糖尿病系

2017年10月30日 月曜日

心疾患発症阻止を見据えた血糖管理 森 豊 教授

2017年9月21日 
演題「心疾患発症阻止を見据えた血糖管理 ―DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬をいかに使いこなすか―」
演者:東京慈恵会医科大学内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科教授 森 豊先生
場所:ホテルニューグランド
内容及び補足「
糖尿病治療ガイド2016-2017においては、基本的な考え方として、『2型糖尿病は、インスリン分泌低下やインスリン抵抗性をきたす素因を含む複数の遺伝子に、過食(特に高脂肪食)、運動不足、肥満、ストレスなどの環境因子および加齢が加わり発症する。1型糖尿病では、インスリンを合成・分泌する膵ランゲルハンス島β細胞の破壊・消失がインスリン作用不足の主要な原因である。糖尿病型の高血糖が別の日に2回確認できれば糖尿病と診断できる。ただしHbA1c≧6.5%の場合や、糖尿病の典型的な症状である口渇、多飲、多尿、体重減少がある場合、確実な糖尿病網膜症がある場合は、同時に血糖値が糖尿病系を示していれば1回の検査だけでも糖尿病と診断できる。無治療の糖尿病における持続的高血糖は最小血管症や大血管症を引き起こし健康寿命の短縮をきたす。
したがって、糖尿病治療の治療目標は『糖尿病の血管合併症の発症、伸展を防止し、日常生活の質の維持と健康寿命の確保である』と掲げられている。









http://www.jds.or.jp/modules/education/index.php?content_id=11


様々や薬剤が使えるようになってきた今日、患者さんの病態に合わせて、血糖降下薬の特性を理解した治療薬の選択が必要になってくる。持続血糖モニターを用いて各薬剤の特性を比較してみよう。
評価する項目は、時効型溶解インスリン製剤投与から24時間の平均血糖値、24時間の血糖変動幅(24時間平均血糖値を基準とし持続血糖曲線との間の面積)総和、3回の食事の平均食後血糖上昇幅である。

51歳男性で入院後インスリン治療を開始し、デテミル8単位投与では、昼食後および夕食後に200mg/ld.以上に食後血糖の上昇が見られ、ミグリトール併用投与により食後血糖の上昇は著明に抑制された。平均血糖値は、112.1→102.7mg/dLの変化であるが、SDは29.7→15.8mg/dL、MAGEは84.5→43.3mg/dLと著明に改善していることが数値上でも確認できる。

(Progress in Med 29;459-464, 2009)

SU薬(アマリールやオイグルコンなど)
78歳男性HbA1c 9.3%、BMI25.3、尿Cペプチド36.7μg/日の2型糖尿病患者で1600Kcalの食事療法科では朝食前血糖値は200mg/dLを超え、食後は350~400mg/dLにまで達しており、200~400mg/dLの間で推移していた。グリメピリド0.5㎎/日→1mg/日→2mg/日に増量した所、昼食前、夕食前、就前の血糖値は容量依存的に低下してきたが、朝食後の血糖値はほとんど変化しなかった。

この結果HbA1cに相当する24時間の平均血糖値はグリメピリドの増量に伴い劇的に低下しているが、対照的に24時間288個の血糖値の標準偏差(SD)、MAGE、血糖変動幅総面積といった血糖変動幅の指標は全く改善していない。
このことは、SU薬投与による血糖変化は、血糖変動幅は変わらずに、昼食前血糖値以降の血糖変動が全体的に下方へシフトしていき、その結果、平均血糖値(HbA1c)が劇的に低下したものと考えられる。HbA1cのみを指標として、厳格な血糖コントロールを行った場合には、夕食前や夜帯に低血糖を起こす危険が増加することが容易に推察できる。
このSU薬に食後血糖の上昇を抑えるα-GIの様な薬剤を併用することは有用であり、実際この症例においてミグリトール150㎎/dLを併用することにより、各食後の血糖値はいずれも低下し、夕食前血糖値はむしろ上昇し、グリメピリド単独では改善しなかったSD、MAGE、血糖変動幅総面積は、いずれも大きく低下している。


アクトス
62歳女性Lis:6-6--8-0、Detemir0-0-0-3単位で血糖コントロール不良で尿中Cペプチド79μg/日であったため、ピオグリダゾン15mg/日の併用投与が開始となった二型糖尿病患者で投与開始前は昼食後に100前後に低下する以外は200前後で推移していた。

ピオグリダゾンン投与により、2週間後、3か月と平均血糖値は201.6→170.6→137.2と著明に改善しているが、血糖値のばらつきの指標であるSDやMAGEは一時少しの改善を見せたが3ヶ月後にはかえって悪化している数値となっている。上記グラフからみて明らかに食後の血糖変動に対する作用はあまりなく、夜間深夜帯から朝食前の血糖値を強力に低下させることがわかる。

(治療 92;569-576 2010)

メトホルミン
69歳男性でグリメピリド2mg/日とメトホルミン750mg/日で治療していた患者さんで、入院時BMI 22.3、HbA1c 8.8%、尿中Cペプチド43.5μg/日であり、血糖値は朝食後から昼食後にかけて200~300mg/dLで推移し、夕食後から夜間深夜帯、朝食前にかけて血糖値が低下していた。グリメピリドは変更せずにメトホルミンを1500mg/日に増量した14日目には朝食後から夕食前の血糖値の低下が観察された。さらに2550mg/日に増量したところ朝食前血糖値も低下した。

SD、24時間血糖変動幅面積、MAGEはメトホルミンを750㎎→1500㎎と増加させるに伴い低下し、2250㎎ではさほど変化を認めなかった。メトホルミン増量に伴い血糖上昇が抑制される機序については明らかではないが、メトホルミンによる腸管からの糖吸収抑制作用や胆汁酸の再吸収阻害を介したGLP-1分泌促進作用が容量依存性である可能性も否定できない。

(糖尿病学の進歩 第45集 160-166 2011 診断と治療社)

DPP-4阻害薬
HbA1c 6.9%、BMI 29.9の2型糖尿病患者にテネリア3週間後に平均血糖は157.2→97.7、SD52.6→??、24時間血糖変動幅面積1009.4→96.6、MAGE 114.8→32.0に改善した。

(血糖変動図を探すことが出来なかったのでテネリアのインタビューホームから4週間後の血糖変化を提示します。)
https://www.medicallibrary-dsc.info/di/tenelia_tablets_20/pdf/if_tnl_1708_10.pdf

SGLT2
63歳男性、BMI 26.2、HbA1c 8.6%、尿Cペプチド113.6μg/日のメトホルミン投与中の患者でメトホルミン中止し、食事療法の診の状態でCGMをおこないイプラグリフロジン50㎎/日の単独投与13、14日目の血糖値の変化を示す。空腹時180mg/dL、朝食後血糖値400mg/dLに達していた値が空腹時、SD、血糖変動幅総面積、MAGEともに低下している。


(Diabetes frontier 26(3) 378-393 2015)
主に平均血糖値を低下させる薬剤と主に血糖変動幅を縮小させる薬剤に分け、個々の患者の血糖の変化を念頭に置き、薬剤を選択し、併用していくことが理にかなった組み合わせと言える。

