糖尿病系

2014年6月12日 木曜日

合併症予防を目指す糖尿病治療  横手幸太郎教授

2014年6月4日 横浜ベイシェラトンホテル
演題「合併症予防を目指すこれからの糖尿病治療」
演者:千葉大学大学院医学研究院 細胞治療内科学教授 横手幸太郎先生
内容及び補足「
2014年4月4日に人間ドック学会などが作る専門委員会が現在の基準値で正常とされる数値の範囲を大幅に緩めるべきだとする調査結果を発表した。
この数値は2011年人間ドックを受けた150万人の病気にかかっておらず、薬も飲んでいないきわめて健康な男女を約1万人選び、27項目の検査データを解析し新基準をして来年の4月から運用する予定だという。
血圧値は147/94まで、BMIは男性で27.7、女性で26.1、コレステロールは男性で254、女性は年齢により異なり、44歳までは238、64歳までは273、65歳から80歳までは280と今までのいろいろな学会などが提唱する基準値よりも大幅に緩和される結果となる。

多数例のデータをもとにしているので、インパクトの強い結果のように思われるが、このデータは、現在一見健康に見える人の、その場のデータの解析結果でしかないという点が問題である。
長寿国である日本で暮らしている自分たちは、現在の身を生きているのではなく、これから先何十年と健康で生活していくために現在の生活習慣を是正する必要があるのである。
NIPPON DATAが日本人のデータを経年観察し、心臓病や脳卒中などの循環器疾患発症の危険因子を検討してきた。
男性を19年間追跡した調査においては、120未満の血圧とそれ以上の血圧では循環器疾患脂肪の相対危険度は明らかに異なる。

男性において、年齢、BMI、血圧、糖尿病、飲酒、喫煙といった因子の影響を調節して14年間経過を見ていくと、総コレステロール値が200を超えた時点から冠動脈疾患脂肪のリスクが男性において増加し、240を超えるとより増加が顕著になる。

http://www.env.go.jp/council/former2013/07air/y078-04/mat01_2.pdf
疾患があって、治療されている人は、今夏イン人間ドック学会の基準値改正惑わされることがなく必要な治療は継続する必要がある。
糖尿病の合併症としては最小血管が障害される糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害と大きな欠陥が障害される脳梗塞や虚血性心疾患、閉塞性動脈硬化症などの大血管障害、近年話題になっている、歯周病、認知症、先ほどの鈴木先生の講義内容の悪性腫瘍がある。

UKPDSで治療された2群は試験当初においてはHBA1cの差は認めたが、その後の治療では両者間に差はなく、2002年の時点では1997年に比べ約HBA1cで0.5程度の低下であった。

細小血管障害においては、最初の報告時点から両者間において有意な差を認めていた。

心血管障害は最初の報告時にはP-0.052と有意な差にはならなかったが、その後の解析時にはP=0.014と有意差が出たし、

総死亡においても有意さが出てきた

つまり血糖低下療法の効果は、大動脈血管障害にも有効であるが、その効果は遅れて出てくるものであり、Legacy Effect:遺産効果ともてはやされたが、病初期(5年以内)の治療が有効である。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0806470#t=articleBackground
こういった血糖値の治療からすると驚くべき発表が2004年Lancetに掲載された。
Atrovastatin(リピトール)を使ってLDLを低下させた際には4.75年の中間報告時点において37%のイベント減少効果を認めたのである。
これだけ有効な治療法があるにもかかわらず、プラセボを投与継続していくことには倫理上の問題があるとして、臨床研究が打ち切られたのである。

http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(04)16895-5/fulltext

http://www.lipidsonline.org/commentaries/cme_pdf/commentary_054.pdf
ではどうして短期間で効果が確認できるのか?
動脈硬化巣の形成メカニズムを考えてみよう。血管壁内皮を通過して内膜下の細胞外マトリックスに沈着する。沈着後酸化変性を受け、酸化脂質などの化学メディエーターを分泌したり、さらには周辺の細胞からMCP-1(moncyte chemotactic protein-1)やMCSF(macrophage colony-stimulating factor)などのサイトカインを放出させたりする。これらは、血管内皮細胞における細胞接着因子の発現誘導と共同して、流血中の単球を内膜下に遊走・固定する。ここで、単球は成熟マクロファージに分化し、酸化LDLを貪食して、泡沫細胞となり、様々な炎症性サイトカインや増殖因子を分泌し、血管平滑筋細胞を遊走・増殖させ、動脈硬化巣が進展していく。Atrovastarin投与によりLDLの量を減らすことで、これらの一連の変化を抑制することができる。

