脳神経系

2014年6月21日 土曜日

一般外来でみるしびれをどう考えるか 齋藤豊和先生

2014年6月17日 横浜市健康福祉総合センター
演題「一般外来でみるしびれ(感覚異常)をどう考えるか」
演者:老健さがみ施設長 北里大学名誉教授 齋藤豊和先生
内容及び補足「
"シビレ"の表現として
① 感覚が鈍い(感覚鈍麻)
② 以上感覚(ジンジン、チクチク、ピリピリ、ズキズキなど)
③ 軽度の脱力(急性、亜急性の運動麻痺)
があり、英語に訳すときも迷うものである。
Tingling sensationはTinglin=打診または冷却時に得られる蟻走性微痛感であり痛覚になる
Pain & needle sensationも痛みであり
Numbnessは感覚鈍麻を意味する、ので、適切な訳語がなく、その都度、意味からより良いと思われるものを選ぶことになる。
末梢神経は12対の脳神経、脊髄神経、頸神経叢、腕神経叢、腰神経叢、仙骨神経叢、陰部神経叢に分けて考えることができる。

シビレを考える上では、脊髄視床路(感覚器から入力が入ると直ちに交差して、体側の前側索を上向し視床に達する経路)を理解しておく必要があるし、

脊髄視床路の各部位の名称①皮質知覚領野、②視床後外側腹側核、③下部延髄、④外側脊髄視床路、⑤脊髄、⑥三叉神経の脊髄根と脊髄枝、⑦後根
脊髄の横断面を示す。

①索路、②後角、③前角、④中心管、⑤錐体前索路、⑥脊髄視床路、⑦小脳側索路、⑧錐体側索路、⑨後索路、⑩前側索路、⑪後索路、⑫錐体路
⑥の脊髄視床路は上肢(C)が内側を下肢(L、S)が外側を走っている。
大脳感覚野の構造も認識しておく必要がある。


①皮質運動野、②中脳、③橋、④上部延髄、⑤下部延髄、⑥脊髄、⑦内包、⑧錐体路、⑨皮質中脳路、⑩大脳脚、⑪皮質延髄路、⑫錐体、⑬錐体路、⑭錐体交叉、⑮外側皮質脊髄路
もう一つ重要な情報として、有髄線維と無髄線維も理解しておく必要がある。
末梢神経
① 有髄線維
(ア) A線維 体性有髄線維:体性感覚や随意運動に関与 直径の太い線維からα、β、γ、δと呼ばれている。
(イ) B線維 自律有髄線維:自律神経機能に関与
② 無髄線維
(ア) C線維 自律神経機能に関与
Aα線維:筋紡錘からの求心性感覚線維 GroupⅠa、Ⅰb線維、
脊髄α運動細胞からの遠心性運動線維
Aβ線維:振動覚、位置覚、触覚を伝達する太い線維
Aγ線維:脊髄γ運動細胞からの遠心性運動線維
Aδ線維:2つの性質を有する遠心性感覚線維
速い痛み(fast pain)チクッとする痛み
温度覚
C線維:無髄線維で求心性感覚線維 遅い痛み(slow pain)ジーンとする痛み
シビレに関与する線維はAβ、Aδ、C線維である。

触覚を伝達する神経線維は太い有髄神経Aβであるので、循環障害には弱いが化学障害には強い。
体性感覚神経線維
太い有髄線維Aβ:触覚、深部覚
細い有髄線維Aδ:痛覚、温度覚
AβはAδ線維を常時抑制しているので、Aβ線維の障害により、この抑制が取れAδ線維の刺激である軽い痛み(ジンジン、ピリピリ感)が生じる。
AδやC線維の刺激は30秒以内の発作的なピリピリ、チクチクといった感じの神経痛が生じる。
例えば、虫歯の治療で麻酔薬が投与され化学障害が出現すると髄鞘の無い無髄線維が速く麻酔されることになる。中途半端な麻酔では刺激症状として強い痛みが発生する。

長時間の正座→下腿・足の血行障害→足の触覚を伝達する有髄線維の機能低下→触覚が低下→脊髄での触覚線維Aδ線維による痛覚線維C線維の抑制が消失(脱抑制)→slow painを伝達するC線維の機能は正常状態であるから、C線維を流れるインパルスは抑制を受けずに高位中枢へ上向する→ジンジン、ピリピリ感(Slow pain)を自覚→有髄の運動線維の機能障害→下腿・足の麻痺→無髄線維であるC線維も機能停止し、ジンジン、ピリピリ感は消失し、下腿・足は無感覚となる。
正座を解き、脚を進展し血行を再開させると、無髄線維から改善し、ジンジン、ピリピリ感が出現し、下腿の運動麻痺が改善し、シビレ感が消失し、正常化する。

視床の出血や梗塞後、3~4週間たつと以下のような変化が生じ視床痛が出てくる。
触覚、深部覚と早い疼痛(Fast pain)は視床VPL核でニューロンを換え、がんの末期に見られる頑痛である遅い疼痛(Slow pain)は視床髄板内諸核(VPLの内側に存在)でニューロンを換え大脳に投射しているが、脳梗塞後時間がたって浮腫が改善してくると、運動麻痺が改善してくるとともに、頑痛系が脱抑制により、自発痛、ジンジン、ビリビリが発生してくる。

病態生理学的には、体性感覚系では、「痒み」は「軽い痛み」と理解されている。つまり刺激が強ければ「痛い」、刺激が軽ければ「かゆい」、弱ければ「心地よい」となる。

シビレなどの感覚障害を見るときには、温・痛覚(表在感覚)の障害か、触覚・深部感覚の障害か? 両側性か片側性か? 左右対称性か、非対称性か? を診る。
感覚障害の様々なパターンを下に示す。

