消化器系

2017年7月31日 月曜日

高齢者におけるC型肝炎治療の現状 中馬 誠 先生

2017年7月27日 
演題「高齢者におけるC型肝炎治療の現状」
演者:横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター准教授 中馬 誠 先生
場所: 横浜ローズホテル
内容及び補足「
C型肝炎の疫学:
C型肝炎は、HCV感染後急性肝炎となり、その70~80%が慢性化し、その内80%が肝硬変となり、年に7~8%の人が肝細胞癌を発症する経過を取っていた。

治療を受けている人の推計は1200000万人と推計されている。
肝癌による死亡者数は2003年頃の年3万5千人をピークに、現在は年3万人前後にまで減少してきた。肝癌の原因疾患の第一は、依然C型肝炎ウイルスであるが、その頻度は減少してきており2011年に発表された九州地区の肝癌の調査では、68%にまで低下してきており、B型・C型以外のNASHに伴うものが増加してきている。

京都府立医大でも同様の傾向を認めており2013年までは肝癌の原因としてC型肝炎は60%出会ったら、それ以降は40%と低下しているが、非アルコール性脂肪肝NASHの割合が増加している。

http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/jkpum/pdf/124/124-12/umemura12412.pdf

発癌に関して検討としてみると、65歳以上と65歳未満では、倍ぐらいの差があります。

肝臓の線維化が進んでいると発癌しやすくなるのがその一つの原因であると考えられています。
平成19年度に日本肝臓学会は「C型肝炎に起因する肝がん撲滅を目指して」の中で、肝癌が一年間に発生する率を下の表のように提示している。


現在日本は、おもに三種類のC型肝炎ウイルスが存在し、治療に対する反応性が異なるために、治療開始前にウイルスの種類を調べてから治療方針を決定する。

治療のための検査の流れは、C型肝炎の抗体と核酸を調べ、C型肝炎のために肝機能異常があるかないかで分けている。

しかし、先ほど述べたように、肝癌の発生頻度は肝臓の線維化により別れるので、肝機能異常があるかどうかで判断するよりは、線維化があるかどうか、あるとした場合、線維化の進行度を見る必要がある。
実際、肝政権をした患者で、肝機能と肝臓の組織変化の関係を見てみると、約2/3の症例に軽度の線維化が見られており、中等度を入れると7割弱の症例に線維化が見られている。

治療成績の方は、インターフェロンしかなかった1990年代に比較し、リバビリン併用により治療効果は、倍増し、ペグインターフェロンの開発によりさらに向上し、DAAの開発により、インターフェロンを使用しなくてもC型肝炎ウイルスを体内から排除できる時代になってきた。


しかも、治療効果判定は、以前は治療開始後半年の経過を診る必要があったが、DDA製剤の治療では、3ヵ月で治療効果の判定が可能となってきた。


現在First lineの治療薬は、Genotype1では4種類、
1. ソホスブビル+レジパスビル(ハーボニー) 12週治療
2. オムビタスビル+パリタプレビル/リトナビル(ブィキラックス) 12週治療
3. グラゾプレビル+エルバスビル(エレルサ+グラジナ) 12週治療
4. アスナプレビル+ダクラタスビル+ベクラブビル (ジメンシー) 12週治療
Genotype2では2種類
1. ソホスブビル+リバビリン(ソバルディ+コペガス or レベトール) 12週治療
2. オムビタスビル+パリタプレビル/リトナビル+リバビリン(ブィキラックス+レベトール) 16週治療

作用機序を見てみるとNS3/4A阻害剤、NS5A阻害剤、NS5B阻害剤がある。

各薬剤の主な副作用は、下図のようにそれぞれ特徴があり、患者さんの病態・合併症に応じて治療方法が選択できる時代になってきた。

個々に副作用を見ていくと1型適応のDDAではChild-Pugh Aの肝硬変も適応があるが、腎機能患者に対しては、ハーボニーが使用できず、ヴィラキックスは薬剤相互作用があるために合併症の多い高齢者では、いまいち使い勝手がよくない。その点エレルサ・グラジナは高齢者において使いやすい薬かもしれない。

最初に経口DAAとして認可されたアスナプレビル+ダクルインザは薬剤耐性変異を生じる可能性がありFirst lineから消えた。

ハーボニーはアメリカのデーターでは92%、日本では95%の奏効率と有効であるが、eGFR<30では腎機能障害患者では使えず、50未満の症例でも投与を控えることが望ましい。

ヴィキラックスは腎障害患者においても使用可能であるが、薬剤相互作用の薬が多く、高血圧患者においてカルシウム拮抗薬が投与されている場合にはARB等に変更してもらう必要がある。

その点エレルサ+グラジナは腎障害患者でも使用可能であり、薬剤相互作用薬は多くないが、脂質異常症患者において、スタチン系薬剤が投与されている場合には、薬剤の変更が必要となる。

治療歴の有る無しでも、男女でも薬剤耐性変異株においても奏効率は97%前後と有効性の高い薬剤である。

副作用においては、胃腸障害の他、肝機能障害がみられることがあり、定期的な肝機能チェックが必要である。

さらに注意してほしいのは、CKD患者においてHCV感染者の腎機能の推移は良くないので、腎機能低下のリスクとして要注意である。

しかし、ウイルス駆除に関する効果は、性別、年齢、治療の有無、透析のあるなし、CKDの有る無し、薬剤耐性変異の有る無しで違いはない。

2型に関してはリバビリンを併用する必要がある。

腎機能障害患者においては、eGFR≦50では使えない状況にある。

ここまでを小括すると次のようになる。


C型肝炎診療の今後の課題は、
ウイルス駆除後症例の診療方針として
1. 肝線維化は消褪するか?
2. 肝発癌抑止効果?
3. 生命予後改善効果?
ウイルス駆除後肝癌の対策として
1. 適切なスクリーニングは?
2. 肝発癌リスク因子は?
といった問題がある。

インターフェロン投与において、肝発癌抑止効果は0.35とされている。

http://www.cghjournal.org/article/S1542-3565(09)01085-4/pdf

ウイルス駆除後の肝発癌においてのリスク因子として、高齢、男性、線維化高度、糖尿病、AFP高値が挙げられており、これらのリスク因子を持つ症例においてはウイルス排除後も定期的な画像検査が必要である。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/cncr.29528/pdf

特に高齢者においては肝発癌に注意が必要であるし、SVR後もAFP高値例においても、注意が必要である。


糖尿病における悪性疾患の合併では、膵癌も多いが、実数は肝癌が最多である。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1008862#t=articleResults


