脂質代謝系

2016年11月 7日 月曜日

食事療法から始まる脂質異常症治療 横手幸太郎先生

2016年10月22日 
演題「食事療法から始まる患者さんのための脂質異常症治療」
演者: 千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学講座教授 横手幸太郎先生
場所:
内容及び補足「
2013年米国心臓病学会/協会(ACC/AHA)は『心血管疾患リスク低減のための生活習慣マネジメント』というガイドラインで「コレステロール摂取量を減らして血中コレステロールが低下するとの根拠となるデータがないことから、コレステロール摂取制限を設けない」とし、2015年には米国農務省がエビデンス不足を根拠に、それまで推奨していたコレステロール摂取制限を撤回した。
日本においても、厚生労働省が2015年に『日本人の食事摂取基準』において「摂取量は低めに抑えることが好ましいものと考えられるものの、目標量を算定するのに十分な科学的根拠が得られなかったため、目標量の算定は控えた」と記載されている。
疫学データからは、血清総コレステロール値の上昇、HDLコレステロール値の低下、中性脂肪の上昇に伴い、冠動脈疾患の相対危険度は上昇することが多数示されている。

コレステロールは体内で合成され、50㎏の体重の人で一日600~650㎎が主に肝臓で合成されており(日本人の食事摂取基準2015年版:厚生労働省)、食事からは30~49歳の日本人男性で平均297㎎、女性で平均263㎎摂取され、その40~60%が吸収されています(平成22年、23年国民健康・栄養調査:厚生労働省)。これを計算してみると食事から摂取されるコレステロールは20~30%、体内で号背されるコレステロールは70~80%ということになる。
食事由来のコレステロールのかなりの部分が卵としてとられていると考えられているが、実際、鶏卵の摂取量により冠動脈疾患の頻度はどうなっているのだろうか?
9つのreportと6つの論文をまとめた報告によると卵の摂取量と冠動脈疾患の間に相関関係はないといえる。

しかし、糖尿病患者に限って相対危険度を見てみると1.54倍と有意な差を認めることになる。

http://www.bmj.com/content/346/bmj.e8539
日本人のデータでも同じ傾向のものがあるが、そもそも心血管疾患になる数が少ないので、評価困難である。
21327名の男性医師を対象に20年間卵の摂取量と心筋梗塞1550名、脳卒中1342名、総死亡5169名の前向き研究の結果がAm J Clin Nutr. 2008 Apr;87(4):964-9.に発表された。
心筋梗塞と卵の摂取量との関連は下表のようになり、相関関係は見られなかった。

脳卒中と卵の摂取量との関連は下表のようになり、相関関係は見られなかった。

しかし、総死亡との間においては、卵の摂取量の増加に伴い死亡率は上昇した。

糖尿病があるか無いかで検討しなおしてみると、週に2~4個以上の卵の摂取で死亡リスクの上昇が、非糖尿病患者は週7個以上(1日1個)以上で死亡リスクが上昇するといえる結果となった。

Model 1 Adjusted for age, BMI (continuous), smoking (never, past, or current smoker), and history of hypertension.
Model 2 Adjusted as in model 1 plus vitamin intake, alcohol consumption (<1, 1-4, 5-6, or ≥7 drinks/wk), vegetable consumption (<3, 3-4, 5-6, 7-13, or ≥14 servings/wk), breakfast cereal (0, 1, 2-6, or ≥7 servings/wk), physical activity (<1, 1, 2-4, or ≥5 times/wk), treatment arm (4 groups), atrial fibrillation (yes or no), diabetes mellitus (yes or no), hypercholesterolemia (yes or no), and parental history of premature myocardial infarction (yes or no).
http://ajcn.nutrition.org/content/87/4/964.full
糖尿病のある群ではコレステロール摂取量の増加、卵の摂取量の増加に伴い、心血管疾患の発症数の増加を認めた。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2911502/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12361489

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3524188

確かにコレステロールの過剰摂取は動脈硬化の進展に寄与するが、卵にはそれ以外の多くの栄養素が含まれている。
蛋白質の栄養価は、一般的には必須アミノ酸がどれだけバランスよく含まれているかの指標となるアミノ酸スコアで評価されるが、卵は100であり、理想的なアミノ酸構成である。そのほかに、微量ミネラルや、ビタミンA、D、Eといった脂溶性ビタミン類、ビタミンB2、B12といった水溶性ビタミンも豊富味含まれており、抗酸化能を有するセレンや、日本人で不足しがちな亜鉛も含まれている。