(医薬ジャーナル 53(7)105‐115 2017)
その中でもSGLT2阻害薬を上乗せすると、血糖の変動幅を縮小することがより効果的であるといえる。

65歳女性、BMI 31.9、HbA1c 89.7%、尿Cペプチド38.3μg/日で、Glu:3-3-3-0、Gla:0-0-0-10単位にて十分な血糖コントロールできず、肥満もあるので、インスリンの増量を行わず、イプラグリフロジン50㎎/日の追加投与を開始した。朝食前200mg/dL、食後が300~350 mg/dLの血糖値が、イプラグリフロジン追加投与により2夕看護には毎食前・後、深夜夜間帯の血糖値の低下が観察された。24時間平均血糖値は低下するも、SD、血糖変動幅総面積、MAGEの低下は認められなかった。本症例では、尿Cペプチドの排泄低下がすでにあり、イプラグリフロジン投与により糖毒性が改善されても、食後追加のインスリン分泌が改善しなかったため、血糖変動幅が縮小しなかったものと推察される。

(Diabetes frontier 26(3) 378-393 2015)

SGLT2阻害薬間の違いとして血中濃度半減期、SGLT2阻害の選択制、蛋白結合率が指摘されている。
血中半減期の短いトホブリフロジンは、健康成人男性に単回投与した際、尿糖排泄速度が投与16時間以降減少する成績があり、このため、夜間頻尿がきたしにくいとされている。

67歳男性、BMI 29.5、HbA1c 10.4%、尿Cペプチド117.3μg/日の患者で、入院後Glu:9-7-3-0、Gla:0-0-0-18単位投与で十分な血糖コントロールできず、ダパグリフロジン50㎎/日の追加投与を開始した。15日投与後にダパグリフロジン20㎎/日に変更し7日後の血糖値の変化を検討したが、有意な差はなかった。ヒトによるのかもしれないが、各薬剤間での夜間深夜帯の尿糖排泄の違いは明確なものではないと考えられる。

SGLT2阻害の選択制の視点から考えると、カナグリフロジンは他のSGLT2阻害薬よりもSGLT1阻害作用がある。SGLT1阻害作用がほとんどないダパグリフロジンとの比較試験では、カナグリフロジンはダパグリフロジンと比較して、食後15分、30分、45分の血糖値を低下させ、⊿血糖値0-120分を有意に低下させたが、同時間帯の尿糖排泄量に違いがなかった。このことより、この食後血糖上昇の抑制にカナグリフロジンによる小腸SGLT1阻害の関与の可能性が指摘されている。仮にカナグリフロジンの小腸のSGLT1阻害を介する腸管からの糖吸収抑制作用が臨床的に観察されるとすれば、それは本罪の薬物動態から小腸を通過する朝食直後においてのみであると考えられる。

ある例の血糖変化をここで診てみたい。
62歳男性、BMI 26.1、HbA1c 8.9%、尿Cペプチド83.4μg/日の患者で、食事療法のみにて各食前血糖値が安定した時点でカナグリフロジン100mg/日の単独投与を開始した。食事療法のみでは、朝食前165~170 mg/dL、各食後血糖値は250 mg/dLを超えていた。カナグリフロジン投与に週間後の血糖変動は、各食前・後血糖値、は低下し、血糖変動の解析では平均血糖値の低下と血糖変動幅の減少が観察された。
夕食後1時間までン血糖上昇量が、開始前131 mg/dL、開始15日後123 mg/dLであったのに対し、朝食後1時間までの血糖上昇量は開始前95 mg/dL、開始15日後52 mg/dLであり、カナグリフロジン単独投与による糖食後の血糖上昇量は、夕食後の血糖上昇量と比較して明らかに軽度であった。糖毒性の解除により食後のインスリン内か分泌が改善し食後血糖上昇が抑えられた可能性のみではこの朝食後と夕食後の血糖上昇の抑えられている強さを説明できず、SGLT1阻害作用が関与している可能性が示唆されるデータと言える。

(Diabetes frontier 26(3) 378-393 2015)

低血糖を起こさずに食後高血糖を改善させて血糖変動幅を縮小させ、かつ平均血糖値を低下させるDPP-4阻害薬は、「良質なHbA1c」という視点からは治療的な薬剤であるが、海外で行われたCVアウトカムをprimary end pointとしたDPP-4阻害薬の大規模臨床試験であるEXAMINE、SAVOR-TIMI、TECOSのいずれもDPP-4阻害薬の優位性を証明できなかった。一方SGLT2阻害薬の大規模臨床試験であるEMPA-REG、CANVAS、LEADERでは、SGLT2阻害薬の優位性が証明された。

両薬剤とも薬理学的には非常に有用な薬剤であるにもかかわらず、差が出た原因は現時点では不明であるが、明らかな差は体重減少であり、体重減少がアウトカムへの寄与度が強い可能性も推察できる。SGLT2阻害薬での体重減少には薬剤間に差はないが、GLP-1受容体作動薬では、薬剤間による体重減少に差がみられる。今後の臨床研究の結果が待たれるところである。

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2017年10月30日 月曜日

心腎関連におけるSGLT2阻害薬の意義 佐野元昭准教授

2017年9月15日 
演題「心腎関連におけるSGLT2阻害薬の意義」
演者:慶應義塾大学医学部 循環器内科准教授 佐野 元昭先生
場所:グランドオリエンタルみなとみらい
内容及び補足「
糖尿病患者の平均寿命は治療の進歩・生活習慣の改善などにより徐々に伸びているが、日本人の一般平均年齢に比較して男性で7歳、女性で10歳以上の差がある。

Journal of the Japan Diabetes Society, 2017, doi:10.111/jdi.12645より改変
血糖降下療法に関する研究は数多くおこなわれてきたが、厳格な血糖コントロールによる心血管疾患・脳卒中の発症抑制に対する効果は大きくないことが示されてきた。逆に、厳格な血糖コントロールを目指すあまり、低血糖発症リスクが高まり、心血管疾患の発症や認知機能の悪化を助長する可能性が議論され、疫学調査でも幾つか報告されてきた。そういった中でEMPA-REG OUTCOME試験の結果が発表された。
この研究は、心血管疾患のある2型糖尿病患者7028例で登録前12週間に治療を受けていないDM患者はHbA1c 7.0以上9.0%未満、治療を受けているDM患者は7.0以上10.0未満の症例を対象に、2週間のrun-in期間後、患者をEmpagliflozin 10mg(2345例)、Empagliflozin 25mg(2342例)、プラセボ群(2333例)に割り付け、1次エンドポイントとして心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、2次エンドポイントとして1次エンドポイント+不安定狭心症による入院を比較検討したものである。
これらの対象者のLDLコレステロールは85mg/dL、血圧は136/72mmHgとコントロールされている糖尿病患者が対象になっている。主要評価項目である3-point MACE(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)はプラセボ群よりもEmpagliflozin群のほうが有意に低かった(非劣性P<0.001、優劣性P=0.04)。

プラセボ群に比べEmpagliflozin群は心血管死亡率が低く、全死亡が低く、心不全による入院率も低かった。心筋梗塞または脳卒中の発症率には差が見られなかった。


 
心血管死に対する影響と同様に早期から影響しているアウトカムは心不全による入院である。
http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1504720


心不全による入院はSGLT2阻害薬投与開始2~3週間後(統計上17日後)にはプラセボと比較して有意に抑制しており、この結果が心血管死を抑制した基盤にあるメカニズムとして推察される。

(上図を投与量毎に分けた図)
この短期間において認められる作用は、ジャデイアンス投与群でHbA1c 8.0%から7.8%までしか低下しておらず、血糖改善効果では説明することはできないと考えられる。
SGLT2阻害薬は、近位尿細管においてグルコースとNaの排泄促進を行うため、Na再吸収抑制からの利尿作用がある。この作用は、薬剤投与1日目から認められるが、その作用は消失する。同様にNa排泄量も投与1日後には増加が認められるが、5日後には内服前のNa排泄量にもどっている。したがって、投与初期のこのような利尿作用により心不全による入院を抑制することは短期間であればあり得るが、長期に渡る心不全入院の抑制効果は説明できない。そもそもループ利尿剤に代表されるNa利尿薬によって心不全の予後が改善したというエビデンスは存在しておらず、むしろ、今までの登録研究からは、ループ利尿薬使用量の多い心不全患者程心血管死のリスクが高いことが示されている。