高インスリン血症に伴う発がんの機序も徐々に解明されてきている。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi/109/4/109_4_544/_pdf

糖尿病患者の死亡原因としても肝癌死が多い。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1008862#t=articleResults

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2017年2月28日 火曜日

便秘治療の常識・非常識 木下 芳一 教授

2017年2月18日 
演題「便秘治療の常識・非常識」
演者: 島根大学医学部内科学講座第二教授 木下 芳一 先生
場所: 横浜ベイホテル東急
内容及び補足「
米国人3憶1千万人中、慢性特発性便秘症の人は、6300万人21%、過敏性腸症候群は1530万人5%という推計がある。日本における過敏性腸症候群の有病率は4175万例で4.4%であり、米国と同様で、便秘症の人も同程度と考えられる。
平成25年の国民生活基礎調査による便秘の有訴者数は以下のような状況で、女性に多く、60歳を超えると男女ともに増加し、80歳以上になると男性が女性よりも多くなる。


島根大学で行った市民講座の252人のアンケート調査でも、便秘と思っている人は20%で、薬を飲んでいる人は10%だった。
1週間の島根大学病院の処方箋をチェックしてみたら4607人外来患者で下剤が処方されている人の割合は14.6%であり、ほぼ同程度の頻度だと思われる。
食物を摂取してからの各消化管に留まっている時間は、食道で4-5秒、胃で2時間、小腸に5~6時間、大腸に24~48時間が一般的である。
腸の運動
蠕動運動:口側の消化管が収縮し、肛門側の弛緩が同時に起こる。


この動きにより腸内容物が肛門側に送られる。一秒当たり1㎝である。大腸では、上行結腸<横行結腸<下行結腸<S状結腸の順に早くなる。
分節運動:蠕動運動とは違い、腸内容物である消化液と食べ物を混ぜ合わせる動きで、吸収しやすい状態に変化させている。


振り子運動:分節運動と同様に、内容物を混ぜ合わせる運動であるが、分節運動とは異なり、腸を縮めたり伸ばしたりを繰り返すことで、内容物を交ぜわせている。


腸が蛇腹状に伸縮している状態である。
これらの混ぜ合わせつ動きは、蠕動運動とは逆に、上行結腸>横行結腸>下行結腸>S状結腸となる。
http://cyou-kenko.com/cyou/1895/

胃で強い酸性の胃液と食物をよく混ぜ、食物中の菌を殺菌し、胆汁で胃酸を中和し、膵臓から分泌された消化酵素で食べ物を吸収しやすい栄養素に分解していく。胃液、胆汁、膵液は一日に焼く6リットル分泌されると考えられており、食べ物の中の水分量と唾液を合わせると約9リットルの液体量となる。

このうち約7リットルは小腸で吸収され、残りの2リットルが大腸に入る。大腸に入ったどろどろの液状の状態で、水分や電解質が大腸で吸収され、便が形成される。

腸の中を通過する時間により、水分の吸収量が異なる。一般には以下のように便の形状は7段階に分類される(ブリストールスケール)。

http://www.carenavi.jp/jissen/ben_care/shouka/shouka_02.html


排便のメカニズム:
食物は半日から一日以上かけて排便に至る。大腸に到達するまでに数時間かかり、その後数時間かけて水分を徐々に再吸収し、半固形状の状態でS状結腸に暫く留まり『バナナ型』の形状になる。


S状結腸に留まっている便は、大蠕動という大きな強い蠕動運動で直腸に移動し、排便の一連の動きが開始される。大蠕動は、一日に1~3回起きる波で、食物外に入ると生じ、胃結腸反射と呼ばれている。一般的には朝食後に強く起きるが、人によっては毎食ごとに起きたり、特定の環境(図書館に入ると排便したくなるなど)や特定の状況(人前での発表)、特定の食べ物などで反射が起きることもある。
普段は直腸は空っぽで便はない状態で、便が移動してくると直腸壁が便で押され、直腸内圧が上昇する。この進展圧を直腸壁内にある神経叢が刺激を受け、仙髄に刺激を送り、脳の排便中枢に届く。この刺激が強くなると大脳皮質に信号が送られて便意を感じる。
脊髄レベルでの反応としては、排便の準備状態に体は入るのだが、意識には上らず、肛門にある内肛門括約筋が軽く肛門を占めている。便意が出てくると、排便準備のために弛緩するが、10秒ほどでまたもとの締まった状態に戻る。内肛門括約筋が緩むと、便が漏れないように、意識的に外肛門括約筋を一時的に収縮させて、トイレまで我慢をすることができる。

http://www.jcca.or.jp/kaishi/271/271_toku2.pdf

人類は鳥類などとは異なり、便が不随意に排出されないような解剖学的特徴を備えている。
一つ目の機序として、安静時には恥骨直腸筋の緊張状態により、直腸が前方に牽引されることで、直腸肛門角が80~100度と折れ曲がり、排便を抑制している。
不随意筋である内肛門括約筋は通常収縮しているが、直腸に便が充填されると反射的に弛緩する。このような状態になった時に、二つ目の機序として、随意筋である外肛門括約筋を収縮させることで排便を抑えている。
トイレに入り排便の準備が整うと、怒責により腹腔内圧が上昇、恥骨直腸筋の弛緩により直腸肛門角が鈍化するとともに、外肛門括約筋を弛緩させて排便する。

便の内容を見てみると
70-80%が水分で、7%腸内細菌、7%超粘膜の脱落、6%が食物残差
ガスの成分は99%が窒素、酸素、二酸化炭素、水素、メタンであり、独特の臭いとなるアンモニア、硫化水素、インドール、スカトールは1%程度である。

便秘の定義
機能性消化器疾患国際的部会のROME3基準
排便回数が週3回未満
硬便が排便時の25%以上
要指的排便(紙や綿棒などを用いて強制的に排便させる行為)が25%以上
怒責(排便時に強くいきむこと)、残便感、閉塞感がみられる頻度が25%以上

上記症状が6か月前から少なくとも3か月間で認められることが慢性機能性疾患=慢性便秘と定義されている。

日本においては、日本内科学会の定義
3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態
としているのに対し、日本消化器病学会では、
排便が数日に一回程度に減少し、排便間隔不規則で便の水分含量が低下している状態(硬便)を指すが、明確な定義があるわけではない。問題となるのは、排便困難や腹部膨満感などの症状を伴う便通異常が便秘症です。
としている。
これらのことを考慮して『慢性便秘症診療ガイドライン』はつくられている。
実際、先ほど述べた市民講座のアンケートでは便秘と感じた症状に対して、
便が硬い23%、回数や量の減少30%、出にくい30%、残便感15%といったように便秘を感じる症状は人によってさまざまであった。