卵50gを食べた際に50~69歳で身体活動レベル2の日本人の栄養成分充足率を計算してみると下記の図のようになるので食が細くなった高齢者においては、必要な栄養食品と言えるかもしれない。

卵とコレステロール

横断調査による多数でみると卵摂取量と血清コレステロール値には相関がないとのデータも多いが、経時変化を見た調査においては、食事中のコレステロール量が100~300㎎/日においては、血中のコレステロール濃度は上昇する傾向にある。


コレステロールの食事摂取量よりも飽和脂肪酸を取る方が血清コレステロール濃度の上昇の割合が激しい。

1960年代のKeysやHegstedらの研究により、飽和脂肪酸摂取量と総コレステロール濃度は正の相関を示すことが判明し、「Keysの式」、「Hegsted の式」として知られている。
Keys の式:⊿血清総コレステロール(mg/dL)=2.7×⊿S-1.35×⊿P+1.5×⊿ (C)
Hegsted の式:⊿血清総コレステロール(mg/dL)=2.16×⊿S-1.65×⊿P+0.068×⊿C
⊿S:飽和脂肪酸摂取量の変化量(% エネルギー)
    ⊿P:多価不飽和脂肪酸摂取量の変化量(% エネルギー)
    ⊿(C):コレステロール摂取量(mg/1,000 kcal)の変化量
    ⊿C:コレステロール摂取量(mg/1,000 kcal)の変化量
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000114402.pdf

この式からわかるように、飽和脂肪酸の変化量の2倍以上でコレステロールは上昇し、他か不飽和脂肪酸摂取量に応じてコレステロールは低下する。その変化量はコレステロールの摂取による上昇よりも強いといえる。
Keysの式は日本成人においても成り立つことが、Sasakiらにより示されている(J Carciol 1999;33:327-38)。日本成人において、飽和脂肪酸とコレステロールの摂取量を変えた場合に期待される、血清総コレステロールの濃度変化を図示すると下図のようになる。

27の介入試験:682人、介入期間は14~91日間をまとめたメタアナリシスによれば、総エネルギー摂取量の5%を炭水化物から飽和脂肪酸に変えると、平均して6.4(下図では6.2)mg/dLの血清LDLコレステロールの濃度上昇が、多価不飽和脂肪酸に変えると2.8(下図では1.7)mg/dLの減少が観察される。(Arterioscler Thromb 1992;12:911-9)

(Am J Clin Nutr 2003;77:1146-55)
多価不飽和脂肪酸は構造や代謝経路の違いによって、n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸に分けられる。循環器疾患へ好ましい影響が多数報告されているn-3系脂肪酸は、α-リノレン酸と魚油由来長鎖n-3系脂肪酸(eicosapentaenoic acid:EPAとdococahezaenoic acid:DHAなど)が通常の食品から摂取されるおもなものである。
脂質異常症患者で糖尿病、心筋梗塞の既往がある心血管疾患汁スクを有する成人男女を対象とした47の介入試験をまとめたメタアナリシス(TCは16511人、LDL-Cは140099人、HDL-Cは15106人、TGが15492人で、平均年齢は49歳、介入期間は平均24週:4~260週)では、摂取量の平均値は3.25g/日と、摂取量はかなり多かったが、LDLコレステロール濃度の上昇は、平均2.3mg/dLと小さく、TGの低下が30.1mg/dLとみられた。

(Int J Cardiol 2009;92:166-9)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000114402.pdf

飽和脂肪酸をn-3系不飽和脂肪酸に変更することにより、心血管疾患のリスクが減少することは、多くの介入試験が示している。

http://journals.plos.org/plosmedicine/article?id=10.1371/journal.pmed.1000252

炭水化物25gを脂肪酸11gに変更することにより血清総コレステロールやLDLコレステロール、HDLコレステロールが少し上昇し、中性脂肪がある程度低下することが知られている。
逆に考えると、TGが高い人は、果物や糖質、アルコール摂取によりTG値は上昇する。
血糖の上昇や、インスリンの分泌抑制効果があるGuar Gum(グアーガム)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%A0
でコレステロールが下がる可能性が示唆されている。

http://ajcn.nutrition.org/content/69/1/30.full
超高齢社会に直面している現在の栄養の問題として、健康寿命の延長や介護状態予防の視点から、過栄養だけでなく、75歳以上の後期高齢者が陥りやすい「低栄養」、「栄養欠乏」の問題も重要である。後期高齢者が要介護状態にある原因として、「認知症」や「転倒」の他に無視できない状態として「高齢による衰弱」がある。
「高齢による衰弱」は、老年医学でいう「虚弱:Frailtyフレイルティ」を含んでおり、低栄養との関連が強く、筋力の低下や筋肉量の減少(サルコペニア)も最近注目されている。




