脳神経系

2016年7月 5日 火曜日

パニック障害 海老澤 尚先生

2016年6月21日(火) 
演題「うつと睡眠障害」
演者: 医療法人和楽会 横浜クリニック 海老澤 尚 先生
場所:ホテル横浜キャメロットジャパン
内容及び補足「
パニック障害:
突然生じる予期しないパニック発作によって始まる。本能的な危険を察知する扁桃体が活動しすぎて、必要もないのに戦闘態勢に入り、呼吸や心拍数が増加し、その症状を自覚する。その後、その発作が再発するのではないかと恐れる『予期不安』と、それに伴う症状の慢性化が生じる。さらに長期化するにつれて、症状が生じる場面を回避するために生活範囲を限定する「広場恐怖症」が生じる。

診断基準:DSM-V
A.繰り返される予期しないパニック発作。パニック発作とは、突然、激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分以内でピークに達し、その時間内に以下のうち4つ以上が起こる。
1.動悸・心悸亢進・心拍数の増加
2.発汗
3.身震い・震え
4.息切れ感・息苦しさ
5.窒息感
6.胸痛・胸部不快感
7.嘔気、腹部不快感
8.めまい感・ふらつく感じ・頭が軽くなる感じ・気が遠くなる感じ
9.寒気・熱感
10.異常感覚(間隔麻痺・うずき感)
11.現実感消失・離人感(自分が自分でない感覚)
12.抑制力を失う恐怖・「どうにかなってしまう」ことに対する恐怖
13.死ぬことに対する恐怖
B.パニック様の症状や、その他のたえられない当惑するような症状が起きた時に、脱出は困難で援助が得られないかもしれないと考え、これらの状況を恐怖し回避する。
C.広場恐怖症の状況は、ほとんどいつも恐怖や不安を誘発する。
D.広場恐怖症の状況は積極的に避けられ、仲間の存在を必要とし、強い恐怖や不安を伴って耐えられている。

100人に一人ぐらいの頻度で診られ、欧米では女性が男性よりも2倍ほど多いが、日本においてはほぼ同数で、男性では25~30歳にピークがあり、女性は35歳前後の発病が最も多い。
多くの人では1回目の発作から1週間以内に2回目の発作が起こり、週に数回認めるようになる。

予期不安:
パニック発作が起こると患者にとっては生命の危機をひしひしと感じられるものであるので、発作に対する恐怖感は計り知れないほど強く、しかも不意に突然起こるので、いつあの恐ろしい発作が起こるのかという不安感を常に心の底に持ち続けることになる。このためリラックスした気分にはなれず、知らぬ間に行動は防衛的になり、行動範囲が狭くなります。その典型例が広場恐怖です。
予期不安を分類してみると次のようになります。
・発作症状そのものに対する恐れ
・発作により病気になるおそれ
・発作により死亡する恐れ
・発作により失神する恐れ
・発作により気がくるってしまう恐れ
・発作により事故を起こす恐れ
・発作を起こしても助けてくれる人がいないことに対する恐れ
・発作を起こした場所からすぐさま逃げ出せない恐れ
・発作により人前で自分が取り乱してしまう恐れ
・発作により人前で倒れたり吐いたり失禁したりする恐れ
・発作を起こして人に迷惑をかける恐れ

広場恐怖:
パニック発作が起こることを恐れ、助けが求められない場所やすぐに逃げ出すことのできない場所にいることに不快を強く感じたり、またはそのような場所を避ける状態。パニック発作を起こした患者の3/4に程度の差はあれ広場恐怖を認める。
新幹線、航空機、地下鉄、電車、トンネル、エレベーター、橋などの狭い場所や倉庫や窓のない部屋といった閉鎖空間、美容院、歯科医、会議、行列に並ぶといった束縛された状態などがあり、高速道路や渋滞を恐れたり、自宅から遠く離れた場所や、家で一人での留守番が苦手な人もいます。

軽症:外出には多少不安を感じて、どうしても必要な場所にだけ行く
中等症:一人で外出できないことが多く、行動に制限がある
重症:ほぼ完全に家にいて、付添なしでは外出できない
パニック発作があるうちは広場恐怖はよくなることはめったになく、発作が消失すると約半数の人は自然に広場恐怖がなくなる。イミプラミンが使われますが、スルピリドも有効。

患者・家族のための10章
1 パニック障害は、患者当人には死を決意するほどのつらい病気であるが、決して死を招くような病気ではないことを確認する
2 パニック障害は気持ちの持ち方が悪いから起こる病ではない。ましてや、都合が悪いのでわざと起こしている病気でもないことを確認する
3 パニック発作が起こってもあわてふためかない。かえって不安が増強するので、静かに慎重に対処する
4 パニック障害の治療の根本はまず発作を完全に消失させること
5 発作が起きてから薬を飲んでも効果発現時には発作は終わっているので意味がない。発作を起こさないようにきちんと服薬することが肝要
6 広場恐怖に対しては、どんどん薬を使い、どんどん行動する
7 「併発うつ病」は早期発見、早期治療
8 パニック障害は完全にコントロ-ル出来る病気であることを確認する
9 パニック障害は頑固な病であるので、勝手な断薬は禁物
10「パニック障害」という診断名を使う専門医に治療を受けること
貝谷久宣著「不安・恐怖症 -パニック障害の克服」講談社、1996より

治療:
三環系抗うつ薬:イミプラミン
SSRI:ジェイゾロフト、パキシル
抗不安薬:アルプラゾラム、ロラレパム、クロナゼパムなどのベンゾジアゼピン系薬剤
レクサプロ、メイラックス、ドグマチール、ワイパックス
認知・行動療法

みんなのメンタルヘルス総合サイト パニック障害・不安障害

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2016年7月 5日 火曜日

双極性障害と睡眠障害 海老澤 尚先生

演題「うつと睡眠障害」
演者: 医療法人和楽会 横浜クリニック 海老澤 尚 先生
場所:ホテル横浜キャメロットジャパン
内容及び補足「
双極性障害:
躁状態とうつ状態を繰り返す精神疾患で、うつ状態とそう状態を繰り返す精神疾患で、うつ病とは異なる躁うつ病とよばれていたが、アメリカ精神医学会による国際診断基準のDSM-5で双極性障害として取り扱われるようになり、わが国でも双極性障害といわれるようになった。
うつ病は男性で10人に1人、女性で5人に1人が一度は経験すると考えられているが、双極性障害は100人に1人は一生のうちになるといわれ男女差はない。
うつ病では「うつを良くする」ことが治療目標であるが、双極性障害では、「躁・うつの波をどうやってコントロールするか」が最大の治療目標となり、治療法が異なるので、的確な診断が大切になる。
双極性障害は以前稀な疾患と考えられていたが、近年はもっと頻度の多いものとしてとらえられるようになってきた。


躁状態から発症すれば診断は容易だが、躁状態から発症する頻度は1/3程度との報告もあり、抑うつ状態での受診であれば、うつ病との区別が困難であり、双極2型障害は軽躁状態と正常内の気分の高揚との区別が困難であるため、反復性うつ病との鑑別が困難である。
うつ病と双極障害のうつ状態との鑑別点として以下のものが挙げられている。
中核症状(抑うつ気分、興味と喜びの喪失、疲労感)のいずれかがない(うつ病は全て揃っていることが多い)
過眠・食欲亢進がある(うつ病は不眠・食欲減退が多い)
・ 気分反応性がある(うつ病は落ち込みのみである事が多い)
・  身体的な訴えが少ない(うつ病は痛み・しびれなど身体的な訴えも多い)
・ 精神病症状(幻覚・妄想など)が多い(うつ病は少ない)
・  双極性障害の家族歴がある
・ うつ状態を何度も繰り返している
・ うつ状態の発症が早い(25歳未満)
・ 産後うつ状態での発症
・  抗うつ剤によって躁状態に転じやすい(躁転)
・ 抗うつ剤の効きが途中から悪くなる

自殺リスクが高く、20年後の自殺率は6%以上、生涯では10%以上、自傷行為は30~40%のケースで認め、不安障害や薬物乱用などの精神的問題の併発率も高い。
好発年齢は25歳、初回発病は15~19歳で、12歳以下はまれ、一卵性双生児における一致率は50~80%、二卵性双生児の5~30%よりも高いことから遺伝要因の関与が高いとされてきた。