血圧への影響に目を向けるとDipper型は昼間のみの血圧を低下させ、non-dipper型は昼夜ともに低下させるなど血圧日内変動を改善することが知られている。
 



治療前の安静時心拍数ごとに、ルセオグリフロジン2.5㎎とプラセボ投与群の心拍数変化を見てみると、全体としては有意な差は見られていない。

しかし、治療前の安静時心拍数で分類してみると、安静時心拍数が高い患者程、治療12週後の心拍数の減少程度が大きく、治療前心拍数が70bpm未満の群では、ルセオグリフロジン2.5㎎投与による心拍数変化は観察されず、70bpm以上の群では有意な差を持って心拍数が減少し、80bpm以上の群では10bpm近く心拍数が減少した。

2型糖尿病患者の中には、延髄の血管運動中枢が亢進している患者が存在することが知られている。圧受容体反射の機能不全は、血管運動中枢の活動亢進をより増長させている。これらが、心臓交感神経を刺激して心拍数を上昇させている。ルセオグリフロジンが安静時心拍数の高い患者に限って、安静時心拍数が高いほど心拍数を下げたという結果は、ルセオグリフロジンが血管運動中枢の活動が亢進している患者において、その活動を鎮めている可能性を示唆する。

血管運動中枢の活動亢進が、全身の交感神経系アウトプットを亢進させ、腎臓におけるナトリウム再吸収を亢進させ、心臓に対する静脈還流量を増加させ、さらに動脈が収縮することによる血圧の上昇により後負荷が増加する。拡張機能が低下した心臓に対して、心拍数の増加は、1回拍出量を低下させる。これらの変化が血行動態的に器質的心疾患を持った2型糖尿病患者に心不全を引き起こす促進因子となると考えられる。

http://www.jocmr.org/index.php/JOCMR/article/view/3011/1803
http://www.igakutokangosha.jp/?pid=110462440
医学と看護社 『SGLT2阻害剤の臨床』

SGLT2阻害薬投与により、ヘマトクリット値(Ht)が上昇することが知られており、これが脱水の徴候であり、脳梗塞のリスクになることが危惧されている。しかし、このHtの上昇は脱水との関連は薄く、むしろ腎機能が回復してきているサインになるという仮説を提唱し検討してみた。
循環器内科では、心不全患者にループ利尿薬を投与する際には、Htに特別に配慮することはない。Htは脱水や血液濃縮以外に腎機能の変化によって影響を受ける。
慶應男義塾大学病院に2007年1月~2014年8月に心不全で入院し、入退院時のHtが記録されていた381例を検討したところ、Htの退院時/入院時比は1.013であり、ほとんどの患者が入院中に利尿剤投与されていたが、平均で見るとHtの変化はなく、症例によってはHtが減少する症例もいた。

脱水による血液濃縮ではないとしたら、SGLT2投与時のHtの上昇の原因はなんであろうか。
Dapagliflozin投与によるエリスロポイエチン(EPO)濃度を検討した研究(Diabetes Obed Metab 15(9):853-862, 2013)によると、Dapagliflozin投与2~4週間後をピークにEPO濃度が上昇し、これに一致して網状赤血球濃度が上昇し、その後にヘモグロビンやヘマトクリットが上昇することが示されている。

このEPOはどこで産生されるかというと尿細管周囲の線維芽細胞で産生されている。この線維芽細胞は、発生学的には、神経堤細胞由来の特殊な線維芽細胞で、尿細管が正常な状態では、EPO産生能力を有しているが、尿細管に障害が加わるとこの線維芽細胞はEPO産生尿直を失い、間質を線維化させる悪玉線維芽細胞へ形質転換することを京都大学の柳田元子先生の研究グループにより明らかにされた。


http://www.jocmr.org/index.php/JOCMR/article/view/2760/1628
以上のことをまとめる以下のような仮説を提唱した。
糖尿病においては、近位尿細管は過剰な糖を再吸収することにより疲弊し障害を受けている。過剰な糖の再吸収により尿細管周囲は低酸素状態となり、線維芽細胞は悪玉に変わり、EPO産生能力を失っている。この状態で、SGLT2阻害剤が投与されると、糖の過剰な再吸収が行われなくなり、近位尿細管を休めることになり、酸素消費量は減少し、尿細管周囲の低酸素状態が改善し、線維芽細胞は健常な細胞に逆戻りして、エリスロポイエチン産生能を回復し、その結果腎臓からのEPOの産生が高まり、赤血球造血が刺激され、ヘモグロビンやHt濃度が上昇する。
この過説に立つと、SGLT2阻害薬投与においてHtが上昇する症例は腎機能の回復の可能性があり、腎機能予後改善を占う良いサロゲートマーカーになりうると考えられる。
http://blog.livedoor.jp/cardiology_reed/archives/66985472.html

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2017年6月 3日 土曜日

糖尿病診療のピットフォール 柳瀬敏彦先生

2017年5月30日 
演題「糖尿病診療のピットフォール:内分泌からみた視点」
演者:福岡大学医学部 内分泌・糖尿病内科教授 柳瀬 敏彦 先生
場所: 横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ
内容及び補足「

糖尿病治療のトレンドは
1. 血糖変動が少ない=食後高血糖、低血糖を起こさない
2. インスリンをあまり出させない
3. 太らせない
である。これらの要求を満たす薬剤としてDPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬がある。
テネリアの投与で最高血糖値が206→191、最低血糖値88→101、平均血糖値141→135と変化しており、上記条件1を満たしている。
カナグルの投与で体重減少し、内臓脂肪も減少している。
作用機序的に見て近位尿細管近位部のSGLT2に作用するだけでなく、効果は弱いが近位尿細管遠位部のSGLT1にも阻害作用を有する。

https://medical.mt-pharma.co.jp/intro/can/action.shtml

小腸におけるグルコースの吸収は以下のステップがある。
1. 小腸上皮細胞の基底膜に存在するNaK-ATPaseが働き、一時的に小腸上皮細胞内のNa+濃度が低下する。
2. 小腸上皮細胞内のNa+濃度の不足を補うために非撹拌水層に存在するNa+が細胞内に入る。Na+が細胞内に入ると同時にグルコースが一緒に細胞内に入る(Na+/グルコース共輸送体)。この刷子縁膜側で働くトランスポーターSGLT1である。
3. 細胞内に入ったグルコースは基底膜側を促進拡散で透過する。ここで働くトランスポーターがGLUT1、GLUT2である。

http://www.yakushinkai.co.jp/member/wp-content/uploads/Y%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF%E2%91%A1SGLT%EF%BC%91%E3%83%BB%EF%BC%92.pdf#search=%27SGLT1%E3%81%AE%E5%88%86%E5%B8%83+%E8%85%B8%E7%AE%A1%27

カナグルのSGLT1阻害作用により、小腸における糖の吸収が遅くなり、小腸末端まで糖が吸収されずに運ばれると商業下部にあるL細胞からGLP-1が分泌され血糖値の低下に一役買うことになると考えられる。
実際人においてカナグルの投与により血中のGLP-1濃度の上昇を認めている。

http://images.biomedsearch.com/23412078/2154.pdf?AWSAccessKeyId=AKIAIBOKHYOLP4MBMRGQ&Expires=1496361600&Signature=TZiYh2QvfQvc3Ql5Yx%2Bi5XLWRZo%3D#search=%27Diabetes+Care+36+215461+2013%27
テネリアとカナグルの併用でどうなるかを見た研究もある。
テネリア0.3mg/kgとカナグル3㎎/㎏、10㎎/kgの併用において著明にGLP-1の上昇を認めているが、カナグルの量による変化は見られていない。

