呼吸器系

2018年10月 9日 火曜日

肺癌を見落とさないための読影 関順彦先生

2018年10月6日 
演題「肺癌を見落とさないための胸部X線の読影力とは!? ~意識改革から系統読影法の習得まで~」
演者: 帝京大学医学部附属病院 内科学講座 腫瘍内科教授 関順彦先生
内容及び補足「
お断り:関先生の素晴らしい講演内容を再現するためのレントゲン写真が手元にありませんので、講義の趣旨をできるだけ表現できるような似た画像を用いて、講演内容を再現しようと試みましたが、不十分である点ご了解ください。本記載の中で使用した写真のほとんどがhttp://nagasawanorio.cocolog-nifty.com/blog/
によっています。レントゲンの読影の理解において素晴らしいサイトですので、時間があるときにぜひ精読してください。

もう一歩上級を目指す胸部X線診断は腫瘤影を探してみても見えない肺癌を読み取ることであり、腫瘤影の存在を探すのではなく、腫瘤が存在することによる付属所見を見つけることである。漫然と見ていても、自然と目に入ってくる所見ではなく、こちらから存在することが異常であるとの認識で付属所見を探しに行くことが必要である。
当然のことであるが、系統的読影法を身に付けておく必要がある。
そして変化部位を探すことが必要で、そのためには、比較読影が必要である。
いつも見慣れているビールのラベルでも、過去からは変化している。その変化を今見ているビールのラベルで想像することは困難であるが、過去のものと比較すると指摘することは容易である。例えば、1998年のものと比べると内側の輪状に書かれている時が赤から変わっていることがわかる。


レントゲンでも同様であるが、以前の写真があれば、その比較が簡単にできるが、以前の写真がない場合には、比較ができない。そのため、自分の頭の中に比較のための受け皿を作っておく必要がある。
正常構造と異常構造の区別が必要であり、正常のバリエーションを見極めることが、読影診断までの余分な時間を省くためにも必要となる。
その判断根拠は、言葉で説明できない。
下の写真を見て日本人女性はどの写真家を判断してみてほしい。


5段目の左から3番目の写真である。そういわれると、日本人だと納得できる。
逆に上の段の写真を見て、日本人だと思われることはないはずだ。
なぜと言われても、言葉では説明できないが、日本人女性を絶えず見てきていると、瞬時に判断することができるはずである。
レントゲン写真も同じである。
 
そのためには正常とCTで診断された百枚のレントゲンを細かく所見を見ていき、単純写真で異常所見かもと疑った部位をCT画像で確認し、どうして異常所見と判断したかを確認していけば、正常のバリエーションか異常かの判断ができるようになると信じている。

高速でレントゲン写真の異常を見つけるためには、どうすればよいか?
1. 既存構造の認識をもとにした比較読影が必要
2. 既存構造が元画像であり、自分の脳に受け皿を作る必要がある
3. 自分なりの比較読影を行い修練の結果として頭が意識せずとも梗塞で行ってくれる状態

既存構造を習得する必要がある。
そのためには、『この部位は通常はこうであるべきであり、こうではいけない』という認識を持って種々の部位を確認していくことが必要。
肺はどこまで広がっているのか?
肺の広がりの端に線状構造がレントゲンで観察される。
レントゲンみられる成城の線条陰影には以下のものがある。
1. 右傍気管支線
2. 後接合線(後縦隔線)
3. 前接合線(前縦隔線)
4. 傍大動脈線
5. 奇静脈食道線
これらの線の連続性を確認することが重要である。途切れている場合には、辺縁が確認できない何かの陰影が重なっていると考える。上下を二本の指でかくして上から下に移動しながら、指の間に線が連続して存在しているかを確かめる方法をおすすめする。

1、 前接合線
胸骨後部の両側肺が接する部位で胸骨柄直下のレベルから始まり、通常はほぼ正中からやや左下方に走行し4~5cm連続した線状影として見られる。この線の異常な拡大、変形は前縦隔の異常(胸腺腫など)を示唆する所見だが、むしろ左右に不対称な突出像が異常を示すことの方が多い
2、後接合線
胸椎の直前で両側肺後部が接することによって作られる線状影(通常気管と重なるので気管の透亮像のほぼ中央に走行する)で、胸郭入り口近傍の高さから始まり、奇静脈弓及び大動脈弓部の上部までの間。後部縦隔に発生する神経原性腫瘍、リンパ節腫大の場合は偏位、変形
3、右気管傍線
鎖骨の高さから右上葉気管支上縁の高さまで(奇静脈が上大静脈へ流入する部位より上方)の気管右壁が線状影として描出される。右肺がこの部分で気管右壁に接するためである。  この白い線条が消失して認められない時に、気管傍リンパ節腫大や縦隔腫瘍、胸膜病変、肺腫瘍などを疑う。
4、右食道傍線・奇静脈食道線 
気管分岐部から左下方にやや斜めに走る線で、上端は奇静脈弓に達する。奇静脈食道陥凹部(気管分岐部より下方では右上葉の一部が、心臓後方と椎体前方を椎体を乗り越えるように入り込んでいる)の左端は奇静脈と食道右壁または後方の縦隔に接しているから。    この線の異常は同部のリンパ節腫大や、肺病変、食道腫瘤病変に見られる。
 5、大動脈肺動脈窓
縦隔の一部分で上縁が大動脈弓下縁、下縁は左肺動脈上縁、内側は左気管支および気管、外側は縦隔胸膜で囲まれた部位。このA-Pwindow内には動脈管索、左反回神経、大動脈下(ボタロー)リンパ節、上行大動脈リンパ節などが脂肪に包まれて存在する。
 6、大動脈肺動脈線
大動脈弓部からやや外側に斜走する辺縁で、肺縦隔境界面を表す。A―Pwindowのやや前方で上行大動脈の外側縁を表す線状影。この肺縦隔境界線の膨隆は、肺動脈円錐の拡大や上行大動脈リンパ節の腫大などを示唆する。
 7、傍大動脈線
下行大動脈の左縁と左下葉が接して形成される線。動脈瘤や神経原性腫瘍でシルエットが消失する。
 8、左脊椎傍線
下行大動脈の後方で、肺が胸椎の椎体側縁に接して生ずる線。(胸椎と下行大動脈の間に脂肪組織が存在するため形成される)胸椎撮影では全例に描出され、臨床的に重要である。リンパ節腫大や後部縦隔発生の腫瘍の存在診断に役立つ。

http://etrt.sakura.ne.jp/02ikc.htm

異常を疑ったら、CTでその疑いの部分の陰影を確認し、自分には異状と思われた理由を確認していくとレントゲンの読影力は格段に上達する。

肺癌の進展様式を念頭において読影することも大切である。末梢型と中枢型で異なる。
末梢型
1. 肺胞上皮置換型:細気管支肺胞上皮癌、非常に淡い限局性:スリガラス様Grand Glass Opacity:GGO
2. 肺胞虚脱線維化型:胸膜陥入像(末梢性収束:Tumor Track Sign)あり・・・下肺野の血管末梢の濃度上昇はおかしい、高分化腺癌、一部の扁平上皮癌
3. 肺胞上皮非置換型:二次性無気肺、低分化腺癌、気管支・血管の圧排、扁平上皮癌、大細胞間、小細胞癌