集中的多因子療法群はHBA1c<6.5%、TC<175㎎/dl、TG<150㎎/dl、SBP<130mmHg、DBP<80mmHgを治療目標としていたSteno-2研究で、介入試験完了後継続参加した集中的多因子群67例と標準治療群63例の観察試験で、集中的多因子治療が標準治療に比べ、心血管死に対して有効であることが示された。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0706245#t=articleBackground
日本人においては集中的多因子治療群:標準的治療群の治療目標として、HBA1c 6.2%:6.9%、血圧120/75:130/80、LDL-C 80:120、TG 120:150、BMI 22以下:24以下のJ-DOIT3試験が進行中である。現在の平均測定値はそれぞれ、HBA1c 6.2±4.3:6.7±5.5、SBP 123±18.1:128±12.2、DBP 62.8±4.3:78.2±10、LDL-C 72.4±16.3:93.2±20と治療状況に差が出ており、今後の結果が楽しみである。
糖尿病の今までの治療薬は、ほとんどが体重増加を来すものであり、そのことが問題となっていた。
食事療法や運動療法でも減量がうまくいかない患者が多く、外科的な治療方法が開発されてきた。
減量手術の種類としては以下のものがある。
食べられる食事の量を減らす手術(restrictive procedure)
   腹腔鏡下調節性胃バンディング手術(LAGB)
   腹腔鏡下袖状(スリーブ)胃切除術(LSG)
   腹腔鏡下調節性胃バンディング手術(LAGB)
   *内視鏡的治療:内視鏡的胃内バルーン留置術
栄養の吸収を阻害する手術(malabsorbtive procedure)
   腹腔鏡下胃バイパス手術(RGB)
   腹腔鏡下袖状(スリーブ)バイパス手術(LSGB)
   腹腔鏡下胆膵路バイパス+十二指腸変換手術(BPD-DS)
手術の適応としては、現在日本肥満症治療学会の最新のガイドラインによると『減量が主目的の場合はBMI 35以上』『糖尿病をはじめとした肥満合併症の治療が主目的の場合はBMI 32以上』となっている。
千葉大学の川村功先生が我が国に導入した腹腔強化袖状胃切除術(Laparoscopic Sleeve Gastrectomy)がある。

短期的な生成期では術後1年で体重の減少は平均59㎏で超過体重減少率は59%と報告されている。
http://www.islandbariatric.com/cn_surgery/bariatric_procedure.html

薬剤でSGLT2阻害薬が発売された。
通常腎臓の糸球体で濾過されたブドウ糖の約90%をSGLT2が再吸収している。このSGLT2をブロックすると、SGLT1での再吸収する量が増加するが、1日約50~80g腎臓から排泄されることになる。

スーグラを投与すると、HBA1cは1.24%、体重は1.47㎏減少する。

尿糖が50g毎日排泄されると、50g×4kcal/g=200Kcalのカロリーが排泄され、200÷7=29gの脂肪が減少することに相当する。29×7日×12週=2.3㎏が3カ月で減少する計算となる。
ウエストの変化も、プラセボ群で―0.41㎝に対してスーグラ群で―1.61㎝減少するが、内臓脂肪だけでなく、皮下脂肪や筋肉も減るのが問題点である。
その他にもいくつか懸念される状況があり、適正使用のためにという注意点を念頭に置いてこの薬を使用する症例を選別すべきである。

副作用の口渇は1カ月以内に自覚される症例が多く3カ月ほどでほとんど認められなくなるが、逆に症状がある間は血液の濃縮・脱水が心配である。
HBA1cの変化は、腎機能により異なることがわかっている。eGFRが60-90では-0.70の変化であるが、30-60になると-0.31と効果が半減する。つまり使用すべき症例ではないと考えたほうがよい。

HBA1cが8.4%未満では-1.05の変化であるが、8.4%以上だと-1.49と効果が高く、他の傾向糖尿病薬と同じ結果が出ている。しかし、BMIを25で分けた際には、25以上では-1.06の変化であるが、25未満においては-1.39と減少が大きいことは問題であり、筋肉量が少ない人、体重が少ない人においては、注意して使用する必要がある。


