消化器系

2018年7月 2日 月曜日

潰瘍性大腸炎に対する便移植 石川大 准教授

2018年6月28日 
演題「潰瘍性大腸炎に対する便移植~腸内フローラの解明を目指して~」
演者:順天堂大学医学部付属順天堂医院消化器内科学講座 准教授 石川 大 先生
場所:
内容及び補足「
腸内細菌数 数100兆個、 1000種類、1-2㎏の重量
人間の総細胞数よりも多い。
産道を通るときに外界と接触し、菌を摂取することになり3歳で基本的なMicrobiotaが完成するといわれている。
帝王切開で生まれた子供は食物アレルギーやアトピーが多いといわれている。
帝王切開によって生まれた新生児を母親の膣液に暴露すると、経腟分娩で生まれた新生児とよく似た微生物相(人の身体に生息している微生物集団)が発達することが明らかになった(膣内微生物移行:vaginal microbial transfer)。
https://www.nature.com/articles/nm.4039
しかし、微生物の移行は完全ではなく、長期的な臨床経過は調べられていない。

腸内細菌叢は、一卵性双生児でも同じではない。
人種によって偏りがある。
環境因子、食物によっても変わり、日本人特有のものもある。
海藻に含まれる多糖類を分解できる酵素を持つ腸内細菌が日本人に多く、ほとんどの人に存在するが、アメリカ人は10%しか存在しない。
コアラはユーカリの歯を分解する菌を母親のお尻をなめて手に入れる。
パンダは笹の葉を分解できる腸内細菌を持っている。

中国では4世紀に食中毒や下痢を治すために人便の懸濁液を口から投与する方法が記載されている。Should we standardize the 1,700-year-old fecal microbiota transplantation? The American journal of gastroenterology 107: 1755; author reply p 1755-1756, 2012.
医学分野における論文は1958年に、外科医であるEisemanが報告した、偽膜性腸炎に対する症例報告が初見であろう。
Surgery 44: 854-859, 1958
2013年に再発性のClostridium difficile感染症(CDI)に対して、バンコマイシン治療では31
%の治癒率であったものが便移植(Fecal Microbiota Transplantation)では81%であり、非常に画期的な治療法であることが示された。
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa1205037
潰瘍性大腸炎に対するFMTは、1989年に最初の症例報告(The Lancet. 1989;333:164)がなされ、同じグループから6例の潰瘍性大腸炎にFMTを行い3か月後に全例で寛解が得られたと報告している(J Clin Gastroenterol. 2003;37:42-47.)。
2015年に炎症性腸疾患に対するFMTの有効性を検討した2つのランダム化プラセボ対照試験がある。Moayyediらは、注腸による週一回のFMT施行群とプラセボ群で6週間移植を施行し7週後の寛解率を主要評価項目とした試験では、プラセボ群で2/37例5%であったのに対し、FMT群では9/38例24%で有意に高かったとした。
(Gastriebterikigy.2015;149(1):102-109.)
一方Rossenらは、軽度から中等度の潰瘍性大腸炎患者に対して、経鼻十二指腸チューブを用いて、健常人ドナーの糞便を移植する群と、事故の糞便を移植する群で比較検討した。治療開始時と開始三週間後に二回便移植を行い、12週間後の内視鏡所見の改善を伴う臨床的寛解率を主要評価項目とした。寛解率は、事故便移植では5/20例20%で、健常人ドナー移植は7/23例30.4%で有意差はなかったと報告している。
活動性潰瘍性大腸炎患者81例に3~7人のドナーからの8週間のあいだ週5日便移植を行う治療において、Steroid-freeに持っていけるかどうかをprimary endopointとした研究が行われた。FMT群では11/41例27%、プラセボ群では8%と有意な差を認めた。しかし、この治療法は現実的なものではないといえる。
FMT試験結果がさまざまである理由として、人間の細胞よりも多い菌がいる中に、僅かな菌を移植しても効果が無いことがあげられる。偽膜性腸炎においては、抗生剤の投与により腸内細菌が極端に減少していることにより、劇的な効果が示されていると考えられる。そこで、便移植を行う前に抗生剤投与を行って腸内細菌を減らす抗生剤併用便移植療法(Antibiotics-FMT:A-FMT)の有効性を検討した。
アモキシリン1500㎎メトロニダゾール750㎎、ホスホマイシン300㎎を便移植前の前処置として投与した。

2014年7月から2016年3月にかけて41例の潰瘍性大腸炎患者さんをA-FMT群21例、抗生剤単独治療20例とし、腸内細菌叢の変化について次世代シーケンサーを用いて解析した。
A-FMT群では21例中17例が治療を完遂し、14人82.4%に有効性を認めた。一方、抗生剤単独群では20例中19例が治療を完遂し、有効性を認めたのが13人68.3%であり、治療4週間の経過においてはA-FMTの治療効果が高かった。

腸内細菌叢分析では、抗生剤療法後には腸内細菌のバクテロイデス門の割合が著明に減少する。便移植療法後4週間で効果があった症例では、バクテロイデス門の割合が有意に回復し、効果がなかった症例では、バクテロイデス門の回復を認めなかった。バクテロイデス門の回復は、潰瘍性大腸炎の病勢を表す内視鏡スコアとの相関も認めた。一方、抗生剤単独群では、治療後4週間経過してもバクテロイデス門の割合の回復は十分でなく、回復した症例と治療効果の関連性は認めなかった。

この結果は、ドナー便中のバクテロイデス門が治療効果と秒性にかかわっていることを示しており、抗生剤を併用することで便移植による腸内細菌の移植がより効率的に達成できることを示唆していると考える。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000021495.html

海外のサイトでは、CDIに対しては90%、潰瘍性大腸炎に対しては27~66%、クローン病に対しては30~86%、過敏性腸症候群に対しては46~73%、便秘に対しては40~89%有効であると記載され、気軽にウンチカプセルが購入することもでき、便バンクもビジネスとして動いている。
日本においても1回100万円以上で計6回1セットの高額治療費で行っている医療施設もあり、問題である。

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2018年7月 2日 月曜日

炎症性腸疾患に対する外科治療 辰巳健志 先生

2018年6月28日 
演題「炎症性腸疾患に対する外科治療」
演者:横浜市民病院炎症性腸疾患化診療担当部長 辰巳健志先生
場所:ホテル横浜キャメロットジャパン
内容及び補足「
潰瘍性大腸炎:患者数は平成25年後末の医療受給者症及び登録者証交付件数の合計で166060人、人口10万人当たり100人程度で、米国の半分以下の数ですが、世界第二位である。