中枢型
1. 表層浸潤型:結節浸潤影、肺炎、無気肺が見られないと診断困難。
2. 無気肺:癌による無気肺は肺のVolume現症がみられる
3. 腫瘤
しかしこれらの陰影が肺門陰影と重なると腫瘍の辺縁が確認困難となる。
陰影の所見としては、
直接所見
1. 葉間の変位
2. 気管支・血管の収束
間接所見
1. 肺の透過性低下
2. 残存肺の代償性過膨張
3. 横隔膜の拳上
4. 縦隔影の患側変位
5. 肺門の変位
6. 肋間の狭小化
7. 脊椎側弯
8. 肺尖の低下
9. 気管支分岐の変位(主気管支からの分岐:右気管支20度左気管支40度)

これらの知識を念頭に置き系統読影法を行っていく。
以下の各線状影を念頭において読影する。

自分(関先生)の読影の仕方としては、関心のない領域からみることにしている。したがって肺野の所見は、出来るだけ最初の方では見ないようにしている。所見があっても無視して、いつもの読影順番でチェックをするように心がけている。
1. 胸膜や横隔膜の辺縁を追いかけていく。

2. 鎖骨、胸骨、肋骨の辺縁を確認し、肋骨に左右差がないかを確認していく。

読影が終わった後目をつむって下図のような肋骨の像が頭に浮かんだら、キチンと読影できたと判断している。

3. 縦隔影をチェクする。右の1、2弓、左の1、2、3、4弓のラインが確認できるかどうか、位置としての異常がないかどうか、心胸比の拡大がないかどうか、心陰影に重なっているものがないかどうか、心臓の変異がないかどうかを確認する。

4. 気管・気管支、大動脈、肺動脈や縦隔線を確認していく。この際シルエットサインにも注意して診ていく。

5. そしてやっと肺や陰影を見ていくことになる。

6. 最後に、全体的に見落としがないかを再度確認しながら診なおす。この際、左右の比較をすることも大事であるが、ろっ骨と重なっている場所と重なっていない場所での濃度差にも注意して診ていく。

当然撮影条件や患者の状態を確認しておくことも必要である。横隔膜の直下の胃泡と左下肺野の境界の陰影は5mm以内であり、それよりも厚い場合には、何かの陰影が追加されていると考えるべきである。
読影上見落としやすいレントゲン部位は、正常構造で重なりがある部分であり、そういう場、異常があるものだと思って読影することも必要である。

佐藤雅史先生が提唱している『小三J読影法』もおすすめである。


佐藤功先生の集団検診の見落とし例49例の検討では以下のような部位で認められており右55%、左45%であった。また、既存構造との重なりが82%であった。


栗山啓子先生は見落としやすい肺癌存在部位を以下のように指摘している。


河野通雄先生は、肺癌読影が困難となった病変の重なっている構造を検討し、肋骨が29%、血管22%、肺門16%、肋軟骨14%、他の肺病変14%、撮影不良6%としている。(臨床放射線30: 945- 949, 1985.)

つまり病変が既存構造と重なると、極端に病変の輪郭は見えにくくなるので、病変の輪郭は探してはいけない。
病変に付随する所見を探し、本体の圧排を想像して読影する。
1. 今日壁側、縦隔足の変化を探そう
2. 肋骨の濃淡、左右差を探そう
3. 縦隔、大動脈、心陰影の線の途絶を探そう
4. 気管・気管支、肺門部の濃淡、葉間線の変化を探そう。葉間胸膜は上に凸であり、一部下に陥凹していれば、何かに引き込まれているはずである。

コニカミノルタの新胸部CAD処理としてBone Suppression画像処理ができるようになった。
Bone Suppression処理:CRおよびFPDで取得した画像に対して、前方肋骨、後方肋骨、および鎖骨の信号を減弱する。特殊な機器や撮影は必要なく、従来通り撮影した画像に対して画像処理技術により、骨の減弱像を生成することができる。
本処理は、解剖学的な情報・知識を利用した高度なアルゴリズムにより、肋骨上に位置する淡い病変を肋骨と誤認識せず、肋骨に起因する信号変化のみを減弱する。肋骨に重なる異常陰影や血管などの微細構造の信号は、オリジナル画像の情報をそのまま残すことで、病変の視認性を改善することができる。本処理は結節の読影や間質性肺疾患の読影、気胸の確認等、幅広く利用することができ胸部読影の診断を強力にサポートできる技術である。


http://www.innervision.co.jp/sp/expo/products/konicaminolta_xray_bone-suppression

参:胸部X線写真の表現用語集 
 


胸部単純レントゲン上の所見として、孤立陰影の性状は以下のような所見となる。

個々の病型ごとに病変の進展形式を加味して所見を見てみると下記のようになる。


肺結核腫と肺癌のレントゲンは以下のように映り方に差がわかることもある。

左:結核腫 vs 右:肺がん

肺野の肺がんの特徴をまとめると以下のようになる。

参:肺結核病巣の経時的変化

参:実際の読影http://nagasawanorio.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-b52f.html

まずは大まかなチェックポイントは以下の点である。

読影する際に、さらに詳細に読影していくことになる。

最低限の読影項目とされているものを掻き出すと下のようになる。

http://nagasawanorio.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-b52f.html

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2017年9月19日 火曜日

肺癌の新しい治療(免疫チェックポイント阻害薬) 西野誠先生

2017年9月15日 
演題「肺癌の新しい治療 免疫チェックポイント阻害薬を学ぶ」
演者:けいゆう病院 呼吸器内科 西野 誠 先生
場所:けいゆう病院
内容及び補足「
今までのがんの治療法としては、手術療法、放射線療法、抗がん剤などによる化学療法・分子標的療法というがん細胞に直接働きかけをする治療法が行われてきたが、がん細胞の排除する免疫システムに働きかけるがん免疫療法が近年行われるようになってきた。