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1347861315000687

自験例でも平均血糖値150→134、最高血糖値230→180、最低血糖値67→87と理想的な変化をきたしている。
テネリアとカナグルの合剤であるカナリアの発売後のデータに注目したい。

希少疾患は必ずしも希少疾患に非ず!?
17α-水酸化酵素欠損症:第10染色体にあるステロイド合成酵素のP450c17の先天的な障害により、ミネラルコルチコイド過剰による高血圧と性ステロイドの欠乏による性腺機能不全をきたす常染色体劣性遺伝性疾患。症例報告数としては世界中で約120余例。先天性副腎過形成の中で占める頻度は国内で2.6%(講演でのスライド:ステロイド産生異常症の推定患者数1.9%)と報告されている。
臨床症状
主症状:
1. 高血圧:低レニンACTH高値
デオキシコルチコステロンやコルチコステロンの過剰産生による若年性高血圧(まれに高血圧が認められない症例もある)
2. 性腺機能低下症(軽症例46XY症例で外性器の男性化を認める症例や軽症46XX症例で月経を認める例もある)
外陰部は女性型。原発性無月経、乳房発育不全などの二次性徴の欠落。男女とも性毛(腋毛、恥毛)の欠如。
副症状:ミネラルコルチコイド過剰による低K血症に伴い、筋力低下を認めることがある。
高血圧があり不妊症に悩んでいる人に軽症の17α-水酸化酵素欠損症の患者が紛れ込んでいる可能性がある。
症例:38歳女性 低レニン活性の精査
生理はほぼ順調で、血圧130/84、156/80-90程度の白衣高血圧があり血清レニンを測定したところ0.1㎎/ml/hと低値であり精査依頼され来院。不妊も認めていたが、陰毛や乳房の発達は良好であった。
17α-水酸化酵素活性が30%程度しかなかった。

http://www.nanbyou.or.jp/entry/185

軽度の高血圧があり、体毛が薄かったり、不妊や生理不順の有る症例においては17α-水酸化酵素欠損症の軽症例が紛れ込んでいる可能性があるので、一度この疾患の可能性について考えてみよう。

糖尿病症例の40-60%に高血圧合併がある。機序としては、高インスリン血症によりNa貯留が起こること、腎症の進行や動脈硬化の進行が血圧上昇に関与しているとされている。
アルドステロンは骨格筋におけるインスリンシグナルやグルコースの取り込みを阻害し、インスリン抵抗性を惹起する。一方、高インスリン血症はアルドステロン合成を刺激する。
したがって、アルドステロン過剰は糖尿病における治療抵抗性高血圧の原因となる。Reinckeらは23%の糖尿病患者にPAを認めたとする報告や
https://www.thieme-connect.com/products/ejournals/abstract/10.1055/s-0029-1246189

非糖尿行患者との間に差は認めなかったとする報告などがあるが、少なくとも原発性アルドステロン症(PA)の患者は糖尿病患者において少ないものではないことがいえる。
http://hyper.ahajournals.org/content/53/4/605

自験例で調べてみると糖尿病合併高血圧124例中14例でPAと確定でき11%の頻度であり、同様の結果であった。原発性アルドステロン症患者とそうでない人たちの違いは、糖尿病歴はPA群で5.21±6.51年、非PA群で13.73±11.42年、高血圧歴はPA群で12.29±11.51年、非PA群で10.15±11.90年と糖尿病歴に差が認められた。
PA例43例において糖尿病がある患者とそうでない患者の比較をしてみると、年齢はDM例で66.45歳、非DM例で55.07歳、高血圧の治療期間はDM例で17.44年に対して、非DM例では7.55年と糖尿病患者においてPAの診断が遅くなっている可能性が示唆される結果となった。
高血圧合併例の糖尿病患者で治療抵抗性の場合にはPAの可能性を考え、血液検査を行ってみよう。

サブクリニカルクッシング症候群
副腎性クッシング症候群は、副腎皮質から糖質コルチコイドが過剰に分泌される病態で特徴的な身体所見を有し、糖尿病、高血圧、骨粗鬆症などの重篤な疾患を併存する。サブクリニカルクッシング症候群は、クッシング症候群特有の身体的特徴はないが、クッシング症候群同様の併存疾患を有する。
クッシング症候群の身体的特徴としては、中心性肥満、満月様顔貌、皮膚線状、バッファロー様型、細い四肢などがある。

https://www.med.nagoya-u.ac.jp/nyusen/sick/adrenal/a_sick_kind1.html

オステオカルシン:骨の非コラーゲン性蛋白質として25%を占める49個のアミノ酸からなる分子量約5500の蛋白質である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%AA%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%B3
骨芽細胞で合成された後、分子中に含まれる3個のグルタミン酸残基がビタミンK依存的にγ-カルボキシル化され、Ca2+に対する親和性が大きく亢進して、ヒドロキシアパタイトと強固に結合し骨に埋め込まれるが、僅かな量は血中を循環する。血中オステオカルシンは、非あるいは低カルボキシル化状態のオステオカルシン(GluOC)と三つのグルタミン酸残基すべてがカルボキシル化されたGlaOCの二つの形態で存在している。ホルモン活性を持つのはGluOCである。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/145/4/145_201/_pdf

2007年に、Karsentyらのグループにより、オステオカルシンノックアウトマウスでは糖負荷の際のインスリン分泌低下、血糖値の上昇、インスリン投与時の血糖値の低下の減少がみられ、インスリン感受性の低下も認められ、糖代謝異常を呈することが示された。

また、ラットβ細胞由来細胞株INS-1やマウス単離ラ氏島、あるいは脂肪細胞をGluOCで刺激すると、インスリンあるいはアディポネクチンの発現が誘導されることも示され、GluOCによる直接作用であること、GlaOCにはそのような効果が認められないことが示され、GluOCが活性型であると考えられている。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17693256

骨芽細胞におけるインスリンシグナリングは、1.骨芽細胞の分化を阻害する転写因子twist2の発現を抑制し、骨芽細胞の分化を促進させ、その結果オステオカルシンの合成が促進される。2.転写因子FoxO1の活性を抑制して、破骨細胞の分化を抑制するオステオプロテジェリンの発現を抑制する。その結果破骨細胞が活性化して骨吸収が亢進する。骨吸収窩の産生環境(pH4.5程度)はGlaOCを脱カルボキシル化し、ホルモン活性を持つGluOCへと変換させる。すなわち、インスリンは骨に作用して骨形成・骨吸収の両面からGluOCの産生を促し、そのGluOCは膵臓に働きかけてさらにインスリンの合成・分泌を促進する。その一方で、GluOCじゃ脂肪細胞のインスリン感受性を高め、エネルギー源の利用効率を亢進するため「骨の代謝回転→インスリンシグナリングの活性化→エネルギー代謝活性化→骨代謝活性化」というポジティブサイクルが成立する。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/145/4/145_201/_pdf

糖質コルチコイドによる耐糖能低下の機序としては、1.肝臓での糖新生、亢進2.骨格筋における糖取り込みの低下、3.高グルカゴン血症(ラ氏島過形成、グルカゴン産生細胞の増加と増大)が関与している。