診断基準 DSM-5
躁エピソードを認めれば双極1型障害、軽躁病エピソードに抑うつエピソードを伴なえば双極2型障害と診断される。
躁病エピソード
A.気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的となる。加えて、異常にかつ持続的に亢進した目標志向性の活動または活力がある。このような普段とは異なる期間が、少なくとも1週間、ほぼ毎日、1日の大半において持続する(入院治療が必要な場合はいかなる期間でもよい)。
B. 気分が障害され、活動または活力が亢進した期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上)(気分が易怒性のみの場合は4つ)が有意の差をもつほどに示され、普段の行動とは明らかに異なった変化を象徴している。
(1)自尊心の肥大、または誇大
(2)睡眠欲求の減少(例:3時間眠っただけで十分な休息がとれたと感じる)
(3)普段よりも多弁であるか、しゃべり続けようとする切迫感
(4)観念奔逸、またはいくつもの考えがせめぎ合っているといった主観的な体験
(5)注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないまたは関係のない外的刺激によって他に転じる)が報告される、または観察される
(6)目標指向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加、または精神運動焦燥(すなわち、無意味な非目標指向性の活動)
(7)困った結果につながる可能性が高い活動に熱中すること(例:制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかけた事業への投資などに専念すること)
C.この気分の障害は、社会的または職業的機能に著しい障害を引き起こしている、あるいは自分自身または他人に害を及ぼすことを防ぐため入院が必要であるほど重篤である。または精神病性の特徴を伴う。
D.本エピソードは、物質(例: 乱用薬物、医薬品、または他の治療)の生理学的作用、または他の医学的疾患によるものではない。
注: 抗うつ治療(例:医薬品、電気けいれん療法)の間に生じた完全な躁病エピソードが、それらの治療により生じる生理学的作用を超えて十分な症候群に達してそれが続く場合は、躁病エピソード、つまり双極Ⅰ型障害の診断とするのがふさわしいとする証拠が存在する。
軽躁病エピソード
A.気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的となる。加えて、異常にかつ持続的に亢進した活動または活力がある、普段とは異なる期間が、少なくとも4日間、ほぼ毎日、1日の大半において持続する。
B. 気分が障害され、かつ活動および活力が亢進した期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上)(気分が易怒性のみの場合は4つ)が持続しており、普段の行動とは明らかに異なった変化を示しており、それらは有意の差をもつほどに示されている。
(1)自尊心の肥大、または誇大
(2)睡眠欲求の減少(例:3時間眠っただけで十分な休息がとれたと感じる)
(3)普段よりも多弁であるか、しゃべり続けようとする切迫感
(4)観念奔逸、またはいくつもの考えがせめぎ合っているといった主観的な体験
(5)注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないまたは関係のない外的刺激によって他に転じる)が報告される、または観察される
(6)目標指向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加、または精神運動焦燥(すなわち、無意味な非目標指向性の活動)
(7)困った結果につながる可能性が高い活動に熱中すること(例:制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかけた事業への投資などに専念すること)
C.本エピソード中は、症状のないときのその人固有のものではないような、疑う余地のない機能の変化と関連する。
D.気分の障害や機能の変化は、他者から観察可能である。
E.本エピソードは、社会的または職業的機能に著しい障害を引き起こしたり、または入院を必要とするほど重篤ではない。もし精神病性の特徴を伴えば、定義上、そのエピソードは躁病エピソードとなる。
F.本エピソードは、物質(例: 乱用薬物、医薬品、または他の治療)の生理学的作用によるものではない。
注: 抗うつ治療(例:医薬品、電気けいれん療法)の間に生じた完全な軽躁病エピソードが、それらの治療により生じる生理学的作用を超えて十分な症候群に達して、それが続く場合は、軽躁病エピソードと診断するのがふさわしいとする証拠が存在する。しかしながら、1つまたは2つの症状(特に、抗うつ薬使用後の、易怒性、いらいら、または焦燥感)だけでは軽躁病エピソードとするには不十分であり、双極性の素因を示唆するには不十分であるという点に注意を払う必要がある。
抑うつエピソード
A. 以下の症状のうち 5 つ (またはそれ以上) が同じの2週間の間に存在し、病前 の機能からの変化を起している。これらの症状のうち少なくとも1つは、(1)抑うつ気分、または(2)興味または喜びの喪失である(注: 明らかに他の医学的疾患に起因する症状は含まない)。
(1)その人自身の言葉 (例:悲しみ、空虚感、または絶望感を感じる)か、他者の観察(例:涙を流しているように見える)によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。(注:子供や青年では易怒的な気分もありうる)
(2)ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味または喜びの著しい減退(その人の説明、または他者の観察によって 示される)。
(3)食事療法をしていないのに、有意の体重減少、または体重増加 (例:1 ヶ月で体重の5%以上の変化)、またはほとんど毎日の、食欲の減退または 増加。(注:子供の場合、期待される体重増加が見られないことも考慮せよ)
(4)ほとんど毎日の不眠または過眠。
(5)ほとんど毎日の精神運動焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きがな いとか、のろくなったという主観的感覚ではないもの)
(6)ほとんど毎日の疲労感、または気力の減退。
(7)ほとんど毎日の無価値感、または過剰であるか不適切な罪責感 (妄想的であることもある。単に自分をとがめること、または病気になったことに対する罪悪感ではない
(8)思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる。(その人自身の言葉による、または他者によって観察される)
(9)死についての反復思考(死の恐怖だけではない)。特別な計画はないが反復的な自殺念慮、または自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画。
B.その症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
C.そのエピソードは物質の生理学的作用、または他の医学的疾患のよるものではない。

双極障害の躁状態、うつ状態はほとんどの場合回復するが、90%以上再発するので気分安定薬による治療継続と、生活習慣の改善が必要である。
双極性障害の経過を見てみると、双極1型の人で1/3が、双極2型の人で約半分の時期をうつ状態で過ごしている。


双極性障害は以下のような精神疾患の合併が多い。
AD/HD(注意欠陥性多動性障害)
不安障害
パーソナリティ-障害
自閉症スペクトラム障害

双極障害の患者の留意点
1) 医学的な治療を充分に受けること
双極障害は状態によって治療が異なる。
躁状態:入院し、薬剤(気分安定薬、抗精神病薬)で気持ちを穏やかにすることが必要:本人は入院の必要はないと考えているが、放っておくと怪我をしたり、他人を傷つけたり、社会的信用を失ったり、浪費してしまう危険があり、本人や家族が不利益をこうむりやすい。
安定期:再発予防のため、服薬(気分安定薬、一部の抗精神病薬)を続行する。
うつ状態:うつの治療(気分安定薬、一部の抗精神病薬、抗うつ薬)を行う。
薬を飲みながら可能な限りストレスを避け、自殺を予防する。「元気になろう」と焦らず、むしろ「気持ちが楽になる」ことをまずは目指す。100%を目指さず、今は調子が割るのだから悪いなりにやっておこうとすること、認知療法の考えを身に付け、ストレスを軽く受け止められるようにする。
不眠:睡眠薬、一部の抗精神病薬
気分安定薬:リチウム、カルバマゼピン、バルプロ酸、ラモトリギン
抗精神病薬:シルペリドン、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾール
2) 自分の今の気分の状態をよく知ること
ひどい躁やうつになると自分が双極性障害の症状が出ていることを認識できなくなることがあり、安定している状態から躁になったらどうなるか、うつになったらどうなるかを書き出し、家族と認識を共有しておくことが重要。
3) 治療目標の設定を明確にすること
自分の現在の状態が、躁状態なのか、うつ状態なのかわからなくなる。その結果、周りからみると「丁度良い状態」であるのに、双極性障害の患者は「まだ不十分である」と判断し、むしろ躁状態のときを、「元気な本来の自分」と考え、それを目標にしてしまい、その結果、焦って、疲れて、うつ状態になってしまうか、上げすぎた目標に突き進んで躁状態になってしまうことがあり、治療目標を明確にし、主治医や家族とともに共通認識しておくことが大切である。
4) 生活のリズムを整えること
睡眠時間が短くなると躁状態になり易いので注意が必要。自分の睡眠のリズムを認識するために、睡眠覚醒リズム表を付け、気分の波と、睡眠覚醒リズムの関係や日常行動との関係を知っておくことは重要である。可能であれば、家族にも自分の気分と行動の部分を記載してもらい、自分の評価と家族の評価の違いを確認することも病状を確認するうえで役立つ。

http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/sokyoku/pdf/suimin_kakusei_rhythm.pdf
5) ストレスとの付き合い方を学ぶこと
ストレスをきっかけに調子を崩して、うつ状態や躁状態に陥ることが少なくない。うつ状態になる状況で多いのは、(1)「あれもこれもやらなければならない」と考え、優先順位がつかず、無理なプランを立て得て実行し疲労をためる、(2)「自分がやらなければならない」という意識が強すぎて、一人で抱え込む状況です。
その対応策は、(1)優先順位を付けて、「これはやるが、これはおいておく」と決めること、(2)自分一人で問題を抱え込まず、身近な人に相談すること、である。
6) これまでの経過を理解すること
今までの治療の経過を振り返り、(1)「躁やうつのきっかけ」になりがちな事柄をあげ、(2)躁やうつによってどんな結果になったか、(3)抜け出すのに何が効果的であったかを書き出すことが大切である。
(1)の躁やうつのきっかけになりがちな事柄としては、「薬の飲み忘れ」、「睡眠覚醒の乱れ」、「高すぎる設定目標」、「人との関係から生じるストレス」、「季節の変わり目(冬はうつ状態、夏は躁状態)」、「生理の周期(月経前にうつになりがち)」がある。
7) 治療の仕上げにリハビリを
8) 社会からの援助(福祉制度)を活用すること


参:
概日リズム睡眠障害の分類
外因性:
時差ボケ
交代勤務性睡眠障害
内因性:
睡眠相後退症候群(Delayed Sleep Phase Syndrome:DSPS):睡眠相が望ましい時間帯から遅れて固定し、前進させることが困難な状態。
睡眠相前進症候群(Advanced Sleep Phase Syndrome:ASPS):睡眠相が望ましい時間帯から慢性的に前進しており、後退させることが困難な状態。
非24時間睡眠覚醒症候群:24時間周期の環境で生活しているにもかかわらず、入眠・覚醒の時刻が次第に遅れ、24時間より長い周期で推移する状態。
不規則型睡眠・覚醒パターン:睡眠や覚醒の出現が不規則に起こり、一日に数回睡眠する。
時計や日光のない時刻情報となるものを排除した状況で生活をしてもらった際の人の概日リズムの「自由継続周期」は以前約25時間といわれていたが、被験者が人工的な照明を自分でコントロールすることを許されていたので、主観的夜に付けていた位相の後退を起こしていた可能性があった。近年行われた研究では、すべての年齢の成人で自由継続周期が平均24時間11分であることが示された。
一般人200名を対象とした調査で、夜型の人は朝方の人より2.83倍、中間型の人に比べ5.01倍うつになる危険性が高いことが示されている(Hisalgo MP, et. Al. Psychiatry Clin Neurosci 63:283-290, 2009)。
Kitamuraらは日本人一般成人1170名を対象として、クロノタイプごとの抑うつ状態(CES-d得点16以上)の出現を検討した。強い夜型(EE群)では、約半数が抑うつ状態を示した。
また、平均CES-D得点も、夜型嗜好性が強いほど高く、強い夜型ではカットオフ値に近い平均得点15.85点を示した。

睡眠は夜型指向性が強まるにつれて、実際の入眠および覚醒時刻は有意に後退した。
いずれのクロノタイプでも入眠時刻は希望入眠時刻とさほど差がなかったのに対し、実際の覚醒時刻は夜型指向性が強いクロノタイプほど希望覚醒時刻と大きくかい離して早い時間帯に収束した。その結果、強い朝方に比較して強い夜型は平均約睡眠時間が希望時間よりも一時間ほど短くなっていた。

http://chronobiology.jp/journal/JSC2012-2-068.pdf
(クロノタイプ=朝型夜型:朝方=二歩で頃に目覚め、早い時間帯に活発に活動し、夜は早々と床に就く人、夜型=日が高くなってからようやく置きだし、昼間はなかなか元気が出ず、夜になってから目が冴えてきて、深夜遅くにようやく眠りにつく人)

うつ病患者の90%以上は不眠を訴え、不眠を中心に訴える患者の20%(中高年では50%)がうつ病を発症しており、糖尿病患者の20%、高血圧患者の30%がうつを合併しているとの報告があり、不眠のあった人の3年後にうつになる確率は20歳代で4倍、高齢者で3倍とされている。
島らが行った、2000年保健福祉動向調査で睡眠時間と抑うつ状態を検討した結果では、睡眠時間が減少するとともに抑うつ状態は強くなり、6時間以上の睡眠の確保が望ましいことがわかった。

別の睡眠時間とうつ病の頻度を調査した研究では、7~8時間睡眠の人がうつの頻度が一番少なく、それ以上でも、それ以下でもうつ症状の頻度は増加していた。

年齢別に睡眠時間とうつ状態(CES-D調査票:抑うつ状態自己評価尺度での評価点)との関係を調べた結果 J Affect Disord. 2008 Apr;107(1-3):181-186