治療効果の特徴としては、分子標的治療は早期に効果が得られるが、がん免疫療法は継続した長期生存が期待できる治療法である。


健康な人の身体に1日約5000個のがん細胞が生じ、自身の免疫により排除していると考えられている。

免疫力の低下や、がん細胞が免疫を抑制することにより、がん細胞を異物として認識できなくなったり、排除しきれなくなってがん細胞が増殖して、がんになる。


免疫細胞は、白血球と白血球に情報を提供する樹状細胞がある。


2017年2月時点でがんの診療ガイドライン*に記載されて標準治療となっている治療法は、以下の表にある「1)がん細胞がかけた免疫のブレーキを解除する」方法と「2)体内の免疫を強める(アクセルを強める)」方法の一部に限られる。
がんの診療ガイドライン*:
日本肺癌学会編:EBMの手法による 肺癌診療ガイドライン 2016年版 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む;金原出版
日本皮膚科学会編:皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版;日本皮膚科学会雑誌,2015;125(1):35-48
日本皮膚科学会、日本皮膚悪性腫瘍学会編:科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版(2015年);金原出版
日本泌尿器科学会編:腎癌診療ガイドライン 2011年版(第2版);金原出版
日本泌尿器科学会編:膀胱癌診療ガイドライン 2015年版;医学図書出版
日本臨床腫瘍学会編:がん免疫療法ガイドライン 2016年版;金原出版



1. 免疫抑制阻害療法:免疫により異物を体から排除しているが、免疫が強くなり過ぎると自己免疫疾患やアレルギー疾患になるため、免疫反応を抑制する機構がある。この機構を利用してがん細胞が免疫による環指から逃れていることが判明した、がん細胞は、細胞表面にタンパク質でできたアンテナを出して、免疫細胞の表面にある異物を攻撃せよという命令を受け取る蛋白質『免疫チェックポイント』に結合し、『免疫を抑制せよ』という偽のシグナルを出してがん細胞を攻撃させないようにしている。この『免疫チェックポイント』にがん細胞が結合できなくする『免疫チェックポイント阻害薬』が開発された。免疫チェックポイントは、PD-1やCTLA-4いくつかの種類がある。
がん細胞はPD-L1というアンテナを出して、がんを攻撃するT細胞にあるPD-1と呼ばれる受容体に結合し、T細胞の攻撃から逃れている。逆に、PD-1受容体をふさいでPD-L1が結合できないようにすれば、がん細胞がT細胞の攻撃にブレーキを掛けられないようにできる。そこでPD-1抗体を作成して働きが弱くなったT細胞を再び活性化してがん細胞が増えるのを食い止めることができると考えられている。



参:PD-1/PD-L1チェックポイント・シグナル伝達
ヒトを含む動物には「Cancer Immunity Cycle(がん免疫サイクル)」と呼ばれる癌に対する自然防御システムがある(Immunity 2013 Jul 25;39(1):1-10)。

このシステムは次のように正常に働いている限り、発生したがん細胞は死に至ることになる。
1. 腫瘍細胞に発現している変異抗原を樹状細胞が認識する。
2. 樹状細胞は認識した抗原をT細胞に提示し、その結果細胞障害性T細胞が活性化される。
3. 活性化した細胞障害性T細胞が腫瘍細胞へと遊走し、腫瘍微小循環へ浸潤する。
4. 活性化したT細胞が腫瘍細胞を認識し結合する。
5. 結合したエフェクターT細胞がサイトトキシン(細胞毒)を放出し、腫瘍細胞にアポトーシスを引き起こす。
アポトーシス誘導された腫瘍細胞は腫瘍関連抗原(TAA)をさらに放出し、がん免疫サイクルをさらに推し進める。


T細胞の活性化は、亢進と抑制のシグナル双方により制御されている。亢進の刺激が過剰になると正常組織への攻撃による慢性自己免疫疾患が引き起こされる。T細胞受容体が樹状細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞(APC)表面にある抗原を認識するとT細胞が応答し、APCとT細胞がお互いに刺激し合い、その結果としてT細胞が完全に活性化される。
PD-1(programmed cell death-1)受容体(別名:CD279)は活性化T細胞の表現に発現する。一方PD-1のリガンドであるPD-L1(別名:B7-H1、CD274)およびPD-L2(別名:B7-DC、CD273)は、通常抗原提示細胞の表面上に発現する。PD-1、PD-L1およびPD-L2は、T細胞応答を抑制もしくは停止させる共同抑制因子として働く、免疫チェックポイント・蛋白質である。腫瘍細胞に対する免疫システムはPD-1とPD-L1の反応によって必要な場合のみ発動し、自己免疫疾患となることを防いでいる。

PD-L1がPD-1に結合するとT細胞からのサイトカインの産生が低下し、T細胞の活性を抑制するシグナルが伝達される。腫瘍細胞はT細胞からの認識を遁れるために、この免疫チェックポイント・シグナル伝達を利用する。

PD-L1は腫瘍細胞や腫瘍微小循環に存在する非形質転換細胞の細胞表面上にも強く発現している。このPD-L1が活性化している細胞障害性T細胞表面のPD-1に結合すると、T細胞の活性が抑制される。そして不活化したT細胞は遊走することなく腫瘍微小環境に留まる。PD-1/PD-L1を介した児のようなメカニズムは、腫瘍免疫に対する腫瘍細胞の抵抗性を代表するものである。
http://www.abcam.co.jp/cancer/cancer-immunotherapy-and-the-pd1pdl1-pathway-1


https://www.ono.co.jp/jpnw/ir/pdf/k_setsumei/170512_3.pdf


オプジーボ:ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体であり、PD-1とPD-L1およびPD-L2との結合を阻害し、がん抗原特異的なT細胞を活性化することで抗腫瘍効果を発揮する。

オプジーボの作用機序動画

進行性非扁平上皮癌NSCLCに対して投与したオプジーボとドセタキセルの比較試験であるCheck-Mate 057試験において、1年生存率は39%に対して51%と有意に改善しており、この効果はPD-L1の発現が多い症例のいて顕著であった。

治療歴を有する進行扁平上皮癌においてもオプジーボはドセタキセルに対して1年生存率において24%に対し42%と有意な改善を認めた。

この効果の有効性は、PD-L1の発現状況には関係しなかった。


適応症:
根治切除不能な悪性黒色腫
切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
根治切除不能又は転移性の腎細胞癌
再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫
再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌
https://www.opdivo.jp/basic-info/product-info/