発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性で25~29さいであるが、若年から高齢者まで発症し、男女比は1:1で性差なく、喫煙者は発病しにくいといわれている。

症状:
下痢、血便、発熱、腹痛、体重減少がみられる。

http://www.mochida.co.jp/believeucan/learn/index.html

腸管合併症:腸管の大量出血、腸管狭窄、穿孔、中毒性巨大結腸症
腸管外合併症:

http://www.mochida.co.jp/believeucan/learn/03.html

https://pfizerpro.jp/cs/sv/ibd/about/uc-symptom.html

大腸癌:10年で2%、20年で8%、30年で18%大腸癌がみられるため、長期的な経過観察が必要出である。

Gut.48(4),526-535(2001)
大腸がんの危険因子としては以下のものが挙げられている。

日比 紀文監修:"第2章 IBDとは"チーム医療につなげる!IBD診療ビジュアルテキスト(第1版)羊土社:34, 2016

2003年日本大腸肛門病学会誌に報告された潰瘍性大腸炎の癌化とサーベイランスの検討を見てみるとがん発見時の年齢は、40歳代が最も多いが、20歳代でもかなりの症例において認められている。

がん発見時の罹病期間では10年以上において増加している。


292例中84例29%は多発癌であり、発生部位は直腸163例54%、S状結腸71例24%、下行結腸38例13%、横行結腸44例15%、上行結腸19例6%、盲腸17例6%であり、直腸、S状結腸のいずれかの部位に癌を合併した症例は219例73%であった。
UCに合併する癌は、通常の大腸癌と異なり、周囲との境界が不明瞭で平坦型が多く、その組織型は低分化の傾向が強く、また粘液癌の頻度も高いと報告されており、この見当でも44%が平坦型・浸潤型、45%が低分化癌・粘液癌であった。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcoloproctology1967/56/2/56_2_62/_article/-char/ja/

我々の検討でも、内視鏡検査時に深達度を過小評価した症例が38/125例30.4%、存在診断ができていなかった症例も38/125例30.4%認めており、より注意深い観察と年一回の定期的な大腸鏡検査が必要と考えられる。
手術で残した肛門管における癌は高度異形成の発生率は14/65例21.5%であり、肛門管を残さない手術を行う方が良いと考える。

「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(日比班 平成15年度研究報告書 別冊:75, 2004)のサーベイランス法としては、潰瘍性大腸炎が発症してから7年以上経過した患者さんに年一回大腸鏡を行うこととしている。


大腸癌の発見患者の深達度に関してみてみると、前癌状態や粘膜内癌の状態での発見患者の割合が増加しているが、以前進行癌で見つかる症例が少なくない。
下図は慶応大学病院でのデータである(市民病院のデータを控えられなかった為)。

診断:
診断の手順フローチャート:

診断基準:



病型分類:
  全大腸炎:total colitis 37.9%
  左側大腸炎:left-sided colitis 37.4%
  直腸炎:proctitis 21.7%
  右側あるいは区域性大腸炎:right-sided or segmental colitis

http://www.mochida.co.jp/believeucan/learn/index.html

病型分類:
  活動期:active stage 血便を訴え、内視鏡的に血管の透見像の消失、易出血性、びらん、又は潰瘍などを認める状態。
  寛解期:remission stage 血便が消失し、内視鏡的には活動期の所見が消失し、血管の透見像が出現した状態。
臨床的重症度による分類:

活動期内視鏡所見による分類:内視鏡的観察耳最も所見の強いところで診断

内科的治療:
・5-アミノサリチル酸薬(5-ASA)製薬:サラゾスルファピリジン(サラゾピリン)、メサラジン(ペンタサやアサコール)
・副腎皮質ステロイド薬:プレドニゾロン(プレドニン)を経口、経腸、経静脈的に投与
・血球成分除去療法: LCAP(白血球除去療法:セルソーバ)、GCAP(顆粒球除去療法:アダカラム)
・免疫調節薬または抑制薬:アザチオプリン(イムラン、アザニン)、6-メルカプトプリン(ロイケリン)(未承認)、シクロスポリン(サンディミュン)(未承認)、タクロリムス(プログラフ)
・抗TNFα受容体拮抗薬:インフリキシマブ(レミケード)8週ごとの点滴投与、アダリムマブ(ヒュミラ)2週ごとの皮下投与。自己注射も可能


  
外科的治療:


術式:
1. 大腸全摘、回腸嚢肛門吻合術(IAA:Ileoanal anastomosis)
直腸粘膜抜去を行い、病変をすべて切除し、回腸で貯留嚢を作成して肛門(歯状線)と縫合する術式で根治性が高い。通常は一時的回腸人工肛門を増設する。
2. 大腸全摘、回腸嚢肛門間吻合術(IACA:Ileoanal canal anastomosis)
回腸嚢を肛門間と吻合して肛門間粘膜を温存する術式。回腸嚢肛門吻合術と比べ漏便が少ないが、肛門間粘膜の炎症再燃、癌化の可能性が問題点である。

3. 結腸全摘、回腸直腸吻合術
直腸の炎症が軽度の症例、高齢者に行うことがある。排便機能が良好であるが、残存直腸の再燃、癌化の問題があるので術後管理に留意。
4. 大腸全摘、回腸人工肛門造設術
肛門温存が不可能な進行下部直腸癌例だけでなく、肛門機能不良例、高齢者などに行うことがある。
5. 結腸亜全摘、回腸人工肛門造設術、S状結腸粘液瘻またはHartmann手術
侵襲の少ないのが利点。全身状態不良例に対して肛門温存術を行う前の分割手術の一期目として行う。

「難治性炎症性腸肝障害に関する調査研究」平成27年度総括・分担研究報告書p442~443

クローン病:
特定疾患医療受給者証交付件数でみると1976年には128人であったが、平成25年度には39799人と急増している。10万人当たり27人で米国の200人の約1/10程度。

10歳代~20歳代の若年者に好発、男性で20~24歳、女性で15~19歳で最も多く、男女比は2:1で男性に多い。世界的にみると先進国に多く、北米やヨーロッパで高い発症率。動物性脂肪、タンパク質を多く接種する人、喫煙者に発病しやすいと考えられている。