そこで日本大腸肛門学会で『慢性便秘症診療ガイドライン』を作ることになった。
以下の案に従って、作成作業を行い、ほぼほぼ完成にまでこぎつけた。


一般的には便秘は発症経過から急性と慢性に分けられ、さらに機能性、器質性、薬剤性、症候性に分類される。

機能性便秘は腸管の器質的な病変は認められないが、胃結腸反射の低下や排便背ちゅつ機能の障害などにより発症する便秘で、大腸通過遅延型と排便機能障害型に分類される。

症候性便秘は、他の疾患が原因で発症する便秘で、糖尿病や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、低K血症やポルフィリン症などの代謝性疾患、パーキンソン病や脳血管障害などの神経疾患、うつ病や統合失調症などの精神疾患、急性心不全や急性心筋梗塞などの循環器疾患などで起こるもので、これらの多くは腸管運動機能が低下するために起こるものであるが、糖尿病では神経障害が、甲状腺機能低下では甲状腺ホルモンの分泌低下が、低K血症では筋肉障害が、神経系疾患では中枢神経系の障害と考えられている。

薬剤性便秘症は腸管の運動を抑制する薬剤効果により発症する便秘で、原因薬剤としては、抗コリン薬、ドパミン作動薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗ガン薬、麻薬系鎮痛薬、降圧薬、抗不整脈薬、止痢薬などがある。

器質性便秘は、腸管や肛門に器質的疾患あるいは解剖学的異常により、長官の狭窄や閉塞を来したために起こる便秘である。管腔の器質的閉塞、腸管壁の器質的障害・蠕動運動障害、管腔外からの器質的圧迫に分けられる。

https://www.onakanohanashi.com/medical/385.html/2


症状と病態で分類すると以下の表になる。

https://medicalnote.jp/contents/160419-023-AW

診断においては、問診が大事で便の回数、正常、基礎疾患、常用薬を確認する。
身体所見では、腹部の手術痕を含めた全身の外観、腹部膨満、肛門所見を見、腹部の聴診、触診を行う。
腹部の触診には、浅触診、深触診、滑走性触診、双手触診、衝動触診、指先触診などがあり、これらの診察主義を組み合わせて、便通以上の存在、その他の腹部の異常所見を拾っていく。

小児においては慢性便秘症をきたす基礎疾患を示唆する徴候(Red Flags)として以下のものがある
胎便排泄遅延(生後24時間以降)の既往
成長障害・体重減少
繰り替える嘔吐
血便
下痢(Paradoxical diarrhea)
腹部膨満
腹部腫瘤
肛門の・形態位置異常
直腸肛門指診の異常
脊髄疾患を示唆する神経所見と仙骨部皮膚所見

直腸診:施行前に以下の点を確認する。
痛み:排便との関係、痛みの感覚と程度、寛解・増悪の有無
出血:出血の色調、タイミングとその量、凝血塊の有無、便と出血の絡み具合
脱出:出現時期とその程度と頻度、怒責による増悪の有無
下着の汚れ:色調と、性状、臭い
排便:便秘・下痢の有無、回数、便柱の太さ、残便感、便失禁の有無

直腸診の際のチェックポイント
狭窄の有無、痙攣や圧痛の有無、病変や腫瘤の存在の有無(部位、性状)、血液の付着、便の存在の有無(存在しているときは、硬さと残便感の有無)を確認するだけでなく、得聴診を行っている際に、排便動作を行ってもらい、肛門内の圧の変化、肛門括約筋の収縮程度、腹壁の緊張度の変化を確認する。


http://www.arakawaseisakujo.com/images/kensyui_45.pdf

検査としては、血液検査で基礎疾患の有無や全身状態の確認をし、レントゲンで腹腔内の腸管の位置、便およびガスの状況を確認する。
CT、大腸鏡、大腸通過時間検査、排便造影検査、小腸検査、腸内細菌叢の検査などが行われる。
大腸通過時間検査:X線非透過性マーカーを20個含んでいるカプセルを飲んでもらい、120時間(5日)後にレントゲンを撮影し、4個以上残っていれば台帳通過遅延型と判断する。


排便造影検査:バリウムを直腸に注入し、便座に座ってもらい、排出するところを撮影。10~15秒で通常は全量排出される。


https://medicalnote.jp/contents/160419-025-PJ

診断・治療の流れを図にすると以下のようになる

http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/sped/1405gi/201405/closeup/536427_zu04.html


排便姿勢として「しゃがむ」姿勢が見直されている。つまり蹲踞(そんきょ)しているしゃがんだ姿勢で「スクワットポジション」と呼ばれている。この姿勢は解剖学的に恥骨と特徴が近接し、直腸肛門角が直線に近くなり、下腿が上行結腸や下行結腸を圧迫して腹圧がかかり、排便が容易になる姿勢なのである。

便秘症の患者において、食生活や運動と並んで排便姿勢は非常に重要である。排便時にしゃがむことが少ない現在、理想的な排便姿勢に近づけるべく、下図のように、足元に足置きを置き、前かがみ35度の前傾姿勢を取るように指導するとよい。

我が国の便秘治療薬は、欧米に比べ酸化マグネシウムや刺激性下剤の使用が多いことが特徴である。米国においてはOTC(Over The Counter:一般用医薬品)医薬品のポリエチレングリコールや繊維などが便秘治療薬の主流である。
WGO(World Gastroenterology Organisation)のガイドラインで推奨されている便秘良薬は、エビデンスグレードの高いポリエチレングリコール、ルビプロストン、Prucalopride(日本未発売)となっている。

酸化マグネシウム製剤は、高マグネシウム血症により吐き気や、めまい、ふらつきなどを生じ、さらに高値となると除脈や心停止、意識障害、呼吸抑制などを引き起こすので、高齢者や心疾患患者、腎機能障害者においての投与に対しては注意が必要である。
また酸化マグネシウム(MgO)は胃酸(HCl)と反応して(MgO+2HCl→MgCl2+H2O)制酸作用を発揮する。また、塩化マグネシウム(MgCl2)は腸内において、何吸収性の重炭酸塩(Mg(HCO3)2)または炭酸塩(MgCO3)となり、浸透圧維持のため腸管から水分を奪い腸内容物を軟化させることにより緩下作用を示すので、PPIやH2ブロッカー投与時や胃摘出後においては作用が減弱するので注意が必要である。

