、MCV 57.5、フェリチン<4、血清鉄 12、上部消化管内視鏡検査で萎縮性胃炎あり。
ピロリ菌の除菌と鉄剤投与により、HBと網状赤血球数は、6.3の7.5‰が18日目には、7.3と22.4‰に、40日目には10.4と6.1‰に改善した。
若年者においても、萎縮性胃炎が原因の鉄欠乏性貧血となりうるので注意が必要である。

Case 4:81歳男性。全身痛と貧血で受診。
HB 9.7、Plt 44万、MCV 86.9、フェリチン382.0、Fe 13、CRP 11.3、血沈108mm/hr、MMP-3 718
本症例の場合には正球性の慢性炎症に伴う貧血であり、検査の結果原因疾患は、リウマチ性多発筋痛症であった。
 

http://www.igaku.co.jp/pdf/resident0906-3.pdf

Case 5:52歳男性。潰瘍性大腸炎に伴う貧血と慢性肝炎があり、謀院外来で定期的に、メチコバール、ネオミノファーゲンC、フェジンの点滴投与が行われていた。3年経過し腹囲の増加を認め、4年目に糖尿病の発症を認めた。
来院時、HB 12.5、MCV 95.1、AST 52、ALT 62、フェリチン19680と異常高値を認めた。
画像検査で下垂体や膵臓に鉄の沈着を認め、鉄のキレート剤の皮下注射を行うことになった。
鉄は体外に排出する手段がないため、漫然と投与することは非常に危険である。最近慢性肝炎の食事療法でも、肝癌の発症を危惧するため、鉄フリーの食事となっている所が多くなっている。

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