臨床症状:
消化管病変:
腸病変:縦走潰瘍、敷石像、非連続性または区域性病変、不整形~類円形潰瘍、多発アフタ
肛門病変:裂肛、Cavitating ulcer(肛門管から下部直腸に生じる深く幅の広い有痛性潰瘍)、難治性痔瘻、肛門周囲膿瘍、浮腫状皮垂(edematous skin tag)、肛門狭窄など
胃・十二指腸病変:多発アフタ、不整型潰瘍、竹の節状外観、ノッチ様陥凹、敷石状など
合併症:腸管狭窄、腸閉塞、内瘻(腸-腸瘻、腸-膀胱瘻、腸-膣瘻)、外瘻(腸-皮膚瘻)、悪性腫瘍(腸癌、痔瘻癌)
消化管外病変(二次的な合併症を含む)
血液:貧血、凝固能亢進など
関節:腸性関節炎、強直性脊椎炎など
皮膚:口腔内アフタ、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、多形性滲出性紅斑など
眼:虹彩炎、ブドウ膜炎など
栄養・代謝:成長障害、低蛋白血症、微量元素欠乏、ビタミン欠乏、骨障害など
その他:原発性硬化性胆管炎、血管炎、膵炎、胆石症、尿路結石症、肝障害、アミロイドーシスなど
診断の手順フローチャート:

診断基準:



病型分類:
縦走潰瘍、敷石像または狭窄の存在部位により、小腸型、小腸大腸型、大腸型に分類する。これらの所見を書く場合やこれらの所見がまれな部位にのみ存在する場合は特殊型とする。特殊型には、多発アフタ型、盲腸虫垂限局型、直腸型、胃・十二指腸型などがある。
疾患パターンとして、合併症のない炎症型、瘻孔形成を有する瘻孔形成型と狭窄性病変を有する狭窄型に分類する。
重症度分類:

治療:初診・診断時や活動期には寛解導入を目的とした治療を行い、その後維持療法を行う。治療法には、薬物療法、栄養療法などの内科的治療法と外科的治療法がある。小児では原則として、最初に栄養療法を中心に治療を選択する。重症於あるいは頻回に再燃し、外来治療で症状の改善が得られない場合には入院や外科的治療を考慮する。
栄養療法:経腸栄養療法を行う場合は、成分栄養剤(エレンタール)あるいは消化態栄養剤(ツインラインなど)を第一選択とする。受容性が低い場合には半消化態栄養剤(ラコールなど)を用いる。

肛門部病変に対する治療:
腸管病変の活動性を鎮め寛解導入すべく、内科的治療に努め、痔瘻・肛門周囲膿瘍に対しては、必要に応じドレナージなどを行い、メトロニダゾールや抗菌剤・抗生物質などで治療する。肛門狭窄については、軽肛門的拡張術を考慮する。
狭窄の治療:
内視鏡が到達可能な個所の通過障害症状の原因となる狭窄を認める場合には、内科的治療で炎症を鎮静化し、潰瘍が消失・縮小した時点で、内視鏡的バルーン拡張術をこことみてもよい。改善が認められたら定期的に狭窄度をチェックし、本法を繰り返す。無効な場合には外科手術を考慮する。

手術適応:

術式:
小腸病変:腸管温存を原則とし、合併症の原因となっている主病変部のみを対象とした小範囲切除術や限局性の線維性狭窄では狭窄形成術を行う。
大腸病変:病変部の小範囲切除術を原則とする。病変が広範囲、または多発し、直腸に病変が比較的軽度で肛門機能が保たれている場合には、大腸亜全摘、自然肛門温存術を行う。直腸の著しい狭窄・瘻孔には人工肛門造設術を考慮する。
胃十二指腸病変:内視鏡的拡張術が無効な十二指腸第1~2部にかけての線維性狭窄例には胃空腸吻合、または狭窄形成術を行う。
肛門部病変:直腸肛門病変には「クローン病特有原発巣(クローン病自体による深い潰瘍性病変)」、「続発性難治性病変(原発巣から感染などによって生じた痔瘻などの二次的病変)」、「通常型病変(クローン病と関連のない病変)」があり、病態に応じて治療法を選択する。



難病センター 潰瘍性大腸炎
難病センター クローン病
潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療方針

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2017年7月31日 月曜日

高齢者におけるC型肝炎治療の現状 中馬 誠 先生

2017年7月27日 
演題「高齢者におけるC型肝炎治療の現状」
演者:横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター准教授 中馬 誠 先生
場所: 横浜ローズホテル
内容及び補足「
C型肝炎の疫学:
C型肝炎は、HCV感染後急性肝炎となり、その70~80%が慢性化し、その内80%が肝硬変となり、年に7~8%の人が肝細胞癌を発症する経過を取っていた。

治療を受けている人の推計は1200000万人と推計されている。
肝癌による死亡者数は2003年頃の年3万5千人をピークに、現在は年3万人前後にまで減少してきた。肝癌の原因疾患の第一は、依然C型肝炎ウイルスであるが、その頻度は減少してきており2011年に発表された九州地区の肝癌の調査では、68%にまで低下してきており、B型・C型以外のNASHに伴うものが増加してきている。

京都府立医大でも同様の傾向を認めており2013年までは肝癌の原因としてC型肝炎は60%出会ったら、それ以降は40%と低下しているが、非アルコール性脂肪肝NASHの割合が増加している。

http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/jkpum/pdf/124/124-12/umemura12412.pdf

発癌に関して検討としてみると、65歳以上と65歳未満では、倍ぐらいの差があります。

肝臓の線維化が進んでいると発癌しやすくなるのがその一つの原因であると考えられています。
平成19年度に日本肝臓学会は「C型肝炎に起因する肝がん撲滅を目指して」の中で、肝癌が一年間に発生する率を下の表のように提示している。


現在日本は、おもに三種類のC型肝炎ウイルスが存在し、治療に対する反応性が異なるために、治療開始前にウイルスの種類を調べてから治療方針を決定する。

治療のための検査の流れは、C型肝炎の抗体と核酸を調べ、C型肝炎のために肝機能異常があるかないかで分けている。

しかし、先ほど述べたように、肝癌の発生頻度は肝臓の線維化により別れるので、肝機能異常があるかどうかで判断するよりは、線維化があるかどうか、あるとした場合、線維化の進行度を見る必要がある。
実際、肝政権をした患者で、肝機能と肝臓の組織変化の関係を見てみると、約2/3の症例に軽度の線維化が見られており、中等度を入れると7割弱の症例に線維化が見られている。

治療成績の方は、インターフェロンしかなかった1990年代に比較し、リバビリン併用により治療効果は、倍増し、ペグインターフェロンの開発によりさらに向上し、DAAの開発により、インターフェロンを使用しなくてもC型肝炎ウイルスを体内から排除できる時代になってきた。