副作用:オプジーボは免疫応答の抑制を解除するという薬理作用があるため、免疫反応の促進または過剰による免疫関連の副作用が現れることがある。

臨床症状としては、以下のものが挙げられる。


オプジーボの副作用の多くは投与して4~8週後に診られているが、投与してから52週以上経過した後においても副作用が起こり得ることもあるので注意が必要である。


2. 体内の免疫を強める(アクセルを強める)方法
免疫細胞を活性化させ悦物質を投与することによって、免疫細胞を活性化し、がん細胞を攻撃する治療法。サイトカン療法、BRM(biological response modifiers)療法、がんワクチン療法、免疫細胞療法などがある。
 受動免疫療法:体の外で攻撃力を高めた免疫細胞や、人工的に合成した抗体を投与する受動免疫療法

非特異的リンパ球療法:1980年代に患者さんの血液から免疫細胞を取り出して、サイトカインなどの刺激を与えパワーアップした免疫細胞(T細胞やNK細胞)を再び体に戻すLAK療法が注目されたが、効果は不十分だった。

TIL(腫瘍浸潤Tリンパ球)療法:がんを見つける能力を人工的に持たせたT細胞を使って、がんへの攻撃力をさらに高めた療法:血液中のキラーT細胞を用いたTIL(腫瘍浸潤Tリンパ球)療法がおこなわれたが、一部の患者に効果がみられるのみであった。

がん抗原特異的T細胞療法:遺伝子組み換え技術を用いてがん抗原の受け皿であり、がん抗原に特異的な「T細胞受容体(TCR)」を持ったT細胞を、大量に体外で作成し投与する方法や「キメラ抗原受容体(CAR)」ともったがん抗原特異的T細胞による治療法の研究も進んでいる。


がんを直接攻撃する抗体療法:免疫細胞のうちB細胞は「抗体」を産生し、異物を攻撃する。この抗体を人工的に合成して治療する方法が「抗体療法である」抗体には、攻撃に使う武器としての役割だけでなく、たくさんの遺物から目印のある異物のみを見分ける役目もある。がん細胞にだけある物質や正常な細胞よりもガン細胞により多く存在する物質を目印として抗体を作成するとガン細胞に抗体が結合し、その抗体を目印として免疫細胞が集合し集中的にガン細胞を攻撃できる。また、抗体が結合することにより、がん細胞の増殖を抑制する効果もある。最近では、がん細胞の増殖のための栄養を取り入れる血管の増殖をブロックする抗体なども開発されている。

樹状細胞は、がん細胞を攻撃するリンパ球にがん抗原を提示する免疫細胞で、樹状細胞を培養して行う治療法が「樹状細胞ワクチン療法」と呼ばれている。

がん抗原は、多数あるが、現在多くの施設で行われているがん抗原は、大阪大学の杉山治夫教授により発見された「WT1ペプチド」が使用されている。下記のような多数のがんにおいて発現している。

参考サイト:
オプジーボの非小細胞肺がんの適正使用ガイドライン

国立がん研究センター がん情報サービス 免疫療法
小野薬品工業株式会社 oncology

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2015年12月14日 月曜日

高齢者肺炎予防の重要性 國島広之先生

2015年11月25日 崎陽軒本店
演題「高齢者肺炎予防の重要性」
演者: 川崎市立多摩病院総合心療内科部長 國島広之先生
内容及び補足「
インフルエンザH1N1kannsennniyoru 肺炎により死亡された剖検例の検討で、IL-1 receptor protein、IL-6、TNF-α、IL-8、monocyte chemoattractant protein-1、macrophage inflammatory protein 1-β、interferon-inducible protein-10が過剰に分泌されていた症状発現7日目にもっとも上昇し、17日目まで遺伝子発現は上昇していた。

http://ajp.amjpathol.org/article/S0002-9440(13)00479-3/fulltext
インフルエンザ感染後の二次性肺炎の原因としてStaphylococcus aureusが一般的であるが、IL-27の発現はウイルス感染後6日目に著増することがわかっており、このタイミングで二次性肺炎が起こりやすいといえる。

http://www.respiratory-research.com/content/16/1/10

参:IL-27はTh1細胞の分化の初期に作用し、IL-12がTh1細胞の増殖と維持に当たり、IL-23がメモリーTh1細胞の増殖を誘導している。IL-27は免疫、炎症抑制作用ばかりでなく、免疫疾患や感染症のみならず代謝性疾患でも重要な役割を果たしていることがわかってきた。

https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=origxorig:format=jpg/path/s37be869ff3691cd2/image/ic3db2cb615fb2815/version/1367191529/image.jpg
http://mcis-sagamed.info/research/cytokines_and-_their_functions/





http://www.tokyo-med-ims.com/%E7%B5%84%E7%B9%94/%E5%85%8D%E7%96%AB%E5%88%B6%E5%BE%A1%E7%A0%94%E7%A9%B6%E9%83%A8%E9%96%80/%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%86%85%E5%AE%B9/
IL-27がNK細胞の生存を延長し細胞障害性を増強すること、B細胞に作用して腫瘍特異的IgG抗体を産生させること、IgGとIL-27で活性化したNK細胞が協調的に働いて、FcyR3依存性にNK抵抗性の腫瘍を傷害することが分かった。

http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/microbiol/research/project_2.html

インフルエンザに伴う肺炎についてまとめてみるとインフルエンザウイルスによる肺炎は、発症1-2日目であり、インフルエンザに伴う細菌性肺炎は発症4-7日目に起こっていることがわかる。CRPの上昇も、インフルエンザウイルスによるものは2 mg/dL以下であるのに対して、二次性の細菌性肺炎は6 mg/dL以上と差がみられる。

http://www.clinmed.rcpjournal.org/content/12/1/67.short
JAMA 2015年10月13日の発売号で2010年から2012年、米国においてインフルエンザワクチンがインフルエンザ肺炎で入院することへの関与が報告された。2767人の肺炎で入院した患者さんのうち、162人のワクチン接種者では28人、非ワクチン接種者では2605人中76人にインフルエンザ肺炎が認められた。調節因子を補正した結果0.43とインフルエンザ肺炎発生抑制効果が見られた。小児においてはよりその効果が認められた結果であった。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26436611