フレイルティの原因の一つにサルコペニアが存在するが、サルコペニアの要因はまだ十分に解明はされていない。
Friedらの論文には、低栄養が存在すると、サルコぺニアにつながり、活力低下、筋力低下・身体機能低下を誘導し、活動度、消費エネルギーの減少、食欲低下をもたらし、さらに低栄養状態を促進させるというフレイルティ・サイクルが構築される。

高齢者が低栄養となる要因としては以下のものがある。

筋肉量の低下、筋力の低下、身体能力の低下を予防する必要があり、食事制限を行うよりも質の良い食事を摂るように心がける必要がある。
サルコぺニア予防の観点からも、70歳以上の食事として、蛋白質は男性で60g、女性では50g以上、必須アミノ酸、特にロイシンなどの分岐鎖アミノ酸を積極的にとり、レジスタンス運動を併用して行うことが推奨される。
参:高齢者:厚生労働省

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2015年5月19日 火曜日

小型LDLの重要性 平野勉教授

2015年5月12日 ホテルニューグランド
演題「2型糖尿病患者の脂質異常症の治療の最新知見 ~小型LDLの重要性~」
演者:昭和大学医学部内科学 糖尿病・代謝・内分泌内科学部門教授 平野勉 先生
内容及び補足「
2002年から2004年にMIを起こして昭和医大のICUに入院した男性326人の基礎疾患を見てみると、高血圧は約1/3、脂質異常症は約1/4の症例に認めた。糖代謝の状態は、1/3が正常、1/3が耐糖能異常、1/3が糖尿病の状態だった。
重症度で基礎疾患の頻度を見てみると、舌の項目において有意な差が認められたものは、糖尿病の罹患率であった。
             軽症     重症
糖尿病罹患率    34%    52%
高血圧罹患率    81%    83%
喫煙率         23%    22%
HbA1c 平均値    5.7     6.2
LDL平均値      112     120
それでは、糖尿病の治療をしっかり行うと心筋梗塞になりにくくなるのかというと、ACORD研究やADVANCE研究、VADT研究結果を見てみても、血糖値の厳格な治療が心血管死亡を減らしてはいない。ACCORD試験においては強化治療群で死亡例が多く出たために、試験途中で中止となっている。

しかし、コレステロールに関しては、CARDS試験において2型糖尿病患者にリピトールを平均4年間投与すると、プラセボ群に比較して心血管イベントが37%も有意に抑制されることが報告された。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/athero/gl2012/201208/526373.html

動物実験においてアポEノックアウトマウスと動脈硬化発症Rabbitに0.5%のコレステロール食を食べさせると、100%動脈硬化を起こすことが知られている。
実際の血液データを見てみると、TCのみが異常に上昇していることがわかる。

これらの動物の、冠動脈の病理像は、動脈硬化巣にコレステロールの沈着が豊富にみられる。
炎症細胞であるマクロファージを染めてみると、この動脈硬化巣のコレステロールの沈着部位と一致している。
一方、糖尿病発症マウスにおいて高血糖のみであれば、動脈硬化を起こすことはない。そこに高コレステロール血症が合併すると、動脈硬化が発症する点は興味深い。
家族性高コレステロール血症(FH)がないスタチン投与がされていない人の冠動脈疾患の危険因子を1とすると、FHの患者さんは、スタチン治療を行っていないと13.2倍のリスクになる。スタチンの治療により10.3程度となる。

FHの患者で、スタチンの治療がされた群とスタチンの治療がされていない群の生存曲線は明らかに異なる。コレステロールを下げるためにスタチンの投与の有用性は確立されている。

http://eurheartj.oxfordjournals.org/content/early/2013/08/15/eurheartj.eht273

健常人と冠動脈疾患(CAD)患者でのLDLコレステロール値とHDLコレステロール値の分布を比較してみると、LDLコレステロール値は、ほぼ同じ分布を示す。

HDLコレステロールで見てみるとCAD患者において左にシフトしていることがわかる。

http://ac.els-cdn.com/073510979290520W/1-s2.0-073510979290520W-main.pdf?_tid=9f1fd6a4-faee-11e4-81bd-00000aab0f27&acdnat=1431686530_5f4f0e692fba450170237b5229d44cca
確かに、LDLコレステロールはCADの原因物質ではあるが、リスクマーカーとしては鈍感な指標であり、それに比較すると、低HDLコレステロールは、より鋭敏なリスクマーカーといえる。