ドイツ医師Otto Wernerにより「強皮症を伴う白内障症例」として1904年に初めて報告された常染色体劣性遺伝疾患であるWerner症候群(WS)という思春期以降さまざまな老化徴候が出現する早老症候群がある。
第8染色体短腕上に存在するRecQ型DNA/RNAヘリカーゼのホモ接合体変異により生ずる疾患で、100万人に1~3人の割合といわれ、神奈川県内の一般住民1000人を対象にした検討では6人が体表的なWRNヘリカーゼ遺伝子変異をヘテロ接合体として保有していた。
ホモ接合体でなければ発症せず、世界の1500例の報告症例のうち810例が日本人で、我が国に多い早老症候群である。


http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/clin-cellbiol/werner/
主な兆候は
1. 早老性毛髪変化(白髪、禿頭など) 20歳ごろから
2. 白内障(両側) 30歳ごろから
3. 皮膚の委縮・硬化、難治性潰瘍形成
4. 軟部組織の石灰化(アキレス腱など)
5. 鳥様顔貌
6. 音声の異常(甲高いしわがれ声)
その他の徴候と所見
1. 糖・脂質代謝異常 30歳ごろから
2. 骨粗鬆症など
3. 非上皮性腫瘍または甲状腺癌 40歳ごろから
4. 血族結婚
5. 早期に現れる動脈硬化(狭心症、心筋梗塞など) 40歳ごろから
6. 原発性性腺機能低下
7. 低身長及び低体重
があり、 主要徴候の全て。もしくは3つ以上の主要徴候に加え、遺伝子変異を認めるものは確定診断となり、 主要徴候の1、2に加えて主要徴候やその他の徴候から2つ以上あるものが疑い例となる。
http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/clin-cellbiol/werner/#container
メカニズムは不明であるが、アキレスけんの石灰化はWSの診断に有用である。奈良県立医科大学整形外科で手術を行った非WS患者228例456足の単純Xpではアキレス腱の石灰化は4足(0.88%)に過ぎず、全国のアンケート調査の回答ではWS患者の92例中70例(76.1%)に石灰化を認めており、有用な検査であるといえる。アキレスけんの石灰化のある患者さんがいたら、是非千葉大学にご紹介お願いします。

http://www.m.chiba-u.jp/class/clin-cellbiol/werner/pdf/guideline.pdf
ヘリカーゼの変異で内臓脂肪が委縮し、インスリン抵抗性、高インスリン血症をきたし、耐糖能障害、高血圧、脂質異常症をきたし、粥上動脈硬化症を発症する。
これらの異常に対して治療を行ってきた。
WSの平均寿命は、1996年では42.4歳だったのが、1997-2006年には51.8歳、2007年以降では54.8歳と延長してきている。スタチンやDPP-Ⅳ阻害薬などの治療効果かもしれない。
実際WSではグルカゴンが高値であり、DPP-Ⅳ阻害薬によるグルカゴンの低下が影響している可能性がある。

川村から横手先生への提案:内臓脂肪を減らすために『腹ペコトレ』を取り入れてやってみたいのですがご検討ください。

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2014年6月 9日 月曜日

糖尿病・肥満とがんの関係 鈴木亮先生

2014年6月4日 横浜ベイシェラトンホテル
演題「糖尿病・肥満とがんの関係」
演者:東京大学大学院医学研究科 糖尿病・代謝内科講師 鈴木亮先生
内容及び補足「
2012年においては予備軍が減少して来ているが、日本において糖尿病が強く疑われる人は増加の一途をたどっている。

日本人は欧米人に比べてインスリンの分泌能が約半分程度であり、それに加え、高脂肪食、運動不足が糖尿病患者数の増加に寄与していると考えられている。
糖尿病患者の死因を原因ごとに米国と比較してみると(米国2009年、日本2007年のデータ)、ガン(27%:34%)、虚血性心疾患(43%:20%)、腎関連死(3%:7%)、感染症(7%:14%)と米国では虚血性心疾患での死亡が多いのに比べ日本では癌による死亡が多い。
ではどういった癌が糖尿病患者に多いのかを見てみると、肝細胞癌、膵癌、子宮内膜腺癌が多くみられるとするものが多い。前立腺癌が少ないのは、女性ホルモンである、Estrogenが上昇することに起因している可能性が指摘されている。


日本においての状況はどうかというと、相対リスクが高いものを上げると肝癌1.97、膵癌1.85、子宮内膜癌1.84となる。日本においても前立腺癌は0.96と低率である