18歳から64歳までのYounger Adults 520229人でインフルエンザワクチンが疾患とどのような関係にあるかを調べた研究がある。全国的なYounger Adultsへインフルエンザのワクチン接種が15%以下の場合と比較して、16-20%の場合0.91、21-25%の場合0.87、26-30%の場合80、31%以上の場合0.79にインフルエンザに関連する高齢者の疾患発症が減少すると報告された。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26359478

WHOの報告によると2006年では高齢者のインフルエンザワクチン接種率は50%、2010年で75%であり、日本では2009年で50%といわれており、低い接種率である。

成人の急性咳嗽疾患におけるcommunitiy-acuired pneumonia(CAP)の診断と買たるサインの関係を研究した報告によると、4464人のうち421人がCAPと診断されたが、その際有意な因子としては、50歳以上、発熱、低酸素、頻脈、過呼吸であった。その中で一番強い因子は低酸素であり、複数重なるとCPAの可能性が高くなった。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17606087

肺炎の診断をするためのマーカーの検討では、鼻汁のない息切れ、呼吸雑音、呼吸音の減弱、頻脈、発熱でROC areaは0.7となり、これにCRPが3mg/dL超える上昇を追加するとROC areaは0.78と上昇するが、procalcitonin(0.25 µg/L and >0.50 µg/L)の測定は変化を認めず、有用な検査とはならなかった。

http://www.bmj.com/content/346/bmj.f2450


肺炎の重症度分類システムはイギリス胸部疾患学会のCURB-65システムを参考にして作成されたA-DROPシステムがある。
参:CURB-65:Confusion、BUN>7mmol/L、Respiratory rate≧30/分、SBP<90mmHg DBP≦60mmHg、Age≧65

A- DROP:
Age - 男性70歳以上、女性75歳以上
Dehydration - BUN 21mg/mL以上、または脱水あり
Respiration - SpO2 90%以下(PaO2 60Torr以下)
Orientation - 意識障害
Pressure - 収縮期血圧 90mmHg以下
の指標で以下のように分類して対応する。
超重症 - 4〜5項目該当するか、1項目以上該当し、かつ、ショックが存在する場合であり、集中治療室での治療の適応となる。
重症 - 3項目該当する場合であり、入院治療の適応となる。
中等症 - 1〜2項目該当する場合であり、外来ないし入院治療の適応となる。
軽症 - 該当項目がない場合であり、外来での治療の適応となる。
中等症までとそれ以上で、各パラメータの違いを見てみると高齢者で重症例が多い。


参:日米ガイドラインに基づく市中肺炎の重症度の絵検討
早期死亡群と生存群の比較で有意差を認めたのは、年齢、A-DROP項目数、PSIスコアである。低アルブミン決勝は世簿の判定に有用であるとの報告があるが、重症肺炎例では脱水があるため、低アルブミン血症がマスクされている可能性がある。

http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/047090781j.pdf

2011年9月から2013年1月の期間多数の施設で、15歳以上のcommunitiy-acquired pneumonia (CAP)とhealth care-associated pneumonia (HCAP)の重症肺炎を検討した研究がある。
932080人の病院来訪者のうち1772例のCOP発症を認めた。COPの罹患率は16.9、入院が5.3、院内死亡が0.7であった。罹患率は85歳を超えると急増し、65歳未満の10倍にも上る。


 
肺炎球菌がその原因菌として重要であるが、近年の報告を見ると肺炎原因菌の20-28%が肺炎球菌によるものとされている。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20729232
日本においてもCAPの17-24%とされている。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23855620
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23370738

ニューモバックスPPV23により成人におけるInvasive Pneumococcal disease (IPDs)を減少させることができるが、高齢者においてはその効果は弱い。近年プレベナーPCV13が高齢者において有効との報告がなされている。プレベナーが小児に導入された2010年においては、PPV23は肺炎球菌のセロタイプの85%を、PCV13は62%カバーしていた。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19538821
最近の報告によるとPPV23は67%、PCV13は54%に減少してきている。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24344141

近年の日本におけるIPDの推移は下記の図のようになっている。4月から6月にかけて多く2010年をピークに減少しているように見える。

2010年以前とそれ以降に分けて比較してみる。
IPDで入院となった小児の背景は下記の表である。

患者数を見てみると、髄膜炎発症者及び、非髄膜炎IPD患者ともに明らかに減少しているのがわかる。

検出されたSerotypeは大きく変化しており、Non-PCV13 typeが9.4%から30.8%に増加している。特に19Aの増加が顕著である。

これをまとめてグラフ化すると下図のようになる。Non-PCV13 typeは2013年には約半数にもなっている。

人口10万人当たりの発症者数として変化を見てみるとPCV7 Typeの減少は2010年以降顕著であるが、それ以外の実数は依然増加傾向にある。

http://ac.els-cdn.com/S0264410X15010385/1-s2.0-S0264410X15010385-main.pdf?_tid=1c775976-9bf1-11e5-bf08-00000aab0f01&acdnat=1449389737_df1ecd2ea9b7fc062c3e560811cf836f

抗生剤の耐性化の問題もある。2010年4月から一年ごとにペニシリン耐性株の検出数の推移をセロタイプべつに下図に示す。
 
Yearly changes in number of serotypes and in penicillin resistance in genotypes found in isolates from adults with invasive pneumococcal diseases, Japan, April 2010-March 2013. Serotypes are shown for each of the 3 yearly surveillance periods: April 2010-March 2011, April 2011-March 2012, and April 2012-March 2013. Short tic marks on horizontal axis represent yearly number of isolates for specific serotypes; longer tic marks represent the 3-year surveillance period for each serotype. gPSSP, genotypic penicillin-susceptible Streptococcus pneumoniae; gPISP, genotypic penicillin-intermediate resistant S. pneumoniae; gPRSP, genotypic penicillin-resistant S. pneumoniae. Parentheses enclose abnormal pbp genes that mediate penicillin resistance.