国や文化、習慣により、適正な睡眠時間は異なる可能性があるが、アメリカ医学部男子学生1053名の追跡量差で、不眠経験者と未経験者では40年後のうつ病発症頻度は3倍強であり、34年後の時点で13名の自殺者を認めており、不眠があることにより、精神的なストレスが増加することは事実のようである。

http://www.e-kensa.org/aroma/sleep/article_09.html

睡眠不全の原因
1. 心理的原因:ストレス、過重労働、夜更かし、ハラスメント、人間関係
2. 身体的要因:外傷、関節リウマチなどの痛みを伴う疾患、湿疹や蕁麻疹などの痒みを伴う疾患、喘息発作、頻尿、花粉症など
3. 精神医学的原因:不安、抑うつ
4. アルコール、カフェイン、ニコチン、抗がん剤、自律神経・中枢神経に作用する薬剤、ステロイド剤などの服用薬剤
5. 生理学的原因:海外旅行や出張による時差ボケ、受験勉強や職場の勤務シフトなどによる生活リズムの昼夜逆転などのライフスタイルの変化

気分障害に含まれるメランコリー神話型の従来のうつ病、双極性障害2型、気分変調症に加え、適応障害やパーソナリティー障害などの多くの疾患を一連のものとして捉えることができ、抑うつ症状を認める疾患群を、抑うつスペクトラムとして、厳密に区別することができない疾患群としてとらえられるようになってきた。

林直木、坂元薫、ほか:精神科診療における説明とその根拠。専門医のための精神科臨床リュミエール9、初版:40-55、中山書店、2009より引用
ICD-10の診断基準も気分障害の診断コードF3領域だけでもF30の躁病エピソードからF39の特定不能の気分障害まであり、これ以外の不安障害を主とする神経症性障害F4や統合失調症F2でも抑うつ状態を生じるので、明確な臨床所見がない場合には診断が困難である。

http://yaplog.jp/ayukko/archive/498

双極障害(躁うつ病)とつきあうために 2015年10月12日日本うつ病学会 双極性障害委員会

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2016年7月 5日 火曜日

うつと睡眠障害 海老澤 尚 先生

2016年6月21日(火) 
演題「うつと睡眠障害」
演者: 医療法人和楽会 横浜クリニック 海老澤 尚 先生
場所:ホテル横浜キャメロットジャパン
内容及び補足「
うつ病患者は年々増加してきており、男性よりも女性に多く認められる。男性においては30-50歳代に多くみられるが、女性においては、30歳代以降高齢者においても多くみられる。

うつ病と診断された患者さんの初診時に受診した科は、精神科は5.6%と少なく、半数以上は内科を受診している。

そして、うつ病患者が初真意を受診した時に、うつ病・うつ状態と診断・説明されたのは11%しかなく、異常なしと診断された患者は9%もいた。プライマリ・ケア医でうつ病の基準を満たす患者がうつ病と正しく診断された頻度は50%に過ぎないとも言われている。

正しく診断するためには、身体症状、精神症状を訴えてくる患者においてまず、うつ病と疑うことが重要である。

うつ病を疑うコツとして以下のような特徴がある。
1. 多彩な訴え
2. とらえどころのないあいまいな症状
3. 身体所見や検査結果に比べて症状が強い
4. すでに行われた様々な検査に異常を見ず、しかも長く持続する症状
5. 「この症状さえ取れたら、元気でやれそうな気がします」との答え
6. 調子が悪いのに「休むことができません」とのこたえ

診断が困難な理由の一つに、患者自身が自らの症状を上手く伝えられないという点もある。
下の図は患者自ら訴えの有ったものと、医師が問診で引き出した症状との割合である。最初にどの科を受診するかによって、この症状の訴える頻度は異なってくるが、多くの場合、疲労感や倦怠感の自覚はあるが、精神症状については医師に訴えることが少ないことに注意する必要があり、医療従事者の方から問いかけていく必要がある。

うつ病に伴う身体症状の出現率は統計により数値は異なるが、睡眠障害がかなりの率で認められ、体重減少も半数以上で認められている。

うつ病と不安障害は共通の症状が多いが、うつ病と不安障害を見分けて適切な治療を行う必要がある。
睡眠障害であっても、うつ病によくみられるのは早朝3、4時に目が覚める早朝覚醒が特徴的であり、不安障害では頭に浮かぶ心配事で睡眠が妨げられる入眠障害が多い。
集中困難では、うつ病では気力・意欲、興味・関心の低下のためであるが、不安障害では、頭に浮かぶ心配事のために集中して考えることが妨げられている。これらの違いを問診で確認する必要がある。


うつ病を合併する率は基礎疾患によって異なるが、身体疾患の重症度が増すにつれて、うつ病の合併率も高くなる。


うつ病の診断は
ICD-10の診断基準

DSM-4の診断基準

がよく使われる。
うつ病の症状は、「抑うつ気分」「興味または喜びの消失」のどちらかが現れ、その他にもいろいろな精神症状と身体症状を伴う。
憂鬱な気分や何もやっても楽しくないという状況が二週間以上続いた時には、うつ病を疑って問診を試みる必要がある。

うつ病の成因としては、遺伝的訴因に、環境因や身体要因が作用し発病すると考えられている。

うつ病になりやすい病前性格としては
循環気質(Kretschmer 1921)
1. 人付き合いが良い
2. 気立てが良い
3. 親切
4. 朗らか
5. ユーモアに富む
6. 元気
7. 激しやすい
8. 物静か
9. 落ち着きがある
10. 苦労性
執着性格(下田 1950)
1. 仕事熱心
2. 凝り性
3. 徹底的
4. 正直
5. 几帳面
6. 正義感が強い
7. 責任感が強い
メランコリー親和型性格(Tellenbach 1961)
1. 秩序を重んじる
2. 他人に気を遣う
3. 頼まれるといやといえない
4. 真面目
5. 正直
6. 仕事熱心
7. 過度に良心的・小心
8. 消極的・保守的
9. 頑固
10. わがまま(近親者に)
などの性格的傾向があると考えられている。
うつ病を発症する誘因や状況としては、個人・家庭に関係する出来事や職業に関係する出来事として以下のようなものがある。

病態としては、神経伝達物質であるセロトニンが減少すると、不安や焦燥感、落ち込みといった症状が出やすく、ノルアドレナリンが減少すると、気力や行動力が減少し、ドパミンが減少すると楽しみが喪失するといわれている。

Leonard, B. E. et al.: Differential Effects of Antidepressants, 1999, pp.81-90, Martin Dunitz Ltd, London
治療:
1. ストレスの量を軽減する
職場環境・仕事量を調節する
仕事に優先順位をつける
アサーション(Assertion:自分と相手を大切にする表現方法)トレーニングを行う
http://www.nsgk.co.jp/sv/kouza/at/beginner.html
適切な自己表現をする
叱責と励ましは避ける
周囲との相談、良好な人間関係を築く
2. ストレスの受け止め方を変えて過剰にストレスを受け取らないようにする
認知行動療法:物の受け取り方や考え方を変えて気持ちを楽にする精神療法
http://www.ncnp.go.jp/cbt/about.html
3. 脳のアンバランス、機能不全を改善する
休養、睡眠、薬物療法、精神療法がある

うつの治療経過は、下表のように「反応」、「寛解」、「回復」、「再燃」、「再発」の五つに分けられ、下図のように経過するが、臨床において明確に判断することは困難なことが多い。


鬱の薬物治療においては概念的に3つの治療期に分けられる。
急性期:治療開始から寛解まで
継続治療期:寛解から回復まで
維持治療期:回復後の再発予防
急性期治療による症状消失後の8週間は再燃しやすく、中等度以上のうつ病の場合、寛解した後も再燃防止のため、4~9か月にわたる継続治療を行うべきであり、さらに、複数回の再発を繰り返した患者では再発予防のために、数年から障害にわたる維持治療が求められる。
http://www.jcptd.jp/medical/point_10.pdf

薬物療法:下記のように多くの種類があり、個々の患者に応じた選択肢がある。
SSRI(選択的セロトニン再取り込阻害薬)
うつ病患者では神経伝達物質の一つであるセロトニン量が減少しているので、神経終末におけるセロトニンの再取り込を阻害して神経細胞間のセロトニン量を増やし、抗うつ効果を発揮すると考えらえている。
フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)、パロキセチン(パキシル)、セルトラリン(ジェイゾロフト)、エスシタロプラム(レクサプロ)。
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込阻害薬)
セロトニンとノルアドレナリンの両方の取り込みを阻害することで抗うつ効果を発揮すると考えられている。
ミルナシプラン(トレドミン)、デュロキセチン(サインバルタ)、ベンラファキシン(イフェクサー)
NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
セロトニンとノルアドレナリンの放出を促進させて抗うつ効果を発揮すると考えられている。
ミルタザピン(リフレックス、レメロン)
ノルアドレナリンが作用するα受容体にはα1とα2があり、α1受容体を刺激して意欲や活力を上昇させ、ノルアドレナリン放出抑制をしているα2受容体を阻害してノルアドレナリンの放出を促進させて効果を発揮する。また、ノルアドレナリンがセロトニン細胞体上に存在するα1受容体を刺激してセロトニン(5-HT)神経の発火促進をするDual actionがある抗うつ薬と考えられている。

また、5-HT神経はGABA神経細胞体の5-HT2受容体を介してGABA神経を活性化しているが、このGABA神経はNA神経細胞体に存在するGABAA受容体を介してNA神経の活性化を抑制している。ミルタザピンは5-HT2受容体を遮断することによって、このGABA神経を介したNA神経に対する抑制系調節を解除して、効果を発揮している。

http://medical.radionikkei.jp/suzuken/final/090910html/

三環系抗うつ薬:脳内で分泌されるセロトニンとノルアドレナリンの再取り込を阻害し増加させる薬剤。その他にも、シナプス後部のヒスタミンH1受容体、M受容体、α1受容体なども遮断するので、便秘、口渇などン副作用が多い。
クロミプラミン(アナフラニール:脅迫症状や不安により作用するノール:抗不安作用が強いイミドール、トフラニンール)、ノルトリプチリン(ノリトレン:意欲低下の改善が強いキサン)、ドスレピン(プロチアデン)、ロフェプラミン(アンプリット)

四環系抗うつ薬:三環系抗うつ薬より抗コリン作用が弱いため、便秘や口渇などの副作用が少ないが、眠気が強く、抗うつ作用が弱い
マプロチリン(ルジオミール:パニック症状には効果ない)、セチプチリン(テシプール)、アンセリン(テトラミド)