現在サブクリニカルクッシング症候群の厚生省の診断基準は以下のものが採用されている。
1.副腎腫瘍の存在(副腎偶発腫)
2.臨床症状:クッシング症候群の特徴的な身体徴候の欠如(注 1)
3.検査所見
    1)血中コルチゾールの基礎値(早朝時)が正常範囲内(注 2)
    2)コルチゾール分泌の自律性:
    オーバーナイト・デキサメサゾン抑制試験の場合、スクリーニング
    に 1mg の抑制試験を行い、血中コルチゾール値 3μg/dl 以上の時、本疾患の可能性が考えられる。
    ついで 8mg の抑制試験を行いその時の血中コルチゾール値が 1μg/dl以上の時、本疾患を考える。
    3)ACTH分泌の抑制:
    ACTH 基礎値が正常以下(<10pg/ml)あるいは ACTH 分泌刺激試験の低反応。
    4)副腎シンチグラフィーでの患側の取り込みと健側の抑制
    5)日内リズムの消失
    6)血中 DHEA-S 値の低値(注 5)
    7)副腎腫瘍摘出後、一過性の副腎不全症状があった場合、あるいは付着皮質組織の萎縮を 認めた場合
検査所見の判定:1)2)は必須、さらに 3) - 6)のうち 1 つ以上の所見、あるいは7)がある時、陽性と判定する。
1、2 および 3 の検査結果陽性をもって本症と診断する。

ホルモン濃度が高い場合、組織の正常のfeedback機構から逸脱した結果によるものかを判定するため、DEX負荷試験はACTH分泌を抑制した際のcortisol分泌抑制を見るものである。
デキサメサゾンは糖質コルチコイド活性が極めて強い合成ステロイドホルモンである。
デキサメサゾンの投与によって糖質コルチコイドが過剰だと誤解した脳下垂体系は、正常ならばCRHやACTHの分泌を抑制して、糖質コルチコイドの合成は抑制されて、その代謝産物である尿中17-OHCSも減る。
抑制されない場合はfeedback経路のどこかに異常があると考えられる。大半の健常者ではこの薬物が朝の血漿コルチゾールを1.8μg/mL以下に抑制するが,対するクッシング症候群患者では事実上常にこれよりも高値となる。
したがって下垂体腺腫に基づくクッシング病ではACTHおよびコルチゾールの分泌が抑制されるが、 異所性ACTH症候群と副腎腫瘍の場合にはこれらの分泌が抑制されない。
就寝時にデキサメサゾンを服用し、翌朝に血漿中のコルチゾールが3μg/dL以下まで抑制されていれば 抑制試験陽性とされる。


32歳女性でデキサメサゾン(1㎎)の抑制試験で5.2→1.0μgと抑制された患者さんで、0.5㎎で抑制されなかった人がいた。静脈サンプリングを行うと右副腎でACTHが244.4(左5.8)と明らかな左右差があり、右副腎摘出を行った。手術により、血圧は140/100が130/80と改善し、耐糖能障害も消失した。

内臓脂肪が多い人と少ない人でコルチゾールの日内変動を見た研究がある。日内変動はほぼ同じような変化ではあるが、内臓脂肪が多い人の方がほぼ一日通してコルチゾールが高値である。

Mean ± SE plasma total cortisol levels sampled every 30 min over 24 h in the subjects with the least amount of IAF (1st tertile, ○; n = 7) and the subjects with the greatest amount of IAF (3rd tertile, ●; n = 7).(IAF:intra-abdominal fat)
http://ajpendo.physiology.org/content/296/2/E351

副腎疾患を予想せずに施行された腹部CT検査で副腎に腫瘍が発見される確率は0.35~4.36%とされ、剖検での発見率はその4倍と言われている。全国200勝以上の医療機関1014施設を対象に行われた疫学調査で、平成11年度から14年度までの4年間で3239例の検討した報告がある。男性1662例51.3%、女性1512例1512例46.7%(性別記載ない症例65例2%)、平均年齢は58.0±13.0(男性58.2±12.5、女性57.8±13.5)で、50歳代後半が多く、右44.4%、左48.7%、両側6.9%で左右差は認めなかった。腫瘍径は平均で3.0±2.2㎝で1.1~2.0cmが34.9%、2.1~3.0cmが26.5%であった。
発見の契機は、健康診断が31.5%、腹部症状の精査が17.1%、高血圧精査が12.0%であった。

副腎偶発腫における病院別頻度は、ホルモン非産生腫瘍が51.0%、サブクリニカルクッシング症候群を含むコルチゾール産生腫が11.7%、褐色細胞腫8.7%、アルドステロン産生腺腫4.3%、副腎癌は1.4%であった。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/95/4/95_4_629/_pdf

:1994年~2008年までの15年間の東北大学泌尿器科で腹腔鏡手術を行った副腎性クッシング症候群114例(男性29例、女性85例、クッシング症候群59例、サブクリニカルクッシング症候群55例)のデータを表にした。
酢部クリニカルクッシング症候群は、発見が困難なためか、クッシング症候群よりも高齢である。また、男性が多い傾向にあるが、発見腫瘍径には大きな差がなかった。
併存疾患は、両者とも高血圧、糖尿病が多いが、骨粗鬆症や骨折はクッシング症候群で圧倒的に多くみられた。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjsts/31/3/31_171/_pdf

クッシング症候群とサブクリニカルクッシング症候群を区別するためには、1㎎のデキサメサゾン抑制試験でコルチゾール濃度が1.8μg/dLが必須である。ACTH基礎値が10pg/ml未満、CRTでのACTH低反応、深夜血中のコルチゾール濃度が5μg/dL以上(通常は15μg/dL以下)も有用である。



まとめると、以下のような診断基準が推奨される。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrj/60/7/60_EJ12-0458/_pdf

治療として手術が選択されたときに合併症がどうなるかを見てみると、糖尿病:改善36例、不変27例、悪化1例、IGT:改善40例、不変31例、悪化4例、肥満:改善29例、不変36例、悪化4例、高血圧:改善48例、不変31例、悪化2例であった。
副腎癌の症例はおおむね腫瘍径が3㎝以上であった。

参考までに副腎皮質腫瘍(原発性アルドステロン症、クッシング症候群/サブクリニカルクッシング症候群、非機能性腺腫)の外科的治療の長期予後は以下の表のように報告されている。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjsts/29/1/29_26/_pdf
手術により必ずしも前例がよくなるわけではないと言える。

ターナー症候群:女性のうち4000人に一人の頻度で生じる染色体異常(45XO)で、低身長、性腺機能低下、翼状頚、外反肘などの身体的特徴を示す疾患で自然流産の原因の一つである。成人後の平均身長は139㎝と低い。女性ホルモンが正常に分泌されないので、二次性徴が起こらず、胸の発達や恥毛、わき毛の発育がなく、卵巣が発達しないので、卵子が産生されず、月経の発来もない。まれに卵子が産生されて排卵があり、受精しても(妊娠率1%程度)、妊娠維持のために必要なホルモンが不足するので、ほとんどが流産され

顎が小さく、耳介が尖っている。

http://plaza.umin.ac.jp/p-genet/atlas/06-2.html


翼状頚:首の周りの皮膚がたるんで、首から肩にかけてひだができている状態。

http://plaza.umin.ac.jp/p-genet/atlas/03-4.html


外反肘:手のひらを上に向けて手を伸ばした時、5~15度ほどやや外側に曲がって緩やかな「く」の字を呈するのが正常であるが、この角度を越えて極端に外側に曲がっている状態。

http://blog.livedoor.jp/cheers2010/archives/65416997.html

aromatase欠損マウスにおいて認められるエストロゲン欠乏状態は肝臓にSteatohepatitisを起こすが、エストロゲンの投与により肝機能が改善する。
https://www.jci.org/articles/view/9575/pdf