医学書院:臨床診断学診察編p254
末梢神経障害は以下の3型に分類される。
遠位軸索変性:糖尿病、アルコール、尿毒症、栄養障害、中毒、抗がん剤、Charcot-Marie-Tooth病2型など
神経細胞障害:運動ニューロン疾患、傍腫瘍性、帯状疱疹ウイルス、抗ガン剤など
脱髄・髄鞘の障害:ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、遺伝性(Charcot-Marie-Tooth病1型)など

シビレをきたす単ニューロパチー:entrapment neuropathy (絞扼性または圧迫性)としては、手根管症候群、尺骨神経溝(肘部管)症候群、外側大腿皮神経障害(meralgia paresthetica)、総腓骨神経障害、足根管症候群がある。

絞扼性・圧迫性ニューロパチー
病態生理:末梢神経有髄線維が局所的に慢性的に圧迫を受けると軸索流が停止する。早期に減圧術を施行すると軸索流が改善し、機能障害であるシビレが消失する。
さらに慢性化すると、絞扼・圧迫部の髄鞘を形成するシュワン細胞が死滅し、脱髄が生じる(節性脱髄)。軸索が健全な場合は除圧により髄鞘が再生するが、以前に比べ、髄鞘間は短くなり、神経伝導速度は以前よりも遅延した状態となる。軸索変性が起これば、軸索流に影響が出て、筋萎縮、感覚鈍麻、感覚脱失が出現する。
Tinel徴候:末梢神経吻合部をたたくとその神経支配の末端にジンジン、ビリビリしたシビレ感が誘発されること。神経軸索が末梢に再生されるにつれて,Tinel徴候は移動していく。再生が良好で完治するとTinel徴候は消失する。
末梢神経の変性、圧迫、絞扼などの障害でもTinel徴候は出現し、臨床的部位診断にも有用である。患者がシビレを訴える前にTinel徴候が陽性になることもある。

手根管症候群(Carpal Tunnel Syndrome:CTS):正中神経が手首(手関節)にある手根管というトンネルで圧迫されて生じる病態で、手指の痺れ、痛みが出現し、時には運動障害も出てくる。

痛みは明け方に強く(夜間から)目を覚ますと手がシビレ、痛む。手を振ったり(Flick sing)、指を曲げ伸ばしすると、シビレや痛みは楽になる。手のこわばり感をして訴えることもある。ひどくなると母指球が痩せてきて、OKサインができなくなる。縫物がしづらくなったり、細かいものがつまめなくなる。

Tinel徴候:手首を打腱器などでたたくとシビレと痛みが指先に響く兆候。
Phalen徴候:手首を直角に曲げて手の甲を合わせて保持し、一分以内にシビレ、痛みが悪化する徴候。

原因:中年女性に多く、手関節を動かす職業で多い。糖尿病、関節リウマチ、甲状腺機能低下症、血液透析によるアミロイド沈着などがある。

尺骨神経溝(肘部管)症候群
尺骨神経は、肘の部分で尺骨の肘頭と上腕骨内側上踝の間の尺骨神経溝をとおる。その上は皮膚に覆われているのみでCubital tunnelといわれる。ここで尺骨神経が慢性的に圧迫されたり牽引されることで発症する。
尺側の感覚障害と運動麻痺、背側骨間筋と小指球筋の萎縮、鷲手を呈する。


左右の母指と指示で紙を引っ張り合うと、母指内転筋の麻痺があるために母指は屈曲する。

神経を固定している靭帯やガングリオンなどの腫瘤による圧迫、加齢に伴う肘の変形、野球や柔道などのスポーツによって生じる。
肘の内側を軽くたたくと小指と環指の一部にシビレ感が走る。


外側大腿皮神経障害(meralgia paresthitica)
外側大腿皮神経は鼠径靭帯の下を通るため、帯やベルトを強く締める癖のある男性や、きつめのガードルを履いている女性に起こりやすい。特にメタボの60前後の糖尿病のある人におきやすい。


総腓骨神経障害
総腓骨神経は坐骨神経に由来し、膝窩を通り、腓骨頭に接して下腿外側へ廻り、下腿上部で浅・深腓骨神経に分かれる。仰臥位の方麻痺患者では、麻痺側の下腿が外側位を取るため、長期臥床していると、膝の外側面で総腓骨神経が圧迫され、神経支配部の感覚障害とともに運動麻痺が出現する。足関節での足や足趾の背屈ができなくなる。歩行は下垂足となり、L5神経根障害との鑑別が必要となる。



後脛骨神経痛(足根管症候群)
脛骨神経は坐骨神経の分岐で膝窩から内果と屈筋支帯との間(足根管)を通り、足底に達し、内側と外側の足底神経に分かれる。足首で後脛骨神経や、内側足底神経、外側足底神経が圧迫され、足の裏がしびれてくる。

診断は、膝窩-内踝の伝導速度が正常であるにもかかわらず、内踝刺激により母趾外転筋でCMAP(complex muscle action potential)の遠位潜時が延長する。
絞扼部位を軽くたたくと、シビレる範囲に叩いた刺激が強く響く。