軽症・中等症の治療アルゴリズムでは、抑うつのみならず、不安、恐怖などの他の症状への作用や副作用を考慮して、SSRIやSNRIが第一選択薬とされる。

その他に抗不安薬や睡眠導入剤も併用することが少なくないが、ベンゾジアゼピン系の薬剤は、8か月以上の長期使用により1/3が依存症になるといわれており、状態に応じて減量、休薬すべきである。
プライマリ・ケア領域では、軽症例にスルピリドを投与すると比較的早期に著明に改善することが多くよく用いられている。
スルピリド(ドグマチール):統合失調症治療薬としても使用されるドパミン受容体阻害薬であるが、軽症うつ病では50~150㎎の低用量で使用され、この量であれば、ドパミンを遊離する作用が認められ、抗うつ効果を発現する。しかし、漫然とした長期使用の際には、振戦や小刻み歩行などの錐体外路症状や肥満などの副作用が発現することがあり、高齢者に発現しやすく、注意が必要である。また、高プロラクチン血症のために、乳汁漏出、月経異常、男性での女性化乳房といった副作用も起こる。

投与量は、下表にある初期投与量を参考に決め、副作用、反応を考慮しながら漸増する。高齢者の場合には、初回投与量や維持量を成人よりも少なめ(半量を目安)にする。
薬剤中止時は、薬剤中止に伴う再燃や、断薬症候群などの副作用を防止するために漸減することを心がける。


認知行動療法:うつ病に対する代表的な精神療法である。
認知とは「ものの考え方」、「受け取り方」であり、うつ病患者では、自分に対する認知、自分を取り巻く世界に対する認知、将来に対する認知にゆがみある。よく見られる認知のゆがみとして以下のようなものがある。
・過度の一般化(ある悪い出来事が起きたら、それがいつも起きるだろうと考えてしまう)
・破局的思考(ちょっとした困難を大変な災難のように考える)
・恣意的な推論(証拠がないのに、独断的に推論・判断してしまう)
・「~すべし」という思考(「~すべき」と考えてしまうので自分を常に追い込んでしまう)
・誇張と矮小化(自分にとって良くないことを過大に考え、良いことを過小評価してしまう)
・全てか無かの思考(100%できていないとだめだと考えてしまう)
・個人化(自分に関係ないことも、自分に関連付けてしまう)
・選択的抽出(自分の考えを指示するような、数個の論拠だけを選び出し、他の論拠を無視してしまう)
こうした認知のゆがみが、うつ病患者に多く見られ、その思考のために患者自身を苦しめ、うつ病を悪化させたり、回復を遅らせている。そのことを指摘し、認知の是正をしようというのが認知療法である。
患者の考え方の証拠を探し・検討して、推論に飛躍がないか、他の考え方がないかを探してもらったり、思考の記録をつけてもらい、患者自身の陥りやすいものの見方、考え方のパターンに気付いてもらい、是正していく方法を身につけてもらう。
うつ病患者の行動の変容を目的とするのが行動療法である。症状が現れたり悪化したりするような様々な場面でどのようにふるまえばよいかを考え、患者自身がその場面に適応できる行動を身につけてもらうよう援助していく。具体的には日常の活動記録をつけてもらい、症状に応じて段階的な行動の課題を割り当てて実行してもらったり、ロールプレイなどを通して、行動のシミュレーションをしたり行動の変容をはかる。
場合によっては、リラクゼーション、呼吸法の訓練なども行う。

参:
一般的な副作用:
セロトニン受容体の阻害:眠気、鎮静作用など
ムスカリン受容体の阻害:口渇、便秘、頻脈、視力調節障害、失見当識、記憶障害など
アドレナリン受容体の阻害:起立性低血圧、めまい、失神など
セロトニン受容体の刺激:悪心、嘔吐、便秘など

セロトニン症候群:
SSRIやSNRIなどのセロトニン作動薬投与により、脳内の細胞外セロトニン濃度が極端に高まることによって発症し、ときにより致死的な状態になることがあり、MAO阻害薬やセロトニン再取り込阻害作用の強いクロミプラミンやトラゾドンなどやセトロ人濃度を上げるリチウムとSSRIの併用時に起きやすい。
多くは原因薬剤の開始・増量から24時間以内に置きやすく、原因薬剤の中止徒歩駅などにより多くは予後良好で、症例の70%が24時間以内に回復するとされている。
セロトニン諸侯群の診断基準

Sternbach, 1991

断薬症候群(中断症候群):
SSRIの退薬症状は特異的で、依存による退薬症状ではないので、断薬症候群Discontinuation syndromeといわれており、平衡感覚の異常、近くの異常、衝動的な行動があらわれ、同じSSRIの再投与により、72時間以内に症状は消失する。
断薬症候群の診断基準試案

Black K, et al:Psychiatry Neurosci. 25:225-261, 2000

セロトニン神経の細胞体は脳幹の線条核に存在する。

ノルアドレナリン神経のほとんどの細胞体は脳幹の青斑核に存在する。

神経伝達物質で考えると、神経終末から分泌されたセロトニンがシナプス間隙に少ないために症状が出ていると考えられている。

日本うつ病学会
うつ病診療の要点-10
うつ病の病態・診断・治療 鍋島俊隆先生

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2015年9月 7日 月曜日

認知症の理解と援助 杉山 孝博 先生

2015年9月5日 はまぎんホール ヴィアマーレ
演題「認知症の理解と援助」
演者: 川崎幸クリニック院長 杉山 孝博 先生
内容及び補足「手
公益社団法人『認知症の人と家族の会』を1980年に設立してから35年たちました。
2002年に実施した「家族を通じてぼけの人の思いを知る調査」でいろいろなことが分かりました。
特に強く思ったのは認知症の人は、もうダメになっているのではなく「ぼけても心は生きている」ということです。
以下にいくつかのコメントを載せます。
キリスト教会の牧師と付属幼稚園の園長をしており、音楽が好きでオルガンやピアノを弾いたり、コーラスの指導をするのが好きだった岩切健さんは1987年認知症と診断され、13年後68歳で天に召されました。診断されて2年後に書かれたのが下の詩です。
『僕にはメロディがない 和音がない 響鳴がない
頭の中に いろいろな音が 秩序を失って 騒音を立てる
メロディがほしい 愛のハーモニーがほしい
この音に響音するものはもう僕から去ってしまったのか
力がなくなってしまった僕はもう再び立ち上がれないのか
帰ってくれ僕の心よ 全ての思いの源よ
再び帰ってきてくれ あの美しい心の高鳴りはもう永遠に与えられないのだろうか
いろんなメロディがごっちゃになって気が狂いそうだ
苦しい 頭が痛い』
認知症の患者さんの苦悩が適切に表現されている詩です。
http://www.ceres.dti.ne.jp/~makotu/taikenki.htm

『夕方になるといつも泣き出していた。なぜ悲しいのかと聞くと、「こんなにバカになってしまって ・・・」という言葉が返ってきた。また、近所に一緒に出かけると、人が通りかかると物陰に隠れようとしていた。「こんなにバカになった姿を人に見られたくない」、そんな言葉が返ってきた。』
いろいろな刺激を与えたほうが良いと考え、つい外に連れ出そうとしがちであるが、認知症患者さんにとっては、自分の変わった姿を知り合いに見られたくないという気持ちがあるので、抵抗するのはこういった気持ちがわかると、当然の反応だと、理解できます。

『「母さん、3月になったら、レコードでも買うて、きれいな服を着いや」。夫はまじめな顔で、じっと私を見つめていった。呆けても失わない夫の優しさがうれしかった。』
物忘れがひどい状況でも、ふとよい状況になることがあり、優しい言葉が言えるんです。

『「お父さん、本当にありがとう。よく世話をしてくれてありがとう。本当にやさしいんだから。いろいろ心配かけてごめんなさいね。いつまでも元気でいてね。」と。前後、支離滅裂な内容を言い続けていたのに、これが妻が私に言った最初で最後の正気の言葉となりました。(略)私は、この時、最後まで、妻をやさしく介護してやろうと決心しました。』
突然的な試行に戻って発現されることがあり、この感謝の言葉が、家族の支え・癒しになっています。

『デイサービスに行ってきて、「今日はどんなことをしていましたか」と聞くと、「変な年寄りがいるで」と言う。時には「工場に行ってきた」とか言う。若い時、割り箸工場で働いていたころを思い出しているのかと思った。
最近の記憶が思い出せずに過去の自分の状況に戻っているのです。この時に、「そうじゃないでしょう。デイサービスで○○してきたじゃない」と訂正しようと繰り返すと、「この人は自分に現実にやっていないことをしたかのように思い込ませようとしている」と思い込んで拒否反応を示すようになることもあるので、昔にタイムスリップしてその時の話をしていると考え、話を合わせる方がよい。

『痛いリハビリに抗議して「イヤ、イヤといったらイヤ!しないというたらしない。人がこれほどイヤと言うものを、皆は、何の権利があって無理強いするのか、その理由を。言え人権無視じゃあ」
身体が固くなるのを予防するために行っている痛いリハビリは、本人がその目的を理解できて初めて意味のあるものになるのに、現状の体が硬くなっている理由も、これから行おうとする痛いリハビリの意味が分からなければ、それこと人権無視の行動と思われても仕方がありません。

しかし、実際介護する家族の負担は、大変なものです。
介護家族のたどる四つの心理ステップがあります。
第一ステップ:戸惑い・否定
認知症の人の異常な言動に戸惑い、否定しようとします。悩みを他の肉親にすら打ち明けられないで一人で悩む時期です。
第二ステップ:混乱・怒り・拒絶
認知症の理解が不十分なため、どう対応してよいいか分からず混乱し、些細なことに腹を立てたり、叱ったりします。精神的・身体的に疲労困憊して認知症の人を拒絶しようとします。一番つらい時期です。医療・福祉サービスなどを積極的に利用することで乗りやすくなります。
第三ステップ:割り切り、または諦め
怒ったり、イライラするのは自分に損になると思い始め、割り切るようになります。諦めの境地に至ります。同じ認知症の症状でも問題性は軽く感じるようになります。
第四ステップ:受容
認知症に対する理解が深まって、認知症の人の心理を自分自身に投影できるようになり、あるがままのその人を家族の一員として受け入れることができるようになります。

認知症の介護において最大の問題は、認知症の症状の理解が困難なことにあります。
今言ったことも忘れてしまう酷い物忘れ、家族の顔すら忘れてしまう失認、金銭・物に対する酷い執着、徘徊、失禁など多彩な症状を、介護者は理解できずに、振り回されてしまいます。認知症の症状を理解し、上手な対応が可能になるように工夫したのが『認知症を良く理解するための9大法則・1原則』です。最初は5大法則として発表しましたがその後改訂を重ね2009年8月以降現在の9大法則・1原則になりました。

第1法則 : 記憶障害に関する法則
*記銘力低下:話したことも見たことも行ったことも直後には忘れてしまうほどのひどい物忘れ。同じことを繰り返すのは毎回忘れてしまうため。
通常の物忘れは3回目に言っているとき、先に言ったことを思い出すので、4回目には言わなくなりますが、認知症があると4回目以上繰り返して言います。ここに差があると思います。
訂正してもまた繰り返されるので、今度は違った対応をしようとして、疲れていくのです。最初の対応も忘れているので、同じ返事を繰り返す対応で構いません。そう思うと少し疲れる程度が減ります。