しかも、治療効果判定は、以前は治療開始後半年の経過を診る必要があったが、DDA製剤の治療では、3ヵ月で治療効果の判定が可能となってきた。


現在First lineの治療薬は、Genotype1では4種類、
1. ソホスブビル+レジパスビル(ハーボニー) 12週治療
2. オムビタスビル+パリタプレビル/リトナビル(ブィキラックス) 12週治療
3. グラゾプレビル+エルバスビル(エレルサ+グラジナ) 12週治療
4. アスナプレビル+ダクラタスビル+ベクラブビル (ジメンシー) 12週治療
Genotype2では2種類
1. ソホスブビル+リバビリン(ソバルディ+コペガス or レベトール) 12週治療
2. オムビタスビル+パリタプレビル/リトナビル+リバビリン(ブィキラックス+レベトール) 16週治療

作用機序を見てみるとNS3/4A阻害剤、NS5A阻害剤、NS5B阻害剤がある。

各薬剤の主な副作用は、下図のようにそれぞれ特徴があり、患者さんの病態・合併症に応じて治療方法が選択できる時代になってきた。

個々に副作用を見ていくと1型適応のDDAではChild-Pugh Aの肝硬変も適応があるが、腎機能患者に対しては、ハーボニーが使用できず、ヴィラキックスは薬剤相互作用があるために合併症の多い高齢者では、いまいち使い勝手がよくない。その点エレルサ・グラジナは高齢者において使いやすい薬かもしれない。

最初に経口DAAとして認可されたアスナプレビル+ダクルインザは薬剤耐性変異を生じる可能性がありFirst lineから消えた。

ハーボニーはアメリカのデーターでは92%、日本では95%の奏効率と有効であるが、eGFR<30では腎機能障害患者では使えず、50未満の症例でも投与を控えることが望ましい。

ヴィキラックスは腎障害患者においても使用可能であるが、薬剤相互作用の薬が多く、高血圧患者においてカルシウム拮抗薬が投与されている場合にはARB等に変更してもらう必要がある。

その点エレルサ+グラジナは腎障害患者でも使用可能であり、薬剤相互作用薬は多くないが、脂質異常症患者において、スタチン系薬剤が投与されている場合には、薬剤の変更が必要となる。

治療歴の有る無しでも、男女でも薬剤耐性変異株においても奏効率は97%前後と有効性の高い薬剤である。

副作用においては、胃腸障害の他、肝機能障害がみられることがあり、定期的な肝機能チェックが必要である。

さらに注意してほしいのは、CKD患者においてHCV感染者の腎機能の推移は良くないので、腎機能低下のリスクとして要注意である。

しかし、ウイルス駆除に関する効果は、性別、年齢、治療の有無、透析のあるなし、CKDの有る無し、薬剤耐性変異の有る無しで違いはない。

2型に関してはリバビリンを併用する必要がある。

腎機能障害患者においては、eGFR≦50では使えない状況にある。

ここまでを小括すると次のようになる。


C型肝炎診療の今後の課題は、
ウイルス駆除後症例の診療方針として
1. 肝線維化は消褪するか?
2. 肝発癌抑止効果?
3. 生命予後改善効果?
ウイルス駆除後肝癌の対策として
1. 適切なスクリーニングは?
2. 肝発癌リスク因子は?
といった問題がある。

インターフェロン投与において、肝発癌抑止効果は0.35とされている。

http://www.cghjournal.org/article/S1542-3565(09)01085-4/pdf

ウイルス駆除後の肝発癌においてのリスク因子として、高齢、男性、線維化高度、糖尿病、AFP高値が挙げられており、これらのリスク因子を持つ症例においてはウイルス排除後も定期的な画像検査が必要である。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/cncr.29528/pdf

特に高齢者においては肝発癌に注意が必要であるし、SVR後もAFP高値例においても、注意が必要である。


糖尿病における悪性疾患の合併では、膵癌も多いが、実数は肝癌が最多である。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1008862#t=articleResults


高インスリン血症に伴う発がんの機序も徐々に解明されてきている。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi/109/4/109_4_544/_pdf

糖尿病患者の死亡原因としても肝癌死が多い。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1008862#t=articleResults

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2017年2月28日 火曜日

便秘治療の常識・非常識 木下 芳一 教授

2017年2月18日 
演題「便秘治療の常識・非常識」
演者: 島根大学医学部内科学講座第二教授 木下 芳一 先生
場所: 横浜ベイホテル東急
内容及び補足「
米国人3憶1千万人中、慢性特発性便秘症の人は、6300万人21%、過敏性腸症候群は1530万人5%という推計がある。日本における過敏性腸症候群の有病率は4175万例で4.4%であり、米国と同様で、便秘症の人も同程度と考えられる。
平成25年の国民生活基礎調査による便秘の有訴者数は以下のような状況で、女性に多く、60歳を超えると男女ともに増加し、80歳以上になると男性が女性よりも多くなる。


島根大学で行った市民講座の252人のアンケート調査でも、便秘と思っている人は20%で、薬を飲んでいる人は10%だった。
1週間の島根大学病院の処方箋をチェックしてみたら4607人外来患者で下剤が処方されている人の割合は14.6%であり、ほぼ同程度の頻度だと思われる。
食物を摂取してからの各消化管に留まっている時間は、食道で4-5秒、胃で2時間、小腸に5~6時間、大腸に24~48時間が一般的である。
腸の運動
蠕動運動:口側の消化管が収縮し、肛門側の弛緩が同時に起こる。


この動きにより腸内容物が肛門側に送られる。一秒当たり1㎝である。大腸では、上行結腸<横行結腸<下行結腸<S状結腸の順に早くなる。
分節運動:蠕動運動とは違い、腸内容物である消化液と食べ物を混ぜ合わせる動きで、吸収しやすい状態に変化させている。


振り子運動:分節運動と同様に、内容物を混ぜ合わせる運動であるが、分節運動とは異なり、腸を縮めたり伸ばしたりを繰り返すことで、内容物を交ぜわせている。


腸が蛇腹状に伸縮している状態である。
これらの混ぜ合わせつ動きは、蠕動運動とは逆に、上行結腸>横行結腸>下行結腸>S状結腸となる。
http://cyou-kenko.com/cyou/1895/

胃で強い酸性の胃液と食物をよく混ぜ、食物中の菌を殺菌し、胆汁で胃酸を中和し、膵臓から分泌された消化酵素で食べ物を吸収しやすい栄養素に分解していく。胃液、胆汁、膵液は一日に焼く6リットル分泌されると考えられており、食べ物の中の水分量と唾液を合わせると約9リットルの液体量となる。