肺炎、敗血症、髄膜炎の頻度をセロタイプごとに示す。PCV13とPPS23でカバーされていた肺炎の頻度はそれぞれ、73.9% 84.3%、菌血症および敗血症は56.4% 69.2%、髄膜炎は45.7% 69.3%と差がある。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26485679
2010年から2013年のカバー率の変化、PCV13は73.8%から54.2%にPPSV23は82.2%から72.2%と変化しており、PPSV23の方のカバー率の減少が少ない。

27年間経過観察された脾臓摘出者8149名の研究から、脾臓摘出患者は、入院中の肺炎、髄膜炎敗血症の頻度は1.9~3.4倍、静脈血栓症や肺塞栓症の頻度は2.2倍、固形がんの発症頻度は1.3~1.9倍、血液の悪性腫瘍は1.8~6.0倍に上昇する。
術後10年以上経過してくると、肺炎や敗血症になる頻度は1.6~3.0倍、虚血性心疾患1.4~4.5倍、がん1.3~4.7倍に増加する。
術後90日以内の早期の感染症及び死亡リスクは虫垂炎切除者に比較して33倍高い。

晩発性の感染症においては、脾摘の年齢により頻度は異なる。
小児期における脾摘は成人になってからの脾摘よりも敗血症や死亡リスクは高い。
脾摘後にワクチンを接種することにより危険は残存するが感染症の危険度は減少する。
この危険度は脾臓摘出だけでなく、内在する疾患による因子がある程度影響している。

脾臓摘出患者においてのワクチン接種は積極的に行われるべきものであり、現在行われているものとして以下のものがある。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24056815

http://www.mjhid.org/index.php/mjhid/article/view/2015.057/html_53
20132人の脾臓摘出患者の敗血症の入院危険度は5.7倍である。事故によるものは3.4倍、血液悪性腫瘍によるものは18倍である。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24374533

誤嚥性肺炎:高齢者には誤嚥性肺炎が多くなる。嫌気性菌を含めた校内情愛細菌が原因となるため、β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬剤の選択で十分であるが、院内発症の場合にはPseudomonas aeruginosaを含めたグラム陰性桿菌までカバーしておいた方が良い。
病原微生物としてStrephtococcus pneumonias、Staphylococcus aureus、腸内細菌化などの報告が多く、Klebsiella pneumoniaeが多いとの報告もある。Streptococcus anginousus spp.や嫌気性菌などの口腔内常在細菌の関与も指摘されている。院内発症の場合には、Psudomoaus aeruginosaを含めたグラム陰性桿菌まで想定するべきである。
今後は、Escherichia coli、Klebsiella spp.、Proteus spp.に関してはESBL産生株の増加が懸念される。
また、LVFXは嫌気性菌に対する効果が弱いのでGRNXやMFLXを選択するほうが望ましい。
http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/jaidjsc-kansenshochiryo_kokyuki.pdf

嫌気性グラム陰性桿菌のFusobacterium necrophorumは口腔咽頭の感染を契機として、敗血症、内頸静脈の血栓性静脈炎、全身に塞栓症・膿瘍形成をきたすLemierre症候群の原因菌とされているが、クラビット耐性であることが多い。
歯周炎や扁桃周囲膿瘍の原因菌であるProvotella属菌株はβ-ラクタマーゼ産生株が増加しており、CTRX(セフトリアキソン:ロセフィン)やMTZ(メトロニダゾール:フラジール)に耐性であることに注意が必要である。
http://www.tdc.ac.jp/soc/jsotp31/book/a3.pdf

高齢者における口腔ケアは期間中の発熱は勝率を低下させるし、二年後の肺炎発症率も低下させる。




225例の肺炎を認めた進行した認知症患者に対して、何も治療しない場合8.9%、経口抗菌薬投与55.1%、筋注15.6%、静脈投与または入院加療20.4%により生命予後は改善したが、ナーシングホームでの快適さの改善には至らなかった。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20625013

57人の胃瘻を増設された症例の後ろ向き試験の結果著しい認知機能障害とADL低下を有する高度要介護高齢者において、摂食・嚥下障害への治療対策として行われた経皮内視鏡的胃瘻増設術(pervutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)の検討では、PEG施行後の転帰では、生存期間の中央値は451.0±79.8日で、一年生存率は56%であった。PEG施行後の死亡件数は51/57件89.5%であり、PEG施行日から死亡までの平均期間は518.5±471.7日であった。死亡例の死因として肺炎が51例中45例88.2%を占めていた。著しい認知機能障害とADL低下を有する高度要介護高齢者において、摂食・嚥下障害への治療対策として行われるPEGではADL向上や肺炎予防への効果は期待できず、PEG施行後の転帰も不良であった。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/49/5/49_602/_pdf

参:肺炎の原因菌の検出頻度:

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4378946/


新型インフルエンザ治療ガイドライン 2014 年 3 月 31 日


JAID/JSC 感染症治療ガイドライン ―呼吸器感染症―

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2015年11月 5日 木曜日

結核診断・治療の最新情報 金子 猛 先生

2015年9月30日 横浜市健康福祉センター
演題「結核診断・治療の最新情報 ~診断の落とし穴から最新の検査・治療まで~」
演者: 横浜市立大学医学部呼吸器病教室 教授 金子 猛 先生
内容及び補足「
2014年の結核罹患率は世界的に見て、日本は中蔓延国に該当する状況である。

http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/191102/1/9789241565059_eng.pdf?ua=1
先進国の中においては結核の多い国である。

世界の死亡原因における結核は1990年7位であったが、2020年の予測でも7位であり続けており、年間900万人発症し、130万人の死者が出ていることになる。

2014年5月に出されたWHOファクトシートでは、2000年に比較し結核の死亡は減少しており、死亡原因のトップ10からは姿を消しているが、

 
低所得国では第8位の死亡原因であり、低位中所得国における死亡原因の第9位であり、依然として重要な疾患である。


http://www.japan-who.or.jp/act/factsheet/310.pdf
結核登録患者の年次別統計を見てみると、減少しているが昭和57年頃から減少率が鈍化し、平成9年に逆転増加現象が見られ、平成11年には結核緊急事態宣言が出されている。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou03/dl/12sankou.pdf

横浜市における結核罹患率は中区が多い。
都道府県別結核病床率を見てみると、全国平均が人口10万当たり5.7なのに対して神奈川県は1.8ともっとも少ない。

file:///C:/Users/PCUser/Downloads/18_2013.pdf
神奈川県立循環器呼吸器病センターに60床、国立病院機構神奈川病院に50床、川崎市立井田病院に40床、そして横浜市立大学附属病院に16床ある。

結核を発病しやすい状態にある人たちは以下の群である。
1. ステロイドやTNF-α阻害薬などの抵抗力の弱くなる薬剤を使用している人
2. 末期腎不全の人、人工透析をしている人
3. 糖尿病のことロールの悪い人
4. HIV感染症、AIDSの人
5. 胸部レントゲンで結核の治った影があり結核の治療を受けていない人
6. 手術で胃や腸を切除した人
7. タバコを吸う人
8. 悪性腫瘍のある人
9. 塵肺の人