一般的に言われている便秘の対応策としての生活習慣の改善としては、以下のものがある。
・規則正しい生活
・睡眠を十分とる
・適度な運動
・規則正しくバランスのとれた食事
・線維物、水分を多くとる
・よく噛む
・腸内の善玉菌を増やす
・リラックスする
個々人においては効果があると思われるが、疫学的な研究でのエビデンスはどれも確立していない。その人に応じた適切な対応が必要だと考えられる。

食物繊維
その後も食物繊維の摂取量は減少の一途をたどっている。

日本家政学会誌, 45(12), 1079, 1994
http://www.otsuka.co.jp/health_illness/fiber/take_fiber/daily_amount/process/
日本人の食物繊維の摂取比率は1947~1965年まで穀物が最も多く約30~40%を占めていたが、そののち穀物が減少し、野菜類が30%前後で最も多くなった。1987年は野菜類28.3%、穀類23.3%、豆類13.1%、果実類11.6%となっていた。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej1987/45/12/45_12_1079/_pdf


食物繊維摂取量の内訳を見てみると、
 
http://www.otsuka.co.jp/health_illness/fiber/take_fiber/daily_amount/process/


参:食物繊維
食物繊維は、繊維状のものもあるが、ハチの巣状、へちま状のようなものもあり、表面にたくさんの穴がある構造をしている。

水溶性と不溶性の2種類に分類される。
水溶性食物繊維
ネバネバ系とサラサラ系がある。
昆布、わかめ、こんにゃく、果物、サトイモなどに多く含まれる。
粘着性により胃腸内をゆっくり移動するので、お腹が空きにくく、食べ過ぎ防止効果あり。糖質の吸収を緩やかにし、食後血糖の急激な上昇を抑える。
胆汁酸やコレステロールを吸着し、体外に排泄する。
大腸内で発酵・分解されると、ビフィズス菌などの増加を促し、腸内環境を整える整腸効果あり。
食品素材:ポリデキストロース、難消化性デキストリン
ペクチン:血糖の急激な上昇を防ぎ、コレステロールの上昇を抑制する効果あり。成熟した果物、カボチャ、キャベツ、大根
グルコマンナン:食べ物を包み込んで、消化・吸収させにくくする作用があり、水を吸収し胃の中で膨らんで膨満感が得られやすい。こんにゃく
アルギン酸:海藻のぬめり成分で、コレステロールや血糖の上昇抑制作用、便秘解消・動脈硬化予防作用。昆布、わかめ、もずく、めかぶなどの海藻類。
フコイダン:海藻のぬめり成分で、肝機能向上・抗アレルギー・血圧上昇抑制などの効果がある。昆布、わかめ、もずく、めかぶなどの海藻類。

不溶性食物繊維
成熟した野菜などに含まれる糸状で長い筋。ボツボツ、ザラザラしているのが特徴。
穀類、野菜、豆類の他、エビやカニの表皮にも含まれる。
胃や腸で水分を吸収して、大きく膨らみ、腸を刺激して蠕動運動を活発にし、便通を促進。
良く噛んで食べることになるので、食べ過ぎの防止、顎の発育促進、歯並びを良くする効果がある。
水溶性食物繊維よりは効果が弱いが、大腸内で発酵・分解されると、ビフィズス菌などの増加を促し、腸内環境を整える整腸効果あり。
セルロース:穀類の外皮の多く含まれ、食事から節酒する食物繊維の大半を占めている。腸内で有害物質を吸着して排出し、便の排泄を促す。リンゴ、大豆(おから)、ゴボウ、穀類
ヘミセルロース:セルロースに準じた働きがあり、腸内の善玉菌を増殖させ、便秘の予防や有害物質の排泄などに効果がある。ゴボウ、小麦ふすま、玄米、大豆
ペクチン:不溶性と水溶性がある。熟成するにつれ、水溶性に変化。不溶性の効能は腸内の有害物質を吸着し排泄するので大腸がんの予防効果があるといわれている。未熟な果物、野菜
リグニン:コレステロール上昇の抑制作用、善玉菌の増殖作用。ココア、豆類、イチゴ、梨
キチン・キトサン:血圧やコレステロールの上昇抑制作用。免疫力向上作用があるといわれている。:海老・カニの殻

野菜に含まれる食物繊維量と水溶せ・不溶性の割合を以下に示す。

http://www.otsuka.co.jp/health_illness/fiber/take_fiber/foods_amount/list/
食物繊維を多く含むプランタゴを多く摂り過ぎて胃石ができた症例がいる。
従って、水溶性・不溶性の食物繊維の比率が大事であり、理想的には、水溶性:不溶性=1:2が理想とされている。
ゴボウは上記表で見ると水溶性:不溶性の比率がよく、繊維量もそれなりにお送り躁的な食材と言えるが、水溶性繊維は、長時間水の中に付けておくと流出することがあり、食物繊維を多く含む食材を探すだけでなく、調理法も問題である。
http://column.asken.jp/glossary/glossary-1502/
そこで、ゴボウを粉末にしたごぼう茶で臨床実験をしてみたが、便秘に対して有意な差は出なかった。
個々人においては、いろいろな便秘対策は有効なものがいろいろと確認することができるが、他数例を対象とした臨床研究においては、有効性を証明できるものはあまりない。
水分摂取を多くすることでも、毎日30分以上のウォーキングをするなどの対応でも有効だというエビデンスはない。
臨床研究で有効であった方法としてバイオフィードバック療法がある。

バイオフィードバック療法
排便時に腹筋に力を入れた際に肛門を収縮させていると排便は困難になる。そこで腹筋と肛門に筋電計をつけ電気的活動をが増加して、排便の仕方を訓練する治療法である。

治療開始前は下図左のようにいきむ動作(怒責)をすると腹筋と肛門も同時にある程度の強度の電気的活動が観察されるが、訓練後には、腹筋に力を入れ怒責をしてもらっているときの肛門括約筋の活動度が低下しているのが確認できる。

https://medicalnote.jp/contents/160419-025-PJ

小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2017年2月20日 月曜日

Leaky Gut症候群に対する新たなアプローチ 加藤 孝征 先生

2017年2月18日 
演題「Leaky Gut症候群に対する新たなアプローチ」
演者: 横浜市立大学医学研究科肝胆膵消化器病学 加藤 孝征 先生
場所: 横浜ベイホテル東急
内容及び補足「
小腸は胃で胃酸などによる分解を受けた食物の栄養素が吸収される部位である。500ダルトンの大きさの分子までは通過することができるが、それ以上の大きな分子は通さないような構造になっている。このバリア機構が障害を受けると、細菌やウイルス、それ以外の物質などが体内に侵入してくる。
小腸の表面は何百もの絨毛があり、その絨毛は数百万の微小絨毛からできている。この微小絨毛は、細胞を守るための粘膜と最近が周りを覆っており、消化酵素を作る役割の他、正常の大きさの栄養素を吸収し未消化で大きな分子の食物を通さないブロック機能がある。

http://scdlifestyle.com/2010/03/the-scd-diet-and-leaky-gut-syndrome/

tight junction:
そのブロック機構を担っているのが細胞同士をくっつけているtight junctionである。
1963年にFarquharとPaladeがラットとモルモットの腺及び管腔組織上皮に形態の異なる三種類の細胞間接着分子を報告したのがこのtight junctionである。