このうち約7リットルは小腸で吸収され、残りの2リットルが大腸に入る。大腸に入ったどろどろの液状の状態で、水分や電解質が大腸で吸収され、便が形成される。

腸の中を通過する時間により、水分の吸収量が異なる。一般には以下のように便の形状は7段階に分類される(ブリストールスケール)。

http://www.carenavi.jp/jissen/ben_care/shouka/shouka_02.html


排便のメカニズム:
食物は半日から一日以上かけて排便に至る。大腸に到達するまでに数時間かかり、その後数時間かけて水分を徐々に再吸収し、半固形状の状態でS状結腸に暫く留まり『バナナ型』の形状になる。


S状結腸に留まっている便は、大蠕動という大きな強い蠕動運動で直腸に移動し、排便の一連の動きが開始される。大蠕動は、一日に1~3回起きる波で、食物外に入ると生じ、胃結腸反射と呼ばれている。一般的には朝食後に強く起きるが、人によっては毎食ごとに起きたり、特定の環境(図書館に入ると排便したくなるなど)や特定の状況(人前での発表)、特定の食べ物などで反射が起きることもある。
普段は直腸は空っぽで便はない状態で、便が移動してくると直腸壁が便で押され、直腸内圧が上昇する。この進展圧を直腸壁内にある神経叢が刺激を受け、仙髄に刺激を送り、脳の排便中枢に届く。この刺激が強くなると大脳皮質に信号が送られて便意を感じる。
脊髄レベルでの反応としては、排便の準備状態に体は入るのだが、意識には上らず、肛門にある内肛門括約筋が軽く肛門を占めている。便意が出てくると、排便準備のために弛緩するが、10秒ほどでまたもとの締まった状態に戻る。内肛門括約筋が緩むと、便が漏れないように、意識的に外肛門括約筋を一時的に収縮させて、トイレまで我慢をすることができる。

http://www.jcca.or.jp/kaishi/271/271_toku2.pdf

人類は鳥類などとは異なり、便が不随意に排出されないような解剖学的特徴を備えている。
一つ目の機序として、安静時には恥骨直腸筋の緊張状態により、直腸が前方に牽引されることで、直腸肛門角が80~100度と折れ曲がり、排便を抑制している。
不随意筋である内肛門括約筋は通常収縮しているが、直腸に便が充填されると反射的に弛緩する。このような状態になった時に、二つ目の機序として、随意筋である外肛門括約筋を収縮させることで排便を抑えている。
トイレに入り排便の準備が整うと、怒責により腹腔内圧が上昇、恥骨直腸筋の弛緩により直腸肛門角が鈍化するとともに、外肛門括約筋を弛緩させて排便する。

便の内容を見てみると
70-80%が水分で、7%腸内細菌、7%超粘膜の脱落、6%が食物残差
ガスの成分は99%が窒素、酸素、二酸化炭素、水素、メタンであり、独特の臭いとなるアンモニア、硫化水素、インドール、スカトールは1%程度である。

便秘の定義
機能性消化器疾患国際的部会のROME3基準
排便回数が週3回未満
硬便が排便時の25%以上
要指的排便(紙や綿棒などを用いて強制的に排便させる行為)が25%以上
怒責(排便時に強くいきむこと)、残便感、閉塞感がみられる頻度が25%以上

上記症状が6か月前から少なくとも3か月間で認められることが慢性機能性疾患=慢性便秘と定義されている。

日本においては、日本内科学会の定義
3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態
としているのに対し、日本消化器病学会では、
排便が数日に一回程度に減少し、排便間隔不規則で便の水分含量が低下している状態(硬便)を指すが、明確な定義があるわけではない。問題となるのは、排便困難や腹部膨満感などの症状を伴う便通異常が便秘症です。
としている。
これらのことを考慮して『慢性便秘症診療ガイドライン』はつくられている。
実際、先ほど述べた市民講座のアンケートでは便秘と感じた症状に対して、
便が硬い23%、回数や量の減少30%、出にくい30%、残便感15%といったように便秘を感じる症状は人によってさまざまであった。

そこで日本大腸肛門学会で『慢性便秘症診療ガイドライン』を作ることになった。
以下の案に従って、作成作業を行い、ほぼほぼ完成にまでこぎつけた。


一般的には便秘は発症経過から急性と慢性に分けられ、さらに機能性、器質性、薬剤性、症候性に分類される。

機能性便秘は腸管の器質的な病変は認められないが、胃結腸反射の低下や排便背ちゅつ機能の障害などにより発症する便秘で、大腸通過遅延型と排便機能障害型に分類される。

症候性便秘は、他の疾患が原因で発症する便秘で、糖尿病や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、低K血症やポルフィリン症などの代謝性疾患、パーキンソン病や脳血管障害などの神経疾患、うつ病や統合失調症などの精神疾患、急性心不全や急性心筋梗塞などの循環器疾患などで起こるもので、これらの多くは腸管運動機能が低下するために起こるものであるが、糖尿病では神経障害が、甲状腺機能低下では甲状腺ホルモンの分泌低下が、低K血症では筋肉障害が、神経系疾患では中枢神経系の障害と考えられている。

薬剤性便秘症は腸管の運動を抑制する薬剤効果により発症する便秘で、原因薬剤としては、抗コリン薬、ドパミン作動薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗ガン薬、麻薬系鎮痛薬、降圧薬、抗不整脈薬、止痢薬などがある。

器質性便秘は、腸管や肛門に器質的疾患あるいは解剖学的異常により、長官の狭窄や閉塞を来したために起こる便秘である。管腔の器質的閉塞、腸管壁の器質的障害・蠕動運動障害、管腔外からの器質的圧迫に分けられる。

https://www.onakanohanashi.com/medical/385.html/2


症状と病態で分類すると以下の表になる。

https://medicalnote.jp/contents/160419-023-AW

診断においては、問診が大事で便の回数、正常、基礎疾患、常用薬を確認する。
身体所見では、腹部の手術痕を含めた全身の外観、腹部膨満、肛門所見を見、腹部の聴診、触診を行う。
腹部の触診には、浅触診、深触診、滑走性触診、双手触診、衝動触診、指先触診などがあり、これらの診察主義を組み合わせて、便通以上の存在、その他の腹部の異常所見を拾っていく。

小児においては慢性便秘症をきたす基礎疾患を示唆する徴候(Red Flags)として以下のものがある
胎便排泄遅延(生後24時間以降)の既往
成長障害・体重減少
繰り替える嘔吐
血便
下痢(Paradoxical diarrhea)
腹部膨満
腹部腫瘤
肛門の・形態位置異常
直腸肛門指診の異常
脊髄疾患を示唆する神経所見と仙骨部皮膚所見