頸腕症候群:首・肩部から上肢にかけて、疼痛を主徴とし、シビレ、冷感、だるさなどを訴えるものの、明らかな病理学的変化がないもの。
① 筋力低下を伴うもの:職業性頸肩腕障害(キーパンチャー障害)
僧帽筋、橈骨手根伸筋自発痛・圧痛・運動痛
② 手指のシビレ
感覚障害を伴うもの:頸部神経根症、胸郭出口症候群
末梢の循環不全状態を主とするもの:胸郭出口症候群、職業性頸肩腕障害

頸椎症(頸椎性神経根症):中年~高齢者の肩~腕の痛みや、腕や手のシビレが出現し、頸椎を後ろへそらせると痛みが強くなるので、上方視やうがいをすることが困難となり、上司の筋力低下や感覚の障害が出てくる。


①椎間間隙狭窄、②前方骨棘、③前縦靭帯骨化、④椎体縁骨硬化、⑤後方骨棘、⑥椎間関節骨棘、⑦椎間孔狭窄


胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome)
鎖骨下や腋下動脈および腕神経叢が何らかの原因により圧迫を受け、項部、上肢などの痛み、シビレなどの感覚異常、脱力などの症状を起こす。
鎖骨下動脈は①前斜角筋と中斜角筋の間、②鎖骨と第一肋骨の間の肋鎖間隙、③小胸筋の肩甲骨烏口突起停止部の後方を走行しており、それぞれの部位で圧迫されたり、絞扼されたりする可能性がある。絞扼部位により、前斜角筋症候群、頸肋症候群、肋鎖症候群、過外転症候群などと呼ばれる。
なで肩の人が多い。鎖骨が水平になるので第一肋骨との間で挟む形になる。
腕のシビレや痛みのある側に顔を向けて、そのまま首をそらせ、深呼吸を行わせると、鎖骨下動脈がより圧迫され、橈骨動脈の拍動が減弱や消失する(アドソンテスト陽性)。
座位で、両肩関節90度外転、90度外旋、肘90度屈曲意を取らせると、手首のところの橈骨動脈が減弱し、ふれなくなり、手の血行がなくなり蒼白となる(Wright test陽性)。
座位で胸を張らせ、両肩を後下方にひかせると、手首のところの橈骨動脈の拍動の減弱や消失を認める(Eden test陽性)。
http://books.google.co.jp/books?id=1fAXkEEhVjIC&pg=PA22&lpg=PA22&dq=%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88+%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88%E9%99%BD%E6%80%A7%E3%80%80%E5%9B%B3&source=bl&ots=rGJTQWxsnm&sig=UzIUHKmhRzQe27tJ5jYp-xfg1hs&hl=ja&sa=X&ei=ZKGhU_v7B9GXuATNvYK4Ag&ved=0CDQQ6AEwBA#v=onepage&q=%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%20%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88%E9%99%BD%E6%80%A7%E3%80%80%E5%9B%B3&f=false
上記サイトのp20-21参照


Droppy shoulder syndrome(肩下がり症候群)
① 肩、頸部、上腕、手に生じる痛み、シビレなどの異常感覚
② 長く、しなやかな白鳥様の首(Swan neck like)、水平位または下向きの鎖骨、なで肩(Low set shoulder)
③ 肩の受動的拳上により手のシビレなどの症状が速やかに消失
④ 上腕の受動的な下方懸垂により症状増悪
⑤ X線で第2胸椎以下が肩上に観察

多発性単神経炎
代謝、中毒、遺伝性、傍腫瘍性などの全身性の内科的疾患による多発性ニューロパチーは、神経線維が最も長い下肢末梢から靴下状のシビレ、感覚・運動障害として発症し、進行とともに手指に広がり、手袋・靴下型の対称性のシビレを取る。

糖尿病性ニューロパチー
病型としては以下のように分けられる。
① 対称性感覚性多発ニューロパチー
② 単ニューロパチー、多発性単ニューロパチー
(ア) 脳神経障害:動眼神経、動眼神経+外転神経、顔面神経など
(イ) 末梢神経障害:尺骨神経、正中神経、橈骨神経、総腓骨神経、大腿神経、大腿外側皮神経
(ウ) 腰神経叢障害
(エ) 糖尿病性筋萎縮症(亜急性近位性糖尿病性ニューロパチー:疼痛を伴う一側下肢近位筋)
③ Diabetic Neuropathic Cachexia
④ Diabetic Autonomic (Visceral) Neruopathy

診察の際の留意点
① 感覚神経障害
(ア) 足底部、下腿のシビレ・異常感覚の有無
(イ) 振動覚の異常の有無
(ウ) 足部表在感覚(痛覚)異常の有無
② 自律神経障害
(ア) 発汗低下の有無
(イ) 足、下腿の皮膚症状(壊疽や血流障害)
(ウ) 立ちくらみ(起立性低血圧)の有無
③ 運動神経障害
(ア) 筋萎縮の有無
(イ) 筋力低下:足趾背屈力、踵歩き、つま先歩きの確認

糖尿病神経症状の経過である。糖尿病性多発ニューロパチーは感覚神経障害優位で足関節を超えて近位に広がることは少ない。足趾や足底部のシビレや疼痛などで発症し、足足袋型を呈する。後期になると、感覚低下が出現し、手袋靴下型の感覚異常を呈するようになる。
糖尿病性ニューロパチーは緩徐進行性のため、軸索変性の生じやすい軸索が長い下肢から生じ、比較的長期間、上肢と下肢の症状の解離がある。
通常感覚障害は病初期から中期に足部のシビレ・疼痛などの陽性症状を呈し、末期において感覚低下などの陰性症状を示す。有痛性の神経障害は、これは異なり、発現機序も複雑でどの病気においても起こりうる。
陰性症状は神経線維の脱落に伴う後期の変化で、痛覚低下は障害防御機転の低下を招き、足の壊疽やシャルコー関節発症の原因となる。
また、自律神経機能異常は病初期からみられ、遅れて自律神経症状を呈し、その後に運動神経障害を呈することが多い。つまり感覚神経→自律神経→運動神経の順に神経障害の症状が出現してくる。