A:TJの超薄切片電子顕微鏡像。 隣り合う2枚の細胞膜がところどころで密着して見える。
B:TJの凍結割断レプリカ像。 TJストランド(矢頭)のネットワークが観察される。これがベルト状に細胞周囲を取り巻いている。
C:TJストランドの構造モデル。 接着分子が細胞膜内でひも状に重合することによって細胞膜密着部位およびTJストランドが形成されると考えられてきた。
スケールバー:50 nm


http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fvets.2015.00057/full


Claudin:四つの膜貫通ドメインと二つの細胞外ループを持つ分子量23kDの小さな蛋白質である。
隣り合う細胞の両側から細胞接着部位に集積し、tight junctionの細胞膜密着構造と膜内のストランド構造を形成する。
様々な組織で細胞あたり複数のサブタイプが上皮細胞に共発現していることが多く、上皮のタイプによって発現するサブタイプの組み合わせが異なる。
複数のClaudinが共発現している場合、一般にtight junctionはこれらのClaudinがモザイク状に集まって形成される。
tight junctionを形成するClaudinがのサブタイプには機能的な差があり、細胞間隙の透過バリア形成に徹するバリア型Claudinとナトリウムイオンなど無機イオンや水などのような小分子を通すHoleを形成するチャンネル型Claudinが存在する。

A: クローディンの構造
B: クローディン3を導入したマウス線維芽細胞に形成されたTJストランド(凍結割断レプリカ像)
スケールバー:100 nm
比較的大きな分子量を持つ水溶性分子が極めてわずかずつtight junctionを通って漏れている経路があり、リーク経路といわれている。tight junctionのストランド構造が膜内の蛋白質ポリマーとしての切断と再結合を繰り返す動的な反応がそのメカニズムの一つと考えられている。

http://www.nips.ac.jp/dcs/kenkyu_files/seikagaku0.htm

tight junctionの機能

フェンス機能:細胞膜を区画化し維持する機能。これにより、細胞膜は、細胞頂部(apical)細胞膜と側壁基底(baso-lateral)細胞膜が分けられており、それぞれの細胞膜に固有の蛋白や脂質の成分が交わらないようになっている。つまり、細胞の極性を維持する機能である。癌細胞が細胞極性を失い脱分化するのはtight junctionの形成が低下するためと考えられている。

上の写真のApical側の細胞膜に偏在していた色素がtight junctionの破綻によってbaso-lateral側の細胞膜にも色素がみられるようになる。
http://web.sapmed.ac.jp/patho2/tight_function.jpg

バリア機能:細胞と細胞の間を物質が自由に通過できないように細胞間をシールする機能。消化管腔の内外を隔絶する、循環系から胆汁排泄路を隔絶するといった、区域を隔絶しているのが、上皮細胞や内皮細胞間に存在するtight junctionである。

門脈より注入した色素が赤い矢印の部分(tight junction)で途絶している。
その他に、選択的に物質を糖化させるチャンネルとしての役割、細胞内への様々なシグナル伝達機能もある。

Tight junction機能が低下する状態・病態
一般的な原因として、虚血などによる細胞内ATPの低下、細菌毒素などによるマイクロフィラメントの変化、ギャップ結合の機能低下がある。
感染症との関係では、レオウイルスがJAM-A、コクサッキ―ウイルスとアデノウイスルがCARを受容体としている。
コレラ菌はOcculudin、ウエルシュ菌はClaudion-3、Claudin-4、ヘリコバクターピロリのCagAはPar-1に結合して、腸管病原性大腸菌、クロストリジウムディフィシル、ジフテリア菌などはアクチン重合を変化させ、tight junction機能を低下させる。
また、VEGFを筆頭に多くのサイトカインがtight junction機能を低下させるので、炎症や腫瘍組織では、血管内皮細胞のtight junction機能が低下(血管透過性が亢進)しているいる。

Tight junctionが関与する疾患
血管系:浮腫、サイトカン血症、糖尿病性網膜症、多発性硬化症、血行性転移
消化器系:細菌性胃炎、偽膜性腸炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、カルシウム吸収障害
肝:黄疸、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎
呼吸器系:喘息、アレルギー性鼻炎、呼吸促迫症候群
ウイルス感染:レオウイルス、アデノウイルス、コクサッキ―ウイルス、ロタウイルス、HIVウイルス
皮膚:アトピー性皮膚炎
遺伝性疾患:家族性低マグネシウム血症、難聴、嚢胞性線維症
その他:卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
http://www.jspid.jp/journal/full/02603/026030395.pdf

1 遺伝性低マグネシウム血症:腎臓の尿細管の細胞間透過性は近位尿細管で高く、遠位尿細管、集合管に向かうにつれて低下していく。尿細管の部位によりClaudinのあぶたいぶの発現パターンが異なっている。Claudin-16はヘンレループの太い上行脚に限局して発現しており、この異常によりCa2+とMg2+の再吸収が阻害された疾患である。
2 先天性難聴:コルチ器のRericular laminaのtight junctionは、K+が豊富な内リンパとNa+が豊富な外リンパを分離し、外有毛細胞に必要なイオン組成を形成・維持している。Claudin-14のノックアウトマウスの解析から、Claudin-14が有毛細胞と支持細胞のtight junctionの成分であり、この欠損が難聴林檎を引き起こすことが確認された。
3 皮膚:体内の水分蒸発や細菌などの異物が体内に侵入するのを防ぐバリア機能がある。Claudin-1欠損マウスが、皮膚からの過剰な水分消失により生後1日で死亡することから重層扁平上皮である皮膚のtight junctionが皮膚のバリア機能に重要な役割を担っていることが判明した。
4 C型肝炎:HCVが肝細胞に侵入するのに、HCVエンベロープ糖蛋白質であるE2が肝細胞表面抗原受容体であるCD81と結合し、さらにClaudin-1がCo-receptorとして必要であることが分かった。
http://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/handle/2324/10212/fam99-2_p25.pdf