がんセンターのHPに今までの発がんリスク研究のまとめが掲載されている。
糖尿病と関連するものとしては、ほぼ確実なものとして、肝臓癌、膵臓癌、可能性ありとして、子宮内膜癌が挙げられている。
肥満が関係するものとしては、確実なものとして女性の乳癌、ほぼ確実なものとして、肝臓癌、大腸癌、可能性のあるものとして、子宮内膜癌がある。


糖尿病が存在することによる発がんが増加する機序が推察され提唱されている。
高インスリン血症のため、腫瘍細胞のインスリン受容体が刺激され腫瘍細胞のアポトーシスが抑制される機序やインスリン抵抗性のために肝臓におけるIGFBP(インスリン様成長因子結合蛋白)の産生が低下し、その結果としてFreeのIGF-1が増加し、腫瘍細胞のIGF-IRを刺激して、腫瘍細胞のアポトーシスを抑え、増殖を刺激する機序が推定されている。

http://www.nature.com/nrc/journal/v14/n5/abs/nrc3720.html
2007年に日本人男性において、C-peptide高値は結腸直腸がんの指標になることが示された。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ijc.22556/full
肥満者に伴い、脂肪細胞では、アロマターゼや17βヒドロキシステロイド脱水酵素(17β-HSD)による⊿4アンドロステンジオンからテストステロンやエストロンを介した活性型エストロゲンへの変換が促進される。また同時、インスリン抵抗性に伴い高インスリン血症が生じた結果、肝臓では高インスリン血症により性ホルモン結合グロブリン(SHBG)の合成が低下する。これらの作用により活性型エストロゲンの量の上昇が生じると考えられる。活性型エストロゲンの作用は臓器により異なり、乳腺上皮や子宮内膜では、アポトーシスの抑制や増殖の亢進により癌化につながり、前立腺組織においては、発癌抑制に働いていると考えられる。

肥満の原因の一つである高脂肪食により、マウスの腸内において、普通食ではほとんど検出されなかったClostridiumクラスターⅩⅠあるいはClostridiumクラスターⅩⅠⅤaに分類されるグラム陽性細菌が増加していることが明らかになった。これらの菌はデオキシコール酸を産生する。培養細胞を用いた研究において、デオキシコール酸は活性さんをを介して細胞のDNAの損傷を誘導し、発癌を促進する可能性が報告されている。
肥満により増加したグラム陽性腸内細菌の産生する2次胆汁酸デオキシコール酸が腸肝循環を介して肝臓に運ばれ、肝星細胞の細胞老化や細胞老化関連分泌現象を誘導し肝癌発症を促進していることが明らかになった。

http://first.lifesciencedb.jp/archives/7410
明らかにいくつかの研究において体重の減少が癌のリスクを減少させている。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1463-1326.2011.01464.x/abstract
胃バイパス手術によるおける予後改善効果は女性においてのみ認められている。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/joim.12012/full

運動の効果を見たものとして結腸直腸がんの頻度を検討したものがある。大腸ポリープ、大腸腺腫、さらに進行した病変において有意に減少している。

http://www.biomedcentral.com/1756-0500/5/312

Food Nutrition, Physical Activity and Prevention of Cancer:a Global Perspectiveでがん抑制効果があるものとして、非でんぷん性野菜、ネギ類野菜、果物などがあげられている。

逆に発癌を促進するものとしては、赤い肉、加工肉、広東風塩辛などがあげられている。

http://www.dietandcancerreport.org/cancer_resource_center/downloads/Second_Expert_Report_full.pdf

体重が減少することにより発癌が抑制され、体重減少が大きいほどその効果が大きいと推察される。その因子としては、腸ペプチドの変化や腸内細菌叢の変化が推察されている。
肥満で発癌が促進される原因の一つとして、高インスリン血症が考えられる。そうなってくるとインスリンを使って糖尿病の治療を行うことの是非が問題となってくる。
インスリン治療をおこなった2型糖尿病患者群とおこなわなかった2群で結腸直腸癌の頻度を検討した研究がある。インスリン治療で3160例中197(100000人/年)に対してインスリン非治療群21758人中124(100000人/年)の結腸直腸癌発症頻度であり、インスリン治療により1.21倍のリスクと計算された。