潜在性結核感染症:Latent Tuberculosis Infection (LTBI)は、自覚症状や結核菌感染症を示唆する画像所見を伴わない結核感染症といえる。
日本における医療従事者特に看護職の結核発病リスクは同年代の女性に対して罹患率は3~4倍高い。
日本結核病学会予防委員会は2010年3月に「医療施設内結核感染対策について」を策定し、従来、医療従事者の入職時にツ反二段階法を行うベースラインの検査をQFTの結果をベースライン検査とするよう勧告を行った。
スクリーニングでQFT陽性であったものについては、二年以内の感染が疑われるものに対してはLTBI治療を推奨している。
その理由は、①感染から時間が経過した場合には発病リスクが低くなること、②新入職のような若年の世代における結核既感染率低いことから陽性的中率は必ずしも高くないことである。
感染率を1%、IGRAの感度を90%、特異度を98%とした場合での陽性率は30%強である。
ベースラインとして実施したQFT(第二世代)検査で陽性であった医療従事者61名に対してLTBI治療を行わずに286人年追跡した結果で発病者は一人もいなかった(結核 2012;87:697-699)事実から、最近の感染でない限りは治療が必要でないと考えられている。

結核菌は、長さ1~4ミクロン、幅0.3~0.6ミクロンの棒状の菌で表面はロウ状の物質の丈夫な膜でおおわれており、いくつもの菌がくっつきあって房のようになっている。

1mlの中に1万単位の菌が存在すると顕微鏡で見つけることができ、「塗抹陽性」となる。
数千個程度では見えず、培養の後陽性となる(培養陽性)が、菌が倍になるのに15時間(大腸菌は20分位)もかかり培養検査結果を見るためには4~8週間かかることになる。
結核菌の感染経路は飛沫核感染であり、通常の会話の5分間分の肺の奥から吐き出されるシブキが、一回の咳で放出され、紫外線で殺されなかった結核菌が近傍にいる人の肺に吸い込まれて感染が引き起こされることになる。

肺に入って結核菌が増殖を始めると、軽い炎症が起き、肺のリンパ節の腫脹も認められることがある。免疫があったり、抵抗力が強い人は、結核菌の増殖を抑え込み発病することなく経過する。
発病すると、咳、痰、血痰、発熱、共通、疲労感、食欲不振、寝汗などの症状が出現する。
臓器としては、肺以外(肺外結核7%程度)には、脊椎(脊椎カリエス)、腎臓(腎結核)が多く、その他の臓器を巻き込むこともよくある。血液中に菌が入り込む粟粒結核や髄膜へ侵入し結核性髄膜炎を生じると死亡率が急激に上昇する。

診断、臨床としては、結核菌検査として塗抹培養法、抗酸菌同定法、核酸増幅法があり、免疫学的検査として、ツベルクリン反応、インターフェロンγ遊離試験(IGRA)があり、画像検査と合わせて診断される。
http://www.kekkaku.gr.jp/books-basic/pdf/2.pdf

IGRA検査の特徴
・ツベルクリン反応はBCGによる影響を受けるが、QTFやT-SPOTはBCGの影響を受けない。
・QTFやT-SPOTの検査は過去の感染と最近感染の区別は不可能。
・感染後QTFやT-SPOTが陽性となるまでの期間は明らかでないが、通常は「初発感染者と最終接触2か月後」に検査を実施する。
・感染後数年、十数年と時間が経過するとQTFやT-SPOTの陽性率は低下する。
・潜在性結核感染症や活動性結核患者の化学療法後には、かなりの患者でQTFやT-SPOTは陰転化する。
・QFTは12歳未満の小児は成人よりも低めに出るし、5歳以下の小児には判定基準を適応しない。


http://www.asakayama.or.jp/news/topics/files/2013/05/%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E5%AE%A4%EF%BE%86%EF%BD%AD%EF%BD%B0%EF%BD%BDNo195.pdf

http://www.kensin-kensa.com/archives/cat31/ifn-qft-3gt-spot/

QFTとT-SPOTの感度と特異度は下記のような報告がある。

IGRAは免疫応答を見ているので、免疫抑制者においての検証が必要である。
Leidlが128名のHIV陽性患者に対して行った検査結果では以下のように感度は低下したが、T-SPOTにおいては活動性結核患者と非活動性結核患者においての差が大きかった。
HIV患者においてCD4細胞数とQTF検査におけるINF-γ量、ツ反の硬結とは相関がみられてが、T-SPOT.TB検査の結果では相関がみられなかった。

RicheldiらはIGRA検査が困難とされる対象群(肝移植候補者:120名、HIV患者:116名、血液疾患患者:95名)における検査脳を調べたところ、QTF-3Gで27/369(7.3%)、T-SPOTで13/369(3.5%)で検査不能であり、QTF-3G検査の判定不可事例の中には、ツ反やT-SPOT.TB検査で陰性とはならなかったものもあり、感染事例があることを示唆していると考察されている。
Bergamminiらは活動性結核、あるいはLTBIが疑われる子供496名(0-19歳、平均11歳)にたいして、IGRA検査を行い判定負荷の比率を検討した結果QTF-3Gは16.4%(4歳未満では27.7%)、T-SPOT.TBでは2.8%(4歳未満では2.8%)であると報告し、QFT-3G検査結果は、年齢を考慮する必要があることを示した。
http://www.chiringi.or.jp/camt/wp-content/uploads/2013/06/49f52386b762d98a71b7aba19e7f1816.pdf

結核患者およびLTBI患者診療において注意するべき点を列挙する。
1. 胸部レントゲン所見のみで細菌性肺炎と肺結核の鑑別は困難であるので、特に高齢者の肺炎では常に結核を疑い診療をする必要がある。
2. 咳や痰のない患者においては、胃液検査が有用であり、当院での1~2割程度は、胃液で診断されている。
3. 咽頭・喉頭結核患者の場合には喀痰培養検査は通常陰性であり、発熱や脱力感などの全身症状が乏しく、病像の進行が緩徐であるが、腫瘤を形成する傾向があるため、胸部レントゲンばかりでなく、CTやMRI、ガリウムシンチなどで、リンパ節腫脹を検出し病理学的診断が必要となることが少なくないので、慢性咳嗽患者や頸部腫瘤患者の場合には、複合的な検査を行う必要がある。特に医療従事者においては強く疑うべきである。
4. LVFX投与例においては、症状は改善するが、レントゲン上の影が完全には消失しないので、そういった患者の場合には、肺結核を積極的に疑い、CTなどの精査を行うべきである。
1998年の報告で47例の検討において、CTで病変が認められた26例中18例しか単純レントゲンでは指摘できておらず、CTで両側に病変を認めた16例中6例しか単純レントゲンでは指摘できていなかった。つまり疾患診断で1/3の見落としが、病変の広がりでは2/3の見落としがあった可能性があり、結核感染を疑った場合には、CT検査を行う必要性があるといえる。