Leaky Gut Syndrome (LGS):腸管壁浸漏症候群:腸管壁における過度の浸透状態が生じ、バクテリア、毒素及び食物が漏れ入ってくる状態:腸粘膜から高分子化合物質、食物アレルゲン、また、萎縮性粘膜に関連する毒素の物質透過性が増加する状態である。

LGSを引き起こすと考えられる原因
抗生物質による消化管系の細菌、寄生虫、心筋類の異常繁殖
アルコール、カフェイン
食物・飲料:細菌が混入した水分、着色剤、防腐剤、酸化防止剤などの食品添加物含有食物・飲料
酸素欠乏
牛乳・乳製品の摂取
非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)
コルチコステロイド
精製炭水化物食品
避妊用ホルモン(ピル)
食品に付着したカビ、菌
水銀、鉛などの重金属の蓄積

LGSの判定検査
マンニトール・ラクツロース吸収試験
この二つの糖質は人間の身体には必要ない物質であり、正常の腸管では代謝されることはない。
水に薄めたマンにトールとラクツロースを飲み、六時間蓄尿し、その尿中に排泄された二つの糖質の量を測定し、比を見る検査である。
正常の消化吸収状態であれば、マンニトールは多く吸収され尿中に排泄され、ラクルロースは吸収されないので尿中の量は少ない。
LGSの場合には尿中のマンニトール及びラクツロースの量は多い。
慢性的な栄養吸収障害の場合には、両者とも少ない。
潰瘍性大腸炎、クローン病の場合には尿中マンニトールンの量は少なく、ラクツロースの量は多い。
LGS改善のための栄養素及び機能性成分としてグルタミン、フルクトオリゴ、グルコサミン、αリポ酸、ケルセチン、γオリザノール、ビタミンE、亜鉛、乳酸菌(Lactpbacillus Acidophilu、Lactobacillus Bifidus)、パイナップル酵素、パパイヤ酵素、アカニレ(ハーブ)、キャッツクロウ、ギンコビロバ、リコリス(漢方に使われている甘草)が下記のサイトに表示されている。
http://www.nutweb.sakura.ne.jp/webdemo/Jlgs.htm

LGS治療薬としてのアミティーザの効果を検討するために、健常成人30名に投与して、NSAID投与後のLGS状態の改善効果をマンニトール・ラクツロース吸収試験を行い検討した。
  コントロール群  アミティーザ群  p値
前値   0.019   0.021  0.69
14日後   0.035   0.024  0.403
28日後   0.028   0.017  0.0497
であり、それぞれの尿中排泄量には様認められんかったが、比でみると28日後には、アミティーザ投与群で有意な改善が認められた結果となった。

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2016年12月24日 土曜日

胃癌切除後の排便障害 根本洋先生

2016年12月3日 
演題「胃癌切除後の排便障害とアミティーザによる治療効果」
演者:昭和大学藤が丘病院 消化器・一般外科講師 根本 洋 先生
場所:
内容及び補足「
幽門側胃切除の場合、小彎のリンパ節廓清、迷走神経の切除が行われル為、胃切除後に、酸の逆流、消化不良、便秘、下痢、腹痛などの術後症状を認めることになる。

胃癌幽門側切除術後の再建はビルロート1法、2法、Roux-en-Y法があるが、当院ではビルロート1法とRoux-en-Y法を行っている。
いずれの術式をとっても、横行結腸との癒着が強く生じる。

種々の症状が術式によって違いがあるかどうかで、自験例で検討をしてみた。
217名の胃がん切除例は、幽門側切除例が64%、胃全摘例が36%、腹腔鏡手術が61%、開腹術が39%、ビルロート1法が48%、R-Yが52%、胃癌のステージで見てみると、1期61%、2期15%、3期20%、4期4%という内訳であった。
便秘のスコアとして、CAS(The Japanese Version of the Constipation Assessment Scale)というものがある。
お腹の張った感じ(ない、ときどき、いつも)、排ガス量(普通または多い、時々少ない、いつも少ない)、便の回数(普通または多い、少ない、とても少ない)、直腸内の充満感(全然ない、時々ある、いつもある)、排便時の肛門の痛み(全然ない、時々ある、いつもある)、便の量(普通または多い、少ない、とても少ない)、便の排泄状態(らくにでる、時々出にくい、いつも出にくい)、下痢または水様便(ない、時々ある、いつもある)の8項目について、0~2点の三段階評価でスコア化したものである。5点以上で便秘傾向と判断する。
217名のスコアは、張り:0.57、排ガス:0.36、回数:0.63、充満感:0.66、痛み:0.28、量:0.54、状態:0.84、下痢:0.45といった状態で、便が出にくく、回数が少なく、張り、便の量が少ないという傾向があった。
便秘の自覚ない人が60.4%で、自覚がある人が39.6%でCASの点数はそれぞれ1.3±0.3、5.8±0.2と差があった。
便秘の自覚があるか無いかでそれぞれの項目のスコアは、張り0.78:0.22、排ガス0.54:0.06、回数0.64:0.00、充満感0.95:0.19、痛み0.42:0.06、量0.80:0.11、状態1.25:0.17、下痢0.46::0.46
http://www.jsnr.jp/test/search/docs/102001002.pdf

癒着による再入院は手術臓器や手術術式により異なり、胆摘:開腹7.1%、腹腔鏡0.2%、結腸手術:開腹9.5%、腹腔鏡0.43%、子宮全摘:開腹15.6%、腹腔鏡0%、卵巣摘出術:開腹23.9%、腹腔鏡0%であった。

横行結腸の便の状態をCTで確認してみると便秘症状が有る無しで比較してみると、
便秘症状あり:なしでは、変化なし18%:45%、ちょっと悪化23%:24%、腸の拡張、便の硬化59%:30%と大行結腸の便量の増加が認められた。
便秘の有る無しでの症例の比較をしてみると、年齢71.7:68.7、術前BMI 23.4:23.0、術後BMI 19.3:20.8、体重減少3.5:2.7、体重減少率14.7%:11.1%と便秘症例での体重減少が顕著であった。
便秘対策としては、マグネシウム製剤42%、モサプリド27%、センナ23%、大建中湯17%であった。