直腸診:施行前に以下の点を確認する。
痛み:排便との関係、痛みの感覚と程度、寛解・増悪の有無
出血:出血の色調、タイミングとその量、凝血塊の有無、便と出血の絡み具合
脱出:出現時期とその程度と頻度、怒責による増悪の有無
下着の汚れ:色調と、性状、臭い
排便:便秘・下痢の有無、回数、便柱の太さ、残便感、便失禁の有無

直腸診の際のチェックポイント
狭窄の有無、痙攣や圧痛の有無、病変や腫瘤の存在の有無(部位、性状)、血液の付着、便の存在の有無(存在しているときは、硬さと残便感の有無)を確認するだけでなく、得聴診を行っている際に、排便動作を行ってもらい、肛門内の圧の変化、肛門括約筋の収縮程度、腹壁の緊張度の変化を確認する。


http://www.arakawaseisakujo.com/images/kensyui_45.pdf

検査としては、血液検査で基礎疾患の有無や全身状態の確認をし、レントゲンで腹腔内の腸管の位置、便およびガスの状況を確認する。
CT、大腸鏡、大腸通過時間検査、排便造影検査、小腸検査、腸内細菌叢の検査などが行われる。
大腸通過時間検査:X線非透過性マーカーを20個含んでいるカプセルを飲んでもらい、120時間(5日)後にレントゲンを撮影し、4個以上残っていれば台帳通過遅延型と判断する。


排便造影検査:バリウムを直腸に注入し、便座に座ってもらい、排出するところを撮影。10~15秒で通常は全量排出される。


https://medicalnote.jp/contents/160419-025-PJ

診断・治療の流れを図にすると以下のようになる

http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/sped/1405gi/201405/closeup/536427_zu04.html


排便姿勢として「しゃがむ」姿勢が見直されている。つまり蹲踞(そんきょ)しているしゃがんだ姿勢で「スクワットポジション」と呼ばれている。この姿勢は解剖学的に恥骨と特徴が近接し、直腸肛門角が直線に近くなり、下腿が上行結腸や下行結腸を圧迫して腹圧がかかり、排便が容易になる姿勢なのである。

便秘症の患者において、食生活や運動と並んで排便姿勢は非常に重要である。排便時にしゃがむことが少ない現在、理想的な排便姿勢に近づけるべく、下図のように、足元に足置きを置き、前かがみ35度の前傾姿勢を取るように指導するとよい。

我が国の便秘治療薬は、欧米に比べ酸化マグネシウムや刺激性下剤の使用が多いことが特徴である。米国においてはOTC(Over The Counter:一般用医薬品)医薬品のポリエチレングリコールや繊維などが便秘治療薬の主流である。
WGO(World Gastroenterology Organisation)のガイドラインで推奨されている便秘良薬は、エビデンスグレードの高いポリエチレングリコール、ルビプロストン、Prucalopride(日本未発売)となっている。

酸化マグネシウム製剤は、高マグネシウム血症により吐き気や、めまい、ふらつきなどを生じ、さらに高値となると除脈や心停止、意識障害、呼吸抑制などを引き起こすので、高齢者や心疾患患者、腎機能障害者においての投与に対しては注意が必要である。
また酸化マグネシウム(MgO)は胃酸(HCl)と反応して(MgO+2HCl→MgCl2+H2O)制酸作用を発揮する。また、塩化マグネシウム(MgCl2)は腸内において、何吸収性の重炭酸塩(Mg(HCO3)2)または炭酸塩(MgCO3)となり、浸透圧維持のため腸管から水分を奪い腸内容物を軟化させることにより緩下作用を示すので、PPIやH2ブロッカー投与時や胃摘出後においては作用が減弱するので注意が必要である。

一般的に言われている便秘の対応策としての生活習慣の改善としては、以下のものがある。
・規則正しい生活
・睡眠を十分とる
・適度な運動
・規則正しくバランスのとれた食事
・線維物、水分を多くとる
・よく噛む
・腸内の善玉菌を増やす
・リラックスする
個々人においては効果があると思われるが、疫学的な研究でのエビデンスはどれも確立していない。その人に応じた適切な対応が必要だと考えられる。

食物繊維
その後も食物繊維の摂取量は減少の一途をたどっている。

日本家政学会誌, 45(12), 1079, 1994
http://www.otsuka.co.jp/health_illness/fiber/take_fiber/daily_amount/process/
日本人の食物繊維の摂取比率は1947~1965年まで穀物が最も多く約30~40%を占めていたが、そののち穀物が減少し、野菜類が30%前後で最も多くなった。1987年は野菜類28.3%、穀類23.3%、豆類13.1%、果実類11.6%となっていた。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej1987/45/12/45_12_1079/_pdf


食物繊維摂取量の内訳を見てみると、
 
http://www.otsuka.co.jp/health_illness/fiber/take_fiber/daily_amount/process/


参:食物繊維
食物繊維は、繊維状のものもあるが、ハチの巣状、へちま状のようなものもあり、表面にたくさんの穴がある構造をしている。

水溶性と不溶性の2種類に分類される。
水溶性食物繊維
ネバネバ系とサラサラ系がある。
昆布、わかめ、こんにゃく、果物、サトイモなどに多く含まれる。
粘着性により胃腸内をゆっくり移動するので、お腹が空きにくく、食べ過ぎ防止効果あり。糖質の吸収を緩やかにし、食後血糖の急激な上昇を抑える。
胆汁酸やコレステロールを吸着し、体外に排泄する。
大腸内で発酵・分解されると、ビフィズス菌などの増加を促し、腸内環境を整える整腸効果あり。
食品素材:ポリデキストロース、難消化性デキストリン
ペクチン:血糖の急激な上昇を防ぎ、コレステロールの上昇を抑制する効果あり。成熟した果物、カボチャ、キャベツ、大根
グルコマンナン:食べ物を包み込んで、消化・吸収させにくくする作用があり、水を吸収し胃の中で膨らんで膨満感が得られやすい。こんにゃく
アルギン酸:海藻のぬめり成分で、コレステロールや血糖の上昇抑制作用、便秘解消・動脈硬化予防作用。昆布、わかめ、もずく、めかぶなどの海藻類。
フコイダン:海藻のぬめり成分で、肝機能向上・抗アレルギー・血圧上昇抑制などの効果がある。昆布、わかめ、もずく、めかぶなどの海藻類。