*全体記憶の障害:食べたことなど体験したこと全体を忘れてしまう。
認知症の経過の中で食欲が亢進している時期があります。不思議とそういった時期は余分に食べても太りません。活動も亢進しているので、消費エネルギーが多くなっているからと思われます。その時には、『さっき食べたじゃない』と注意するのではなく、「今から作るので、それまでは、バナナ(おにぎり)を食べてできるまで待っていてください」といった対応をしましょう。この時期はお腹が空いているので、夜中におきだして、食べ物を探し回ることも起きます。その対応としては、軽食を寝る前に用意して、テーブルにおいておくのです。食べて食欲が満たされれば、寝てくれます。

*記憶の逆行性喪失:現在から過去にさかのぼって忘れていくのが特徴で、昔の世界に戻っています。
現在から記憶が遡って消失しているので、理解できません。その時は、年を取った伴侶のことも理解できません。
夕方になるとソワソワして落ち着かなくなったり、少しのことに声を荒げたり、「そろそろ家に帰らせていただきます」と徘徊を始めたりする『夕暮れ症候群』も、このために生じています。若いころの自分の記憶には、新しく家を建てたり、引っ越しをしたりした、記憶がないので、他人の家に行っている状況であり、この時間になると家に帰らなければいけないという考えになり、帰るためにそわそわしたり落ち着かなくなってくるのです。
そういう時には、一緒に一回りして帰ってくるのがよいでしょう。
鏡を見せて、現在の自分を認識させようとしても、若い自分が念頭にあるので認められません。暗くなって窓に映った年老いた自分を見て、「知らない年配の人がこちらを覗き見している。」と認識したり、注視していると「睨んでいる」と思い騒ぐことにもなります。窓を開けて人がいないことを示しても、また閉じると見えるので、不安収まりません。そうならないために、暗くなる前にカーテンを引きましょう。

第2法則 : 症状の出現強度に関する法則
より身近な者に対して認知症の症状がより強く出ます
幼児はいつも世話をしてくれる母親に対しては甘えたり、わがままと言ったりして困らせますが、他の人に対してはもっとしっかりした態度をとるものです。母親を絶対的に信頼しているから、わがままが出るのです。認知症の人も介護者を最も頼りにしているから認知症の症状を強く出すと考えるのは、類推のしすぎでしょうか?
そしてまた、私たち自身も、自分の家の中と他人の前とでは違った対応の仕方をするものです。よその人に対しては体裁を整えます。ですから、認知症の人が他人の前でしっかりした対応をするのを異常だと思うほうが、異常だと思いませんか。自分も相手も同じ立場だと理解できた時に初めて、相手にやさしくなれるのではないでしょうか。

第3法則 : 自己有利の法則
自分にとって不利なことは絶対に認めないというものです。ものがなくなっていつもと違うところから見つかった際に、「ほらごらんなさい、ここにしまっておいたのを忘れたのよ。ここにしまうのはおじいちゃんしかいないんだから」といわれても、「いや自分はそんなところへしまった覚えはない。誰かがそこにしまったんだ。」と必ず言い返します。その際に、難しいことわざなどを交えて行ったりすると、周囲の人はおじいちゃんを認知症になっているとはとても思えません。しかし、詳細を知っている人からすると言い訳の内容に明らかな誤りや矛盾が含まれているので、「都合の良いことばかり言う勝手な人」「嘘つきだ」と本人を低い人格の持ち主と考え、介護意欲が低下します。
こうした認知症の人の言動には自己保存のメカニズムが本能的に働いているに違いありません。つまり、人は誰でも自分の能力低下や生存に必要なものの喪失を認めようとしない傾向があり、その発現なのです。認知症がなければ、推理力や判断力などの知的機能により、相手がいっていることがより正しそうだと思えば、自分の記憶違いの可能性を考え、考えを修正しますが、認知症の人はこの知的機能が低下するため、本能的な行動が表面に出てしまうのです。

第4」法則 : まだら症状の法則
正常な部分と認知症として理解すべき部分とが混在する。初期から末期まで通してみられます。常識的な人だったらしないような言動を、お年寄りがしているため周囲が混乱しているときには「認知症問題」が発生しているのだから、その原因になった言動は「認知症の症状」であるととらえましょう。
大事な着物がみあたらなくて隠したでしょう。と身に覚えのないことを、毎日責められると、誰でもパニックになるに違いありません。同じことを寝たきり全面介助が必要なおばあちゃんがいった場合には、「またおばあちゃんがおかしなことを言っている。どうせ本気で言っているわけではないので、聞き流しておこう。」と思えるはずです。一見元気な状況下で言われるので、辛いのです。実は、こういった些細な思い違い考え違いは、認知症のない普通の人でも、時に見られることなのです。会社で非常に有能で素晴らしい判断力や企画力を発揮する人が家に帰ると「粗大ごみ」扱いされるのですから。
普通の人にも見られるまだら症状が、認知症の人ではより強く高頻度に見られているだけなのだと理解すれば、広い気持ちで認知症の人と接することができるようになるのではないでしょうか。

第5法則 : 感情残像の法則
言ったり、聞いたり、行ったことはすぐ忘れます(記銘力低下の特徴)が、感情は残像のように残ります。理性の世界から感情の世界へ移行しているのです。
弱肉強食の世界に住む動物たちは、相手が敵か味方か、安心して気を許せる対象化、否かを速やかに判断し、感情として表現します。認知症の人も同じような存在であり、安全で友好的な世界から抜け出てしまったような状況にある認知症の人は、感情を研ぎ澄まして生きざるを得ない世界の中におかれているのです。
感情が残ると言っても、悪い感情ばかりが残るわけではないので、良い感情が本人に残るように接することが大切です。「本人の言うことを受け入れて、穏やかに対応するのが良いと先生は言われますが、介護をする身にもなってください。いうことを聞かず、迷惑なことばかりする人にいい顔はできませんよ」と介護の人は訴えられます。そいった人に対して、私は「毎日慣れない介護をし続けなければならないあなたの気持ちはよくわかります。しかし、この時期は介護者にとっても本人にとっても一番つらい時期なのです。良い感情を与えるようにした方が、結局あなたにとっても楽になるはずです。」と答えています。そのためには、四つのコツがあります。
1. ほめる、感謝する:「上手ね」「ありがとう。助かったわ」などの言葉を言い続けます。
2.同情(相槌をうつ):「ああ、そう」「そういうことがあったのですか」「大変ですね」のように相槌を打つことです。

3.共感:「よかったね」を話の終わりに付け加えます。「ご飯美味しかった?よかったね」「その着物よく似合いますよ。良かったね」「雨が上がって晴れましたよ。よかったね」というようにします。なぜか、「よかったね」を話し続けると本人は介護者との間に共感を持つようになり、穏やかな表情になってくるのは間違いありません。混乱の真っただ中にある介護者の方は「よかったね」から話してみてください。

4.謝る、事実でなくても認める、演技をする。認知症の人は『忘れたことは本人にとって事実ではない』『本人の思ったことは絶対的な事実である』という原則があります。食べたことを忘れてしまえば「食べていない」というのが本人にとっての事実になりますし、「お金を貸した」と思い込んでいれば、「借りた金を返さないのはけしからん。返してくれ」となります。この思いに対して「ご飯は食べたばかりでしょう」「借りてもいないのに変なことを言わないで」と言っても、通用しないばかりか、ますますこだわりが強くなって悪感情のみが残ってしまいます。そういった場合には、「今夕飯の支度をしているのでもう少し待っていてください」「今は手元にお金がないので、明日銀行で下してお返しします」と、本人の思い込みをいったん受け入れて、別の方向に結論を持っていく方が本人の納得を得やすいのです。本人の世界に合わせてセリフを考え、演技をする俳優になったつもりで対応するのが良いのです。
 「ごまかしたり、嘘をつくことは、良心がとがめて、とてもできません」と介護に慣れていない介護者は言います。そのような人に対して、私は、「ドラマで悪役を演じている俳優は、悪役を演じることを悩んでいないでしょう。あなたも認知症の世界で悪役を演じているつもりで割り切ってください」と話すことにしています。

第6法則 : こだわりの法則
ある一つのことに集中すると、そこから抜け出せなくなり、周囲が説明したり、説得したり、否定したりすればするほど、逆にこだわり続けるというのが特徴です。本人が安心できるようにもってゆくことが大切です。そのための方法として、
1.そのままにしておく:箪笥から着物を出して並べる人に対して、そのままにしておくのです。大事な着物がなくなったかもと不安になりだしているのであれば、見えなくなるとまた心配になり、出して広げることになります。落ち着くまで、そのままにしておけばよいのです。
2. 第三者に登場してもらう:「身近な人に激しい症状を指名、他人にはしっかりした言動をする」という特徴を応用するのです。家にこもりっきりで、数か月間入浴や洗髪をしない女性がいました。家族が「お風呂に入らないと病気になるよ」とお風呂を勧めても入らず、家人から相談を受けました。私が訪問診療をするようになると、私の訪問を心待ちにされるようになり、訪問の前日には、入浴して清潔な下着に着替え、さらには美容院にもいくようになりました。
3. 場面転換をする:関心を別に向けることです。夜中に大きな声を出す人に対して、「真夜中だし、近所迷惑になるので静かにしてください」と説得しても効果がありません。それよりも「お父さんの大好きなおまんじゅうがあるので食べませんか」とすすめ、「美味しいものを食べると眠くなるわね。私は休みますから、お父さんも寝てくださいね」という風に話を持っていくと寝てくれることもあります。
 昔の思い出の場面に切り替えることも有効です。趣味や興味があることを話してもらうのも手ですが、話が止まらなくなることもあるのは了解しておきましょう。
4.地域の協力理解を得る:夜間の騒音、ごみだし、隣人への被害妄想など、地域社会とかかわりを持つ認知症の症状は少なくないので、「明日は我が身」「お互い様」という理解が地域に根付いていれば、「認知症になっても安心して暮らせる地域づくり」が可能になると確信しています。
5.一手だけ先手を打つ:失禁が始まると介護者の負担が極端に増えます。「タイミングを合わせてトイレに誘導することは、介護の視点ではよいことですが、24時間一人で実行することは大変です。それでも失敗が起こることがあります。畳の上に水を通さない上敷きを強いたらどうでしょう。始末が楽になり、イライラが軽くなりますよ」と話しています。失禁を抑え込むことができなくても、後始末が簡単だと思えるだけで精神的なストレスは軽くなるものです。
 手に付いた大便をトイレの壁やタオルなどに塗り付けて汚すことを弄便(ろうべん)といいます。わざと便を塗り付けているのではなく、手に付いたべっとりしたものをぬぐってしまおうとして行動しているのです。しかもやったことを覚えていないので、叱ったり責めても行動は変わりませんし、介護者の怒りが増すだけです。トイレの壁に紙を貼っておき汚れたら取り替えるようにし、汚れてもよい布やタオルをかけておき、家族が使うタオルは別においておくようにする方が良いでしょう。
6.お年寄りの過去を知る:かつての体験が背景にある問題行動もあるので、強烈な体験やこだわりを理解し、不安感を解消するような対応をしてみましょう。例えばハイキングに行って子供を見失って必死に探し回った体験があり、歩き続けなければ気持ちがおさまらない人がいました。「心配でしたね。でも子供さんが見つかっておかったですね」と繰り返し話しかけることによって、徘徊がおさまった場合がありました。
7.長期間は続かないと割り切る:金銭やモノに対する執着のように生存に直結する症状は何年も続くことがありますが、ほとんどの症状は、半年から一年程で別の症状に変わっていきます。「1~2年前に困っていた症状は何ですか」と聞きますと、現在悩まれている症状とは別の答えが返ってきます。「1~2年前に困っていた症状は、今は消えているでしょう。同じように、現在の症状も、半年から一年程で消えると思います。何年も続くものと決めつけないで、気楽に考えませんか」と話すようにしています。