酸化マグネシウム(MgO)は、胃酸(HCl)と反応し(MgO+2HCl→MgCl2+H2O)となり制酸作用を発揮します。
塩化マグネシウム(MgCl2)となった後、腸内において難吸収性の重炭酸塩(Mg(HCO3)2)または炭酸塩(MgCO3)となり、浸透圧維持のため腸管から水分を奪い、腸内容物を軟化させることにより緩下作用を示す。
In vitroの実験においてpH4.5とpH1.2においては、酸化マグネシウムの溶解度は1/40に減弱しているというデータがある。
したがって、PPIやH2ブロッカー投与時においては、胃酸が抑制されており、PPIを定期的に服用している場合には、pHが4以上を示す割合が70~80%あり、この時間帯での服用では、効果が期待できないことになり、酸化マグネシウムの増量が必要となる。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110009796493
http://benpiyaku.sakura.ne.jp/wp/2015/06/30/%E8%87%A8%E5%BA%8A%E8%96%AC%E7%89%A9%E7%99%82%E6%B3%95%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E8%83%83%E9%85%B8%E5%88%86%E6%B3%8C%E9%98%BB%E5%AE%B3%E5%89%A4%E3%81%A8%E9%85%B8%E5%8C%96%E3%83%9E%E3%82%B0/
その点クロライドチャンネルアクチベーターであるアミティーザは作用する際に胃酸は不要であるので、胃切除後の便秘患者に投与量を考慮する必要がない薬剤と言える。
腸管の水分分泌には、黒ライドイオンが関与しており、粘膜上皮細胞の基底膜側にあるNa+-K+-2Cl-共輸送体などを介して粘膜上皮細胞内に取り込まれたCl-は、小腸上皮頂端膜(腸管内腔側)に存在するClC-2クロライドチャンネルを介して腸管内腔に移動する。それに伴い、Na+も受動的に腸管内腔に移動し、その結果、腸管内腔へ水が分泌される。
アミティーザは、小腸上皮頂端膜に存在するClC-2クロライドチャンネルを活性化し、腸管内への水分分泌を促進し、便を柔らかくし、腸管内の輸送を高めて排便を促進する。

アミティーザを処方すると前出のCASは6.5点が3.2点と改善した。
それぞれの項目のスコアは、張り0.76→0.50、排ガス0.56→0.25、回数0.69→0.27、充満感0.95→0.50、痛み0.45→0.13、量0.85→0.25、状態1.33→0.41、下痢0.84→0.42と改善した。
アミティーザを使用した25例中、有効であり継続投与となったのが6例、他の下剤を減量できたのが3例、屯用で対応できたのが7例、他剤と併用した例が3例、副作用で中止となったのが5例、効果なしという判定になったのが1例という内訳であった。

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2016年2月25日 木曜日

膵癌早期診断の最前線 JA尾道総合病院 花田敬士先生

2016年2月19日 
演題「膵癌早期診断の最前線」
演者: JA尾道総合病院 消化器内科部長 花田敬士先生
内容及び補足「
尾道市は広島県東部に位置し、40万人ほどの人口に対して尾道市医師会に入っている医師が約400人程度の規模の中核病院である。
膵癌早期発見のために、以下の図に示すように医療機関と連携を取っている。

下図に示すような地域連携パスを利用している。



膵癌死亡者数男性2015年162000人、2016年16600人(5位)、女性15700人、20116年16200人(4位)と増加している。2001年にGemcitabineやS-1などの抗腫瘍薬の進歩により治療成績は改善されているが、5年生存率は1981‐1990年の6.7%、1991‐2000年の10.9%、2001-2007年の13.0%と改善が乏しい。
2007年の段階で膵癌のstage別の予後は下図のような状況である。


Pancreas 41;985-992,2012
膵臓は解剖学的に後腹膜に位置する20㎝弱の横長の臓器で厚さは20㎜前後と小さく薄い臓器である。そのため、膵癌は外部に露出しやすく隣接臓器へ浸潤しやすい。
腫瘍径2㎝未満でも膵内に限局しているもの(Stage Ⅰ:全膵癌の4%程度)に限っても5年生存率は52.5%(膵腫瘤検出有:34%、膵腫瘤検出なく黄疸ないもの:69%)に過ぎない。

日本膵臓学会の膵癌登録の1981年~2004年のデータでは2㎝以下のTS1に該当する患者は184例であり、このうちStage1に該当するものは、膵頭部でわずか15.3%、膵体・尾部で33.3%にしかすぎず、2㎝以下の腫瘍径であっても、膵癌は早期癌といえない。
2011年肝胆膵(62:567-573)に報告したが、腫瘍径1㎝以下の症例は約75%がStageⅠに該当し、5年生存率が55%であり、この大きさ以下の状態で見つけることが大切だといえる。
膵癌の臨床症状は、腹痛が最も多く、次いで黄疸、腰背部、痛体重減少がみられるが、初発症状がないことも少なくない。
3年以内の急激な糖代謝障害の発症が膵癌症例の約半数に認められるため、明らかな増悪因子のない糖代謝悪化症例は要注意である。
自験例の1cm未満の膵癌の所見は以下のものが挙げられる。
全膵癌の0.8%で、約40%は無症状である。CEAの上昇は15%、CA19-9の上昇は39%に見られる。
画像所見としては、大半の症例に軽微な膵管の拡張と嚢胞性病変が描出され、その精査で確定診断に至っている。
各画像検査の異常所見の描出率は、超音波17-70%、造影MDCT 33-75%、超音波内視鏡92-96%であり、検査の正診率は、EUS-FNA(超音波内視鏡穿刺吸引細胞診)92-96%、ENDP(内視鏡的経鼻膵管ドレナージ)下複数回細胞診88%である。
下図に2008年日本膵臓学会ワークショップでの臨床像を提示する。


1㎝未満の大きさの膵癌を見つけることは基本的には困難であるから、腫瘤の発見ではなく、膵管の異常を検出する方法へと検査の主眼を変更する必要がある。

膵癌診断のアルゴリズムは下図のように、身体的侵襲の少ない検査から行うようにされていたが、新しいガイドラインでは超音波内視鏡をMDCT、MRI(MRCP)と同列に扱おうという意見が主流となっており、超音波内視鏡検査ができる医師の育成、機関の増設が必要である。

超音波内視鏡は胃や十二指腸の壁を通して、膵臓を至近距離から観察することができるばかりでなく、鉗子を使って穿刺吸引細胞診も行うことができるので非常に有用な検査である。

膵癌の発生メカニズムについてはしばらく不明のままであったが、2000年にRalph H. Hrubanが多段階遺伝子異常説を提唱し研究が発展した。
K-rasのポイント・ミューテーションやHer-2/neuの過剰発現が起こり、ついでp16遺伝子の不活化が起こり、その後でp53、DPC4やBRCA2遺伝子の不活化により発癌するとする流れである。