有痛性糖尿病性ニューロパチー Painful Diabetic Neuropathy:PDN
下肢や体幹に不快な疼痛を有する神経障害で、欧米では20~25%に見られるが、本邦においては数~10%といわれている。
この数字の違いは、日本人がシビレ感と表現するチクチクやビリビリなどの針先で突かれる感覚は、欧米では痛覚として認識されており、この差が上記数字の違いに出ていると考えられている。

急性有痛性糖尿病性ニューロパチー:数日~数週の経過で下半身に激痛が出現し、体重減少、うつ症状を伴いやすいもので、血糖コントロール開始後の発症する、治療後有痛性糖尿病性ニューロパチーに分類される。
月HBA1cが1~2%を超える急激な血糖低下の2~3ヶ月後に発症。隊幹部では胸腹部に著明で、髄節性疼痛、肋間神経痛様電撃痛を呈する。疼痛期間は数か月~1年程度で徐々に消失する。

慢性有痛性糖尿病性ニューロパチー:糖尿病に特有な軽いシビレ感、軽いチクチク感が不快な痛みに転化した病型で、血糖値の変化により、軸索膜機能異常、痛覚線維機能障害、末梢神経内血流変化、侵害受容器官感受性増加などが生じるためとされている。本邦においては変性脱落した神経の未成熟再生線維に伴う疼痛やシビレ感が痛みに転化したためとされていた。疼痛は遷延化すると難治化するため、積極的な治療を行う。NSAIDは向こうで、プレガバリン(リリカ)や三環系抗うつ薬、選択的ノルアドレナリン・セロトニン再取り込み阻害剤(トレドミン、サインバルタ)が推奨されている。

有痛性糖尿病性ニューロパチーは損傷のない組織に疼痛が生じるもので、
① 末梢神経内での異所性放電
② 交感神経線維と痛覚線維や大径有髄線維の間に短絡の発生
などの機序が想定されている。
→異常インパルス伝導にNa+チャンネルが関与するのでカルバマゼピンなどの抗てんかん薬を投与
こういった機序から、神経終末末端からグルタミン酸、サブスタンスPが遊離し、二次ニューロンを興奮させる。
→脊髄後根の痛覚シナプス遮断を行う:トランスミッター遊離に先立つ節前線維Ca++チャンネル開閉を抑制するプレガバリン(リリカ)、節後側受容体抑制するグルタミン酸NMDA受容体拮抗薬デキストロメトルファン(メジコン)を投与
痛覚抑制系といわれる脊髄二次痛覚ニューロンは、青斑核、中脳水道周囲灰白質、延髄吻合側などから下行性疼痛抑制経路が投射し、この神経末端から、ノルアドレナリン、セロトニンが分泌し、痛覚ニューロンを抑制している。
→ノルアドレナリン・セロトニン再取り込み抑制の三環系抗うつ薬(TCA:トリプタノールなど)や選択的ノルアドレナリン・セロトニン再取り込み抑制薬(SNRI:トレドミン)を投与
これらの神経の機能低下が関与しているとされている。

痛覚伝導路
上行系線維:末梢の知覚線維⇒脊髄後根神経節⇒脊髄視床路⇒視床⇒大脳感覚野
下行系線維:上行系痛覚伝導路に対して抑制的な働きをする線維
① 脳幹中心灰白質⇒延髄⇒脊髄側索⇒後角
② 青斑核⇒脊髄腹側側索⇒後角
上行系と下行系の均衡が崩れた時、過剰興奮、抑制機能が低下した時に痛覚過敏を呈してくる。
痛覚過敏は、末梢神経C線維の異常興奮を意味し、糖尿病では、インスリンによる急激な血糖レベルの変動に伴う場合に、脊髄後根神経節細胞のテトロドキシン抵抗性(TXX-R)Naチャンネルの機能異常が出現すると想定される。

参考サイト:
http://www.joa.or.jp/jp/public/sick/index.html

http://square.umin.ac.jp/jsss-hp/index.html
http://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/049040149.pdf
http://www.jds.or.jp/common/fckeditor/editor/filemanager/connectors/php/transfer.php?file=/uid000025_474C323031332D30392E706466

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2014年6月14日 土曜日

めまいの診断と治療 ―up to date― 肥塚泉 教授

2014年6月9日 横浜市立脳血管医療センター
演題「めまいの診断と治療 ―up to date―」
演者:聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科教授 肥塚泉先生
内容及び補足「
2001年の市中病院での宇野らの統計によると疑い例を入れると良性頭位変換めまい(BPPV)が40%を占める。

BPPVの特徴は回旋性が強いことである。EMGやEOG検査では機械の性質上垂直性変動は瞬きがあるため、弱く、回旋性の動きに対しては、電位があまり出ないので記録に出にくい。
Frenzel眼鏡が出てきて容易に診断できるようになった。
めまいを主訴として神経内科を受診した1332例の検討では、BPPV確実例が39%、疑い例が15%、緊張性頭痛が16%とこちらにおいても約半数がBPPVであった。
診断においては、病歴が重要で
靴紐を結ぶとき、洗濯物を干すとき、高いものを取るとき、歯科治療時、床屋などで横になって洗髪をするときに生じるめまい発作で我慢をすると軽くなったり、起こらなくなるもので、難聴、耳鳴りは伴わず、体のふらつきも自覚しない(症状の自覚の仕方による差もあるが)ものが多い。
めまい頭位を取ることにより、数秒の潜時をおいて症状が出現する。