第7法則 : 作用・反作用の法則
認知症の人に対して強く対応すると、強い反応が返ってきます。認知症の人と介護者の間に鏡を置いて、鏡に映った介護者の気持ちや状態が、認知症の人の状態です。そのままにしても差し支えないものであればそのままにしてみましょう。

第8法則 :認知症症状の了解可能性に関する法則
第1~7法則でまとめたような認知症の特徴を考えれば、認知症の症状のほとんどは、認知症の人の立場に立ってみれば十分理解できるものであるという内容の法則です。
 夜中に目を覚まして家族の名前を呼んで起こすことは時に見られます。私たちが旅館に泊まって夜中に目を覚ました時を考えてみてください。自分の寝ている所がいつもの部屋と様子が違うので、誰でも一瞬不安を感じます。次の瞬間に旅館に泊まっていることを思い出して安心し、再び何事もなかったかのように眠ることができますが、診指自分がいくら考えても、なぜここにいるのかがわからなかったとしたらどうでしょう。「いったいなぜこんな知らないところにいるのだろう」「家族は自分を置き去りにして、どこかへ行ってしまったのではないか」「眠っている間に誘拐されて、ここに閉じ込められているのではないか」などと様々なことが頭に浮かんできて、数分後にはひどい恐怖に襲われることになるでしょう。そうなったとき誰もいなければ一番頼りになる人の名前を呼んでその人が来てくれるまで呼び続ける気持ちになることは理解できると思います。
 大切なことは、夜中に目が覚めた時に、今いる場所が自分の部屋だとわかるようにしてあげることです。部屋や廊下を明るくしておき、いつも使っている洋服やたんすなどがすぐにわかるようにしておくことや家族の声や好きな音楽を録音したテープを流すなど、いろいろな音が聞こえるようにしておくのも一つの方法です。

第9法則 :衰弱の進行に関する法則
認知症の人の老化の速度は非常に速く、認知症になっていない人の約3倍のスピードです。正常の高齢者の4年後の死亡率が28.4%であるのに、認知症高齢者の4年後の死亡率は83.2%と聖マリアンナ医大長谷川名誉教授が報告されています。


介護に関する原則:認知症の人の形成している世界を理解し、大切にし、その世界と現実とのギャップを感じさせないようにすることが原則です。

参:公益社団法人:認知症の人と家族の会
「認知症」の人のために家族が出来る10ヵ条
があります。参考に上げておきます。
1.見逃すな「あれ、何かおかしい?」は、大事なサイン
2.早めに受診を。治る認知症もある。
3.知は力。認知症の正しい知識を身につけよう。
4.介護保険など、サービスを積極的に利用しよう。
5.サービスの質を見分ける目を持とう。
6.経験者は知恵の宝庫。いつでも気軽に相談を。
7.今できることを知り、それを大切に。
8.恥じず、隠さず、ネットワークを広げよう
9.自分も大切に、介護以外の時間を持とう。
10.往年のその人らしい日々を。

参考サイト:
認知症の理解と援助~行動・心理症状(BPSD)の理解と対応~
認知症をよく理解するための9大法則・1原則」工夫と発展の経緯f

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2015年8月20日 木曜日

頭痛治療のコツ 坂井文彦先生

2015年6月16日 横浜市健康福祉総合センター
演題「頭痛治療のコツ ~生活習慣病包括治療を含んだ現場報告~」
演者:埼玉精神神経センター 埼玉国際頭痛センター センター長 坂井文彦先生
内容及び補足(含質疑応答)「
慢性頭痛は片頭痛、緊張型頭痛など、頭痛そのものが病気と考える。痛みを取れば治るものではなく、MOHを作りかねない。

参:MOH:medication overuse headaches
薬物乱用頭痛(MOH)の診断基準
1. 頭痛は1ヵ月に15日以上存在し,CおよびDを満たす
2. 8.1「急性の物質使用または曝露による頭痛」に示す以外の薬物を3ヵ月を超えて定期的に乱用している
3. 頭痛は薬物乱用のある間に出現もしくは著明に悪化する
4. 乱用薬物の使用中止後、2ヵ月以内に頭痛が消失、または以前のパターンに戻る
エルゴタミン乱用頭痛: 3 ヵ月以上の期間、定期的に1 ヵ月に10 日以上エルゴタミンを摂取している
トリプタン乱用頭痛:3 ヵ月以上の期間、定期的に1 ヵ月に10 日以上トリプタンを摂取している
鎮痛薬乱用頭痛:3 ヵ月を超えて、1 ヵ月に15 日以上単一の鎮痛薬を服用している
オピオイド乱用頭痛:3 ヵ月を超えて、1 ヵ月に10 日以上オピオイドを服用している
複合薬物乱用頭痛:3 ヵ月を超える期間、1 ヵ月に10 日以上複合薬物を摂取している
薬物乱用頭痛の治療
治療の原則は、以下の3つです。
1. 原因薬物の中止
2. 原因薬物中止後に起こる頭痛(反跳頭痛)に対する治療
3. 予防薬の投与
まずは乱用の原因となった薬物を中止し、その後に起こった頭痛は別の治療薬で対処する。頭痛ダイアリーを記録し、頭痛が起こった日数、薬物使用日数を正確に把握することが重要。
https://www.jhsnet.org/ippan_zutu_kaisetu_05.html

国際頭痛群類第二版の分類は以下のようになっている。片頭痛は一次性頭痛の中に分類されている。

https://www.jhsnet.org/guideline_GL2013.html

片頭痛は国や人種によって頻度に差があり、日本人は8%程度で先進国の中では、それほど多くない。

片頭痛患者は、高血圧性疾患や糖尿病患者よりも多い。

Sakaiらによる調査では、日本人に多い頭痛は緊張型頭痛(反復発作性緊張型頭痛20.6%、慢性緊張型頭痛1.6%)が多く、国際頭痛学会の診断基準すべてを満たす片頭痛の有病率は6.0%、疑診例を含むと8.4%というデータを報告している。

片頭痛の有病率を性別に見てみると、男性が3.6%、女性が12.9%と女性が3.6倍も高率である。緊張型頭痛では男性18.1%に対して女性が26.4%、群発頭痛の男女比は逆に男性に多く男女比は5~6.7:1である。
年代別では、片頭痛、緊張型頭痛とも、男性で20~30歳代、女性で30~40歳代の有病率が高く、群発頭痛も20~40歳代で多いといわれている。

性別、年齢層別片頭痛有病率

前兆のない片頭痛は、男性で2.1%、女性で9.3%、前兆のある片頭痛は男性で1.4%、女性で3.6%という調査結果があり、前兆のない片頭痛が女性に多くみられ、月経との関連が指摘されている。

片頭痛患者の医療機関受診率は、定期的な受診が2.7%、時々通院が12.3%であるが、受診したことがない症例が47割近くもいる。

Cephalalgia. 1997 ; 17 : 15-22.
http://www.eisai.jp/medical/products/maxalt/guidance/epi.html

田島小中学校148例に対する調査では、頭痛で休学したことがある割合は3割近くあり、保健室を利用する学童は2/3近くに上った。

頭痛の診断に病態の理解が重要である。
片頭痛:慢性頭痛で悩む人の約1/4が片頭痛。
時々起る頭痛で毎日は起こらない。頭痛がない時はケロッとしているが、頭痛が始まると1~3日続き、ひどくなると脈打つような頭痛で、動くとつらい(動くと痛みがまぎれる緊張型頭痛とは対照的)。吐き気やおう吐を伴うことがある。片側が痛むことが多いが、両側痛むこともある。ストレスの最中よりもストレスから解放されたときに頭痛は起こりやすく、前兆や予兆を伴うことが良くあり、働き盛りの女性に多く、月経の前や途中に起こりやすく、10~15歳ころから始まり年齢とともにひどくなる。
片頭痛チェック項目、三つ以上あればほぼ確実:
・ 頭痛は時々おこり、月に1~2回、多いときは週に1~2回程度
・ 1回の頭痛は数時間から1~3日間続き、つらくて寝込むこともある
・頭痛がひどくなると、ズキンズキンと脈打つように痛む
・ 体を動かしたり、いきんだりすると痛みがひどくなる
・ 頭痛が起こったら、静かで、暗く、においのない部屋で横になっていたい
・吐き気がしたり、吐くこともある
・ 頭の片側が痛むことが多いが、両側が痛むこともある
・ 頭痛が起こる直前に、視界にギザギザしたものが拡がるように見えることがある
・ 頭痛が起こる1~2日前に、あくび、イライラ、むくみ、食欲亢進などの予兆が現れることがある
・ ストレスの最中より、解放されてほっしたときに起こりやすい
・月経に関連して起こることが多い
・家族(とくに母親)に頭痛もちがいる

誘発因子:ストレス、天気、ホルモン、食物(グルテン、人工甘味料アスパルテーム、グルタミン酸ナトリウム、チラミン、ココア、赤ワイン、チョコレート、チーズ、イチジク、ヒスタミン、硝酸塩を含む食品[ハム、ベーコン、ホットドッグ、サラミ]、ナッツ類、ピーナッツバター、アボカド、バナナ、シトラス、ニンニク:一部のものは因果関係がないとの報告もある)、月経、光、騒音、食事を抜く、脱水、喫煙あるいは副流煙の吸入、ある種の香水の匂い
予兆:生あくび、情緒不安定、浮腫、空腹感
前兆:閃輝暗点、失語、感覚障害、片麻痺
頭痛随伴症状:拍動性、片側性、悪心・嘔吐、睡眠で寛解、消耗感、利尿