テストステロン
テストステロンの疫学

2型糖尿病患者におけるテストステロン値を測定したメタ解析結果を見てみると健常人よりも低値を示している。

JAMA 2006;295:1288-1299

テストステロンは、女性ホルモンのように動脈硬化の予防には働かず、むしろ悪化させるという考えがあったが、近年の疫学調査では、低テストステロンの方がむしろ有害であるという報告が出てきている。
J Clin Endocrinol Metab, January 2008, 93(1):32-33

IDDMの少なくとも25%においては低ゴナドトロピンのため、4%においては、高ゴナドトロピンのためにFree Teststeronが低値であった。
J Clin Endocrinol Metab. 2011 Sep;96(9):2643-51


Multivariate-adjusted survival by quartile group of endogenous testosterone concentrations (1 is lowest, 4 is highest) in 2314 men 42 to 78 years old in EPIC-Norfolk 1993 to 2003.
Circulation. 2007;116:2694-2701


アンドロゲン受容体ノックアウトマウスは、エネルギー代謝の低下により晩発性肥満をきたす。Diabetes 54,1000-8,2005

CT-based body composition analysis of 40-week-old ARL−/Y and ARX/Y mice. A: CT-estimated amounts of visceral fat, subcutaneous fat, and muscle in the abdominal area of L2-L4. B: Representative CT images of ARX/Y (left) and ARL−/Y (right) mice at the L3 level. The pink and yellow areas represent the visceral and subcutaneous fat, respectively. *P < 0.01 compared with ARL−/Y, n = 4.
http://diabetes.diabetesjournals.org/content/54/4/1000

アンドロゲン受容体ノックアウトマウスでは、レプチンの血中濃度は増加しているが、食事摂取量は正常であったことから、レプチン抵抗性が存在する。
睾丸摘出による内因性アンドロゲンの供給遮断により、レプチンの脳室内投与による食事摂取抑制効果と体重減少効果の減少を認め、動脈硬化の促進と内臓脂肪の増加を認めた。
702例の中年男性を11年間追いかけると147例がメタボリックシンドロームに、57例が糖尿病に移行した。Total testosterone、Free testosterone、sex hormone-binding globulin(SHBG)の濃度で比較検討するとTotal testosterone(<15.6nmol/L)とSHBGが低値であることがメタボリックシンドロームや糖尿病になる独立した危険因子であった。

Diabetes Care 27 1036 2004

20人のAndrogen-deprivation therapy(ADT)を行った前立腺がん患者でを含む58名の男性で検討したところ、ADT群で明らかにBMIが上昇し、Total testosteroneとfree testosterone濃度が低下し、メタボリックシンドロームと内臓脂肪、高血糖がADT群で多く認められた。

http://ascopubs.org/doi/full/10.1200/jco.2006.05.9741

みちのく泌尿器癌研究グループによる103例の前立腺癌に対する一年間の内分泌治療により、体重は平均で3.8%、腹囲は4.1%、BMIは3.8%増加し、総コレステロールは9%、中性脂肪は21%、LDLコレステロールは10.8%、HDLコレステロールは5%、空腹時血糖値は4.6%、HbA1cは1.7%増加した。CTで調べた内臓脂肪は32.4%、皮下脂肪は35.4%増加し、筋肉量は臍レベルで腸腰筋の面積が7.9%(40例のデータ)減少していた。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/gakkai/sp/jua2014/201404/536167.html

メタボリックシンドロームになるマーカーとして、free testosterone よりもTotal testosteroneと相関が高い理由は、SHBGの値がTotal testosteroneの数値に反映されるからである。
Women's Health Studyの参加者のうち、ホルモン諜報を受けていない閉経後女性を対象にコホート調査を行った(新規2型糖尿病患者359例、対359例)SHBGが高値であれば2型糖尿病になるリスクは女性においては、1:0.16:0.04: 0.09とであった。Physicians' Health Study 2に参加した男性のコホート研究(新規2型糖尿病患者170例、対170例)では、0.10:0.03と減少した。


脂肪肝が改善すると、SHBGは増加し,LipogenesisはSHBGを低下させ、インスリン抵抗性の原因となる可能性がある。
また、インスリンは、肝臓のSHBG産生を抑制するので、インスリン抵抗性に伴う高インスリン血症がSHBG低値の原因である可能性もある。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0804381#t=articleResults

Myostatin:骨格筋形成抑制因子
1997年に新しいTGFβファミリーに属するペプチド性増殖因子の一つとしてGDF8(Grouth and differentiation factor 8)が発見され、遺伝子破壊マウスが作成された。その表現型は全身の骨格筋が著しく肥大する今までにないものであった。GDF8はMyostationと呼ばれるようになった。


ロンドン大学のBullough博士は、特定の組織から産生され、その組織の大きさを制御する物質の存在を想定し、「カローン」と名付けたが、マイオスタチンは「骨格筋カローン」と言えるホルモンである。農学的には健康志向に即した高品質肉の創生への応用が、医学的には、筋ジストロフィーの治療への応用が期待される。


活性型マイオスタチンが体内にない動物や人が存在し、Belgian Blue種では牛マイオスタチン遺伝子の937番目から947番目までの11塩基の欠失によるフレームシフトで、成熟体領域の欠損が生じ、Piedmontese種では、牛マイオスタチン遺伝子の1056番目のグアニンがアデニンに点突然変異した結果、成熟体領域内の313番目のシステインがチロシンに置換されている。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/45/3/45_3_186/_pdf

人においてもドイツで報告された。この男児は、申請時のころより、手足の筋肉が発達しており、5歳にして3㎏のダンベルを軽々と持ち上げた。マイオスタチン遺伝子のイントロン部の点変異のため、素早い対応、丁寧な梱包ありがとうございました。プライシング以上によって、体内で成熟型マイオスタチンが作られないことがわかっている。現在までにこの男児には精神発達遅滞や心筋の異常はみられていない。母親はヘテロ変異とされ、運動選手として活躍していた。
Myostatin Mutation Associated with Gross Muscle Hypertrophy in a Child

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa040933

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2016年5月30日 月曜日

CKDを考慮した血糖管理  豊田雅夫 先生

2016年5月26日 
演題「CKDを考慮した血糖管理」
演者: 東海大学医学部 腎内分泌代謝内科助教授 豊田雅夫 先生
場所:横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズ
内容及び補足「
CKD慢性腎臓病があると心血管疾患や死亡リスクが高いことがわかっている。1120295人の成人(平均年齢52歳、女性55%)をeGFRに着目して、2.84年経過を見た研究がある。
eGFRが45よりも低下したころから死亡や心血管イベントが増加しているのがわかる。


http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa041031

日本人の心血管疾患(CVD)、脳卒中(stroke)、死亡の相対危険度はCKDの基礎疾患によって変わってくる。
脳卒中や死亡リスクは、高血圧性腎疾患が高いが、心血管疾患は糖尿病性腎症の群で危険度が高い。

http://www.nature.com/hr/journal/v34/n10/full/hr201196a.html


2004年1月から2005年6月にかけて慢性心不全の増悪により日本循環器学会認定研究施設164病院に入院した患者2675例の背景や治療内容、予後データを解析したJCARE-CARD試験は平均年齢71歳、心不全患者の一年死亡率は7.3%、心不全増悪による再入院率は、半年以内で27%、一年後は35%であり、高い再入院率は欧米の報告と同様であった。これらの症例を対象に、CKDが長期予後に与える影響について解析が行われたが、eGFRが60以上の患者に比較して、30未満や透析が行われている患者の全死亡あるいは心不全増悪による再入院リスクは2.57倍に上昇することが明らかになった。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/73/8/73_CJ-09-0062/_pdf
http://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse492.pdf
以上をまとめると、糖尿病患者のCKDの治療が患者予後を改善させるために重要であることがわかるが、臨床上幾つかの問題点がある。
1 経口糖尿病薬は遷延性低血糖を起こす危険性がある
2 代謝排泄経路が腎臓である薬は禁忌となることが多い
3 インスリン導入しても透析による血液中の濃度の変化や透析による食事時間のずれによる血糖値の変動が生じる→透析日、非透析日でインスリンの単位数の打ち分けが必要である
積極的に血糖値を下げたために却って死亡率が増加した研究が幾つか報告され、低血糖、体重を増加させない薬剤が望まれるようになり、DPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬に期待がもたれ、実際よく使われるようになってきた。