Progression model for pancreatic cancer. Normal duct epithelium progresses to infiltrating cancer (left to right) through a series of histologically defined precursors (PanINs). The overexpression of HER-2/neu and point mutations in the K-ras gene occur early, inactivation of the p16 gene at an intermediate stage, and the inactivation of p53, DPC4, and BRCA2 occur relatively late.
http://clincancerres.aacrjournals.org/content/6/8/2969/F1.expansion.html

Yachidaらはがんで死亡した症例の病理検討から膵癌の遠隔転移までの期間を推定した。
遺伝子異常を認めてから発癌するまでに11.7±3.1年、局所で発育する期間を6.8±3.4年、遠隔転移をするまでに2.7±1.2年と推計した。

http://www.nature.com/nature/journal/v467/n7319/full/nature09515.html

時を同じくして数理統計の方から膵癌の発育自然史を計算した九州大学理学研究院生の波江野洋が報告した。
膵癌の遺伝子p16、p53、smad4遺伝子変異を有する癌細胞、有さない癌細胞を仮定し、各細胞の増殖、死亡、変異、転移イベントを想定して出生死亡過程によるシミュレーションを行い、膵癌の臨床像における癌進展の再現を試みたものである。


診断時の腫瘍サイズが1㎝であれば、診断時に転移している確率は20%強であり、2㎝になると85%程度となることが示された。
奇しくも、早期膵癌の腫瘍径が2㎝では実情と会わず、1㎝にしようと検討されている現状を、他分野の研究結果が後押しをした形となった。


田中らは超音波で膵管拡張および膵嚢胞性病変などの軽度の異常を認めているが膵癌を否定された1058例を登録し、平均75か月追跡したところ12例に膵癌が認められ(うち42%がStage1)、膵体部で2.5mm以上の主膵管軽度拡張、長径5mm以上の膵嚢胞が高危険群として位置付けられた。これらの異常を拾い上げる方法として、感度、特異度ともにCTよりは超音波検査が優れていることを報告している。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20574084

現在膵癌診療ガイドラインでは危険因子を以前の項目をふまえ下表のごとく考えている。
IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)があれば、年率1%で膵癌が発症しているので、注意深い経過観察が必要である。

リスクの高い集団においては、積極的なスクリーニング検査と、膵管拡張や嚢胞性病変を認める症例においては、継時的な検査が必要である。

IPMNは膵管から発生し、腫瘍細胞が粘液を多く産生することにより、種々の膵管拡張を来す疾患。主膵管から発生する主膵管型、分岐膵管から発生する分岐型、および混合型に分類される。この腫瘍は、発生初期には良性であるが、進展に伴って癌化するので、適切な時期に手術治療を行うことが重要になる。
男女比は2:1と男性に多く、好発部位は膵頭部で、悪性のものは主膵管型に多く、主膵管型は80%、分岐型は20%とされており、主膵管型は手術適応となるが、分岐型では嚢胞径が25㎜以上、主膵管径7㎜以上、結節隆起の高さ6㎜以上のものが手術適応とされている。

IPMNの手術例の5年生存率は78%で通常型膵癌に比較して良好な予後が得られている。しかし、多臓器浸潤や穿破したものでは予後が悪い。

上記のように通常膵癌(PanIN)の方がIPMN由来膵癌よりも予後が悪いのは、ガンの浸潤形態が下図のように、PanINの場合、分岐膵管上皮にできたがん細胞が実質臓器側に浸潤していくのに対して、IPMN由来癌の場合には膵管の方へ癌細胞が増殖・浸潤していくためだと考えられている。

また、IPMN症例では通常膵癌の併存が少なくなく、膵臓全体の経過観察が重要である。

膵癌の予後改善のためには、Stage 1よりさらに早期のStage 0に相当するいわゆる膵上皮内癌レベルの診断が理想である。
膵上皮内癌は腫瘍そのものを画像で補足することは不可能であり、主膵管や分岐膵管の狭窄や狭窄後拡張、膵嚢胞性病変を検出し、精密検査を行う必要がある。
2007年12月から2014年6月までの期間で、主膵管の限局性狭窄があり、分岐膵管の拡張を認めた69例において83回ENDPを施行した。
細胞診陽性の23例中22例が膵癌で、1例は偽陽性であった。細胞診陰性の46例中3例に膵癌が見られ、感度88%、特異度97%、正診率94%であった。
我々は、ERPに引き続き、限局性膵管狭窄を呈する症例に積極的に内視鏡的経鼻膵管ドレナージ(ENPD)を導入し、繰り返し膵液細胞診を行うことで、現在までに18例の膵上皮内癌を診断し得た。
膵臓の所見としては、主膵管の異常のみが10例、主膵管の異常+嚢胞病変が5例で、頭部が4例、体部が11例、尾部が3例であった。
腫瘍の局在は主膵管+分岐が10例、主膵管が4例分岐のみが4例であった。

現在この方法の問題点は、
膵癌の切離線をどこに設定するか
ENPD細胞診の回数をどうするか
ENPD留置の合併症をどうやって減らすか(7例で腹痛を認めている)
尾部や鈎部の症例をどうやって検出するか
といった点である。
腹部超音波所見では、主膵管の限局性狭窄が15/16=94%に見られた。
狭窄した膵管壁に高エコー帯がみられる例が13/16=81%であった。
また、狭窄主膵管周囲に淡い低エコー領域が9/16=56%に見られた。
病理像では、癌が存在した狭窄膵管の周囲に腺房の脱落及び線維化を認める症例を高率に認め、脂肪細胞組織の沈着を7/16=44%に認めた。
頭側非癌部では慢性膵炎の所見は2/1=13%と低率であるが、非癌尾部では13/16=81%に慢性膵炎像を認めた。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi/110/12/110_2051/_pdf

2007年1月1日より尾道市医師会で膵癌早期診断プロジェクトを展開しているが、2014年
6月30日までに膵癌危険因子を複数有する症例を中心に積極的に超音波検査を施行し、軽微な膵管拡張や描出不良を認めた延べ6475例に対して、4595例にCT検査、2866例にMRCP検査、2046例に超音波内視鏡検査(EUS)を行い、ERCPを576例、EUS-FNA検査を302例、ENPD留置を83例に対して行い、膵癌と確定診断がついたのが399例あった。そのうちStage 1の症例は33例であり、上皮内癌が16例であった。膵癌全体としての5年生存率は20%と広島県の平均の8.5%より改善している結果であり、この取り組みの有用性が示されたといえる。是非全国展開していきたいので、皆さんも病診連携会を通じて膵癌の早期発見の啓蒙活動に参加してください。

膵癌早期診断の最前線
膵臓癌 診療ガイドライン 2013年版
日本癌治療学会 膵がん診療ガイドライン 2015年版
腹部超音波診断ハンドブック

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

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