現在結核は感染症法において二塁感染症に指定されている感染症であり、社会への蔓延防止、薬剤耐性結核の増加防止の観点から、中途半端な治療は決して行うべきでなく、結核治療の必要な患者すべてに適切かつ確実に行わなければいけない。日本結核病学会治療委員会は、「結核医療の基準」 の見直し―2014年 -を発表した。

以前の基準の主な変更点や追加点は以下のとおりである。
①初回標準治療におけるエタンブトール(EB)〔またはストレプトマイシン(SM)〕の使用期間についての記載
②治療期間を 3 カ月延長することを勧める要件に HIV感染等を追加
③間欠療法の位置付けの変更,週 2 回の削除,週 3 回についても推奨度の引き下げ
④治療の中断があった場合,治療変更があった場合の考え方を追加
⑤ DOTSについて,地域 DOTSの追加
⑥腎不全がある場合,血液透析中の用法・用量の記載(1986年の委員会見解7)の更新)
⑦レボフロキサシン(LVFX)の位置付けの変更
⑧ LVFX以外に使用可能なフルオロキノロン剤の変更
⑨抗結核薬にデラマニド(DLM)の追加

治療における基本的な考え方としては、菌数が多い初期には少なくとも3剤以上を使用し(可能な限り4剤)、最短でも6ヶ月継続して投与する。なおLTBIの治療においては、未発病であって、体内の結核菌は少ないことから一剤による治療が行われるべきである。

よくわかる潜在性結核感染症
潜在性結核感染症治療指針
結核の接触者健康診断の手引き 改定第5版 2014年3月
結核院内(施設内)感染対策の手引き 平成 26 年版

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2015年11月 5日 木曜日

横浜市の結核対策について 市川美貴 先生

2015年9月30日 横浜市健康福祉センター
演題「横浜市の結核対策について」
演者: 横浜市健康福祉局健康安全課 市川 美貴 先生
内容及び補足「
横浜市の結核罹患率患者数の推移は全国平均とほぼ同じで徐々に低下してきている。新規患者数も漸減してきている。

横浜市の区別ごとに見てみると寿町がある中区が群を抜いて多いが、皆さんの努力の結果患者数は年々減少してきている。

年齢別に新規登録結核患者罹患率を見てみると、20歳代の結核未感染の世代である若年者に小さなピークがあり、集団感染を引き起こす危険を内在している。また、内因的な要因での再燃や再発、免疫力低下などによる易感染性で70歳以上の人たちの罹患率も高値となっている。


医療従事者の新登録肺結核患者を平成26年で見てみると、全国集計では看護師が最も多く罹患している。横浜市でも11人でそのうち看護師は5名発症している。
早期に発見するためには定期健康診断が必須であり、各職場において、毎年行い、実施後、必ず最寄りの区福祉保健センターに報告してもらうことになっている。
定期健康診断の対象者は以下のようになっている。

感染を拡大させないためには、接触者健康診断が重要である。
保健所が行う接触者健康診断は、『結核発病者と接触者した人に健診を行い、発病前の潜在性結核感染症の早期発見、新たな発病者の早期発見、および感染源や感染経路を探求する』ことが目的となっており、胸部X線検査、インターフェロンγ遊離試験(IGRA検査:T-SPOT、GFTがあり、横浜市ではT-SPOTを採用)を、小児ではツ反を併用して行っている。

妊娠・出産、育児休暇で定期検診を長期受診できなかった医療従事者の方で、子供の4か月健診で活気がない、首が座らない、追視しないなどの発達障害が疑われを勧められ精査医療機関紹介となり結核性髄膜炎、属中結核、肺結核(学会分類:bⅢ3)と診断され、周囲の一人が肺結核、11人が潜在性結核感染症と診断された症例がある。
平成26年の結核新登録患者10615人のうち0~4歳が17人、5~9歳までが15人うち結核性髄膜炎患者はそれぞれ2人、3人いる。早期発見、早期治療が重要である。

参:
潜在性結核感染症:結核菌に感染しているけれど、発病はしていない状態。
結核菌に感染しても、生涯で発病するのは10人に1~2人です。
結核を発病しやすい状態
1. ステロイドやTNF-α阻害薬などの抵抗力の弱くなる薬剤を使用している人
2. 末期腎不全の人、人工透析をしている人
3. 糖尿病のことロールの悪い人
4. HIV感染症、AIDSの人
5. 胸部レントゲンで結核の治った影があり結核の治療を受けていない人
6. 手術で胃や腸を切除した人
7. タバコを吸う人
8. 悪性腫瘍のある人
9. 塵肺の人
治療:イソニアジドを6~9ヶ月毎日内服すれば結核の発病を50~70%抑えることができるといわれている。
参:
よくわかる潜在性結核感染症
潜在性結核感染症治療指針

保健所の役割としては以下のものがある。
1. 患者の療養支援
(ア) 患者の服薬支援(DOTS)
(イ) 公費負担申請の案内
(ウ) 服薬終了後の経過観察
2. 接触者健診
(ア) 胸部X線検査
(イ) インターフェロンγ遊離試験(T-SPOT)
3. ハイリスク健診
(ア) 日本語学校、ホームレス、高齢者など
4. 横浜市感染症審議会
(ア) 結核分科会

DOTS(Directly Observed Treatment, Short-Course:直接服薬確認治療)とは、治療薬を確実に患者さんに服用してもらうために、WHOが打ち出した戦略。 1989年にWHO(世界保健機関)の結核対策課長に就任した古知新(こち・あらた)博士が、国際社会が結核問題を軽視していることを批判し、強力な治療方式であるDOTSを開発し、普及させた。 それまで途上国では採用できなかった高価な薬剤を確実に患者さんに服用させるシステムで、主として、医療従事者が直接患者に薬を手渡し目の前で服用を見届けるという方法で成果をあげている。

結核に関する届出

結核に関する制度

結核患者の移送事業について


「結核医療の基準」 の見直し―2014年 - 日本結核病学会

結核の接触者健康診断の手引き 改定第5版 2014年3月
結核院内(施設内)感染対策の手引き 平成 26 年版

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

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