http://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(04)01236-3/fulltext
年齢、性、喫煙状況、BMIを補正したものを示す。FBSが6mmol/liter(110mg/dl)を超えたあたりから癌死の頻度が上昇してくることがわかる。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1008862
高血糖が悪いのか、高インスリン血症が悪いのか?
一連の研究がDiabetologiaの2009年VOl.52の1732ページから1777ページに掲載され、インスリン投与で、癌が増加すると報告された。
http://download.springer.com/static/pdf/73/art%253A10.1007%252Fs00125-009-1418-4.pdf?auth66=1402360365_98f099573e126fa10bb2d42581826cdb&ext=.pdf
http://download.springer.com/static/pdf/546/art%253A10.1007%252Fs00125-009-1444-2.pdf?auth66=1402360446_9bb30a19a7cb6bcac0970ff8c9a3b757&ext=.pdf
http://download.springer.com/static/pdf/717/art%253A10.1007%252Fs00125-009-1453-1.pdf?auth66=1402360478_b76b06b8008a046a69d62e96bd94d805&ext=.pdf
http://download.springer.com/static/pdf/386/art%253A10.1007%252Fs00125-009-1440-6.pdf?auth66=1402360506_49eb27f394129662fbd1dc8c27956886&ext=.pdf


http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1203858#t=articleResults

最近よくつかわれるようになったDPP-Ⅳ阻害薬やGLP-1作動薬の影響も気になる。
2004-2009年のデータベースを集め検討したものが以下のものである。Exenatide(バイエッタ)やSitagliptin(ジャヌビア、グラクティブ)投与により膵炎や膵癌の上昇がみられ。バイエッタは甲状腺のC細胞を増やす可能性が指摘されており、甲状腺癌の増加も気になるところである。この解析で気を付けていなければならないことは、この解析データベースは、副作用報告のデータベースであり、もともと臨床研究としてデザインされた研究結果では何ということである。これらの薬は、膵炎や膵臓がん、など他の癌の副作用が心配されている薬剤であるため、偶然の併発症も薬剤の副作用の可能性があるため、報告として挙がってくるが、以前から使用されている他の薬剤のデータはこういった観点から情報を集めていないので、この副作用データベースには報告バイアスがもともと存在している(より多く報告されやすい)。したがって、副作用データベースからの解析では、薬剤とその投与により発症したとされる状態や病態の因果関係を示すことはできない。

http://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(11)00172-7/fulltext

Matteo Monamiらは2011年にメタ解析の結果DPP-Ⅳ阻害薬投与では悪性腫瘍は増えないとした。
http://informahealthcare.com/doi/abs/10.1185/03007995.2011.602964
KPNC研究の中間報告では累積投与量が上昇するに従い、膀胱癌が増えると報告され

(http://www.mochida.co.jp/dis/kaitei/img/pio2306.pdf)
CNAMTS疫学学研究では、男性において投与量が多く投与期間が長くなると膀胱癌の頻度が上昇することが指摘された。
(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001hbq8-att/2r9852000001hd4v.pdf)
以上のことを受け、フランスやドイツでは新規処方が禁止されたが、日本では膀胱癌の発生頻度挙げないとする報告も多く存在するので、
① 膀胱癌治療中の患者等には使用を控える
② 膀胱がんのリスクについて患者への説明を行う
③ 血尿等の兆候について定期的に検査する
という使用上の注意の改訂を指示することとなった。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001le8l-att/2r9852000001lenp.pdf
実際に膀胱癌の頻度は日本人6.9に対し欧米人は15.6と頻度に違いがある。
参:日本人の年齢調節した膀胱がんの罹患率は男性において10万人当たり12人、白人の膀胱がん発生率は10万人当たり20人程度(JACR Monograph No. 12)

メトホルミン投与においては癌の発生率は減少することが示されている。特に、結腸直腸癌、肝癌、肺癌において有意に減少している。


http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0033411

その機序は正確には分かっていないが、メトホルミン投与によりAMPキナーゼがリン酸化されて活性化し、それにより肝臓における糖新生が抑制され、インスリンに対する感受性が上昇すること、その結果インスリンや活性型IGF1を減少させることによる効果と、がん細胞でPI3キナーゼやAKTの下流で細胞の増殖を制御しているmTORを抑制することにより癌の発生を抑える可能性が示唆されている。

まとめると
糖尿病や肥満により癌のリスクは上昇する
インスリン抵抗性や高インスリン血症、高血糖、炎症、アディポカインの変化、腸内細菌叢の変化が寄与していると考えられる
体重の減少でリスクが減る
薬と癌の関係は確定していないので、今後注意して使用していく必要がある