DPP-4阻害薬の比較を表にしてみた。
CKD患者に安心して使える薬としてはリナグリプチンが挙げられる。


SGLT2阻害薬であるトホリフロジンの投与で腎保護効果の可能性が井口らにより報告されている(医薬ジャーナル 50(9), 170-181, 2014)。
SGLT2阻害薬投与により、血糖値の低下ばかりでなく、体重、血圧も低下し、脂質異常も改善している。
Canagliflozinの100㎎を低下した症例でのeGFR値は投与初期においては一時的に低下するが、52週間投与ではPlaceboとの差は消失している。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/dom.12348/full

1週間後にはDapagliflozin 5㎎、10㎎投与群で血清クレアチニン値がそれぞれ+0.13mg/dL、+0.18mg/dL上昇したが104週目には差が消失した。

http://www.kidney-international.org/article/S0085-2538(15)56274-1/pdf

SGLT2阻害薬の腎臓保護効果の機序については現在いろいろと研究されている。
ナトリウム/グルコース共輸送体(sodium/glucose cotransporter:SGLT)は細胞内外のナトリウムイオンの濃度差を駆動力として糖を細胞内へと取り込む能動輸送を行う。
腎層の尿細管曲部(S1セグメント)には低親和性でグルコース輸送能が大きいSGLT2が、尿細管直部(S3セグメント)には高親和性でグルコース輸送能が小さいSGLT1が存在し、腎臓の糸球体でろ過されたグルコースを再吸収している。
腎臓におけるグルコースの糸球体濾過量は一日当たり180gにも達するが、正常人ではそのほとんどが近位尿細管で再吸収される。血糖値の上昇とともに糸球体でろ過されるグルコース量も増加してくるが、近位尿細管におけるグルコースの再吸収量には限界があり、糖再吸収極量といわれ、健常男性では薬375mg/分であり、糸球体でのグルコース濾過量がこの値を超えると尿糖が出現する。
しかし、尿糖が出現する血糖値の排泄閾値は、個々のネフロンにおける再吸収量のばらつきなどの影響により、糖再吸収極量に達する前に尿糖が出現し、およそ180㎎/dL程度と考えられている。
2型糖尿病患者では、正常者と比較すると近位尿細管でSGLT2が高発現し、糖再吸収極量が上昇していることから、SGLT2の機能亢進が高血糖の維持に関与すると考えられている。
このSGLT2発現亢進がナトリウムの再吸収も亢進させている。そのため、マクラデンサへのNaClの輸送が減少し、輸入細動脈が拡張することで糸球体内圧が亢進していると考えられる。
SGLT2阻害薬を投与すると、近位尿細管での糖およびナトリウムの再吸収が抑制=ナトリウムの排泄が促進され、マクラデンサへのNaCl輸送が増加し、輸入細動脈が収縮し、糸球体内圧が低下(糸球体過剰濾過が抑制)することにより、腎保護効果がみられると考えられている。

http://igaku.co.jp/pdf/1507_tonyobyo-03.pdf
肥満2型糖尿病患者に対して低糖質食(1000Kcal、蛋白:炭水化物:脂質=25:65:10)と高糖質食(1000kcal、蛋白:炭水化物:脂質=25:40:35)の食事療法を行った11人の研究結果では、両群ともに体重や血糖値、総コレステロール値、中性脂肪値は減少した。しかし、低糖質将軍では、空腹時インスリン値は低値を示し、HDLコレステロール値はより上昇し、内臓脂肪の減少が顕著であった。






http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15331203

file:///C:/Users/PCUser/Downloads/miyashita-2004.pdf
しかし、CKDが合併していると、脂質摂取量の増加に伴い、総コレステロール値やLDLコレステロール値の増加や蛋白の摂取量の増加によるGFRの低下、蛋白脂質摂取量の増加による尿の酸性化などが懸念される。
従って、糖質の摂取量を減らしつつ、脂肪や蛋白質の増加を来さない対応が望ましく、そうした変化を実現できそうな薬剤としてSGLT2阻害薬が注目される。
2型糖尿病で心血管リスクの高い7020例にSGLT2阻害薬のEmpagliflozinの10㎎および11㎎投与を行った臨床試験(主要複合転帰:心血管系死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)が行われた。
主要転帰は、Empagliflozin投与群では4687例中490例(10.5%)、プラセボ群の2333例中282例(12.1%)で統計上有意差は認めなかったが、心血管系の死亡(3.7%:5.9% 38%の相対リスク減少)や心不全による入院率(2.7%:4.1% 35%の相対リスクの減少)、全死亡率(5.7%:8.3% 32%の相対リスクの減少)で有意差を認めた。




http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1504720
一人の患者の有害事象を減少させるために何人を治療する必要があるかを示すNNTは、4Sとして有名なScandinavian Simbastatin Survival StudyでNNTが30、HOPE研究のラミプリルが26であるが、これらの薬が使われている現状で、Empagliflozin投与でのNNTが39という数字であることは、ある意味驚異的な数字と考えることができる。

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2016年3月22日 火曜日

膵β細胞目線で考えたインクレチン薬 吉田昌史先生

2016年3月10日 
演題「膵β細胞目線で考えたインクレチン薬の効果的な使用法」
演者: 自治医科大学付属埼玉医療センター 内分泌代謝科 助教 吉田昌史先生
内容及び補足「
今回の吉田先生の講演は、リズムの良いウイットのある講演内容だったのですが、その会話を再現することが困難なので、基礎知識をはじめに記載し、後半に講演の用紙を記載しました。

参:
インスリンの分泌顆粒:電子顕微鏡的研究によると、各β細胞には10,000~13,000この顆粒があり、そのうち約600個が細胞膜にdockしている(Olofssonら、2002)。約1500個は細胞膜内側表面から0.2μm以下のところにあるL-type Ca2+チャンネルの周りに分泌顆粒は集積している(Wiserら、1999)。
http://physiology.jp/wp-content/uploads/2014/01/071010006.pdf