不溶性食物繊維
成熟した野菜などに含まれる糸状で長い筋。ボツボツ、ザラザラしているのが特徴。
穀類、野菜、豆類の他、エビやカニの表皮にも含まれる。
胃や腸で水分を吸収して、大きく膨らみ、腸を刺激して蠕動運動を活発にし、便通を促進。
良く噛んで食べることになるので、食べ過ぎの防止、顎の発育促進、歯並びを良くする効果がある。
水溶性食物繊維よりは効果が弱いが、大腸内で発酵・分解されると、ビフィズス菌などの増加を促し、腸内環境を整える整腸効果あり。
セルロース:穀類の外皮の多く含まれ、食事から節酒する食物繊維の大半を占めている。腸内で有害物質を吸着して排出し、便の排泄を促す。リンゴ、大豆(おから)、ゴボウ、穀類
ヘミセルロース:セルロースに準じた働きがあり、腸内の善玉菌を増殖させ、便秘の予防や有害物質の排泄などに効果がある。ゴボウ、小麦ふすま、玄米、大豆
ペクチン:不溶性と水溶性がある。熟成するにつれ、水溶性に変化。不溶性の効能は腸内の有害物質を吸着し排泄するので大腸がんの予防効果があるといわれている。未熟な果物、野菜
リグニン:コレステロール上昇の抑制作用、善玉菌の増殖作用。ココア、豆類、イチゴ、梨
キチン・キトサン:血圧やコレステロールの上昇抑制作用。免疫力向上作用があるといわれている。:海老・カニの殻

野菜に含まれる食物繊維量と水溶せ・不溶性の割合を以下に示す。

http://www.otsuka.co.jp/health_illness/fiber/take_fiber/foods_amount/list/
食物繊維を多く含むプランタゴを多く摂り過ぎて胃石ができた症例がいる。
従って、水溶性・不溶性の食物繊維の比率が大事であり、理想的には、水溶性:不溶性=1:2が理想とされている。
ゴボウは上記表で見ると水溶性:不溶性の比率がよく、繊維量もそれなりにお送り躁的な食材と言えるが、水溶性繊維は、長時間水の中に付けておくと流出することがあり、食物繊維を多く含む食材を探すだけでなく、調理法も問題である。
http://column.asken.jp/glossary/glossary-1502/
そこで、ゴボウを粉末にしたごぼう茶で臨床実験をしてみたが、便秘に対して有意な差は出なかった。
個々人においては、いろいろな便秘対策は有効なものがいろいろと確認することができるが、他数例を対象とした臨床研究においては、有効性を証明できるものはあまりない。
水分摂取を多くすることでも、毎日30分以上のウォーキングをするなどの対応でも有効だというエビデンスはない。
臨床研究で有効であった方法としてバイオフィードバック療法がある。

バイオフィードバック療法
排便時に腹筋に力を入れた際に肛門を収縮させていると排便は困難になる。そこで腹筋と肛門に筋電計をつけ電気的活動をが増加して、排便の仕方を訓練する治療法である。

治療開始前は下図左のようにいきむ動作(怒責)をすると腹筋と肛門も同時にある程度の強度の電気的活動が観察されるが、訓練後には、腹筋に力を入れ怒責をしてもらっているときの肛門括約筋の活動度が低下しているのが確認できる。

https://medicalnote.jp/contents/160419-025-PJ

小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2017年2月20日 月曜日

Leaky Gut症候群に対する新たなアプローチ 加藤 孝征 先生

2017年2月18日 
演題「Leaky Gut症候群に対する新たなアプローチ」
演者: 横浜市立大学医学研究科肝胆膵消化器病学 加藤 孝征 先生
場所: 横浜ベイホテル東急
内容及び補足「
小腸は胃で胃酸などによる分解を受けた食物の栄養素が吸収される部位である。500ダルトンの大きさの分子までは通過することができるが、それ以上の大きな分子は通さないような構造になっている。このバリア機構が障害を受けると、細菌やウイルス、それ以外の物質などが体内に侵入してくる。
小腸の表面は何百もの絨毛があり、その絨毛は数百万の微小絨毛からできている。この微小絨毛は、細胞を守るための粘膜と最近が周りを覆っており、消化酵素を作る役割の他、正常の大きさの栄養素を吸収し未消化で大きな分子の食物を通さないブロック機能がある。

http://scdlifestyle.com/2010/03/the-scd-diet-and-leaky-gut-syndrome/

tight junction:
そのブロック機構を担っているのが細胞同士をくっつけているtight junctionである。
1963年にFarquharとPaladeがラットとモルモットの腺及び管腔組織上皮に形態の異なる三種類の細胞間接着分子を報告したのがこのtight junctionである。

A:TJの超薄切片電子顕微鏡像。 隣り合う2枚の細胞膜がところどころで密着して見える。
B:TJの凍結割断レプリカ像。 TJストランド(矢頭)のネットワークが観察される。これがベルト状に細胞周囲を取り巻いている。
C:TJストランドの構造モデル。 接着分子が細胞膜内でひも状に重合することによって細胞膜密着部位およびTJストランドが形成されると考えられてきた。
スケールバー:50 nm


http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fvets.2015.00057/full


Claudin:四つの膜貫通ドメインと二つの細胞外ループを持つ分子量23kDの小さな蛋白質である。
隣り合う細胞の両側から細胞接着部位に集積し、tight junctionの細胞膜密着構造と膜内のストランド構造を形成する。
様々な組織で細胞あたり複数のサブタイプが上皮細胞に共発現していることが多く、上皮のタイプによって発現するサブタイプの組み合わせが異なる。
複数のClaudinが共発現している場合、一般にtight junctionはこれらのClaudinがモザイク状に集まって形成される。
tight junctionを形成するClaudinがのサブタイプには機能的な差があり、細胞間隙の透過バリア形成に徹するバリア型Claudinとナトリウムイオンなど無機イオンや水などのような小分子を通すHoleを形成するチャンネル型Claudinが存在する。

A: クローディンの構造
B: クローディン3を導入したマウス線維芽細胞に形成されたTJストランド(凍結割断レプリカ像)
スケールバー:100 nm
比較的大きな分子量を持つ水溶性分子が極めてわずかずつtight junctionを通って漏れている経路があり、リーク経路といわれている。tight junctionのストランド構造が膜内の蛋白質ポリマーとしての切断と再結合を繰り返す動的な反応がそのメカニズムの一つと考えられている。

http://www.nips.ac.jp/dcs/kenkyu_files/seikagaku0.htm

tight junctionの機能

フェンス機能:細胞膜を区画化し維持する機能。これにより、細胞膜は、細胞頂部(apical)細胞膜と側壁基底(baso-lateral)細胞膜が分けられており、それぞれの細胞膜に固有の蛋白や脂質の成分が交わらないようになっている。つまり、細胞の極性を維持する機能である。癌細胞が細胞極性を失い脱分化するのはtight junctionの形成が低下するためと考えられている。