興奮性亢進(セロトニン、ザブスタンスP)→視床下部
予兆は大脳皮質で起こる、頭痛は三叉神経で起こる

片頭痛発生メカニズム:
血管説はGrahamおよびWolffにより提唱された、片頭痛発作の原因は、頭蓋血管の反応性の異常によるとする考え方で、前兆期に脳血管が収縮し、その後さまざまな血管作動性物質の放出に伴い血管の異常な拡張が起こり血管に分布している痛覚神経が刺激された結果、拍動性の頭痛が生じるとする考え方。
しかし、Olesenらにより、片頭痛患者の発作中の局所脳血流測定で、片頭痛発作前兆期に脳血流は低下しているが、この血流減少期にすでに片頭痛発作が始まっていることが示され、血管反応性の異常のみで片頭痛の病態を指摘できないことが示された。
また、この血流低下は20%程度であり、通常の虚血を呈する50%の低下に満たないため、乏血を意味するoligemiaという単語を用いて、この血流低下の状態をspreading oligemiaと表現した。
Leaoが1944年にウサギの大脳表面への物理的な刺激や、高濃度のK+を作用させると脳神経細胞に脱分極が生じる現象を発見し、大脳皮質拡延性抑制(cortical spreading depression:CDS)として報告した。
このCDSは、約2~3mm/分の速さで周囲に伝播し、さらにCSDに伴い脳血流は一過性に上昇し、その後数時間の血流低下を示すことが動物実験において明らかにされた。
CDSとspreading oligemiaは血流低下領域の拡大する速度がほぼ等しいことおよびspreading oligemiaの伝播が、血管の支配領域とは無関係であることから、spreading oligemiaはCSDの結果生じるような大脳皮質神経細胞由来の変化を反映していると考えられた。
前兆のある片頭痛患者に診られる脳血流低下の程度は軽度であり、閃輝暗点などの前兆が出現するためには神経細胞自体の異常がはじめに起こる必要あると考えられ、片頭痛の機序としてCSDが有力な候補とされ、神経説が提唱された。
Hadjikhaniらのfunctional MRIを用いた研究で、視覚性前兆にCSDが関与することが示された。
前兆のない片頭痛においても神経症状を呈さない領域で神経細胞の活動性が変化する(clinically silent aura)ことも、この部位でCSDが生じている可能性が考えられるようになってきた。

三叉神経血管説は血管説に三叉神経の関与を加えた考え方である。
脳底部の主幹動脈から大脳皮質表面の軟膜動脈および硬膜血管には、三叉神経説由来の無髄神経線維が分布しており、頭蓋内の痛覚を中枢へ伝えている。
Moskowitzらは、三叉神経説を電気的または科学的に刺激して、硬膜に無菌性炎症である神経原性炎症を生じさせ、片頭痛発作にこの変化が関与している可能性を指摘し、三叉神経血管説を提唱した。
CDSが大脳に生じ前兆が生じる。その後、何らかの機序により硬膜の血管周囲に存在する三叉神経の軸索に作用し、神経終末からsubstance P(SP)、calcitonin gene-related peptide(CGRP)および、ニューロキニンAなどの神経伝達物質であり、血管作動性物質の神経ペプチドが放出されると考えらえる。その結果、硬膜周辺で、肥満細胞の脱顆粒や血管透過性の亢進、血漿蛋白の流出、血管拡張などの神経原性炎症が惹起され疼痛が生じ、さらに順行性の伝導により、三叉神経脊髄路核にいたり、同部位でのc-fosの産生を促し、悪心、嘔吐、自律神経の活性化、痛みなどを生じる。一方、三叉神経の逆行性の伝導はSPやCGRPの遊里を促進し、血管拡張や炎症をさらに助長すると考えられている。
家族性片麻痺性片頭痛患者において明らかにされた3つの遺伝子異常は、CSD誘発の閾値を低下させることにより片頭痛発作に関与していると考えられている。
P/Q型電位依存性Ca2+チャンネルα1Aサブユニット遺伝子(CACNA1A)のミスセンス変異は、Ca2+チャンネル機能の亢進とそれに伴う細胞内Ca2+の上昇を誘発し、CSD誘発閾値低下や伝播速度上昇を招くと考えられている。
Na+/K+ATPaseα2-subunit(ATP1A2)のミスセンス変異は、Na+/K+ATPaseの機能低下を起こし、細胞外K+濃度の上昇などを促進させ、CSDの出現や神経細胞の脱分極をきたすと考えられている。
2q24のSCA1A(神経型電位依存性ナトリウムチャンネルα1-subunit)遺伝子の変異は、脱分極後のチャンネル不活性化からの回復を促進し、神経細胞の興奮性を上昇していると考えられている。
発痛物質であるカプサイシンは侵害受容体神経に対して感受性を持ち、様々な臓器に作用し痛みを誘発するが、その情報伝達に、侵害刺激受容体であるtransient receptor potential cation channel, subfamily Ⅴ member 1 (TRPV1)受容体を介することが解明された。この情報伝達にはMAPキナーゼのサブファミリーの一つであるERK1/2(extracellular signal-regulated kinase)のリン酸化を介することも示された。
脳硬膜の感覚神経線維の中に、三叉神経節を起源としたTRPV1を含有する神経線維が存在することをSimizuらが報告し(Brain Res 2007;1173:84-91)、カプサイシン刺激で三叉神経節においてERKリン酸化が起こることを示し、脳硬膜のTRPV1受容体が、脳硬膜に生じた侵害刺激の情報伝達に関与することを示し、片頭痛の病態にも関与している可能性を示した。
脊髄神経では、炎症、外傷及び侵害刺激を加えると脊髄後角でmicrogliaおよびastrocyte肥大化が生じ、TRPV1受容体が、このような器質的変化を生じることで片頭痛に関与しているとSimizuらは考えている。

http://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/051020103.pdf

片頭痛―視床:神経伝達物質
図AはNoseda Rが提唱した片頭痛の発症機序において、視床に存在する三叉神経血管系の神経と様々な神経伝達物質との関係を示した図である。Bは様々な神経伝達物質の管を示している。

赤:グルタミン酸
硬膜の知覚が三叉神経脊髄路尾状亜核で、二次ニューロンに伝えられ視床に達する際の二次入論の伝達物質である。

茶:ドーパミン
視床下部を介して、欠伸や嘔気などの予兆を引き起こす物質。また、薬物依存、感情、dicision making、薬剤使用過多による頭痛(MOH)にも関与し、ネガティブな考え、怒り、イライラ感のコントロール、認知作業などによる片頭痛に関与すると考えらえている。

緑:セロトニン
視床と大脳皮質間の三叉神経血管系に抑制的に働く。ストレス、不安、抑うつ、睡眠、食欲、学習などと密接にかかわっている。
青:ノルアドレナリン
視床神経、三叉神経血管系神経を興奮させ、高血圧を引き起こす。β1受容体拮抗薬が視床の三叉神経血管系神経を抑制し、片頭痛予防薬として使用されている。

オレンジ:ヒスタミン
ヒスタミンH1受容体を介して血管が拡張し、その結果遅発性の頭痛を引き起こすもとと考えられてきた。一方、ヒスタミンの三叉神経血管系の資料神経への影響は、H1受容体を介して、遅発性脱分極を引き起こし、burstからtonicの状態へ変化させると考えられる。この変化は、覚醒と睡眠に大きな役割をしていて、睡眠によって頭痛が軽快することに重要な役割を果たしていると考えられている。

紫:MCH  Melanine Concentrating Hormone
視床下部から生じるMCH systemはGABAを含有し、エネルギー消費、覚醒、運動、性、自律神経系の修飾/抑制に関与していると考えられる。
食後血糖値の上昇によりMCHニューロンは活性化され、大脳皮質、皮質下、脳幹、脊髄でGABAをリリースし、睡眠を誘導したり、摂食を中止する。
摂食により、片頭痛が改善する機序は、血糖上昇により、視床下部MCHニューロンが活性化され、視床三叉神経血管系を抑制すると考えられている。逆に食事をとらないで片頭痛が惹起される機序は、欠食により、MCH系が抑制され、GABA系が減少し、GABA系の抑制により、硬膜からの三叉神経血管系が興奮するためと考えられる。

黒:オレキシン
オレキシンは外側視床下部より大脳皮質、視床、脳幹、脊髄や他の視床下部に投射している。オレキシンAとオレキシンBがあり、受容体も1と2が存在する。受容体1はオレキシンAに選択的に、受容体2はオレキシンAとBに非選択的に結合し、摂食、覚醒や交感神経系を介する発熱、心拍数、血圧に関与すると考えられている。
MCHとは逆に、血糖が降下するとオレキシン神経は活性化され、摂食、覚醒状態が引き起こされる。食事によって片頭痛が減るのは、MCHによるGABAリリースの減少だけでなく、オレキシンの抑制も関与していると考えられ、欠食による片頭痛の惹起も、血糖低下によるオレキシン神経の活性化も関与していると考えられている。

CGRP:Calcitonin gene-related peptide
血管拡張作用を有する37個のアミノ酸よりなる神経ペプチドで、頭蓋内及び外動脈に対して拡張作用を有し、さらに頸静脈的に投与すると片頭痛用の発作を誘発することが下れており、片頭痛発作時に血中CGRP濃度の上昇が報告されている。
一酸化窒素やTRPV1受容体を介して放出が促進されることもわかってきた。
CGRP受容体が視床VPMに存在し、CGRP受容体拮抗薬が視床三叉神経血管系を抑制することも示され、新たな片頭痛薬として期待されている。

Noseda R:Neurochemical pathways that converge on thalamic trigeminovascular neurons: potential substrate for modulation of migraine by sleep, food intake, stress and anxiety.PLoS One 2014 Aug4;9(8):e103929.doi:10.1371

片頭痛は脳血管の痛みが発生源で、筋緊張型頭痛は首、肩の筋肉が痛みの発生源である。
片頭痛は後頚部の鈍痛から始まることが少なくない。
後頚部の強い締め付け感が続き、その後、同側の目の奥、側頭部あるいは全体に進展・増悪する。
体動、お辞儀、いきみで増悪し、暗い静かな部屋でじっとしていると改善。
増悪すると拍動性となり、1-2日持続し、トリプタン製剤が効果なくなってくる。
三叉神経血管系と頚髄神経筋系のクロストークがあり、中枢性痛みが感作され、脳内に痛み増幅系の経路が記憶されてしまう状態で、Pain Matrixが形成されると考えられている。