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

2014年6月 3日 火曜日

糖尿病治療の新展開 大杉満先生

2014年5月28日 新横浜国際ホテル
演題「糖尿病治療の新展開」
演者:東芝病院 代謝内分泌内科部長 大杉満先生
内容及び補足「
糖尿病の治療目標が昨年の糖尿病学会総会で変更になった。測定方法の変更に伴い、またエビデンス結果を加味した結果で、以前よりシンプルになって覚えやすくなった。

合併症予防のためのデータとして有名なものがいくつかある。

このデータを見ると血糖値を厳格に管理することによりより良い結果が出るように思われる。しかし、現実には血糖値をより厳格に管理すると低血糖発作の頻度は上昇し、より重篤化することになる。
IDDM患者により厳格な血糖コントロールを行ったDCCT研究の結果では、インスリン強化療法により、3~4倍低血糖発作が出現した。症状がある低血糖発作は1週間に1回認めらた。持続血糖測定器を用いて検査するとおそらく日に一回は低血糖になっていると思われる。

http://diabetes.diabetesjournals.org/content/46/2/271.full.pdf+html
この時点においては、糖尿病合併症予防や予後の改善には低血糖はしょうがないものだと考えられていたが、ADVANCE、ACCORD、VADT試験結果が出てその考え方が変わってきた。標準両方の血糖目標値が厳しいADVANCE試験ではあまり大きな差が出なかったが、標準療法と強化療法のコントロールの差が大きいACCORD試験やVADT試験では今日か療法群で明らかに重症低血糖発作の頻度が多く、死亡症例も多く認められた。


アメリカとカナダの13歳から39歳までのIDDM患者1441名の網膜症と腎症の進展が、1日1から2回の従来療法と、3回以上の強化インスリン療法で違いが出てくるかというDCCT試験の9年間のコントロールではHBA1c値は9.1±1.5 v.s. 7.4±1.1であった。

その後治療継続していった後の両群でのHBA1cの差は7.9±1.3 v.s. 7.8±1.3とほとんど変わらない値となった。しかし、9年間の経過観察では差がはっきりと出なかった心血管イベントの差がその後の10年間の経過ではっきり出てきた。


VADT研究で通常療法と強化療法の6年間の死亡率の違いを糖尿病罹病期間で比較したものが下記の図である。0-5年では両者に差はなく、10年前後であれば強化療法で死亡率を減らせる可能性があるが、20年近くなってくると、逆に強化療法は危険であることが推測される。


早期の厳格な血糖コントロールがある行って期間をおいて、合併症の抑制につながることはUKPDSでも示された。


これらのことから言えることは、糖尿病初期において、低血糖を避けた厳格な血糖値コントロールが10数年以上経過した後の予後を改善するということである。
そこで期待されるのが低血糖が起こりにくく、体重の増加が起きにくいDPP-Ⅳ阻害薬やインクレチン作動薬である。ここで問題となるのは、実験で示されているGLP-1作動薬のさまざまな効果は、人で認められるかということである。

急性心筋梗塞症例にGLP-1を投与した際に、心筋の収縮能が改善したことが2004年に示された。



マウスの実験であるが、DPP-Ⅳ阻害薬であるアログリプチンの投与で動脈硬化進展を抑制した。

臨床試験においては、
Examine試験では、15-90日以内に急性冠症候群患者5380名にネシーナ錠かプラセボを投与した群間比較で、HBA1cは8.03からネシーナ群では0.33%減少したのに対してプラセボ群では0.03%の減少と有意に低下させたけれど、心血管死や心筋梗塞、脳卒中の発現率に差を認めなかった。


SAVOR-TIMI53試験でも、2型糖尿病患者16492例にオングリザかプラセボを投与し、2.1年経過を追ったところた虚血性心血管にベントは変わりなかったが、オングリザ投与例で心不全での入院がプラセボ群の2.8%に比べ3.5%と有意に増加していた。


メタ解析において、エクアの投与では心血管イベントの発症には影響しなかった

しかし、これらの結果を見る際に気をつけておかなければいけない点がいくつかある。
以前のいろいろな治療介入試験は、臨床的に良い薬剤がなかったため、ある程度の効果がある薬剤を投与すると、短期間で有意に良い治療効果が出やすかったが、現在では、リスクのある患者には標準的にACEIやARBといった臓器保護作用のある降圧薬や、HMGCoARI、抗血小板剤などが投与されているため、短期間で治療効果があるという有意さが出にくい環境になっているということである。