インクレチン:1906年に腸粘膜の抽出物が尿糖を減少させる働きがあることが明らかになり、1932年La Barreによってインクレチンと名付けられた。1962年にグルコースを経口投与した場合に静脈投与に比べてインスリン分泌が促進されることが報告され、その原因因子としてインクレチンが注目された。

http://www.igaku.co.jp/pdf/1108_tonyobyo-4.pdf

糖負荷後の総インスリン分泌の半分以上は、インクレチンによるインスリン促進作用といわれており、食後血糖維持に大きく働いている。(J Clin Endocrinol Metab 1986;63:492-8)
GIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)は、1971年にBrownによって同定された、豚の腸管から単離された42個のアミノ酸からなる一本鎖のポリペプチドで、胃酸分泌を抑制する作用がありgastric inhibitory polypeptideと名付けられたが、人の胃酸分泌の抑制作用がほとんどなく、グルコース依存性にインスリン分泌を強力に促進することが見いだされ、GIPと呼ばれるようになった。人においては十二指腸、上部小腸に局在するK細胞から活性型GIP(1-42)として分泌され、N末端2残基がDPP-4により切断されて、不活型GIP(3-42)に分解される。この半減期は欧米健常者で約5分とされている。
GLP-1(glucagon-like peptide 1)は、1987年にインクレチンであることが証明された。下部小腸に存在するL細胞から分泌され、膵β細胞からのインスリン分泌の促進、グルカゴンの分泌抑制、腸管運動を抑制し、食物の吸収速度を抑え、脳に働き満腹感を惹起する作用が認められているが、DPP-4により約2分で分解され効果を失う。

http://www.igaku.co.jp/pdf/1108_tonyobyo-4.pdf


http://plaza.umin.ac.jp/~y-dm/npo-image/h22kouen%20slide.pdf

GLP-1とGIPの作用を比較すると以下のようになる。

http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/novo/vic/3-1.html

インスリンの分泌機構は、グルコースがβ細胞に取り込まれ、代謝によりATPが産生され、ATP/ADP比が増大し、ATP感受性カリウム(KATP)チャンネルを閉じ、細胞膜の脱分極が生じ、電位依存性カルシウムチャンネル(voltage-dependent calcium channels:VDCC)が開口による細胞内Ca2+濃度の上昇によって、インスリン顆粒の開口放出が起こる(グルコース代謝依存性経路:惹起経路)。
SU薬は、このKATPチャンネルに作用する。
炭水化物や蛋白質、脂質を摂取することでGIPとGLP-1は分泌され、特にGIPはGLP-1に比較し、脂質に対する刺激によりか分泌する。分泌されたGIPとGLP-1は血行性に運ばれ、膵β細胞膜上にあるGIP受容体とGLP-1受容体に結合する。
GIP受容体とGLP-1受容体は7回膜貫通型Gタンパク共役受容体でGs蛋白と共役したアデニル酸シクラーゼ(adenylate cyclase:AC)を活性化し、細胞内cAMP濃度を上昇させる。細胞内のcAMP濃度の上昇はprotein kinase A(PKA)の活性化を介して、細胞内のカルシウムの有効性を高め、グルコース代謝によるインスリン分泌を増強する(増幅経路)。
また、exchange protein activated by cAMP(Epac2)を介した低分子GTP結合蛋白Rap1などの活性化によるインスリン顆粒の開口放出促進も報告されている。
欧州人を対象とした2型糖尿病患者において、インクレチン効果は健常人に対して低下しており、2型糖尿病患者において、経静脈的にインクレチンを投与した報告では、GLP-1投与に対するインスリン分泌反応は認められたが、GIPに対するインスリン分泌促進作用は消失していた。(J Clin Invest. 1993;93:301-7)
膵β細胞でのGIPに対する反応性低下の原因として、GIP受容体発現量の低下が考えられており、高血糖の改善した状態では、膵β細胞のGIPに対するインスリン分泌促進効果が回復していることから、この反応は可逆的なものと考えられている。
http://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse1215.pdf


http://terra58.hatenablog.com/entry/2015/03/22/190000

今回の講演の趣旨:
GLP-1の生理的濃度は10~100pMであるのに、これまでのGLP-1関連の研究で使用されているGLP-1濃度は、ほぼすべての研究において10nM以上の生理的濃度が使用されているので、今まで得られた結果の臨床的価値は低いと考えられる。
生理的濃度のGLP-1が、膵β細胞の背景電流の一種であるtransmembrane receptor potential melastatin 2 (Trmp2)チャンネルを直接刺激し、インスリン分泌を増強することを発見した。GLP-1はcAMP-EPAC2を介してTrmp2チャンネルを直接制御し、静止膜電位を脱分極させることで、グルコース感受性を改善していると考えられた。
Trmp2チャンネルは背景電流の一種で、非選択的陽イオンチャンネルで、Na+、K+、Ca2+などが通過することが分かった。
GLP-1作動薬であるexendin-4を生理的濃度である10~100pMで刺激した際に、容量依存性に有意な背景電流の増加を観察した。また、native GLP-1、liraglutideでも同濃度で背景電流は増加した。
これらの変化はTrmp2チャンネルインヒビタ―である2-Aminoethyl diphenylborinate(2-APB)同時投与にて消失し、Trpm2チャネルノックアウトマウスから採取された膵β細胞に手も消失したため、exendin-4刺激により増加する背景電流はTrmp2チャネル電流であると考えられた。
この電流の増加はGLP-1受容体アンタゴニストであるexendin9-39存在下にて消失したため、GLP-1受容体を介した反応であるといえる。
膜透過性cAMPであるdibutyril cAMP投与にても同様にTrmp2電流の有意な増加が観察されたが、protein kinase A(PKA)インヒビタ―であるH89存在下でも同様の結果が得られ、PKAエンハンサーである6-phe-cAMPや6-Bnz-cAMP投与では電流の増加が観察されなかったため、PKAの関与は否定的である。
PKAと同じくcAMPの下流にあるEPAC2エンハンサーである8-pCPTにて同様の有意な電流増加が得られたため、exendin-4によるTrmp2電流の増加は、EPAC2型によると考えられる。

背景電流に対してグルコース濃度が2.8mM(50.4 mg/dL)と16.6mM(298.8 mg/dL)の差を検討したところ、高濃度で背景電流は有意に増加した。低濃度グルコースに13.8 mMスクロースで浸透圧を補正した場合には、背景電流の増加は生じなかったため浸透圧の影響は否定的である。この電流変化は、電子伝達系ブロッカーおよびEPACインヒビタ―により消失したため、糖代謝がEPACを介して背景電流を制御していることが明らかとなった。
これらの変化はTrpm2インヒビタ―(2-APB)同時投与にて消失し、Trmp2ノックアウトマウスから採取された膵β細胞にても消失したため、Trmp電流であると考えられる。
Exendin-4刺激によるTrmp2電流変化はグルコース濃度依存性であるが、EPAC2アクティベータ(8-pCPT-AM)投与では、Trpm2は2.8mMグルコース中においても最大反応を示した。
これらの結果より、グルコース代謝およびGLP-1は、両者ともEPAC2を介して膵β細胞Trpm2電流を増加させ、インスリン分泌を促進することが示された。
グルコース代謝は、K-ATP(外向き電流)を減少させるだけでなく、EPAC2を介してTrpm2電流(内向電流)を増加させることでインスリン分泌を促進し、GLP-1はそのTrpm2経路を増強する。
https://kaken.nii.ac.jp/pdf/2013/seika/CFZ19_11/32202/24890219seika.pdf


インクレチン効果は、インスリン分泌促進増強ではなく、血糖上昇時のインスリン分泌反応を良くしているといえる。インクレチンの最大効果は、空腹時血糖値を低下させるときではなく、食後血糖値の上昇を下げるときに見られる。その効果は、血糖値が100前後の時が強いといえる。


http://diabetes.diabetesjournals.org/content/63/10/3394

参:
Trpm2チャンネル:Trpm2チャンネルは膵臓β細胞に強く発現しているcADP-riboseが室温ではTrpm2受容体を活性化しないが、体温近傍の温度ではTrpm2受容体と結合して活性化する温度受容体であることが分かった。

http://www.nips.ac.jp/biomol/Res_TRPM2.html

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

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