参:Pain Matrix
1991年にTalbotらやJonesらのPETによる研究以来、脳内の離れた多くの部位が同時に疼痛認知にかかわっている可能性が明らかになってきた。すなわち第一次感覚皮質(Primary Somatosensory Cortex:S1)、第二次感覚皮質(Secondary Somatosensory Cortex:S2)、島皮質(Insular Cortex:IC)、前帯状皮質(Anterior Cingulate Cortex:ACC)、前頭皮質(Prefrontal Cortex:PFC)などである。
これらの部位は"Pain Matrix"と総称される。
MeIazckらが分類した、疼痛の三要素をそれぞれ担う形で疼痛という現象を成立させていると考えられている。
感覚弁別要素sensory-discriminateiv component:痛みの位置、強さ、性質:S1,S2及びIC
情動動機要素affective-motional component:痛みの不快感、いやさ:ACC
認知評価要素cognitive-evaluative component:痛みの評価:PFC
S1,S2及びIC:外側視床核からの投射を受けlateral nociceptive systemを、ACC,PFCは内側視床核からの投射を受けmedical nociceptive systemを構成する。

疼痛関連脳活動のネットワーク"Pain Matrix"の典型例

トリプタン系薬剤の作用
脳血管に作用し、広がりすぎた脳の血管を元に戻し、三叉神経からの神経ペプチドの放出を抑え、三叉神経が受けた刺激の情報が大脳に伝達されるのをブロックする作用がある。
このため、片頭痛だけでなく、嘔気・嘔吐、光過敏、音過敏などの症状も抑える。
トリプタン系薬剤の適切な服薬タイミング
トリプタン系薬剤は、前兆期に服用しても効果は期待できない。頭痛が始まり、それが片頭痛の痛みであると確信した軽度のうちに服用すると高い効果が得られる。しかし、さらに時間が経過しひどくなってアロディニア(通常なら痛みを感じない程度の刺激で痛みを感じる現象)にまでなると薬剤の効果はほとんど見られなくなる。
「片頭痛と確信したそのとき」は人によって異なるので、自分自身の片頭痛が起こる前の状況を思い出し、自分に合った服用タイミングを習得していく必要がある。「いつもは大丈夫だが、お辞儀をした際に頭痛をかじるようになった後に片頭痛が起こる」や、「普段は首を振ってもなんともないが、首を振って頭が重くなった後に片頭痛が起こる」など。

http://www.sukkirin.com/therapy/triptan.html

片頭痛治療のコツ

胃腸停滞の気配がしたら、ドンペリドン10㎎、プリンペラン㎎内服し胃腸の蠕動を正常化する。
片頭痛が始まったら、早めに(できれば4時間以内に)トリプタン1-2錠内服(時には自己注射)を行い、血管拡張を抑え、血漿漏出を治療し火元を消す。
一般的な鎮痛薬では、ボヤを消すことはできても、火元を消しきれない。
痛みが続いたら(月経時片頭痛に多い)、消炎鎮痛薬(アセトアミノフェン)を内服、または坐薬で投与し、痛みの延焼を止める。

片頭痛治療の基本的な流れ
下図のように負のスパイラルが形成され、症状をよりひどいものにしているので、不安を和らげ、安心感と希望を持たせる。


頭痛ダイアリーの利用
併用薬の工夫、自己注射の活用など
予防薬により、片頭痛発作の頻度、程度を軽減する。
カルシウム拮抗薬:ロメリジン(テラナス、ミグシス):脳血管の攣縮と拡張の差を小さくして興奮状態を鎮静化する。
β遮断薬:プロプラノロール(インデラル):脳に直接働きかけて鎮静化する。
抗てんかん薬:バルプロ酸ナトリウム(デパケン、デパケンR、セレニカR)脳の校風を抑え、片頭痛の前兆をフロックする。
抗うつ薬:アミトリプチリン(トリプタノール)片頭痛の発生にかかわる三叉神経の活動や脳の興奮を抑える。

頭痛体操:Exercise to relieve headache and stiff shoulders
片頭痛:脳内の頭痛回路が首の後ろにまで伝わり、痛みのしこりを作っている。体操により後頚筋群をほぐし、脳の痛み調節系によい刺激を送ることを目的としている。
緊張型頭痛:ストレス頭痛とも呼ばれ、首の付け根から肩にかけて筋緊張を伴う。頭を支えている頚から肩への筋肉に、ストレスによる負担がさらにかかり頭痛の原因になるといわれている。

上手な頭痛体操のコツ
頭痛体操は片頭痛の予防、特に慢性化の予防や治療に効果的です。片頭痛の結果起生じた首の後ろのしこりが続くと片頭痛が起こりやすくなります。首のしこりをストレッチ体操でほぐすと、脳の痛み調節系に良い刺激が送られます。朝夕一回ずつ、それぞれ2分間程度の体操で首の硬さがほぐれます。

片頭痛の最中に体操をすると頭痛がひどくなるので注意して下さい。一般に、脳内で起こる頭痛は動いたり息んだりすると強くなります。運動により脳の圧が上昇するためです。片頭痛は脳の血管が痛む病気ですので、軽い運動でも頭痛や吐き気が悪化します。逆に、緊張型頭痛は軽い運動で痛みの紛れるのが特徴で、片頭痛と対照的です。

頭痛の時、ちょっと体操をしてみて、ひどくなるのは片頭痛、少し紛れるのは緊張型頭痛ともいえます。自分で片頭痛を識別する方法の一つです。

腕を振る体操:
① 腕、肩の力を抜いて行う。
② 背骨(頸椎)を軸にして体を左右に回す。
③ 腕の遠心力で体を回すイメージで行う。
④ 身体をひねる目安としては、背中の約1/3が見えるように行う。

肩を回す体操:
肩だけでなく、肩甲骨も動かすよう意識する。
手が後ろに来たとき胸を張るように、肩甲骨同士が近づくように動かす。
手が前に来たとき、猫背のように肩甲骨同士が離れるように動かす。


片頭痛間欠期の筋・圧痛点に注目 (Sakai 2008)
1)片頭痛患者の後頸部に筋硬結・圧痛点
2)検者が指で圧迫すると
 -鈍痛(強い)、ときにするどい痛みを感ずる
 -患者は逃避するほど
3)するどい痛みは頭部にも放散する
4)ストレッチにより筋硬結・圧痛が消失する
Exercise to relieve headache:
The muscles around the neck support the head as well as moving it. Since these muscles have to hold up both the neck and head for a long time, they get tired and become hardened. These stiff muscles are one of the causes of headache.
This exercise stretches the muscles (inner muscles) which support the head and neck. When these muscles are stretched, their stiffness and fatigue disappear and the headache may be relieved.
1) Stand upright facing forward, keep your head still. Without moving your head, swing both shoulders to the right and the left as far as you can. Keeping the neck still as the axis, swing your shoulders. This motion will stretch the muscles (inner muscles) which support the head and neck.
2) If you do this exercise sitting in a chair, make sure that you swing your shoulders far enough so that you feel that the muscles behind your neck stretching.
http://www.mdsakai.jp/20090904cp.html

僧帽筋の静的ストレッチ:手首を後ろ手に固定し、肩が上がらないようにして、手首をつかんでいる方へ首をゆっくり倒していく。

http://www.saitama-ni.com/pdf/no33-zutuu-report.pdf

片頭痛のツボ:
完骨(かんこつ):耳の後ろにある骨のふくらみである乳様突起の下の部分から指一本分上に位置する。指に頭の自重をかけ、指も上に押し込む要領で刺激する。
天容(てんよう):完骨ツボと同じ筋上で、下あごの角の下に位置する。天容のある金全体をマッサージする。

その他の頭痛を和らげるツボ
天柱(てんちゅう):首の後ろにある筋肉の外側で、髪の生え際を刺激する。親指の先をツボに当て、残りの指で頭を包むようにして頭部の自重を親指で支えるような体勢で強めに刺激する。
風池(ふうち):天柱ツボのさらに指一本分外側にある窪みに位置する。親指の先をツボに当て、残りの指で頭を包むようにして頭部の自重を親指で支えるような体勢で強めに刺激する。

肩井(けんせい):
首と肩先の真ん中にあって、肩の筋肉の中心にあたる。
反対の手の指を広げて方においた時に丁度中指が当たる位置。体の中心に向かって長く強めに刺激する。

頭の血流を増やすツボ:
合谷(ごうこく):親指と人差し指の骨の付け根の間に位置する。
頭の血流を促す効果があり、頭痛やめまいの他、胃腸の不調にも効く万能ツボ。
気持ちよくなるまで3~5分押す。

目の痛みを伴う頭痛のツボ:
攅竹(さんちく):左右の眉頭のすぐ横にあるツボで、目の機能を調節する働きがある。


慢性連日性頭痛Chronic Daily Headache:CDH
1日4時間以上の頭痛が1ヵ月に15日以上あり、その状難いが3か月以上続いているもの。
ゴールデンウイーク明けや、夏休み後、新学期などに発症しやすく、『頭痛さえ治れば学校へ行けるはず』と考えがちで、初期のうちはそれほど頭痛の回数は多くないものの、薬を飲んでいるうちにだんだんと頭痛のパターンが変化し、回数が増加してくるとこが良くみられる。
5~17歳の平均2.2%に見られていて、12~14歳の男女に多くみられ、クラスに一人いるような状況である。
緊張型頭痛、片頭痛、両者の混合型の場合があり、一日の生活のリズムができていないことが悪化の要因と考えられ、入院させて、朝決まった時間に起きて運動させることにより、改善される。思春期のストレスなどの心理的な要素が大きな頭痛で、カウンセリングの際には、親子一緒に行うことが有効である。ヨガを行う場合にも、親子で実施している。

発作性片頭痛:他のNSAIDで効果がないのに、インドメタシンが絶対的な有効性を示す疾患。
片側性で、頭痛と同じ側に流涙、目の発赤などの自律神経症状を伴うことから群発頭痛類似の頭痛として報告された。
診断基準:
3.2 発作性片頭痛 (ICHD-2)
A. B~Dを満たす発作が20回以上ある
B. 一側性の重度の痛みが眼窩部、眼窩上部または側頭部に2~30分間持続する
C. 頭痛と同側に少なくとも以下の1項目を伴う
(ア) 角膜充血または流涙(あるいはその両方)
(イ) 鼻閉または鼻漏(あるいはその両方)
(ウ) 頑健浮腫
(エ) 前頭部及び顔面の発汗
(オ) 縮瞳または眼瞼下垂(あるいはその両方)
D. 発作頻度は大半で5回/日を超えるが、これよりも頻度が低い期間があってもよい
E. 発作は治療容量のインドメタシンで完全に予防できる
F. その他の疾患によらない

3.2.1 反復性発作性片頭痛
A. 3.2発作性片頭痛の診断基準A~Fを満たす発作がある
B. 7~365日続く発作期が1か月以上の寛解を挟んで2回以上ある
3.2.2 慢性発作性片頭痛(CPH)
A. 3.2発作性片頭痛の診断基準A~Fを満たす発作がある
B. 1年以上を超えて発作が繰り返され、寛解期がないか、または寛解期があっても1か月未満である。
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/series/takeshima/201404/535976.html

慢性頭痛の診療ガイドライン2013
頭痛体操PDF

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

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