実際、虚血性心疾患で入院してきた人の血清脂質と一般健康人との血清脂質を比較してみるとLDLコレステロール濃度に差はなく、差があるのは、TGやApo B、HDLコレステロールであり、前2者が高くHDLが虚血性心疾患患者で低いことが数多く報告されている。
この中のApo Bは、LDL粒子に一つ含まれるアポ蛋白であるため、臨床的意義としては、LDL粒子数を反映していると考えられている。ある解析によると、LDL粒子数の90%近くがApo B値で説明できるといわれている。
脂質プロファイルを考えてみよう。LDLコレステロールが140㎎/dL(講演では120mg/dL)で同じ症例であっても、Apo Bが70mg/dLと130㎎/dL(講演では80と120mg/dL)とこなると、実際の血液中のリポ蛋白は下図のようなリポ蛋白の集まりとなる。

LDLコレステロールが140mg/dLであった場合、Pattern Aの健常者はLDL粒子径の大きなものが多く、LDL粒子径の小さなものが多いPattern Bに比べて、LDL粒子数が少ない。
http://www.singulex.com/assets/uploads/pdf/FATS_Spring_2009.pdf
血液中に、疎水性の脂質は、粒子の表面にアポ蛋白を伴いリン脂質膜につつまれたリポ蛋白の構造で存在する。粒子径が大きいほど、軽く比重が小さく、成分としてはトリグリセリドを多く含んでいる。血管内皮に存在するlipoprotein lipaseにより代謝されながら小さな刑の粒子となり徐々に小さな比重の重い粒子となっていく。


通常サイズのLDL粒子と小型高密度LDL(small dense LDL)粒子の特徴を下図に示す。
終止形が25.5nm以下のものをsmall dense LDLと呼んでいる。

LDLの粒子径を4分割して心筋梗塞の危険度を検討した多くの研究では、LDL粒子径が小さいものほど危険度が高いことが示されている。

(Stampfer.MJ et al:JAMA 1996;276:882-888)
https://www.nof.co.jp/business/food/special/policosanol/con01-2.html
虚血性心疾患患者とコントロール群で比較した時LDLコレステロールは、119±26に対して116±33と両者の群で差はなかったが、Apo Bは104±24に対して、90±24と有意に差が認められ、虚血性心疾患患者にお手は4人中3人にSmall dense LDLを認めた。
つまり、Small dense LDLを認めるPattern Bの頻度が、コントロール群は33%なのに対して、虚血性心疾患患者においては75%であった。
http://annals.org/article.aspx?articleid=713455
http://www.medscape.com/viewarticle/446747
Samll dense LDLがどうして超悪玉コレステロールと言われるかというと、
① 血液中に滞在する時間が、通常のLDLの場合は平均2日なのに比べ、5日と長いこと
② 血管壁のプロテオグリカンに付着しやすいこと
③ 小型の粒子なので血管内皮下に侵入しやすいこと
④ 通常のLDL粒子に比較してコレステロール含有量が少ないが、それ以外にも脂溶性の抗酸化ビタミンなどの抗酸化物質が乏しいため酸化されやすい
⑤ 酸化されるとマクロファージに取り込まれ、泡沫化し、動脈硬化層へと進展していく

Small dense LDLを直接測定する方法が今まではなかったのでその指標として用いられていたのが、中性脂肪の濃度である。中性脂肪濃度が高いとLDL粒子径が小さくなることが示され、計算上LDL粒子径の説明変数の50%を中性脂肪濃度が示していることになる。

http://denka-seiken.jp/jp/content/files/pdf/lipid_journal/LipidJournal-small_dense_LDL_all.pdf#search='%E5%B9%B3%E9%87%8E%E5%8B%89+Apo+B'