DPP-Ⅳ阻害薬のベストパートナーは何か?
ビグアナイドの効果は一般的には太っている人ほど効果が良いと考えられているが、日本人のデータでみてみても20>BMI、25>BMI≧20、30>BMI≧25、BMI≧30の4群のHBA1cの平均低下率はそれぞれ-1.4、-0.8、-1.0、-1.1(糖尿病2006、49:326)と逆に痩せている人においてより効果があるように見えた。
1500㎎から2250㎎への増量の際のHBA1cの低下作用は、単独投与群で8.2→6.9→6.1であり、多剤併用投与群で、8.0→7.0→6.3と薬剤の増量に応じて結党低下作用が増強され、単剤投与時と多剤併用時で同等の効果がみられた。
透析中や脱水時、過度のアルコール摂取時、心血管系や肺に疾患がある人で副作用が出やすいと考えられているが、GFRが30~45、45~60、60≧でハザード比が0.98、0.85、0.91であり、腎機能が悪化している人に副作用が多く出ているわけではなかった。当然腎臓が悪化し始めた時に適切な対処がされているので、重篤な副作用が出るような事態にならなかった。

日本人は白人に比べ、おなじBMIの体型でも肝臓の脂肪量が多い
L/S ratioは肝臓と脾臓のCT値の比で1より少ないと脂肪肝と判断する数値。VATはVisceral  adipose tissue(内臓脂肪)、SATはSubcutaneous adipose tissue(皮下脂肪)。

体脂肪においても、同じBMIの体型でも多いことが示された。

今まで発売された、糖尿病の治療薬の効果を複合的に検討した結果が下記の図である。
それぞれとの比較を矢印で示し、下に行くほどHBA1cが低下することになる。

日本での血糖コントロール状況を見ると、7.0%以上が47.1%といた。
平均のHBA1c値は2型糖尿病で7.06%、1型糖尿病で7.65%、両者をまとめた値は7.09%であった。

治療薬の変化も著しく、近年ではDPP-4阻害薬が著しく増加し、インスリンのみ使用の患者が減少している。

OHA:oral hypoglycemic agen経口血糖降下薬

近年発売されたSGLT2阻害薬であるが、健康人では腎臓の糸球体で一日約180gの糖が濾過されて、尿細管に排泄される。その濾過されたもののうち90%がSGLT2を介して再吸収され、残りの10%がSGLT1を介して再吸収され、ほとんど尿に排泄されない。


SGLT2阻害薬を投与するとこの90%の糖が再吸収されずに流れていき、SGLT1により120g程度再吸収されることになる。従って残りの60gが、尿糖として体外に排泄されることになる。

その結果、HBA1c、空腹時血糖値、体重、血圧ともに低下させ、脂質代謝も改善する。




腎機能障害例においても長期投与において腎機能の悪化は見られなかった。

以前メトホルミンが使用された際に、乳酸アシドーシスの副作用がみられ、1978年に使用禁止となった。再度使用が認められるまでには、20年近くかかっており、SGLT2阻害薬もそうならないために、副作用が心配な患者さんには、きめ細かい指導をするか、実践的な副作用頻度がわかるまでしばらくは、投与を控えることが望ましい。


副作用が心配な症例は脱水や体液量の減少がある症例、腎機能が悪い症例、尿路感染症や世紀感染症の既往がある症例、低体重や筋肉量が少ない症例、極端に炭水化物を控えている症例や食事量が少ない症例などが挙げられる。

CANVAS研究で2型糖尿病で、HBA1cが7以上10.5以下、10年以上の糖尿病治療歴があり、降圧薬内服下において収縮期血圧140mmHg以上、喫煙者で、アルブミン尿があり、HDLコレステロールが39以下の人を対象とした研究での中間報告では特に治療群とコントロール群での差はなかったが、薬剤申請時に提出された書類にある情報を見てみると、投与開始30日の間においては、統計上有意差はないものの、治療薬投与群でイベントが多く認めた。
他のSGLT2阻害薬でも同様の傾向が認められており、この薬剤の効果である、尿への糖排泄に伴う脱水傾向がイベントを起こしやすくしている可能性があるので、身体が薬剤の効用に慣れるまでの投与開始時には、水分補給を口やかましく患者に指導する必要があると思われる。

投稿者 川村内科診療所 | 記事URL

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