参:めまいが発生する機序を見てみよう。
内耳は蝸牛と三半規管からなっている。

この三半規管の卵形嚢にある平衡斑に平衡砂(耳石)が乗っている。

拡大してみると有毛細胞の上に平衡砂膜(耳石膜)がありそこに耳石が乗っている。

此処から剥がれ落ちた耳石は平衡砂膜の周囲にある暗細胞に吸収され代謝される。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka1947/79/10/79_10_1213/_pdf
耳石を電顕で見てみるとこんな感じの円柱状の大部とその両端に三面構造を持つ形である。

この耳石が耳石膜からはがれ、半規管の膨大部にあるクプラに付着することにより半規管内のリンパ液の流れを乱して頭の動きを過剰に感知するために起こる症状である。
頭を動かしたときにリンパ液は一緒に移動するけれど、耳石はリンパ液よりも重いため、すぐには移動せず、壁にくっついて頭と一緒に移動する。位置が変わったことにより、この石に働いている重力によって、より低い位置に耳石が移動し始めると頭を動かしていないのにリンパ液の流れができて、頭が動いたと勘違いしてしまい、10秒ほどの時間差を置いてめまいが起きる。難聴や耳鳴りを伴うこともなく、この耳石が移動して一番低い位置に落ち着くとめまいが消失するので、めまい発作の持続時間は長くても二分以上続くことはない。

めまいと眼振の関係を研究したFlourens(フルーラン)の法則がある。
* 外側半規管型の場合 (半規管結石型56.9%、クプラ結石型13.7%)
左外側半規管内に耳石が入って刺激が発生した場合、刺激を受けるのは右目の外側直筋と左目の内側直筋なので、水平方向の眼振が生じる。

* 後半規管型28.4%
左後半規管に耳石が入って刺激が発生した場合、刺激を受けるのは、右目の下直筋と左目の上斜筋なので、観察者からみて反時計方向の回転と下方への偏移が生じる(緩徐)相その後、眼球は急速に時計方向及び上方に動き(急速相)元の正中眼位に戻る。

* 前半規管型0.98%
前半規管が刺激を受けると左側の上直筋と右側の下斜筋が収縮するので、情報への偏移と観察者からみて反時計方向への回転が生じる(緩徐相)。その後眼球は急速に時計方向及び下方に動き(急速相)、正中眼位に戻る。

http://www.memai-pro.com/nystagmus/mechanism.htm
()内の各型の頻度は、松橋耳鼻咽喉科・内科クリニックのスライドの98例の頻度から引用した。
http://www.kumamotoh.rofuku.go.jp/medical/lecture/docs/%E3%80%8C%E3%82%81%E3%81%BE%E3%81%84%E3%81%AF%E3%80%8E%E7%9C%BC%E3%80%8F%E3%81%8B%E3%82%89%E3%80%8D.pdf#search=%27%E8%89%AF%E6%80%A7%E9%A0%AD%E4%BD%8D%E5%A4%89%E6%8F%9B%E6%80%A7%E3%82%81%E3%81%BE%E3%81%84+%E9%A0%BB%E5%BA%A6%27

めまいの診療は、身体診察と問診で75%診断できるとしている。
http://www.amjmed.com/article/S0002-9343%2899%2900260-0/abstract
一人の人にあまり時間をかけられない外来診療の中で、効率的に質問をするために、半構造化質問という手法がある。
主訴に対して『OPQRST』という質問をする方法である。
・O(Onset):発症様式
・P(provocative):誘因
・Q(quality):症状の性質
・R(related symptom):随伴症状
・S(severity):重症度
・T(temporal factor):時間経過
めまいのBPPVの情報に当てはめてみよう。
O:突然発症(緩徐に発症し悪化するものは中枢性の可能性が大)
P:頭位変換や立位で増悪 
Q:回転性めまいの75%が末梢性 血の気が引く感じ
R:耳鳴り、難聴、耳閉はない(あればメニエール)
S:目を開けていられない
T:一回のめまいは数十秒以内、長くても2分にはならない(前庭神経炎では数日)

参:人によって項目が異なり、一般的には、以下の略語としている人が多い。
・O(Onset):発症様式・P(palliative/provocative):増悪・寛解因子・Q(quality/quantity):症状の性質・ひどさ・R(region/radiation):場所・放散の有無・S(associated symptom):随伴症状・T(time course):時間経過

めまい発作が出なくなるまでに、外側半規管の場合16日、後半規管で34日といわれている。
体位変換によって外側半規管のBPPVのめまいを直すことができる。
色々な変法があるが、野上耳鼻咽喉科医院のHPの写真が分かり易いので、許可を得て以下に掲載する
http://www.nogamijibika.com/epley.html

ただし川村が診療所で行っている方法はこの方法とは少し異なる


座位(浮遊耳石の動きを黄色で示しています)

右45度頸部捻転して懸垂頭位を取る。浮遊耳石はクプラから離れていく

懸垂頭位のまま左45度に頸部捻転

さらに体全体を90度左へ回転

頭と体の位置関係を保ったまま体を起こす。浮遊耳石は後半規管の外へ出る。

Epley法で症状消失までに4.22日、眼振消失までに5.12日とされている。
型別では、Imaiらは108例のBPPV患者において体位変換による治療後に完全にめまいが消失するまでに後半規管型で39日、外側半規管型で16日かかったと報告している。
http://www.neurology.org/content/64/5/920.abstract
ただしこの方法で全例治るわけでなく8割前後とする報告が多い。後半規管型に対して、体位変換を行い、外側半規管に入ることもある。その際には水平眼振が出てくるので、分かる。
BPPVと骨密度の関係がいろいろと取りざたされている。