脂質の代謝を見てみると、消化管から吸収されたカイロミクロンCMは血管内皮にあるLipoprotein Lipase(LPL)により代謝され、カイロミクロンレムナントCMRとなり肝臓に取り込まれる。肝臓からエネルギー源としてVLDL粒子が作られ血中に放り出される。その際にTGが高いとTGリッチなVLDL1が、通常であればVLDL2が放出される。
VLDL2は血管内皮細胞にあるLPLにより代謝されLDL粒子となるが、TGリッチなDLVL1の粒子は、HDL粒子との間でCholesterol Ester Transfer Protei:CETPによりHDL粒子からCholesterol Ester:CEをもらいTriglyceride:TGを積極的に受け渡したり、肝性リパーゼ:HLにより中性脂肪が代謝されたりして、小型のSmall dense LDLになっていく。

http://www.jc-angiology.org/journal/pdf/2006/441.pdf
Small dense LDL粒子の所だけを取り出してみると、二つの段階がある。最初の段階はCETPによりCEとTGの受け渡しである。次いで、LPLやHLによるTGの分解である。

内臓脂肪と蓄積とLDL粒子のサイズを見てみると、Large LDLは内臓脂肪が増えると減少するが、Small LDLやVery Small LDLは著明に増加していることが示された。

http://synapse.koreamed.org/DOIx.php?id=10.12997/jla.2012.1.1.1
インスリン抵抗性があるとLPL活性が低下し、TGの加水分解が抑制され、血中TGの上昇を来す。それとは別の機序で、インスリン抵抗性があると、血中の遊離脂肪酸:FFAや血糖値が上昇し、肝臓におけるTGの合成が亢進することにより血中のTGが上昇する。その結果、IDLやレムナント分画の停滞,Small dense LDLの出現,HDLの低下が生じる。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sbk1951/45/2/45_2_159/_pdf

日本人940人の二型糖尿病患者の冠血管疾患のない患者さんを7.86年経過観察した際の、虚血性心疾患の危険因子は、LDLコレステロールの上昇とTGの上昇が独立した危険因子であり、その両者の異常がよりリスクを上昇させることが示されている。

http://press.endocrine.org/doi/full/10.1210/jc.2011-0622
Small dense LDL濃度は、LDLコレステロールの他に、著しい高TG血症を除くTG濃度と正の相関を、HDLコレステロールとは負の相関を認める。

http://atvb.ahajournals.org/content/24/3/558.full

治療薬によりSmall Dense LDLは下げることができるが、薬剤により脂質プロファイルの変化が異なる。Pitavastatin投与ではSmall Dense LDLを低下させ、Large Buoyant LDLも低下させるが、FenofibrateではSmall Dense LDLは低下させるが、Large Buoyant LDLは逆に増加し、TotalのLDLには変化が見られない。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jat/14/3/14_3_128/_pdf

心血管疾患の既往がない一般人2034名において、Small Dense LDLが存在すると、心血管疾患のリスクは、1.21倍、脳卒中は1.17倍、脳梗塞は1.15倍、冠動脈疾患は1.29倍に増加する。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jat/20/2/20_14936/_pdf
実際には、Small Dense LDL測定は容易ではない。
LDL粒子径が25.5nm以下のものがSmall Dense LDLであるが、それに該当する一般的な検査で目安となるものとしては、LDL/Apo Bの数値1.2が該当する。

冠動脈疾患の危険度を推計するパラメーターとしてLDL粒子数とLDL粒子サイズで四分割して考えると、下図のような状況になる。

http://eatingacademy.com/nutrition/the-straight-dope-on-cholesterol-part-v

LDL粒子径の代わりにLDL/Apo Bを用いることができる。

Apo Bの測定が一般的でないので、代わりの指標として役立つものが、Apo B濃度に対してはnon-HDL-C=Total Cholesterol:TC-HDLcを用いることができ、LDL/Apo Bに対してはTG濃度を用いることができる。

http://dm-rg.net/contents/complication/018.html?pr=dmrg001

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2013年9月 7日 土曜日

脂質低下療法の臨床的意義 順天堂 宮内克己准教授

2013年8月30日 ホテルニューグランド
演題「脂質低下療法の臨床的意義 -イベント抑制とプラーク退縮・残された課題-」
演者:順天堂大学医学部循環器内科学講座先任准教授 宮内克己先生
内容及び補足「NEJM 2012:366, 970にBraunwald先生が冠動脈疾患治療の変遷を掲載している。