上の写真のApical側の細胞膜に偏在していた色素がtight junctionの破綻によってbaso-lateral側の細胞膜にも色素がみられるようになる。
http://web.sapmed.ac.jp/patho2/tight_function.jpg

バリア機能:細胞と細胞の間を物質が自由に通過できないように細胞間をシールする機能。消化管腔の内外を隔絶する、循環系から胆汁排泄路を隔絶するといった、区域を隔絶しているのが、上皮細胞や内皮細胞間に存在するtight junctionである。

門脈より注入した色素が赤い矢印の部分(tight junction)で途絶している。
その他に、選択的に物質を糖化させるチャンネルとしての役割、細胞内への様々なシグナル伝達機能もある。

Tight junction機能が低下する状態・病態
一般的な原因として、虚血などによる細胞内ATPの低下、細菌毒素などによるマイクロフィラメントの変化、ギャップ結合の機能低下がある。
感染症との関係では、レオウイルスがJAM-A、コクサッキ―ウイルスとアデノウイスルがCARを受容体としている。
コレラ菌はOcculudin、ウエルシュ菌はClaudion-3、Claudin-4、ヘリコバクターピロリのCagAはPar-1に結合して、腸管病原性大腸菌、クロストリジウムディフィシル、ジフテリア菌などはアクチン重合を変化させ、tight junction機能を低下させる。
また、VEGFを筆頭に多くのサイトカインがtight junction機能を低下させるので、炎症や腫瘍組織では、血管内皮細胞のtight junction機能が低下(血管透過性が亢進)しているいる。

Tight junctionが関与する疾患
血管系:浮腫、サイトカン血症、糖尿病性網膜症、多発性硬化症、血行性転移
消化器系:細菌性胃炎、偽膜性腸炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、カルシウム吸収障害
肝:黄疸、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎
呼吸器系:喘息、アレルギー性鼻炎、呼吸促迫症候群
ウイルス感染:レオウイルス、アデノウイルス、コクサッキ―ウイルス、ロタウイルス、HIVウイルス
皮膚:アトピー性皮膚炎
遺伝性疾患:家族性低マグネシウム血症、難聴、嚢胞性線維症
その他:卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
http://www.jspid.jp/journal/full/02603/026030395.pdf

1 遺伝性低マグネシウム血症:腎臓の尿細管の細胞間透過性は近位尿細管で高く、遠位尿細管、集合管に向かうにつれて低下していく。尿細管の部位によりClaudinのあぶたいぶの発現パターンが異なっている。Claudin-16はヘンレループの太い上行脚に限局して発現しており、この異常によりCa2+とMg2+の再吸収が阻害された疾患である。
2 先天性難聴:コルチ器のRericular laminaのtight junctionは、K+が豊富な内リンパとNa+が豊富な外リンパを分離し、外有毛細胞に必要なイオン組成を形成・維持している。Claudin-14のノックアウトマウスの解析から、Claudin-14が有毛細胞と支持細胞のtight junctionの成分であり、この欠損が難聴林檎を引き起こすことが確認された。
3 皮膚:体内の水分蒸発や細菌などの異物が体内に侵入するのを防ぐバリア機能がある。Claudin-1欠損マウスが、皮膚からの過剰な水分消失により生後1日で死亡することから重層扁平上皮である皮膚のtight junctionが皮膚のバリア機能に重要な役割を担っていることが判明した。
4 C型肝炎:HCVが肝細胞に侵入するのに、HCVエンベロープ糖蛋白質であるE2が肝細胞表面抗原受容体であるCD81と結合し、さらにClaudin-1がCo-receptorとして必要であることが分かった。
http://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/handle/2324/10212/fam99-2_p25.pdf

Leaky Gut Syndrome (LGS):腸管壁浸漏症候群:腸管壁における過度の浸透状態が生じ、バクテリア、毒素及び食物が漏れ入ってくる状態:腸粘膜から高分子化合物質、食物アレルゲン、また、萎縮性粘膜に関連する毒素の物質透過性が増加する状態である。

LGSを引き起こすと考えられる原因
抗生物質による消化管系の細菌、寄生虫、心筋類の異常繁殖
アルコール、カフェイン
食物・飲料:細菌が混入した水分、着色剤、防腐剤、酸化防止剤などの食品添加物含有食物・飲料
酸素欠乏
牛乳・乳製品の摂取
非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)
コルチコステロイド
精製炭水化物食品
避妊用ホルモン(ピル)
食品に付着したカビ、菌
水銀、鉛などの重金属の蓄積

LGSの判定検査
マンニトール・ラクツロース吸収試験
この二つの糖質は人間の身体には必要ない物質であり、正常の腸管では代謝されることはない。
水に薄めたマンにトールとラクツロースを飲み、六時間蓄尿し、その尿中に排泄された二つの糖質の量を測定し、比を見る検査である。
正常の消化吸収状態であれば、マンニトールは多く吸収され尿中に排泄され、ラクルロースは吸収されないので尿中の量は少ない。
LGSの場合には尿中のマンニトール及びラクツロースの量は多い。
慢性的な栄養吸収障害の場合には、両者とも少ない。
潰瘍性大腸炎、クローン病の場合には尿中マンニトールンの量は少なく、ラクツロースの量は多い。
LGS改善のための栄養素及び機能性成分としてグルタミン、フルクトオリゴ、グルコサミン、αリポ酸、ケルセチン、γオリザノール、ビタミンE、亜鉛、乳酸菌(Lactpbacillus Acidophilu、Lactobacillus Bifidus)、パイナップル酵素、パパイヤ酵素、アカニレ(ハーブ)、キャッツクロウ、ギンコビロバ、リコリス(漢方に使われている甘草)が下記のサイトに表示されている。
http://www.nutweb.sakura.ne.jp/webdemo/Jlgs.htm

LGS治療薬としてのアミティーザの効果を検討するために、健常成人30名に投与して、NSAID投与後のLGS状態の改善効果をマンニトール・ラクツロース吸収試験を行い検討した。
  コントロール群  アミティーザ群  p値
前値   0.019   0.021  0.69
14日後   0.035   0.024  0.403
28日後   0.028   0.017  0.0497
であり、それぞれの尿中排泄量には様認められんかったが、比でみると28日後には、アミティーザ投与群で有意な改善が認められた結果となった。

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

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