BPPVの発作回数が多い人ほど骨量が減少している人が多い。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jser/71/1/71_1_33/_pdf
近年内耳にVit Dの受容体があるとの報告もある。

参考HP:
http://www.hotweb.or.jp/shirato/memai-bppv.pdf

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2014年6月12日 木曜日

Fabry病と脳血管障害 今関良子先生

2014年6月9日 横浜市立脳血管医療センター
演題「Fabry病と脳血管障害」
演者:横浜市立脳血管医療センター 神経内科 今関良子先生
内容及び補足「
(遅れて参加したため、配布資料から勝手に講演内容を推察して作成しました)
Fabry病は30種類以上あるライソゾーム病の一つであり、X連鎖性劣性遺伝するαガラクトシダーゼ活性の低下または欠損によりグロボトリアオシルセラミド(GL-3)の蓄積により引き起こされる疾患である。


症状は、年齢とともに出てくるものが変わってくる。

学童時に手足の痛みのために運動ができず、成人になって痛みが消えて普通の生活が送れるようになった場合には、疑いを持っていろいろとチェックをしてみる必要がある。特に30歳前後から角膜の混濁や心機能障害、脳血管障害、タンパク尿などを認める場合には、紹介していただければ、精査・治療を行っていきます。



心臓の所見としては、肥大型心筋症が代表的でWPW症候群などの心電図異常や不整脈も呈する。
腎臓に関しては、病初期は微量アルブミン尿のみであるが、進行すると腎不全となり、透析が必要になる。
神経症状は疼痛発作が若年に見られ、肢端感覚異常、発汗低下、脳梗塞をていする。
皮膚症状としては体幹にびまん性の被角血管腫が代表的な症状である。
癌病変としては渦巻き状角膜混濁が特徴的で、白内障や、網膜や結膜血管の拡張蛇行もよくみられる。

特に脳卒中は、Fabry病患者においての初発平均年齢は男性40歳、女性46歳と一般市民の初発年齢の男性76歳、女性81歳に比較してかなり若くして発症している。
その機序としては
① 腎臓病から高血圧症を招き、最終的に脳血管障害に至る。
② 心臓疾患から二次的に脳血管障害を発症する。
③ 血管内皮生涯から二次的に発症した小血管の閉塞
などが推察されている。

遺伝形式がX染色体上にあるため、男性は全例発症するが、女性は保因者になるため症状が出ず、昔においては男性のみの病気と考えられていたが、保因者の状態でも症状がみられることがわかってきた。
 
Fabry病の診断は臨床症状から疑ったら、
① ろ紙GLA酵素活性測定(男性では確定診断可能、女性は参考にできない)
② GLA遺伝子解析(病因変異未確定のこともある)
③ 血漿Lyso-Gb3濃度(Fabry病のバイオマーカーで検出されれば、診断可能)
治療法としては欠損したり活性が低下している『αガラクトシダーゼ』を製剤化した薬を点滴補充し、体内に蓄積されている糖脂質(GL-3)を分解・代謝する治療法で、体重によって投与量を決め、2週間ごとに40分から3時間ほどの時間をかけて点滴する。この治療により、腎臓、心臓、脳血管イベント発症を減少させることができる。

参考
疫学:現在までの報告としてはオーストラリアで1/117,000(Meikleら、1999)、オランダで1/476,000(Poothuisら、1999)がある。発症率に人種差はないとされている。最近、イタリアで新生児期にマススクリーニングを行い、それによると1/3,100出生に酵素欠損があったと報告されている。
一方、心Fabry病に関しては、鹿児島県の左室肥大を有する男性患者230例中7例(3%)という比較的高い頻度で存在したことが報告された。その後、英国で肥大型心筋症と診断されていた男性患者153例中6例(4%)にFabry病が検出され、そのうち5例は心Fabry病であったことが報告された。さらに、イタリアで遅発型肥大型心筋症と診断されていた男性患者の3%、スペインで肥大型心筋症と診断された男性患者の0.9%、フランスで肥大型心筋症と診断されていた男性患者の1.4%にFabry病が検出された。最近、台湾で行われた新生児に対するスクリーニングでは、新生男児1,250人~1,370人に1人の頻度でFabry病が検出され、その80%以上に心Fabry病で報告された遺伝子異常を認めることが明らかとなっている。
また、慢性血液透析患者におけるスクリーニングでは、男性透析患者の0.2~1.2%がFabry病であったと報告されている。
予後
臨床経過および予後は、臨床病型と性により異なる。
典型的Fabry病男性患者では、幼少時より四肢末端痛、被角血管腫、低汗症、無汗症、角膜混濁などの症状を認め、その後、加齢に伴い多発性小梗塞などの脳血管障害、腎不全、心不全を発症し、40~50歳代で死に至る。
一方、心Fabry病男性患者は、病初期は無症状で、中高年以降に左心不全症状、右心不全症状、徐脈性または頻脈性不整脈による症状などが出現し、60~70歳代で心臓死(心不全死、不整脈死)に至る。
Fabry病の女性患者では、男性患者と比べ病状は軽いことが多く、進行も比較的遅いことが多い。

http://kanja.ds-pharma.jp/health/fabry/index.html
http://www.info.pmda.go.jp/shinyaku/P200400006/34053100_21600AMY00008_G100_1.pdf

http://www.nanbyou.or.jp/entry/429

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2014年6月 2日 月曜日

不眠症患者さんへの対応と睡眠薬の使い方 谷口充孝先生

3014年5月26日 横浜医療センター 2F 大会議室
演題「不眠症患者さんへの対応と睡眠薬の使い分けのポイント」
演者:大阪海性病因睡眠医療センター部長 谷口充孝先生
内容及び補足「
不眠症は、眠る機会や環境が適切であるにもかかわらず、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害の症状を週3回程度経験し、それが1カ月以上続く場合不眠症の可能性が高くなる。
 