ここ40年間で虚血性心疾患死が4分の1に減少している。冠動脈バイパス術、カテーテル治療、ペースメーカー埋め込み治療など、いろいろな治療法が貢献しているが、一番貢献しているのはスタチンによる治療であると言える。だからと言って今現在でも、心疾患死亡はゼロではない。
スタチンで改善する主な危険因子は高コレステロール血症である。2005年にCholesterol Treatment Trialists (CTT) Collaborationでスタチン系薬剤の治療と対照を比較した14のランダム化比較試験(RCT)約9万例のメタアナリシスの結果によると、LDLコレステロール1.0mmol/L(387㎎/dl)の低下により主要血管イベント(冠動脈死、非致死的心筋梗塞、冠動脈血行再建術、脳卒中)が約20%減少することが示された。そのRiskの相対比率の内容は冠動脈疾患死:0.80、その他の心臓死:0.89、脳卒中死:0.96、その他の血管死:0.98、癌などの非血管死:0.97、癌の発症率:1.00であった。また、治療前LDLコレステロール低値例において、LDLコレステロール低下と非血管死およびがん発症の増加との関連性は認められなかった。つまり、LDLコレステロールを下げれば下げるほど、治療効果は期待でき、その他の有害事象は特に認めないとの結果であった。

LDLコレステロールの低下率と心血管イベントの低下率を主な試験ごとに示すと以下のようになる。

スタチンを投与するとプラークの退縮がみられるのみならず、破たんしやすい脂肪リッチのプラークから破たんし辛い石灰化プラークへ変化することが確認された。
 
LDLの低下率とプラークの退縮率には相関関係があることが示された。


また、プラークの退縮率が心血管イベントの抑制につながることが、いくつかの臨床試験で示されるようになってきた。

心筋梗塞の危険因子としては、①喫煙、②高血圧、③糖尿病、④脂質異常症、⑤メタボリックシンドローム、⑥肥満、⑦慢性腎臓病(CKD)、⑧飲酒、⑨身体活動、⑩食習慣、⑪心理的因子、⑫社会的因子が日本循環器病学会で挙げられているが、以前から言われている、喫煙、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症以外の危険因子を残存リスクと表現している。
コレステロール以外の脂質で残存リスクと考えられているものは、中性脂肪、Lp(a)、RLP-C(レムナント)、sdLDL(スモールデンスLDL)、低HDL血症などが挙げられている。大規模な試験で危険因子が証明されているのは低HDL(40mg/dl)血症のみである、中性脂肪はLDLコレステロールなどで階層別に解析すると、200㎎/dl以上で危険であるという結果が多い。実際病因論的にみてみると、中性脂肪を多く含んでいるカイロミクロンという粒子は、大きいので、動脈壁の中に入っていくことはなく、この粒子には、動脈硬化惹起作用はなく、カイロミクロンが代謝され、小さい粒子径になったレムナントといわれる粒子が、動脈硬化形成に関係している。
自分対地のグループをはじめ最近注目されている危険因子に、グリセロリン脂質のエステル結合を加水分解しアラキドン酸を遊離し炎症メディエーターであるプロスタグランジンやロイコトリエン合成の起点となる酵素:ホスホリパーゼA2(LpPLA2)というものがあり,
LpPLA2の濃度とプラーク量が相関しているという報告や、LpPLA2阻害薬Darapladib投与で動脈硬化層のNecrotic Coreが減少することが見いだされ、現在第三相試験が行われており、期待できる薬剤と考えている。

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2013年2月15日 金曜日

日本臨床栄養学会理事長 板倉弘重先生

2013年2月7日 横浜ロイヤルパークホテル
演題「動脈硬化性疾患診療ガイドライン~改訂のポイントと今後の課題~」
演者:日本臨床栄養学会理事長 板倉弘重先生
内容「慢性腎臓病などのリスクを勘案したこと、動脈硬化性疾患の危険度をLDLコレステロールで評価し、NIPPON DATA 80の結果をもとに絶対リスクで評価する方法に変更された。問題点は、心疾患死亡の危険因子として解析したものをもとに評価しているので、脳血管障害が多い日本人の疾患発症の危険度を表しているのでのはない点が一番大きな問題点である。」

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2013年2月15日 金曜日

横浜市大医療センター 山川正先生

2013年2月7日 横浜ロイヤルパークホテル
演題「リスク因子としての糖尿病の重要性~non-HDL-C、HDL-Cも含めて~」
演者:横浜市立大学付属市民総合医療センター内分泌・糖尿病内科 山川正先生
内容「特に糖尿病があると、脂質異常のコントロールは重要である。血清脂質のコントロールの指標としては、悪玉であるLDL-Cだけでなく、食後で変動しやすい中性脂肪高値、高レムナント血症のデータを見る際に、食事の影響が少ない総コレステロールから善玉と言われるHDL-Cを引いた値で、血清脂質の変化を見ていくことが薦められる。」

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

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