睡眠障害国際分類第2版(ICSD-2)による不眠症の一般的基準を下に示す。
 
アメリカにおいては、1983年において不眠症は原発性の障害ではなく症状の一つであり、治療としての睡眠薬は短期間のみの原則使用が謳われていた。
というのはそのころ使われていた眠剤には、2~3週間継続して使用すると耐性(薬剤の増量が必要)が出現したり、習慣性があったり、反跳性睡眠(ンゾジアゼピン系睡眠薬を服用することによって、ほぼ 満足できる睡眠が得られるようになった段階で、突然服用を中止すると服用前より強い 不眠が現れるようになること)が見られたからである。
2005年に不眠症は障害(syndrome)であり、他の疾患を合併することが多いとの概念に変更され、『睡眠薬の使用により不眠症の改善は他疾患の改善につながる場合があるばかりでなく、より最近の睡眠薬の方が副作用の頻度や重症度が少ない』との見解に至った。
現在アメリカは『Healthy People 2020』と題した取り組みをしており、その中でSleep Healthとして、
① 感染と闘う
② 糖尿病の予防のために糖代謝のサポート
③ 学校でよく活動する
④ 効率的かつ安全に作業する
という項目を挙げて取り組んでいる。
睡眠障害により、以下の状態の危険度が上昇することが知られている。
① 心疾患
② 高血圧
③ 肥満
④ 糖尿病
⑤ 全ての死因の死亡率

Ohayon 2002のデータからは
不眠症の症状を有する割合は30~48%
週3夜以上に症状を認める頻度は16~21%
中程度から高頻度は10~28%
不眠症状+日中への影響9~15%
睡眠の質と量に対する不満足は8~18%
診断基準に当てはまる不眠症は6%と報告されている。

我が国において一般人口の10~30%に認められ、1997年の血行・体力づくり事業団が行った全国調査で21.4%に不眠症が認められた。
平成20年度のこころの健康科学研究事業で行われた不眠症の疫学調査においては、不眠症の有病率は13.5%、で不眠症に加え日中の障害を認める症例は3.8%であった。
入眠障害は9.8%、中途覚醒+再入眠困難は7.1%、早朝覚醒+再入眠困難6.7%、日中障害は7.3%であった。

不眠症はDSM-5でSleep-Wake DisordersのところでInsomnia Disorder不眠障害として扱われている。
定義としては
不眠症(入眠困難、睡眠の維持障害:中途覚醒や早朝覚醒)をもち、睡眠の量や質に関する不満足間の訴え
睡眠の障害が日中の生活上(社会生活や仕事、学校の生活など)の支障を招いている
週に3晩以上、3ヶ月以上の持続
睡眠をとる機会が十分にある
不眠の慢性化(しばしば慢性疾患を合併)
短期間の不眠であっても再燃を繰り返す

診断に関しては二次性不眠の鑑別が重要である。
一過性の過度なストレスによる影響がないか、疼痛などのために不眠が生じていないか、生活習慣の乱れがないか、薬剤の影響、精神疾患の影響、睡眠関連呼吸障害・運動障害の存在の有無などの除外が必要である。

治療のアルゴリズムを示す。
高血圧の治療のアルゴリズムと同じように、薬物使用による不眠の治療が早急に必要な状況であるのか、生活習慣の指導や認知行動療法による効果出現まで待てる状況であるかの判断は重要である。

睡眠の質としての自覚は、目覚めた時の感覚がかなり決め手となる。その要因の一つとして、睡眠効率=睡眠時間/寝床にいる時間×100がある。睡眠効率が80%以上にならないと熟眠感が生じないといわれている。
例えば、夜10時にベッドに行き、夜中0時から朝6時までの睡眠の場合6/8×100=75%で熟眠感がない場合、夜11時半にベッドに行って何時ものように、夜中0時から朝6時まで睡眠がとれた場合6/6.5×100=92.3%となり、熟眠感が生じうる。
非薬物治療として以下のような生活指導を勧めてみることも有用である。
*** 睡眠衛⽣生のための指導内容 ***
睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン」より
定期的な運動:なるべく定期的に運動しましょう。適度度な有酸素運動をすれば寝つきやすくなり、睡眠が深くなるでしょう。
寝室環境:快適な就床環境のもとでは、夜中の⽬目が覚めは減るでしょう。⾳音対策のためにじゅうたんを敷く、ドアをきっちり閉める、遮光カーテンを⽤用いるなどの対策も⼿手助けとなります。寝室を快適な温度度に保ちましょう。暑すぎたり寒すぎたりすれば、睡眠の妨げとなります。
規則正しい⾷食⽣生活:規則正しい⾷食⽣生活をして、空腹のまま寝ないようにしましょう。空腹で寝ると睡眠は妨げられます。睡眠前に軽⾷食(特に炭⽔水化物)をとると睡眠の助けになることがあります。脂っこいものや胃もたれする⾷食べ物を就寝前に摂るのは避けましょう。
就寝前の⽔水分:就寝前に⽔水分を取りすぎないようにしましょう。夜中のトイレ回数が減ります。脳梗塞塞や狭⼼心症など⾎血液循環に問題のある⽅方は主治医の指⽰示に従ってください。
就寝前のカフェイン:就寝の4時間前からはカフェインの⼊入ったものは摂らないようにしましょう。カフェインの⼊入った飲料料や⾷食べ物(例例:⽇日本茶茶、コーヒー、紅茶茶、コーラ、チョコレートなど)をとると、寝つきにくくなったり、夜中に⽬目が覚めやすくなったり、睡眠が浅くなったりします。
就寝前のお酒:眠るための飲酒は逆効果です。アルコールを飲むと⼀一時的に寝つきが良良くなりますが、徐々に効果は弱まり、夜中に⽬目が覚めやすくなります。深い眠りも減ってしまいます。
就寝前の喫煙:夜は喫煙を避けましょう。ニコチンには精神刺刺激作⽤用があります。
寝床での考え事:昼間の悩みを寝床に持っていかないようにしましょう。⾃自分の問題に取り組んだり、翌⽇日の⾏行行動について計画したりするのは、翌⽇日にしましょう。⼼心配した状態では、寝つくのが難しくなるし、寝ても浅い眠りになってしまいます。


日本人の不眠症の有病率は20%強と考えられている。
薬物療法:1950年頃に開発されたいバルビツール系薬剤は治療域が狭く、耐性や習慣性、依存性があり、かなり問題であった。
1960年代にベンゾジアゼピン系薬剤が開発され、数多く使用されるようになったが反跳性不眠(薬剤の量を急激に減らしたり中断したりした際に服用以前よりも強い不眠が出現すること)や筋弛緩作用のためのふらつきや転倒が問題となった。
救反跳性不眠は作用時間が短いもので生じ、ひどい場合には、不眠症状がひどくなるだけでなく、不安感・焦燥・振戦が生じたり、過度の発汗、せん妄、痙攣などの退薬症候が生じたりすることもあるので、作用時間が長いものに変更するなどして薬剤の漸減法を行う必要がある。

2000年になりZ drugといわれるZolpidem、Zopiclone、Eszopicloneといった薬剤が開発され、副作用の心配がかなり減少してきた。
薬物治療の際には、患者の睡眠障害のパターンを考え、作用時間や、副作用を考慮して薬物を選択していくことになる。

ベンゾジアゼピン系薬物は神経系に抑制的に働くGABA(γアミノ酪酸)作動性神経の活動を亢進させ、興奮した神経系を鎮めることで薬理作用をもたらす。GABAが結合するGABAa受容体とベンゾジアゼピン系薬物が結合するBZP受容体は同一膜状に存在し、神経細胞の電気的興奮を調節するCl-チャンネルとともに一つの複合体を形成している。

BZP系薬物がBZP受容体に結合するとGABAのGABAa受容体への親和性が高まり、Cl- チャンネルの開口頻度が増加して細胞内へのCl-流入が促進されて細胞膜の過分極や膜コンダクタンスの増大をともなる抑制性シナプス後電位が生じ、神経細胞の興奮が抑制される。

GABAa受容体には5つのサブユニットからなるヘテロ5量体であり、19種類の構成サブユニット(α1~6、β1~3、γ1~3、δ、ε、θ、π、ρ1~3)が同定されている。中枢神経系のGABAa受容体の多くはα1β2γ2から構成される。GABAa受容体にはαとβサブユニット間にGABAの結合部位があり、ほかにBZP系薬物(BDZ)、バルビツール系薬物、アルコール類、ニューロステロイド類の結合部位がある。αとγのサブユニットからなる細胞外ドメインにBZP系薬物の結合部位(BZP受容体)がある。
BZP受容体には高親和性のω1受容体、低親和性のω2、末梢型のω3受容体がある。
ω1受容体は大脳皮質、脳幹、小脳に広く分布し、ω2受容体は、大脳辺縁系と脊髄に、御ω3受容体は腎臓に発現している。
ω1受容体はα1を含んだGABAa受容体、ω2受容体はα2、α3、α5を含んだGABAaに対応すると考えられている。
GABAa受容体のサブユニットの作用を示すと以下のようになる。

したがってω1受容体選択性の高いものは筋弛緩作用が少なく、ω2受容体選択性の高いものは抗不安作用や筋弛緩作用を示す。

BZP系薬剤はω1ω2に作用し、Z drugはω1に作用するとされている。
Z drugであるマイスリーとルネスタの違いを細かくみると
α1とα2の作用に差がありその違いがルネスタン抗不安作用として出ている。

うつ病症例においてルネスタを追加投与した際に、中途覚醒やそう睡眠時間の改善効果のみでなく、ハミルトンうつ病尺度スコアでの改善効果を認めている。

マイスリーもよい薬剤であるが、薬剤の代謝が高齢者や女性においてかなり高値になる点や症例によってもばらつきが多い薬剤であることは、注意して使用する必要がある。

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

お問い合わせ:045-313-5055
  • RSS配信
  • RSSヘルプ
pick up
pick up
アクセスタイトル

■住所
〒220-0073
神奈川県横浜市西区岡野2-5-18

■診療時間
9:00~12:30 / 14:30~18:30
※土曜は13:00まで診療となります。
休診日は水曜、金曜午後、土曜午後
日曜、祝祭日となります。

■電話番号
045-313-5055

アクセスはこちら
qrコード